モンハンやってたら異世界に飛ばされた!   作:卍錆色アモン卍

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五話 大収穫!

 

 真夜中から朝方にかけて、ずっと外がうるさい。紅蓮は寝ぼけ眼で洞の入り口を見つめると、外は大雨に包まれていた。雨が激しく木々や地面を叩く音がいつまでも続いていて、紅蓮は葉っぱタオルで耳を塞ぐ。しかし、効果なんて気休め程度しかなく、「ああ、もう!」と声を荒げて起き上がった。

 外は薄暗い。今が何時頃か全く検討もつかないし、今日はバスタードと会う予定だったのに台無しだった。紅蓮は恵みの雨であるために、怒る気分にもなれなかった。

 

 ──せっかくなら、防具を洗おうかな。

 

 わざわざバスタードが会いに来ることはないだろう。なら、今日の分のワイルドマンゴーを採ってから、この洞で過ごそうと思った。そのためにもやる事を決めて、紅蓮は行動を起こすことにした。

 まずは防具を干すための物干し竿だ。これは細木を適当な数を集めて、組み上げればいい。紅蓮は大雨の中外に出て、細木を集めると洞の中に持ち帰った。そして物干し竿の形に組み上げた。

 次にワイルドマンゴーを取りに行った。大雨なんてこの世界で初めての経験だったため、道に迷わないように慎重に進んでいき、ワイルドマンゴーを採った。この果実は年がら年中生えるのか、既に青々とした新しい果実が実っていた。すごい生命力である。

 

 葉っぱタオルは大量にある。ソープビーンズも三日ほど持つほど沢山ある。そのことを確認した紅蓮は、防具を全て脱ぎ捨ててすっぽんぽんとなった。大雨は先ほどから勢いを増しており、わざわざ小川で洗う必要もないほどに防具を濡らしてくれた。紅蓮は身体を冷やさないように気をつけながら、せっせと洗った。

 防具を洗い終わって物干し竿に掛けたら、紅蓮は次に自分自身を洗い始めた。何度だって言うが身体を冷さないように気をつけながら、懇切丁寧に洗っていく。ソープビーンズのおかげで汚れが面白いように落ちていき、いつしか楽しくなっていた。

 

 洞の中で、紅蓮は身体を動かしていた。汗をかかない程度に体温を上げたかったのだ。火元もないし──例えあっても洞の中では使えないし──できることは己の肉体を苛めることだけだ。その時、雨の日には傘や合羽があると便利だよな、と思い至った。もし作るとしたら、何が必要だろう?

 

 ──傘はでかい葉っぱを探すか、葉っぱを組み合わせればいけるかな? 合羽は……これも葉っぱを活用すれば出来る、かも知れない。

 

 葉っぱである。葉っぱ最強説。紅蓮は全裸仁王立ちで外を眺めながら、そう思った。

 

「暇だな……」

 

 今日一日は外に出られそうになかったので、昨日バスタードから貰ったキレアジの鱗でナイフを研いだり、葉っぱタオルを使って防具を拭いたり、風を送ったりして紅蓮は時間を潰した。

 

 

 

 翌朝、鳥たちの囀りで紅蓮は目を覚ました。どうやら既に日が昇っているようだ。昨日は洞の中で運動しすぎたかも、と紅蓮は呟くが、体調を崩している様子はなかったため、気にしないことにした。一昨日にキレアジをたらふく食べたことも、少なからず影響しているのかも知れない。

 防具はまだ乾いていなかったため、外に出しておいた。しばらくは全裸生活が続きそうだ。間違ってもバスタードには見られたくなかったため、早く乾いて欲しかった。

 

 葉っぱとロープを使って靴モドキを作り、胸と陰部を申し訳程度に隠した未開の部族スタイルとなった紅蓮は、小川に行って顔を洗った。下流の方に流水草が生えていたので、まん丸な花をもぎ、絞っては喉を潤した。

 

 昼過ぎとなった。木々の合間から覗く青空は雲一つ見当たらず、燦々と照りつける太陽が木漏れ日となって地面を照らしていた。紅蓮は乾いた様子の防具に満足気に頷くと、順番に身に着けていった。

 最後に頭防具を身に着けた紅蓮は、バスタードに会いに行こうと密林の中を進んでいった。手土産はもちろん、ワイルドマンゴーだ。

 

 入り江にある海岸を越えて、紅蓮は離れ小島のある海岸沿いにやってきた。昨日は大雨が降ったが、多少地面が濡れている程度でいつも通りの様子だ。綺麗な海に囲まれた離れ小島も何ら変わりないようで、それは架けられた橋も同様だった。

 

 橋を渡った紅蓮は掘っ立て小屋へ近づく。すると掘っ立て小屋の前には物干し竿があり、そこにはバスタードの身に着けていた防具が干されていた。紅蓮は状況を察して立ち止まり、大声を上げた。

 

「おーい! バスタードいるかー!」

 

 バスタードが掘っ立て小屋から、ひょっこりと顔を出した。ついでインナー姿の身体を晒す。

 

「おや、紅蓮さん! 昨日は大雨で大変でしたね! 僕は防具を洗っていたので、今はインナー姿です。申し訳ありません!」

「別にいいよ、オレも洗ってたし」

 

 紅蓮は麻のシャツを身に着け、スラリとしたパンツ姿のバスタードと向かい合った。

 

「防具は乾きそうか?」

「あとちょっとって所でしょうか。紅蓮さんは何かやることあります? 僕は釣りでもしようかと」

「なら、オレは生け簀を作るためのバケツでも作ってるよ」

「それは助かります! では、そうですね……あの棒の影が、石一つ分動いたぐらいで戻ってきてもらえますか? おおよそ一時間としています」

「分かった」

 

 バスタードが指差したのは、砂浜に突き刺さった長い木の棒だ。その周囲には半円を描くように石が並べられている。おそらく日時計を作ってみたのだろう。その証拠に、木の棒の先端が北の方角に傾いていた。

 正確な時刻は分からないが、おおよその時間の目安となる。作業する際にも、バスタードと協力する際にも非常に役に立つことだろう。紅蓮は「お前やるなあ!」と一声掛けてから、密林の方へ足を運んだ。

 

 バケツの材料となる木を探していると、ほどほどに大きい倒木を見つけた。ここ最近倒れたようで、まだ水分が抜けていない様子だ。紅蓮は早速ナイフを握り込んで、まずは倒木を小さく加工しようとした。しかし、あまりにも硬くて非常に苦労した。

 ──うぅん、現実的じゃないな……。

 斧もないし、他の材料を探すべきか?と思った紅蓮は、「そうだ、ココナッツを探してみよう!」と叫んだ。新しい食材を探す意味もあり、バケツ代わりとなる材料を探す意味もある。まさに一石二鳥! 紅蓮は意気揚々と海岸沿いに戻っていった。

 

 離れ小島が小さく見えるほど海岸沿いを歩いていると、ついにココナッツの木──ココヤシを発見した。長く伸びた幹に、頂点で四方に伸びた葉っぱ。極めつけに、幹の先端部で沢山実った果実。紅蓮は興奮して今すぐにでも取りに行きたかったが、一度冷静になった。

 ココヤシの高さは二十メートルはありそうだった。これでも一番低そうな木を選んだもので、高いものだと三十メートルはくだらなかった。

 

 流石に高いぞ!と思った紅蓮は、蔦を編んで安全ロープを作った。といっても胴体とココヤシを囲うような、ただの輪っかである。もしもの際のお守り代わりということで、紅蓮は意を決してココヤシに登り始めた。

 登ること自体は案外上手くいったが、風に揺られるのだけは勘弁して欲しかった。心地よい海風が絶えず吹くのは心地良いが、ヘンな汗が出てくる。紅蓮は何度も深呼吸を挟みながらも幹の先端部に達すると、三十センチはあろうかという大振りな青い果実──ココナッツの実った一房を地面に落とした。ナイフがなかったら、厳しかったことだろう。

 地面に降り立った紅蓮は落としたココナッツに近寄った。五つほどが纏まっており、少し揺らしてみると、チャポチャポと水のような音がした。紅蓮は喜びを顕にして、次のココヤシに狙いを定めた。

 茶色い果実が実っているココヤシ。青い果実はココナッツウォーターが主体だろう。なら、茶色いココナッツは果肉が主体なのでは?と思ったのだ。何はともあれ、今度は先ほどよりもスムーズに登り、実を落とした。もはや慣れたものだ!と紅蓮は呟き、満足げに頷くのだった。

 

 早速持ち帰ろう!と思ったその時、密林の方からガサガサと音が鳴った。紅蓮は一気に緊張感が高まって、海岸の方向に──開けた場所の方向に駆け寄り、身を翻した。すると、視界が怪物を捉えたのだ。

 燃えるように赤い外骨格、馬鹿みたいにでかい貝殻、そして嫌悪感さえ覚える飛び出した目玉と、長く伸びた触覚。脚は見える範囲では四本で、腕は機械式ハサミを思わせる見かけをしていた。

 

「ヤオザミ……! 予想以上にでかぁい⁉」

 

 盾蟹なんて呼ばれる小型の甲殻種。ダイミョウザザミの幼体とも目されているヤオザミは、横に広い外見をしているにも関わらず、紅蓮と同じくらい背丈があった。既に両腕を広げて口元から泡を吹き、一戦交えようとしているのが見て取れる。紅蓮は最初は怖気づいたが、向こうがその気ならやってやる!と気合を入れた。

 

 突如として始まった命の奪い合いは、最初は静かなものだった。しかし、ヤオザミが高速の蟹歩きを披露して、その静寂を破ったのだ。

 紅蓮は一旦回避を選択して、密林の方へ駆けた。そして適当な木の枝を左手で掴むと、いつの間にやら背後にいたヤオザミのハサミをぶっ叩いた。流石にへし折ることはできなかったが、動きを阻害できたなら偉いものだろう。

 紅蓮はこれなら行ける!と意気込んだが、その瞬間、ヤオザミが超高速の蟹歩きで背後に回ってきた。そして両方のハサミを引き絞るように掻き抱き、ピンボールのフリッパーのように解き放ってきたのだ。

 回避しようと足を動かしていた紅蓮は、あまりの衝撃に()けてしまった。それに伴ってどつかれた尻が痛みを知覚してきて、駆け出しながらも悲鳴を上げた。

 

「ひー! オレの尻が!」

 

 ちらりと後ろを見ると、相も変わらずヤオザミが高速の蟹歩きでやってくる。ものすごい執念である。一体何がそんなに己を掻き立てるのか!

 

 紅蓮はヤオザミを絶妙な距離感で引き連れると、ココヤシに向かった。そしてヤオザミがすぐ背後に迫った瞬間、ココヤシの幹を蹴り上げて真後ろにバク転したのだ。

 ──視界に映るヤオザミは紅蓮を見失っていた。反対に、紅蓮はヤオザミの背負った馬鹿でかい貝殻を見据えていた。

 サッと華麗に着地を決めた紅蓮は、ココナッツを取る際に使っていた安全ロープをまだ持っていたので、ヤオザミに引っ掛けてやった。

 

「お前もこけろやぁ!」

 

 安全ロープを持って全速力で駆け出したおかげで、ヤオザミをひっくり返すことに成功した! 背負っていた貝殻によって起き上がれないヤオザミの腹側に回って、紅蓮は何度も何度もナイフを突き立てた。いつしかヤオザミは息絶えていて、紅蓮は勝利を手にしていた。

 

 離れ小島の前までやってきた紅蓮は、バスタードを呼び寄せた。すると、案の定驚かれる。それもそのはずで、ひっくり返ったヤオザミの上に、沢山のココナッツが載っていたからだ!

 

「ど、どうしたんですかこれは! というか何があったんですか⁉」

「ココナッツを探してたらヤオザミに襲われた。だから逆に襲い返してやった!」

「それはすごい! もう立派な野蛮人(ワイルズ)ですね!」

「もちろん、良い意味で言ってるよな?」

 

 当然ですとも!と声を上げたバスタードに手伝ってもらって、紅蓮は離れ小島にヤオザミとココナッツを運び入れた。

 

「な、何だこれは⁉」紅蓮は叫び声を上げた。掘っ立て小屋の前に置かれた、大きくて平たい石テーブルに巨大な、それはもう三メートルはあろうかという巨大な魚が載っていたのだ!

 

「フッフッフ! こちらは僕が三十分もの格闘の末に釣り上げた、大食いマグロですよ!」

 

 人の頭など丸かじりに出来そうなほど大きい口、紅蓮の肩幅ほどもある頭部、丸々と太った魚雷型の胴体。なんとも恐ろしげな相貌をしているが、筋肉の詰まった胴体だけを見れば、まさしくマグロだった。

 右を見ればヤオザミとココナッツ。左を見れば大食いマグロ。どうやら、今日は盛大なパーティーが確定しているらしい。紅蓮は「早速解体しよう!」と叫び、満面の笑みを浮かべてヤオザミに飛びついた。

 

 大食いマグロの解体はバスタードに任せて、紅蓮はヤオザミをバラバラに解体していく。そこで入手できたのは──ゲーム風に言うなら──『とがった爪』と『盾蟹の小殻』だ。そして胴体の解体へ差し掛かった時、紅蓮は思わず声を上げた。

 

「むむ、これは『ザザミソ』か!」

 

 割った殻の中にはミソが詰まっていた。正直なところ、ミソとは内蔵部分であり、ヤオザミが普段何を食べているか謎なのでリスクが高いのだが……多少、挑戦してみてもいいかも知れない。

 紅蓮は巨大なハサミや脚に興奮したりしていたが、最も欲しかった部位の解体に成功した。それは、ヤオザミが背負っていた貝殻である。

 ありえないほどでかい。そして分厚くて重い。全く使い道が思い浮かばない! 紅蓮は、「もう少し小さくて軽かったら、巨大なバケツに使えたのに!」と悔しげに呟いた。

 

 ヤオザミの解体が終わった。食べられそうな身──ハサミや脚など──は殻ごと取っておいて、その次にココナッツの穴開けを始めた。しかし、あまり上手くできなかった。紅蓮は考え方を変えて、外皮をナイフで削ぎ落としていくことにした。

 何度もナイフを走らせて表面を削いでいくと、ついに果肉が現れたので、穴を開けた。中には液体が入っている。紅蓮はココナッツを傾けて飲んでみた。

 

 ──意外と薄味だ。でも甘味もあるし、酸味もある。現代日本にいた頃だったら好き好んで飲まないだろうけど、今は最高に美味しいと感じる。これが異世界生活のリアル……?

 

 ちょっぴりナイーブになりつつも、紅蓮は穴を広げて果肉を取り出してみた。プルプルとした質感だ。意を決して食べてみると……こちらは普通に美味しかった! デザートとして最適だろう。

 

 途中でココナッツをバスタードにあげたりしながら、解体作業やココナッツの加工──外皮を削って飲みやすくしておく──を終わらせた。その頃にはバスタードも大食いマグロを解体し終わっており、馬鹿でかいブロック肉が石テーブルに並んでいた。その両脇には頭と尾が鎮座している。

 

 日時計を確認してみると、おおよそ三時頃だった。未だに昼食を食べていなかったので、お腹が空いていた。紅蓮はバスタードと頷き合うと、盛大な昼食を開くことにした。

 

 殻付きのヤオザミの足やハサミを石焼き用テーブル──ただの平たい石!──に置き、その下にある焚き火に風を送って焼き上げる。出汁が出てきたぐらいで表裏をひっくり返し、再び火を入れた。

 丸太イスに腰掛けて、葉っぱで風を送る紅蓮はちらりとバスタードを見やった。真面目な顔をしてブロック肉を切り分けているバスタードは、次々と石焼き用テーブルで切り分けた肉を炙っていき、皿代わりの葉っぱへ移していた。その数は膨大で、既に山盛りとなっていた。

 

 やがて、昼食が完成した。既に日が傾きつつあるが、仕方がない──なんなら、夕食である。

 石テーブルに並べられた、数々のご馳走。焼きヤオザミとザザミソ、大食いマグロの炙り肉、そしてココナッツウォーターと、果肉とワイルドマンゴーのフルーツ盛り。途中、紅蓮は席を外して小川──離れ小島の近くにもあった──で水を組んだり、拠点に帰ってワイルドマンゴーやソープビーンズを持ってきたりしていた。

 何はともあれ、ようやく食事にありつける。紅蓮はバスタードと笑い合うと、盛大な宴を始めた。

 

 巨大な焼きヤオザミ──真っ赤なハサミを手に取り、紅蓮は露出した身にかぶりついた。プリプリとした食感に目を見開くが、ついでやってきた濃厚な旨味に()()言われぬ快感が込み上げてきて、声にならない悲鳴を上げた。

 

「くぅ~! 体に染み渡るぜぇ!」

 

 少量振り掛けた塩のおかげでいくらでも食べられそうだったが、一旦落ち着いて、大食いマグロの炙り肉にも手をつけることにした。

 表面を炙られたマグロ肉はそぎ切りにされて、まるで炙りの刺し身のようになっていた。紅蓮は塩をまぶしては手で掴み、口の中に放り込んだ。

 非常に柔らかい牛肉かと思った。それほどまでにしっとりとした食感があって、炙られたおかげもあるのか、旨味がこれでもかと凝縮されていた。ここまで美味しいのは初めてかも、と思えるくらいには素晴らしい出来だった。

 

「んますぎるぅ!」

 

 紅蓮は手が止まらなかった。喉が乾けばココナッツウォーターで喉を潤して、次々と料理に手を付けていく。ザザミソも懸念していた通り、とはいかずに、極上の旨味成分に満ち溢れていて、非常に美味だった。最後にココナッツの果肉とワイルドマンゴーのフルーツ盛りを食べて、(えん)()()()()といったところで、お開きとなった。

 

 星空の浮かぶ空の下で、残ったマグロ肉に塩をまぶして葉っぱに包んだり、焚き火の材料となる小枝を集めたりと、色んな作業をしていた。そして一段落ついたところで、紅蓮はバスタード共に物静かな海岸で夜空を見上げていた。

 ざざん、ざざん、と波が打ち寄せる中、涼やかな夜風が頬を撫でる。焚き火からパチパチと弾ける音がして、暖かな光が紅蓮とバスタードの横顔を照らしていた。

 

「ああ、そういえば」バスタードが言った。「一昨日貰った暫定アオキノコの欠片、普通に食べれましたよ!」

「そうなのか。なら、また採取してもいいかもな。今度は調合に挑戦してみてもいいかも知れない」

「それはいいアイデアですね!」

 

 すぐに会話が途切れて、心地良い静寂が訪れる。だが、紅蓮が口を開いた。

 

「今日はオレもここで寝るからな」

「そのためにアレを作ってたんですね」

 

 掘っ立て小屋の隣には、手作り感の溢れた三角テントがあった。屋根と寝床は葉っぱで作られていて、交差させてある柱は当然の如く木製だ。少し狭いが、寝る分には申し分ないだろう。

 

「もう寝る」

「分かりました。おやすみなさい、紅蓮さん!」

「おやすみ」

 

 バスタードに返事をした紅蓮は、疲れた体に鞭を打って三角テントに入っていった。そして寝転がると、数分もしないうちに(まぶた)が降りてくる。明日は何をしようか、なんて考えていたが、すぐに霧散してしまっていたのだ。

 




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