────ヒメノは知らない部屋に立っていた。
・・・あれ・・どこだここ・・・・・あ!声が・・またこれか⁉︎
ヒメノは声を出そうとしても声が出ない。
目の前にモヤが晴れるようにベッドが現れた。
そこに横たわっている学生服姿の少年に見覚えがある.
・・・ヴェン!何寝てんの⁉︎こんな時に‼︎私拐われちゃったんだよ⁉︎・・・あ〜・・やっぱり・・いつものやつだ・・クソッ!
ヒメノはヴェンを殴って起こそうとするも殴れない。
1人の男が部屋に入ってきた。
アクィラだ。見間違いようのない長髪を後ろで束ねたサングラスの男。
そのタイミングでヴェンが目覚める。
そして男に気がついたようだ。
「だっ・・誰だ⁉︎・・・どこだここは・・ヒメノ!・・・ヒメノは⁉︎」
「落ち着きたまえ少年・・・まず体の具合はどうだい?・・どこか痛むところは?・・・」
男は相変わらずの声色で話す。
・・コイツの声ホントに・・このバカが騙されるのわかるかも・・
「んなことはどうでもいいっ!ここどこだよ⁉︎爆発があったんだ‼︎ヒメノはどこだ⁉︎」
「すまない・・あの爆発は私の部下の者が起こしたものだ・・あのようなことになってしまい本当に申し訳ない・・・・」
ヴェンは飛び起きてアクィラの胸ぐらを掴んで叫ぶ。
「何⁉︎あんた何者なんだ⁉︎ヒメノは⁉︎俺たちのコロニーをどうした‼︎」
「コロニーは無事だ・・ただ我々は同志になってくれるだろう者を探していただけだ・・あのような事は私も望んでいなかった・・」
「ふざけんなっ‼︎ヒメノはどうしたって聞いてんだ‼︎」
「君といた少女は無事だ・・今は心配しなくていい・・本当だ・・」
「今はだと⁉︎何言ってんだ⁉︎わけわかんねぇこと言ってないで質問に答えろ‼︎どこだここは⁉︎」
怒り詰め寄るヴェンとは対照に男は静かに答えた。
「・・ここは地球圏から遠く離れた空域にあるコロニー『
ヴェンの表情が変わった。
「アクィラ・・聞いたことがある・・・・大昔の大戦起こした戦犯の名前だ・・ふざけてるのか⁉︎」
「・・ほぉ・・よく知っているな・・感心に・・ふざけてなどいないさ・・・・私がそのアクィラだ・・・・」
・・なんでコイツそんなこと・・・・あぁ・・そういえばコイツ歴史学年1位だもんな・・・・私聞いたことなかったわ・・・・クソッ!
ヒメノは何故かまたヴェンを殴ろうとするが当たらずすり抜けてしまった。
「大昔の人間が今生きてるわけないだろ‼︎」
「だが私アクィラ・アードラーは生きて現にここに立っている・・まあそこは順を追って説明するとしようか・・」
「説明って何のだ⁉︎ここが『
「無理だ・・帰ればいずれ君は命を落とすだろう・・」
ヴェンは胸ぐらを掴んだ手をゆっくりと離す。
「話を聞く気になってくれたかな?」
「・・どういうことだ!」
ヴェンは精一杯の警戒の眼差しを変えずに問う。
「まず私が君をここに連れてきた訳から話そう・・・・君はVRMSというゲームの強者として世に知られた存在になったね・・」
「ゲーマーだから拐ったのか⁉︎金儲けでもすんのか⁉︎」
・・いや流石にそれはないだろ・・もうちょっと考えようぜ・・・
アクィラは笑い出す。
ほら〜・・空気読めよ・・
「ハッハッハッ!それもいいな・・・いい商売になりそうだ・・だが残念ながら違う・・・」
「じゃあ何だ⁉︎」
「VRMSの開発元は知っているかな?」
「あ⁉︎大手ゲーム会社が医療メーカーとコロニー協会で協賛で作ったんだろ⁉︎それが何の関係がある⁉︎」
「まあ落ち着け・・・・それは表向きの話だ・・・実際は地球連邦政府が開発総指揮をとっている・・何故かわかるかな?」
「知るか!」
「有望なパイロットを発掘しスカウト候補とするためだよ・・実際にそこそこの数が連邦軍に入隊しているようだ・・」
「・・・」
お!空気読めてきたか!そうだ黙ってろダボスケ!
至極真面目に聞いていたヒメノはヴェンの横槍に我慢の限界だった。何回か殴ってみたが殴れなかった。
「そして近年になり新装備のアップデートがあったな・・・サイコミュシステム・・・そう、君が主戦力としてプレイしていたあの装備・・・実戦さながらに脳波を読み取り機体を動かすあのプログラムだが・・・・あれの開発元は知っているかな?」
「有志の開発者のベータ版をVRMSの公式が採用した物を正式リリースしたやつだろ?・・・」
「そのベータ版を流出させたのは連邦政府だよ・・」
「あ?何のために軍がそんなことを。」
「あのサイコミュシステムアプリだが・・・君以外で使用者はいたかな?・・」
「・・・!」
「そう・・・いないのだよ・・・いくら探してもな・・・皆頭痛や吐き気・・・ないし作動しない等・・・そんな物を採用し続けるのには訳がある・・」
・・たしかに私も吐き気と頭痛がひどくてやめた・・ヴェンケロッとサクサク使ってたけど・・・
「『ニュータイプ』を割り出すための隠れ蓑・・と言えばいいかな・・」
「何だニュータイプって⁉︎」
「人類が宇宙に出て500年と言われている・・その歴史の中でもごく少数だが・・宇宙に適応し脳に眠る潜在意識を開花させた者たちを指す言葉だ・・・」
「意味がわからん!分かりやすく説明しろ‼︎」
「ニュータイプ達の脳にはは特殊な感応波が発生する・・それを機械が読み取りモビルスーツの動きにトレースするのがサイコミュシステムだ・・・君が扱うビット達のようにね・・過去モビルスーツの実戦で扱う兵器によく用いられた物だよ・・」
・・・あ・・・マルコとリリアさんが言ってたやつだ・・・やっとわかった・・コイツの説明分かりやすいな・・・あれ!私もニュータイプ⁉︎・・・嘘・・・アレ悪口じゃなかったの⁉︎
「それと俺の拉致に何の関係がある⁉︎」
「連邦は遥か昔からニュータイプ達をまとめて葬ってきたからだよ・・・」
「何⁉︎何故連邦がそんなことを⁉︎」
・・さっきから同じ反応しかしてないじゃんヴェン・・・黙ってろよ・・
「人は自分と違う物を恐れる生き物だということかな・・・過去私の仲間も多くやられた・・そして私もな・・・」
男はそう言いながらサングラスを外した。
男の左目は白濁していて周りに傷がある。
「運良く弾が外れたからこの程度で逃げられた・・しかし死んだ者は帰ってはこない・・・」
「あんた・・本当に何者なんだ・・・」
「私も昔連邦に籍を置いていた・・・だが奴らは私の能力を危険視したのだろうな・・・だから処分しようとしたのだろう・・・」
「命からがら逃げ延びた私はこのコロニーにたどり着いた・・そして世界の全てを目の当たりにしたのだ・・・連邦がのさばれば世界は終わる・・だから政府に対し反乱を起こしたのだ・・・」
・・・話が急だな・・・何でそうなる・・・世界の真実って何だ・・
「話が急すぎて分からん!世界の真実って何だ‼︎俺と何の関係がある⁉︎」
被せてんじゃねぇ‼︎黙ってろクソがぁっ‼︎
ヒメノの回し蹴りはヴェンの頭部をすり抜ける。
「連邦は昔からニュータイプを兵器運用に都合よく利用し用が済めば危険分子として排除する組織・・・というところか・・VRMSにて君はその存在を世に知らしめてしまった・・」
ヴェンは固唾を飲んだ。
「いずれ君の元へ連邦政府から招待が来ただろうな・・・兵器として利用するために・・・」
「だがそうならないかもしれないじゃないか⁉︎」
「彼女はもう連邦軍に所属してしまったようだが・・・」
「⁉︎バカな‼︎ヒメノが⁉︎」
・・・あ!・・・やべぇ‼︎私のせいか⁉︎ヴェンが変になったの‼︎
「我々のモビルスーツが君たちのコロニーに非礼を働いた時・・・彼女は連邦のモビルスーツを強奪し相手を打ち破ったようだ・・・映像を見たが実に見事だ・・あの才能に目をつけた者が連邦にいたようでな・・・彼女は連邦軍に所属することを決めたようだよ・・・」
・・・マルコめ・・・アイツがちゃんとホワイトドール動かしてりゃこうならなかったんだ‼︎絶対アイツのせいだ‼︎私悪くない‼︎・・・よね・・・
「・・・そんな・・あのバカ・・・何で・・・」
「連邦の口車にうまく乗せられたのだろう・・・彼女の才能は今でこそ私も是非にと思うよ・・・このままではいずれ彼女の身が危ない・・」
嘘だ‼︎・・・ヴェンいなくなったから探すためだよ‼︎騙されないで・・・クソッ・・・こういうことかよ・・・
「そもそもだから何で俺をここに連れてきたんだ⁉︎話が見えないぞ‼︎今帰ればまだヒメノを説得して辞めさえられるかもしれない‼︎今すぐ帰せ‼︎」
「すまないができれば我々に協力して欲しい・・そのために保護させてもらったのだ・・・」
「何にだ⁉︎連邦に復讐でもすんのか⁉︎ふざけんな‼︎関係ねぇだろ‼︎」
「連邦が憎くないと言えば嘘になる・・だがそんな浅はかな事ではない・・・もし協力してくれるのならば彼女を連邦から救う力を与えよう・・・」
「・・⁉︎・・・・何だ・・・」
男は間を置いて口を開く。
「この世界を連邦の白い悪魔から救う事に・・だよ・・・」
「・・・‼︎白い・・・悪魔‼︎」
うわ!最後の大詰めっぽく最強ワードが来た‼︎悪徳営業マンめ‼︎
「・・・そう・・君の持つ本にも描かれている世界を滅ぼす白い悪魔・・あれは連邦政府が所有する実在兵器だ・・あの本に書かれている通り虹色の巨石、アクシズが現れた・・」
「あの虹色の石・・・アクシズ・・‼︎」
「そう・・君は見たはずだ・・・白い悪魔達を・・・あれはアクシズの記憶・・実際に起きた事だ・・」
「なっ!そんなわけないだろっ‼︎夢だあれは‼︎あんな事・・・‼︎人が宇宙に出てたった500年だぞ‼︎」
「・・・そうだな・・・あえて言うなら・・・『この世界』ではな・・」
「何を言っている・・本‼︎・・何でアンタがあの本知ってんだ⁉︎」
「知りたければ少し付き合ってもらいたいところがある・・君にも関係する事だ・・それに我々のことを君に知ってもらいたい・・・いいかな?」
ヴェンは沈黙する。
あ〜・・・これはダメだ・・私がヴェンでもコロッと行っちゃいそう・・こんな事になってたんだ・・
「・・わかった・・手短にしてくれ・・」
ヴェンがそう言うと男はわずかに微笑む。
「ありがとう・・さあ着いて来てくれ・・案内するよ・・・」
そうして男とヴェンは部屋を後にした────