「やぁ、ようこそ僕の世界の『花』。それとも花咲紫と、名前で呼んだほうがいいかな?」
玉座のようなそれに座るのは、紫と歳の変わらない見た目をした少年だった
その身体は、流し込まれた套値現の記憶から十年の年月が経っているとは感じさせない
「どちらでもいい。私の用が終わればどうせ二度と会うこともない」
「君の用が何かは知らないけどね。僕の用である、君の人形化及び君の中のイデア操作権限の剥奪が叶えばずっと居てもらうことになるのだけど。目的が一致しないなら、戦うしかないか」
現が指を鳴らせば、辺りの景色は地獄へと変貌した
地面は燃え盛り、空からは硫酸の雨が降る
そんな光景が無限に続くかのように地平線まで繰り返される
けれど紫の周りには結晶が広がり空は晴れ渡っていた
「どうやら、僕と同じ力を持つというのは本当らしいね。普通は抵抗すらできないのだけど。仕方がない、同質のイデア操作権限があるのなら互いに打ち消すそれは使わず物質的にやろうか」
現は宙に石を幾つも浮かべる
それらは弾幕のように紫へと襲いかかった
紫はそれらを結晶で防ぐ
止められた石はそれぞれが弾け、酸に、釘に、風の刃に、塩の塊に、炎になってさらに襲いかかるが紫のバックパックから飛び出した小型のドローン達が全て処理していった
「貴様が他者へ与えた異能力にしろ、今使う石にしろ、全て自分が害された象徴を使うのだな」
「当然だろう!僕は、理不尽に酷い目に遭わされ続けたんだ!僕はずっと害する側に立ってやりたかったんだ!」
石の数が増えていく
紫は結晶を消し、ペンシル型のエアダスターで防ぎながら現へと近づいた
「くだらん。自身の行動まで他人の真似事に縛られるのは自己が確立していない未熟さでしかない」
指輪から走る紫電が現の意識を刈り取った
ーーー
「イデア操作の中に巻き込まれては私とて存在を維持できないがために離れていたが、主が負けるとはね。想定外もいいところだ」
気絶した現の頭を天羽が膝の上に乗せる
造世が紫を撫でる時とも違う、愛しい存在へと触れる手つきで現の髪を梳く天羽に紫は首を傾げる
「天羽、お前はそのような振る舞いをする性格だったか?」
「失礼だな、私は主に対してはいつだってこうさ。生まれ落ちたその時からずっとね。あぁそうだ、主が目覚めるまで私がどれほど主を好いているか語ってあげよう。どうせその間暇だろう?」
「興味はないのだが、語りたいというなら好きにしろ」
呆れた様子で紫は結晶で作った椅子に座った