──暗い闇の中をモビルスーツで彷徨うヒメノ。
どこだここ・・?なんで私宇宙にいるんだ・・
ヒメノはコックピットに座っていることに気づく。
・・・・これホワイトドールじゃない!しかも手が勝手に動いてる!キモ!何これ⁉︎夢⁉︎
パイロットの息遣いだけがコックピット内に響き渡る。
「来る・・!もう絶対にあんなことはしない!絶対にだ!俺ならやれる!」
・・何言ってんだコイツ?なんかビビってる・・?怖いのか?・・・・まあそりゃそうか・・私も怖いし・・・・
「行く!」
パイロットはアクセルをグッと踏み込みレバーを引く。
「なんだあのモビルスーツ⁉︎こっち来るぞ‼︎」
・・あれ・・零式じゃん・・なんで零式に襲いかかってんのさ私・・私じゃないか。誰なんだコイツ・・
モビルスーツは零式の小隊に向かって突っ込んで行く。
謎のパイロットは強制回線をオンにして喋りかける。
「そこの連邦兵士達につぐ!今から貴公らを撃沈する。無駄な抵抗をしなければ機体破損だけで済む!抵抗するのなら・・」
・・何言ってんだコイツ・・そのセリフを吐かれて抵抗しない人なんかアニメにもいないぞ・・バカなのか?・・
「全機!迎撃体制‼︎」
・・・・だよね普通。おとなしくやられると思ったのかな・・
「人の話を聞かない奴ら!」
・・いや普通こうなるだろ!何を想像してたんだよお前は‼︎バカか⁉︎・・・・なんかすごい聞き覚えのある声なんだよなぁ・・
「ファンネルッ‼︎」
パイロットが叫ぶと同時に黒い塊達が自身の周りを飛び去っていった。
「今度こそ!絶対に外さない‼︎二度と人殺しなんてしてたまるかぁ‼︎」
黒い塊達からビーム砲が発射され零式の頭部やランドセルを見事に撃ち抜いた。
一瞬の決着。
全ての零式は行動不能となった。
・・すげえ・・・・何これ・・何が起きたの⁉︎
「はぁっ!はぁっ!・・ふぅ〜・・はぁ〜・・よし・・全員生きてる・・やれた・・ははっ!やったぞ・・」
・・人が生きてて喜んでる?・・気持ちはわかるけどますます訳わかんないなコイツ・・何者・・?・・この声・・ヴェン?・・
「‼︎」
ヒメノが目を覚ますと群雲の自室のベッドだった。
「・・夢?・・だよねやっぱり・・うわ〜めっちゃリアルだったな〜」
シェルフのジッパーを下ろし腕を上に伸ばすヒメノ。
連絡用インターホンが鳴る。
「ヒメノ!マルコだ。起きてるか?」
「ん〜はい・・」
応答ボタンを押して返事するヒメノ。
「うわ近っ!ああ・・おはよう。このあと作戦会議室で今後の打ち合わせするから準備できたら集合してくれ。」
「ん〜作戦会議・・!・・了解!」
なんだかワクワクするワードに目が覚めるヒメノ。
超特急で準備を終えて作戦会議室へ向かった。
──正直ガッカリである。
大型モニター付き教壇を中心に椅子が無数に並べられた空間。
まさに講義室そのものであった。
・・この艦こんな人いたっけ?男ばっかじゃん。
壇上端にはイワオ艦長が座っている。その反対側にマルコが立っている。
「みんな集まったようだから本艦の今後の方針について説明する。まず本艦は先の謎のモビルスーツ襲撃もあって零式の強化装備をすることにした。ホワイトドールの改修もあるし本日もここに滞在し明日出発する。」
室内が少しざわつく。マルコが続ける。
「まず昨日の謎の敵機だが型式はG-838と記載があった。データベースにはない機体だ。奴らは以前から繰り返しモビルスーツを盗掘、運用していたようだ。」
・・そうだ昨日のパイロット!
「捕虜は⁉︎」
ヒメノが口を開く。
マルコが首を振りながら答える。
「前の捕虜と一緒で何言ってるかサッパリわからん。拉致被害者についても皆口を割らない。というより末端すぎて知らないと言った感じだった。」
ヒメノは落胆する。
「まあまず、皆も勘付いていると思うがエリュシオン首領だが、奴は偽名だろう。所詮はその名を語るテロリスト集団だ。」
「・・?なんで偽名ってわかるの?」
「?・・あ〜、そうか、まあ新入りも入ったことだし一旦皆もおさらいしておこうか。」
マルコが前置きをして続ける。
「カストル、宇宙における大戦争の話は知っているか?」
!・・なんだ急に授業みたいに⁉︎・・あれだ!あ〜・・
「400年くらい前の人類最初で最大の宇宙戦争のこと・・?」
「そうだ!このようにカストルでも知っているあの大戦!」
・・・・あれ!今ナチュラルにバカにしなかったかコイツ!
「人類が宇宙に進出して100年余りの頃、地球連邦軍と一部のスペースノイド集団との大戦争。そのスペースノイド側の中心人物が『アクィラ・アードラー』だ。」
「!」
「彼は連邦軍のエースパイロットだったそうだが政府に対し反乱を起こし大戦にまで発展した。」
「・・え・・じゃあ今のテロのボスって超ジジイじゃん!」
「真面目な話をしてるんだが・・」
真面目に話をしたんだが・・
「・・うん。まあそこで奴らに対抗するために連邦側が開発した新型モビルスーツがホワイトドールということだ。」
・・え・・あのホワイトドール400年前のなの⁉︎
口を開きかけたヒメノにマルコがしかめっ面で首を振る。
なんだその態度。まだ何も言ってない。
「人類最初のホワイトドール『
画面にホワイトドールと女性の姿が映し出された。
ずいぶん古くボケている箇所もあるが姿はハッキリ確認できる。
・・あ!教科書に載ってたホワイトドールじゃん!すげえ!
ていうかパイロット女の人なの?めちゃくちゃ美人!かっこいい〜!
「まあ彼女は大戦後消息不明。機体も何者かに強奪されている。
一つ気になるのは、この400年の間で連邦の兵士が数名行方不明になっていることだ。皆優秀な戦績を残している者ばかり、しかも記録によると行方不明になる時期に決まって大型のホワイトドールが現れていた。という記録が残っている。」
何それ。急にオカルトチックな話になってきたな。
・・なんだその目は!まだ何も言ってない!
「普通に考えて何百年も生きている人間なんて考えられないが、過去の人物を語るテロリストがいる以上無視はできない。プロパガンダであれなんであれ、その名と意思は確実に広がっている結果が奴らだ。」
・・・・戦争か・・昔から人間って変わらないんだな・・人と人が殺し合うなんて・・ヴェン大丈夫かな・・ちゃんと生きてるよね・・
「まあしかし盗掘して機体を補充するような奴らだから新規開発能力に乏しい可能性が高い。だがなんにせよ正体不明のモビルスーツ達ということは変わらない。そのための強化改修でもある!」
マルコは続ける。
「皆も今現在戦争が始まっている自覚を持ち各自警戒を怠るな!
詳細不明の虹色の巨石は実際現れたが奴らの讒言に気を取られず任務を全うして欲しい!」
イワオ艦長がやっと口を開いた。
「皆・・必ず生きて帰ってこい・・頼む・・・・!」
皆が立ち上がり敬礼する。
ヒメノも釣られて立ち上がり敬礼した。
・・生きて・・帰ってきてよ・・ヴェン!
しばらくしてブリーフィングも終わり各自解散になった一行。
マルコがリリアとヒメノを呼び止めた。
「ホワイトドールの改修が終わったそうだ。もう格納庫に搬入されたそうだから見にいこう。装備の説明もあるらしい。」
・・新装備!昨日急いでて整備員の人に怒鳴っちゃったからな〜・・いたら気まずいな〜・・
三人はモビルスーツ格納庫に向かった。
昨日ヒメノに怒鳴られた整備員が担当として機体の説明をする。
気まずさで話半分なヒメノ
「えー昨日はパイロットの方に怒鳴られて説明できなかったのですが、射撃装備は最小限にとどめ、近接格闘及び機動性向上の整備を施しました。」
・・根に持ってるな〜・・気まずいな〜
「怒鳴ったのか?」
「怒鳴ったの?」
「いや・・あの〜・・ごめんなさい・・テンパってて・・」
ヒメノは頭を下げる。
「まあ胸ぐら掴まれコックピットから摘み出された挙句蹴り落とされ肋骨にヒビを入れられるよりマシじゃないですか!怪我がなくて何より!」
コイツ!根に持ってやがる!
「?」
「ハイ!無駄話は終わり!装備の説明!」
リリアの一喝で話は戻る。
「はい。まず昨日カストルさんがすでに使用したと思いますが、指先と手首、肘部に小型ビームサーベルを搭載しています。手首の物は単発ビームガンとしても併用可能です。加えて膝にも同様のサーベル、そして足首から脛部分にビームレールを搭載しています。これは切り裂くというより溶かす打撃に近いですね。カストルさんの空手家としての身体能力やVRMSの映像記録から近接格闘をメインとした武装に変更しています。ランドセルには以前と同様のサーベル1対と小型ライフルが予備で装備されています。」
・・早口でいっぱい話された・・・・わけわかんねぇ。
「・・うん。わかった!ありがとう!駆動系は?」
全然わかってないだろお前・・
「はい。関節部など、これまでサイコフレームを使用していた箇所の運用データを解析した結果、使用範囲を拡大するのが最も効果的という結論に至りました。以前より、より直感的で滑らかな操縦が可能になると思います。」
・・無理だ・・わからん・・
「サイコフレームって何?」
「あー・・っとだな・・」
「サイコフレームっていうのは、脳波を受信するサイコミュシステムを内蔵したチップをナノサイズまで縮小して金属に直接混ぜて作られた物よ。」
「・・ん〜それと駆動の何が関係あるの?」
「サイコミュっていうのはパイロットの脳波を受信して機体がそれをトレースすることで操縦を補助をするシステムなの。」
「?」
「えぇと・・まあざっくり言うと。頭で考えたイメージで機体を動かせるってことよ!」
「!ああっ!アレか!ボルジャーノンの時の!」
咄嗟にシールド構えたやつだ!
!
「ていうかアレか!ヴェンがVRMSで使ってたビット!」
「そうね。パイロットの能力が高ければビット等の遠隔火器も扱えるわ。」
ヒメノも一度試したが頭痛と吐き気が酷く一度きりでやめてしまった。
・・ヴェン意外とすごかったのか・・・・
「そういえばサイコフレームもオーパーツだったな。」
「え!」
「月の工場が出来始めた頃に突然宇宙から飛んできたそうだ。こんくらいのT字の物体でその時の写真も残ってる。虹色にぼんやり光ってて・・」
「何それすげぇ!宇宙人の技術か⁉︎」
「・・んーそれはわからんがそれを解析し技術転換運用して作られたのがホワイトドール黎明だそうだ。」
「その後突然消えたそうよ。」
リリアがニヤニヤしながら話す。
「マジで!すげぇ!・・ていうかそんなすごい技術なら零式とかにバンバン使えばいいじゃん。」
「サイコミュ技術はヒメノみたいに特殊な脳波の持ち主じゃないと使えないんだ。ああ今のは別に馬鹿にしたわけじゃないぞ。」
・・・・!てことはいつもはわざとってことかこの野郎‼︎
「まあホワイトドールほどじゃないけど駆動系に多少使用する機体を数体整備することになったの。」
「なるほどー」
よくわからんがわかった。
「ていうか、昔のホワイトドールは黎明って名前ついてたのにこれはついてないの?」
「そうだな!確かに名前はあった方がいい気がする!」
「でしょ!かっこいいのがいいなー!どうしようかなー!」
「君の通り名白い閃光から取って『
「かっこいい名前って言ったのに」
「かっこいい名前を言ったんだが」
そもそもその通り名私が言い出したんじゃなくてメディアが勝手につけた名前!
「・・まあシンプルでわかりやすくていいじゃない?ヒメノがこれに乗ってる時本当に白い閃光!って感じだったし」
「リリアさんまで・・わかったよもう!」
「さあ!名前も付いたことだしいきなり実戦というのもなんだからテスト飛行してくるといい!」
「無理矢理締めてない?」
「ない!さあパイロットスーツに着替えてこい!」
「・・了解っ!」
去っていくヒメノを見ながらリリアが口を開く。
「マルコ・・やっぱりヒメノは・・」
「ああ・・先の戦闘での直感、先読み、サイコミュ受信パックの記録データ・・あの子は間違いなく本物の『ニュータイプ』と呼ばれる人種だ・・」
「なら!」
「そうだ。俺はこのまま引き続き政府上層部のデータに潜って『証拠』を掴む。それさえあれば奴らがどう来るかもある程度対策が取れる。リリアはあの子から目を離さないようにしてくれ。」
「・・わかった!・・」
2人は離れて小さくなったヒメノを見つめていた──