──廊下を静かに歩く男がいる。アクィラ・アードラーだ。
彼は廊下に転がっている2人の兵士に目をやると少し微笑んだ。
アクィラはその先を走る少年に声をかける。
「意外だな・・イーの部下はそこそこ鍛えられているのだが・・」
声をかけられた少年。ヴェンは振り向いて驚きの表情を見せる。
「あんたか・・こんな奴らヒメノと比べたらザコ同然だ・・」
「・・フフ・・・・ハハハッ!・・」
「⁉︎何がおかしい⁉︎」
笑い続けるアクィラに不気味さを感じたヴェンは身構える。
「・・いや・・すまない・・昔を思い出してね・・君も苦労人だな・・わかるよ・・・・」
「あんたが俺の何をわかるってんだ⁉︎」
「・・君は私とよく似ている・・私も昔よく殴られたからね・・おかげで頑丈になったよ・・ハハハッ・・・・」
まだ笑い続ける男にヴェンは詰め寄り襲い掛かろうとする。
「まあ待て・・君を止めるために来たんじゃない・・」
「あ⁉︎じゃあなんだってんだ‼︎俺はヒメノのところへ行く‼︎」
「・・ああ・・行くといい・・どうせ止めても行くだろ?今みたいに・・」
アクィラの言葉にさらに身構えるヴェン。
「そう警戒しなくていい・・ただ一つ・・私は君を騙してはいないし騙すつもりもない・・」
「何言ってんだ⁉︎ずっと騙してただろ‼︎」
「それは誤解だ・・私が話したことは全て事実・・そしてこれから起こることもな・・」
「あんた一体何がしたいんだ⁉︎ヒメノをどうするつもりだ⁉︎」
「私は彼女をどうこうするつもりはないよ・・元々君たちはイレギュラーだ・・ただ面白そうだなと思ってね・・」
「なんの話だ⁉︎」
「まあそう興奮するなヴェン・・行くがいい・・黒蓮も整備済みだ・・」
「・・・・」
「そう警戒するなと言っただろう?・・ただ心配なのだ・・君が行くことで彼女と君に危険が及ぶとね・・」
「そうやってまた騙すのか⁉︎」
「話しを聞かないな君は・・まあその愚直さが君のいいところでもあるか・・」
「このっ・・!」
「何度も言うが君を騙すつもりはない。行くがいい・・次に会う時は戦うことになるかもしれないがね・・達者でな・・ヴェン・・」
そう言いながら男は去っていった。
ヴェンは不審に思いながらも黒蓮の元に走り出した。
「・・青いな・・・・さあ・・君は彼女をどうするつもりだろうねぇ・・ライラ・・」
男は不気味に独り言を呟いた──
──独房を出た群雲隊員達はノーマルスーツを着用し先程の発艦デッキに戻ってきた。
既に外では戦闘が始まっているようで人気もなければあの
「全員群雲に入れ!パイロットは俺に続いてモビルスーツデッキへ‼︎」
マルコが指示を出し皆が従いそれぞれ任につく。
ヒメノはマルコ達に続いてモビルスーツデッキへ、まだ全てのモビルスーツは凍結処理はされていなかったことに安堵する一同。
全員がそれぞれの機体に乗り込み出撃準備をする。
「ヒメノ‼︎まず俺たちで龍雲の壁をぶち破るぞ‼︎」
は⁉︎いきなり何言い出すんだこのバカは‼︎
「ぶち破るぞって⁉︎何言ってんの⁉︎」
「このままここにいたって出られない!ドサクサで敵の攻撃ってことにすればいいだろ‼︎」
どうしたんだコイツさっきから!殴られてパーになったか⁉︎
「どうした⁉︎ビビってるのか?」
「なっ!・・誰に向かって‼︎」
「ハハハッ!その意気だ‼︎行くぞ‼︎」
「はっ・・お・・押忍‼︎」
零式と白閃が同時にビームライフルを発砲し龍雲の装甲を打ち破る。
同時に警報が鳴り響く。
「付近に敵影無し!群雲!発進しろ‼︎」
龍雲の壁に開いた穴から群雲が飛び出して行く。
「この後どうすんのさ⁉︎」
「この混乱に乗じて戦線離脱だ!とにかくここから離れるぞ!敵は中将達がどうにかするだろ!まずはヴェン・デウケースの消息の手掛かりを掴む!」
「マジでどうしたのアン・・マルコさん!」
今まで規律に準じていた軍人とは思えないほど自由奔放な言動の数々にヒメノは戸惑いを隠せない。
本当に頭のネジが外れてしまったのでは無いかと心配になる。
「いや〜!さっきのヒメノの突き見てたらさ!なんか今までのモヤモヤが晴れた気がするんだ!ヒメノに感謝だな!ハッハッハ‼︎」
「今は戦闘中です!マルコ少尉‼︎」
「ああ!リリア!報告書は君に任せた!得意だろ?」
「ふざけないでよ‼︎アンタのせいってしっかり書くからね‼︎」
リリアさんも・・今戦闘中なんだけど・・
白閃と零式部隊が群雲を誘導して戦線から離れていく。
そこでヒメノは違和感を覚えた。
「・・!・・あそこで戦ってるやつら・・アイツの感じがいない!」
「アイツ・・?」
「アイツ!あのイケメンクソ野郎‼︎アイツのいやな感じがあそこに無い!馬鹿野郎の馬鹿っぽい感じしかしない‼︎」
「何言ってるかさっぱりわからん‼︎」
ヒメノの予感は当たった。
群雲前方から1機。「イー・ファルコ」が駆る黒い巨大なモビルスーツが迫ってきたのだ。
「逃げても無駄だ‼︎ガンダム‼︎」
「うわっ‼︎来た‼︎」
「なんだあれは!でかい!群雲‼︎旋回して逃げろ‼︎」
「逃すか‼︎行けっ!ファンネル‼︎」
イーがそう叫ぶと共に機体背面から無数の小型ビットが散開しこちらに向かってくる。
「マズイ!サイコミュビットだ‼︎こないだのやつより多いぞ‼︎」
・・クソッ!この数かわし切れるか⁉︎・・いやそれよりみんなもいる‼︎どうする‼︎ヤバい!
その時黒い光の散弾がビット達を撃ち抜いていった。
「何⁉︎新手⁉︎」
「いや‼︎今の感じ!援軍か⁉︎」
イーはファンネルを撃ち抜いた黒い散弾に見覚えがあった。
「今のは・・!貴様‼︎何の真似だ‼︎デウケース‼︎」
・・‼︎今デウケースって言った⁉︎・・ヴェン⁉︎
散弾が来た方に目をやると黒蓮が長距離移動ユニットを乗り捨てながらこちらに駆けてくる。
「ファンネル‼︎」
黒蓮から黒い花びらのようなビットが舞い飛び散る。
イーの黒く巨大なモビルスーツに向かって一斉にビームを放ち始めた。
「愚かな‼︎そんなものが効くと思うのか小僧‼︎」
イーのモビルスーツに全てのビームが撃ち込まれそして反射し霧散していく。
「何っ⁉︎何が起こった⁉︎」
ヴェンは何が起こったかわからず困惑する。
「Iフィールドか⁉︎」
「何それ⁉︎バリア⁉︎」
「ん〜!まあみたいなもんだ‼︎」
「何だその雑な感じ!・・じゃないっ!ヴェン⁉︎ヴェンなのっ⁉︎」
ヒメノは黒蓮に向かい叫ぶ。
「そうだ!今そう言う場合じゃないからみんなどっか行け‼︎」
「なっ‼︎・・いきなり出てきていきなりいなくなってまたいきなり出てきたやつが何言ってんだっ‼︎」
「だから今そう言ってる場合じゃねぇっつってんだろ‼︎」
「うるせぇっ‼︎勝手に仕切ってんじゃねぇぞダボスケ‼︎マルコ!群雲連れて離れて‼︎」
「何言ってんだ!2人だけでどうにかなるわけないだろ‼︎」
「「うるせぇ‼︎早く行けってんだ‼︎」」
「・・っ‼︎」
「マルコ‼︎今は二人に任せて群雲を‼︎艦が沈めば終わりよ‼︎」
「・・クソッ‼︎ヒメノ‼︎ヴェン・デウケース‼︎死ぬな‼︎」
「逃すわけがないだろうっ‼︎間抜けども‼︎」
イーのモビルスーツの胸部からビームの散弾が飛ぶ。
「ファンネル‼︎」
ヴェンの花びらのビットが集合し1輪の花冠のような形状を作った。
イーが放ったビーム散弾が全て花冠に吸収されるように消えていく。
「うわっ‼︎何それ超便利じゃん‼︎よこせよ!」
「訳わかんねぇこと言ってないでお前も行け‼︎」
「だから仕切んなっつんだよ‼︎」
「クソ餓鬼どもがっ‼︎ふざけるなぁっ‼︎」
イーは二人に突撃していく。
「うわっ‼︎来た‼︎・・クソッ!上等だぁっ‼︎アイツ倒したら次はアンタだかんなっ‼︎」
「何でだ‼︎助けに来たのにっ‼︎」
「頼んでねぇーだろっ‼︎」
白閃が白い光の尾を引きながら巨大なモビルスーツに向かっていく。
「自ら死にに来るかっ‼︎小娘ぇっ‼︎」
イーはビームサーベルを抜く。
白閃も背中のサーベルを抜いた。
双方の光刃がぶつかり激しく光を上げる。
「羽虫如きがぁ‼︎落ちろっ‼︎」
「人を虫呼ばわりしやがってイケメン風情がぁ‼︎」
白閃は脛部を光らせイーの機体の足に蹴り込んだ。
「なっ‼︎にぃ!貴様ぁ‼︎」
黒いモビルスーツの左足が溶け落ちる。
「どぉらぁぁぁっ‼︎‼︎」
白閃は手首袖下から短い光刃を出し敵機の左腕の付け根に打ち込んだ。
巨大な翼のような部分ごと左腕が落ちる。
「クソッ‼︎これがガンダム⁉︎・・
「落ちろぉっ‼︎」
ヒメノが追い討ちをかけようとした時であった。
「小娘がっ‼︎爪が甘い‼︎」
機体背後からビットが数機飛び出してきた。
「なっ‼︎まだいたのか‼︎」
・・‼︎ヤバいっ‼︎・・・・この距離!・・避けきれない‼︎
ビットの砲身が光る。
「本当に爪が甘いっ‼︎」
ヴェンの花びらビットが短い光刃を出しながらイーのビットに突撃し、切り裂いた。
「‼︎デウケース!チョロチョロと目障りな奴っ‼︎」
「イ〜〜コッ・・さぁ〜んッ‼︎たぁすけに来たぜぇ〜いっ‼︎」
突然間の抜けた声で叫びながら異形の巨体が飛んできた。
「何あれ⁉︎モビルスーツ⁉︎」
「アル・ミザンっ‼︎」
イー・ファルコが叫ぶ
「貴様‼︎向こうはどうした‼︎」
「弱すぎてつまんねぇ〜感じだったからみんなに任せてきたぜ‼︎」
「ふざけるなっ‼︎真面目にやれっ‼︎」
「だってピンチでしょ?どう考えてもさ!」
「お前の助けなぞ要らんっ‼︎」
「いるでしょ?左ないじゃん。」
「ぐっ・・この・・!」
異形の巨体は白閃と黒蓮に向き直る。
「しかもこっちの方がチョ〜面白そう!」
「こいつ・・馬鹿野郎の方だ・・・・こんなの動かしてたなんて・・」
「ひっでぇ〜!バカって言われた〜。ハハッ!」
アルの機体が構える。
「アイツが来る前にもうひと遊びだっ‼︎」
巨体の背部から巨大な塊が二つ飛び出しそこから無数のビットが拡散して二人に襲いかかる──