S・E.1000年 1月──
ヒメノ達が通う宇宙工科高校1年生達は3学期を迎え、
校外演習としてコロニーの最外層「大天門窓」を訪れた。
初めて見る宇宙空間に皆おおはしゃぎ。
中でもヒメノは特段奇声を上げながら窓の端から端まで走り回っていた。
「うはぁー!ヴェン見て見て!今星が流れた‼︎うおぃっ!また流れた‼︎あっちは⁉︎」
ヴェンの袖を引っ張りながら右往左往
あっちに行っては急旋回、こっちに行っては急旋回
ヴェンはまるで乗り物酔いでもしたかのような顔で青ざめている。
「アキホ!ミランダ!すごいよ凄すぎ!宇宙ヤバァッ!・・・・・何?・・・」
2人に声をかけ振り向くと両手を頬に当てて赤面し視線をずらしながらニヤついている。なんなんだコイツら
冷静に周りを見渡すと全員そんな感じで赤面しながら奇怪な所作をしている。マジでなんなんだコイツら
ヴェンを振り向くと今にも吐きそうなくらい青ざめてぐったりしている。なんだコイツ
「なんでこんな素晴らしい景色見てそんな感じなのさ⁉︎ロマンのないやつだな!」「・・・・・・違う・・引っ張りすぎ・・揺らしすぎ・・・・」
ヒメノはやっと冷静になってハッとした。
皆の奇行の原因がわかったようだ。
何よりなんかヴェンに申し訳ないような気がする。
「あー・・ハハハ・・・・ごめんね・・大丈夫?」とぐったりしたヴェンの背中をさする。
その様子を見たクラスメイト一同は満足そうに頷いたり。幸せそうにため息をついたりしている。
コイツら一回ぶん殴ってやろうかな
突如数人が頭を抑えてうずくまる。
驚き声をかけるヒメノも耳鳴りと共に頭痛に襲われ脳裏に見たことのない光景が浮かぶ。
──大きな町に巨大なコロニーが落ちてくる
何これ・・幻覚?・・・こんなことあったっけ?・・いやない!
ありえない!ニュースにもなってないし!
混乱するヒメノがふらつく視界をどうにか気合いでハッキリさせると暗闇の宇宙の向こうから光る物体が近づいてくる。
岩だ。ものすごく巨大な岩。虹色に輝いている。なんなら虹色の尻尾もなびいてる。何あれ・・・
ヴェンの方に目をやると巨大な虹色の岩を見つめてボーっと突っ立ている。明らかに様子がおかしい。目がまんまるになってる。
「ヴェン!どうしたの⁉︎早く町の方に逃げないとコロニーにぶつかったら大変だよ!」
固まった表情のまま口が動く
「・・・・ガンダム・・・・」
何いってんだコイツこんな時に!こんな肝の小さいやつだったっけ・・小さかったか・・いや今そんなこと考えてる場合じゃない。無理矢理引っ張って連れてかないと!
突如地響きが起こる。
悲鳴が上がり皆がしゃがみ込んだり転んだりしている。
「なんなの次から次へと‼︎」
苛立ちを叫びに変えた瞬間爆風が起こりヒメノは吹き飛ばされてしまった。
勢いよく地面に叩きつけられむせるヒメノ
「いっつー・・くっそ!なんだよ!・・・ヴェン⁉︎どこ⁉︎」
痛みに耐えながら立ち上がると先ほどまで掴んでいた腕の主がいない。
まさか今の爆風で?・・・嘘・・・「ヴェン⁉︎ヴェン!返事してよ‼︎」
悲鳴や怒号が飛び交いヒメノの叫びはかき消されていく。
爆発が起こった方に目をやると爆煙の中から巨大な人影が姿を現す。
コイツ・・・・ボルジャーノンだ!
歴史の教科書にも載っているほどの超有名な人類最初のモビルスーツ。VRMSのチュートリアルでもこの機体を扱ったことがある。
そこにまた地響きが起こりまたしても巨大な人影が姿を現す。
コイツも見たことある・・教科書の・・なんだっけ・・アレだ!大昔の大戦時の英雄・・・ホワイトドールだ!
・・いやそんなこと考えてる場合じゃないって!
ヴェンを探さないと!なんなんだコイツら!
混乱するヒメノをよそにボルジャーノンがマシンガンを放ち始めた。
マジか!コロニー内で発砲しやがったコイツ!
対するホワイトドールはシールドで防ぐも未だ混乱の最中にいる民間人を気にしてか動きが硬い。
ボルジャーノンが飛びかかる。
吹っ飛ばされたホワイトドールは尻餅をついた。咄嗟にボルジャーノンを蹴飛ばす。
また大きな地響きが走る。
なんとも鈍臭い動きをしている本物のモビルスーツを前に苛立ちを隠せないヒメノ
「下手くそが!」
そう呟いた時、尻餅をついた衝撃のせいか急にホワイトドールのハッチが開いた。
その瞬間ヒメノの頭で何かが音を立てて飛び走っていく。
自分でも気づかないうちに走り出していた。
脅威的な身体能力を見せつけるが如くコックピットまで駆け上がっていく。
中を覗くと若いパイロットが慌てた様子でこちらを見ていた。
ヒメノはパイロットの胸ぐらを掴み外へ引っ張り出した。
「何するんだ!民間人は避難しろ!これは遊びじゃないんだぞ!」
その言葉にヒメノはブチギレる。
「だったら遊んでないで民間人の避難誘導しとけダボカスがっ‼︎」
綺麗な中段側頭蹴りが決まった。
パイロットを蹴落としたヒメノは荒い鼻息のまま座席に座りハッチを閉じる
だいぶ型式は違うが大体の構造は擬似コックピットと同じだ。
いける!
ヒメノはアクセルを軽く踏み込みレバーを引いた。
ホワイトドールが立ち上がる。
「なんで動かせる⁉︎何者だあの子⁉︎」
いくら初の本物のモビルスーツとはいえVRMSの強者であるヒメノには立ち上がることなど造作もない。
問題はここからである。
「重い・・これが本物のモビルスーツ・・・・」
勢いでここまで来てしまったがどうしよう。
本当にあいつが悪者なのか?でもさっきのパイロット民間人のこと気にしてたしな・・
と考えている間にボルジャーノンが再び発砲する。
ヒメノは反射的に自分の顔を手で覆ってしまった。
それに呼応するかのようのホワイトドールはシールドを構え銃弾を弾いてくれた。
あいつ絶対悪者だ・・・・ヒメノは確信する。
あいつのせいでみんなめちゃくちゃに・・ヴェンまで行方不明になっちゃった・・チクショウ!
「ヴェンに何かあったらぶっ殺してやる‼︎‼︎」
思いっきりアクセルを踏み込みボルジャーノンに突撃するホワイトドール。
「おおらぁぁぁぁ‼︎」
敵機にぶつかる直前に急旋回し背後に回るや否や、その遠心力を乗せた肘打ちをボルジャーノン目掛けて振り下ろす。
衝撃で倒れたボルジャーノンの上に立つホワイトドール
「ボルジャーノンの倒し方にはテンプレがあるんだよ!」
「おらぁぁぁ‼︎」叫ぶと共にホワイトドールはボルジャーノンの頭部吸気口につながるホース状のパーツを鷲掴み頭部ごと引きちぎった。
「ハアッハアッ!・・勝った!・・・・・・」