────反逆者を庇う逆賊として連邦軍巡回監視艦「
「奴ら・・・よもやテロリスト共と手を組むとは・・・ちょうどいい口実が増えたな・・・ハッハッハッ‼︎」
「グレイブ中将‼︎」
高笑いをする中将に部下が慌てた様子で駆け寄る。
「何だ‼︎騒々しい‼︎」
「き・・・『
「何ぃっ⁉︎まだ目標区域に入って10分だぞ‼︎何をふざけた事を‼︎」
中将は部下に詰め寄る。
「所属部隊も全滅です・・・」
「なっ‼︎バカなっ‼︎・・・雲母に積んでいたモビルスーツは全機最新型の精鋭部隊・・・一個大隊が全滅・・・」
中将の脳裏にはあの大型ホワイトドール「
「あのライラ・リルを語る俗物かっ⁉︎」
「いえ・・・黒い・・ホワイトドール1機です・・・」
中将は歯を食いしばり言葉を絞り出す。
「あのイかれた死神気取りのクソがぁ・・・‼︎」
「いえっ!違う機体ですっ‼︎」
「何だとっ‼︎あんなふざけた奴が別にいてたまるものかっ‼︎もういいっ‼︎俺が出る‼︎『
「ハッ!」
中将は苛立ちを隠さずブリッジを出ていった────
────戦艦「雲母」が爆発し破片が宇宙の闇に飛び散る。
あたりはモビルスーツの残骸が宙を漂っている。
爆炎がおさまった場所に佇む1機の黒いモビルスーツ。
それは4双の赤黒い刃のような翼を生やした黒い機体。
姿は紛れもなくホワイトドールだがその体は赤黒く染まっている。
黒きホワイトドール「
「フハハハハッ‼︎雑魚共がっ‼︎私に勝てるとでも思ったのか⁉︎ハッハッハッ!」
フー・バラクは高らかに笑い続ける。
そしてもう一つの戦艦の影を見つけた。
「ハッ!アイツとやる前の肩慣らしにちょうどいいっ!連邦のゴミ共め!私を生み出した事を後悔するがいいっ‼︎」
廻羅はその翼から青白く霧散する輝きを放ちながら戦艦に向けて飛んでいった────
────ヒメノは焦っていた。
連邦軍のモビルスーツの海を白い光の尾を引きながら白閃は駆け抜ける。
「ホワイトドール‼︎裏切り者めぇっ‼︎」
「うるせぇっ!どいつもこいつも同じ事をベラベラとっ‼︎」
連邦機が放つビーム砲をかわしながら相手の背後に回り込む。
振り向き様に肘から短い光刃を出し連邦機のバックパックを切り裂く。
連邦機の背面が爆発し機体は動きを止めた。
出撃から数回この行為を繰り返しそしてこの大群を前にして白閃とヒメノの弱点が露わになる。
白閃はヒメノの格闘スタイルに合わせ改修されたモビルスーツ。
対少数戦や単体戦を想定されている。
この軍勢を前に遠距離高火力装備もなく、常に1対1を繰り返すのはまさに多勢に無勢であった。
・・・クソッ‼︎こんなの繰り返しててもらちが明かないっ!早く群雲のみんなのとこへ行かなきゃ行けないのにっ!
迫る敵機に前腕下部のビームガンを放つ。
だが敵機を爆砕しないために狙いを頭部や脚部に絞ったその光弾は敵機をすり抜けていく。
「うあぁぁっ!」
ヒメノは白閃の脛を光らせ叫びながら飛び込み脚を蹴り下ろす。
相手の腕と膝下がちぎれ飛んでいく。
「めんどくせぇぇぇっ‼︎」
そう叫びながら頭部へ掌底を放ち光刃を打ち込んだ。
背後から敵機が迫る。
「ヤベェッ‼︎」
ヒメノが振り向いた瞬間敵機の足と頭部に光線が走り沈黙した。
「ディスケさんっ‼︎」
「ヒメノさん!慌てないで‼︎一機ずつでもいい‼︎確実に落としていけば道は開けますっ‼︎」
そう言いながらディスケの乗る鷲のような顔を持つ黄色いモビルスーツ「
先程ヒメノを助けた円筒状のビット兵器は黄蜂の肩のラックに帰っていく。
「でもこの数!きりが無いよ!いつまで経っても群雲のとこに着けない!」
「大丈夫です!加勢も来ているようですしっ‼︎」
「加勢⁉︎」
また辺り周りに連邦機が複数迫ってきた。
「くっそまた!ワラワラとっ‼︎」
「ファンネルッ‼︎」
ディスケがそう叫ぶと黄蜂の肩の円筒状ビットが飛び出し末端部が開き飛び回る。
飛び出したビットは敵機の周りを囲むように飛び砲身から細い光線を放ち相手を切り裂くように撃破していく。
「くっそぉ〜・・どいつもこいつもファンネルファンネルって‼︎ずるい‼︎私も欲しいっ‼︎2、3個貸してよっ‼︎」
ヒメノの駄々ゴネにディスケは笑う。
「無理ですよ!」
「何でよっ‼︎私に使えないっての⁉︎馬鹿にしてっ‼︎」
「いやそうじゃなくてっ‼︎機体ごとに個人の脳波に合わせて調節されているのでこのビットは私以外使えませんっ‼︎・・・あ!ボスは例外ですが。」
・・・ボスってライラか?・・何でライラは別?・・・無理矢理ぶん取るってこと?・・・まあ何でもできそうだもんな・・・
その時少し離れたところにいる連邦機をエリュシオン勢と見られるモビルスーツが集団で襲い掛かり撃破した。
「やばい‼︎アイツらの相手もしなきゃいけないのかっ‼︎」
構えるヒメノをよそにエリュシオン勢はこちらを向くも襲ってくる様子はなく別方向へ飛んでいく。
「え‼︎何で⁉︎」
「彼らは今は味方のようです。何を企んでいるかは分かりませんが今は様子見と行きましょう!」
二人は再びモビルスーツの雲海へ飛び込んで行った────
────連邦軍のモビルスーツらしき機体が数体戦闘区域とは逆方向に飛んでいる。
「はぁっ!・・はぁっ!・・・・・早くっ!・・・嫌だっ‼︎死にたく無い‼︎あんなのがいるなんて‼︎俺は何のために連邦にっ‼︎・・・はぁっ‼︎・・・早くどこか遠くへっ‼︎・・・」
皆同じような逼迫した状態で逃げるように我先にと飛んでいる。
周囲を高速で移動する黒いモヤのような物体が連邦機達に迫る。
「あ・・・あぁっ‼︎・・・嘘だ・・・嫌だぁぁぁぁっ‼︎」
「ウハハハハハハハハァァァァァッ・・・‼︎逃げないでぇ・・・置いてかないでぇぇぇぇっ‼︎・・・・・・私はここよぉぉっ‼︎・・私を1人にしないでぇぇっ・・・・・・ゥアハハハハハハァァッ‼︎‼︎」
黒いモヤは蝙蝠のような巨大な翼を広げその姿を現した。
先の戦闘で連邦軍勢を圧倒し蹂躙した者。
ホワイトドールに酷似した容姿ながらその色は漆黒に染まっている。
エマ・シュリクが駆る死神のモビルスーツ「
手に持つ長い棒状の柄の先端から弧を描くように伸びる緑色の光刃。
まるで鎌のような武具を1機に目掛けて振り下ろす。
モビルスーツは頭から胴、足にかけて両断され振り抜いた動作の慣性で素早く構え直す冥蘭。
エマは恐怖に支配され逃げる事を忘れてしまった連邦機達に語りかける。
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・・・お願いだから許してぇぇ・・・ダメだよぉぉぉぉ・・・・・・・・・絶対に許さないっ!・・・・・・お願い・・・返してぇ・・・・・・・・・レイを返してぇぇぇぇっ‼︎‼︎」
狂気じみた会話を続けるエマは突然連邦機に襲いかかる。
「嫌だぁぁぁぁ‼︎うあぁぁぁぁっ‼︎」
「化け物ぉぉっ‼︎」
逃げる者、最後に一矢報いようと反撃に出る者。
だが冥蘭に光弾が迫る時、まるで分身したかのような残像を残し光弾はすり抜ける。
「馬鹿な・・・・・・本当に・・死神・・・?・・」
連邦機はライフルを下げ動くのをやめた。
緑色の光刃が機体を切り裂く。
冥蘭は逃げた連邦機に目をやる。
エマは小さく微笑みながら涙を流し続ける。
「ウフフフフッ・・・・・・何で逃げるのぉぉぉ・・・・・・1人にしないでよぉぉ・・・・・・私・・・・・・私ここにいるよぉぉぉぉおおっ‼︎‼︎アハハッハハハハッハァァッッ‼︎‼︎」
しばらくして冥蘭は誰もいなくなった空間を見渡し、宇宙の闇に溶けていく。
逃げ延びてきた連邦機達の残骸は宇宙の藻屑となり漂っていた────
────イー・ファルコは単騎で敵陣に突入していた。
その場にいた連邦兵隊はその黒い巨体に驚愕する。
「・・・あれ・・この間の映像に出てた化け物じゃ無いか・・・」
連邦軍勢は皆一斉に身構える。
それもそのはず。以前イーの駆る「
連邦軍からすれば正体不明のまさに怪物である。
「ファルコ様がおいでだ‼︎全機‼︎次に行くぞっ‼︎」
エリュシオン勢の隊をまとめているであろうものが声を上げると皆一斉に飛び立つ。
「どういう事だ⁉︎アイツがきた途端敵が皆引き上げたぞっ‼︎」
「お前見て無いのかあの映像‼︎あんなの倒せっこ無い‼︎逃げるぞっ‼︎」
そんな連邦兵達のやりとりを見てイーは笑う。
「フハハッ!この私から逃げられると思うか⁉︎」
イーはそう言うと胸部から太い光弾を発する。
その瞬間光弾は拡散して一回り細い光線となり四方に飛び散っていく。
連邦兵隊達は逃げる暇もなく光線の餌食となって消えていった。
イー・ファルコの乗るモビルスーツ「晦煌」はその両肩に付く巨大な翼のような形状のバインダーに大型のI・フィールドジェネレーターを搭載している。
ビーム兵器のエネルギー光を形成する粒子をサイコミュを介して任意の場所に凝縮させエネルギー力場を形成する。
同じエネルギーからなるビーム兵器の光弾はその力場に弾かれ反射、偏光をして拡散していくことになる。
自身を覆う防壁として、そして自身の攻撃を周囲に拡散させる攻守に優れたI・フィールド。そして大量のサイコミュビットを搭載した晦煌はまさに異形の怪物であった。
「フハハッ!だと⁉︎相変わらず戦い方までイケメンだな!」
イーは突然声をかけられ驚きもせず振り向いた。
自身の感知能力でも気付けない者。
その正体は見るまでもなく分かりきっていた。
「少佐・・・ご無沙汰しておりました。」
「そんなかしこまっちゃってぇ。相変わらずイーコちゃんだなぁ!」
突然背後に現れたモビルスーツ「
「その呼び方!やめてくださいと何百年言えば分かってくれますか⁉︎」
「ハッハッッハッ‼︎いやすまんね。旧交を温めようと思ってな!・・・どういうつもりだ・・・?」
軽薄な調子からの突然の威圧感を感じ固唾を飲むイー。
「アクィラ様のご命令です・・別にあなたとやり合うつもりはないので・・
「フンッ!アイツの考えることなどサッパリ理解できんな!」
「それはあなたがあのお方を理解しようとしないからでしょう?」
ライラは威圧を緩めず続ける。
「私の捕まっていた独房壊して黎明のロック外したのお前だな?」
イーのヘルメットの中には冷や汗の粒が浮かんでいる。
「仰る通りです・・・アクィラ様のご命令でしたので・・」
「恩返しのつもりか?あの馬鹿野郎は・・・」
「確かに少佐はアクィラ様にトドメを刺さなかった・・・ですがそのような浅はかなお考えではない事をお伝えしておきましょう・・・」
「口の聞き方に気をつけろイー・・・殺すぞ。」
イーの体は完全に硬直してしまった。気合いだけで何とか口を動かす。
「あなたほどのお方がなぜアクィラ様のご意志を理解しようとしないのですか⁉︎アクィラ様はっ・・・!」
「フンッ!まあいい・・・それよりお前が連れてきた奴だが・・・それこそ何のつもりだ?」
「アクィラ様が連れてきた新人ですよ・・・奴が何か・・?」
「あの剥き出しの敵意をわざわざこの私にぶつけてくる無礼者・・・それを引き連れて何か、だと?ふざけているのかイー・ファルコッ‼︎」
ライラは威圧を強める。イーは息をするのもやっとである。
「・・・いえ・・ふざけてなど・・・・・いませんよ・・ただ・・・」
「何だ・・」
「奴を落とす・・・事など・・無いように・・・後悔します・・・」
「・・・どういう意味で言っている・・・?・・まあいい・・・」
ライラは威圧を解いたようだ。イーは慌てて呼吸をしている。
「はぁっ!・・・はぁっ!・・・はぁっ!・・少佐・・はぁっ!・・・忘れないでください・・・はぁっ!・・・アクィラ様は・・・」
「まだ無駄口を叩くようなら本当に殺すぞ!去れっ!」
ライラに一喝されたイーは晦煌を黎明に背を向けさせ宇宙の闇に消えていった。
「・・・・・アクィラ・・・いや・・まずはこのプレッシャーの元か・・・」
黎明は晦煌と別の方向に回り飛んでいった──