機動戦士ガンダム 虹色の星空   作:ミコユラ

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第10話 黒い花びら

 

──月を出発した巡回監視艦「群雲」は突如救難信号を傍受した。

 

「どこから発信されたの?」

リリア少尉が聞く。

「近くのデブリ地帯からだ、別の艦所属の連邦兵士のようだが・・」

マルコは不審な顔をしている。

「今その艦の出撃履歴を見たんだが6機だ。救難信号も6人、全員生存している。」

 

「?みんな生きてるならいいことじゃん?」

「そうなんだが隊全員が生きて救難信号を出すこと自体が不自然だ。機体故障にしてもせいぜい1、2機くらいだろ?全員動けない狀況が変だ。」

「敵にやられた?」

「それならますます全員やられて生きてるのがおかしい。」

 

その状況に既視感を覚えるヒメノ。

・・夢のあいつと一緒だ・・・・全員殺さず機体だけ破壊してた・・

 

「ヒメノ?大丈夫?顔真っ青よ・・」

「え?ううん!大丈夫!早く救助したげないと!」

「・・状況が状況なだけに罠の可能性も警戒しながら救助に向かう。」

 

群雲一行が向かった先は月とも地球とも離れた小惑星の密集地帯。あたり一面岩の塊まみれである。

そこからでもアクシズと呼ばれる虹色の巨石はハッキリと確認できた。

 

ヒメノ達はモビルスーツのコックピットに入り格納庫で待機している。

「連邦軍所属と見られる人影を目視で確認しました。救助出てください!」

零式1体が救助に出る。

大きな岩の上に6人が固まって光信号を出していた。

 

宇宙の闇に浮かぶ岩達の間に零式の残骸が漂っていた。

 

 

隊員達を収容した群雲はひとまず小惑星帯を出る。

「何があったか聞かせてくれますか?」

マルコは年長者と見られる隊員達に問う。

 

「・・何が起きたか分からなかった・・・・一瞬だったんだ・・」

隊員は呆けている。

別の隊員が口を開く。

「黒い花びらが・・光ったんだ・・黒く光った・・・・気づいたらやられていた・・」

「あんなのがいるなんて‼︎あいつら化け物だ‼︎勝てるわけないっ‼︎」

 

皆何か恐ろしいものに出会ったかのように怯えている。

 

・・やっぱり・・あの夢と一緒だ・・・・黒い花びら・・ヴェン・・

ヒメノの不安はますます強く重くなっていく。

 

「ヒメノ・・?本当に大丈夫?どうしたの今日は・・」

「夢見たんだ・・昨日・・知らないモビルスーツに乗って、黒い花びらを操ってた、零式達を一瞬で倒した・・」

 

マルコがやけに真剣な顔で聞く。

「それは君がやったのか?それとも別のやつか?」

「誰かの視点で見てただけだけど・・」

「知ってるやつなのか?」

ヒメノは首を振った。

 

ヴェンかもしれないなんて言えない・・

 

突如全艦アナウンスが入る。

 

「未確認モビルスーツの信号をキャッチしました!すごいスピードでこちらへ向かっています!敵は1機!全艦戦闘体制!」

 

皆が持ち場に急ぐ。

「モビルスーツ部隊全機出動準備!急げ!」

マルコが全艦にアナウンスする。

 

・・・・もし本当にヴェンだったら・・戦うの?・・ヴェンと?

 

「ヒメノ!何してる!急いで格納庫に行け!」

「は・・ハイ!」

 

 

白閃のコックピットに乗り出撃の順番を待つヒメノ。

1人、1人と出撃するにつれて鼓動が激しくなる。

ヒメノの番になった。

 

「・・そうと決まってわけじゃない!」

目を開き気合を入れる。

「ヒメノ・カストル!白閃出ます‼︎」

 

ハッキリと声をあげ白い光の尾を引きながら白閃が宇宙の暗闇に飛び出して行った。

 

「ヒメノ!敵の攻撃方法が不明だ!前に出過ぎるな!」

「了解!」

 

暗闇の向こうで何かが光った。

「敵機を目視で確認!」

誰かがそう叫ぶ。

 

その時モビルスーツ部隊に謎の通信が入った。

「強制通信⁉︎」

 

「そこの連邦部隊につぐ!今から貴公らを撃沈する。投降し機体と艦を放棄すれば手荒な真似はしない!でなければ命の保障はできない!」

 

マルコが口を開く。

「ふざけてるのか!そんなこと言われて投降するやつ映画でもいないぞ!」

 

うお!発想が被った!いやだこいつと一緒なの!

・・でも・・この声やっぱり・・!

 

「全機迎撃体制!散れ‼︎」

 

強制回線が繋がったまま黒いモビルスーツのパイロットがぼやく。

「毎度こうだっ!分からずやどもっ‼︎」

 

その作戦成功したことあるのかコイツは‼︎このバカさ加減もアイツそっくりだな!ちくしょう!

 

零式部隊が四方に散り射撃を開始する。

「ファンネル‼︎」

黒いモビルスーツの背面から黒い花びらが散った。

花びらは宇宙をヒラリと舞うように、そして急にあたりを猛スピードで飛び回り始めた。

 

花びらの先から黒紫の光線が伸び零式達の手足を貫き切り裂いていく。

 

「なんだあの武器は⁉︎」

「サイコミュビットだ!焦るな‼︎敵は1機だ!ビットを確実に潰していけばこちらは数の利がある‼︎」

 

しかし花びらビットの動きが早くこちらの攻撃は当たらない。

 

「見える!あのビットの動きのクセ!やっぱり‼︎」

今まで何度も見てきた動きだった。

アイツのビットの攻めには決まった軌道から入るクセがある。

白閃は白い光の尾を引きながらビットから発せられる光線をかわしていく。

 

「早い!アレが連邦の闇!『ガンダム』!」

黒いモビルスーツのパイロットが叫ぶ

「白い悪魔がぁ‼︎ヒメノを返せ‼︎」

 

・・今私の名前呼んだ‼︎聞き間違いじゃない‼︎

 

白閃が黒いモビルスーツに貫手を仕掛ける刹那、ヒメノの周りが白い光に包まれた。

 

コックピットじゃない光の空間、ヒメノは立っていた。

向こうにぼんやりと人影が見える。

 

人影がハッキリしてくるにつれて相手がパイロットスーツを着ていることがわかる。

そしてヘルメットが薄くぼやけた時、幼い頃からよく見知った顔が現れた。

 

白閃と黒いモビルスーツはお互い寸でのところで攻撃を止める。

 

「ヴェン⁉︎ヴェンなのそこに乗ってるの⁉︎」

光の空間からいつものコックピットに戻ったヒメノは叫ぶ。

 

「ヒメノなのか⁉︎なぜお前がそれに乗っている!」

ヴェンもヒメノに気付き叫んだ。

 

「あんたこそなんでそんなモビルスーツに乗ってるの⁉︎

あいつらあたし達のコロニーで暴れたやつの仲間でしょ⁉︎

なんでそんな奴らの味方してるのさ⁉︎」

 

・・なんで・・・

 

「連邦の奴らは宇宙を支配し滅ぼすつもりだ!

お前が乗っているのは白い悪魔だぞ!

そこから降りてこっちへ来い‼︎」

 

・・なんでそんなおかしくなっちゃったの⁉︎

 

黒蓮のコックピットハッチが開きヴェンが這い出て手を伸ばす。

白閃も同じようにハッチを開けてヒメノが出てきた。

 

「わけわかんないこと言ってないであんたこそこっちきなさいよ‼︎あんなパーチクリンなこと言ってるやつらなんてほっとけって‼︎」

 

「ヒメノ!お前は騙されてる!あの本に書いてあった通りだ!

虹色の巨石が現れたとき白い悪魔が世界を滅ぼす!

お前はそんなものに乗っていちゃいけない!早く来い‼︎」

 

なぜここまで話が通じないようになってしまったのかが理解できない。

ヒメノは混乱の最中にいた。

 

 

「ヒメノ‼︎敵と戯れるなっ‼︎」

マルコの零式が駆けてくる。

黒いモビルスーツに向かいビームライフルを乱射するが黒い花びらはすかさず反応し黒い光線を発し全てのビームを撃ち落とす。

 

ヴェンはハッチを閉じて後ろにゆっくりと下がる。

「ヒメノ、お前は思い違いをしている!騙されているんだ!頭を冷やせ‼︎」

そう言いながら飛び去り宇宙の暗闇に溶けていった。

 

ヒメノは届かない手を引き納め固く握りしめる

「やっと会えたってのに!なんだってんだよっ‼︎」

 

悲しさと悔しさと怒りが同時に溢れコックピットモニターに全力で拳をぶつけた。

思うように力が入らずさらに怒りが増すだけだった。

 

 

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