機動戦士ガンダム 虹色の星空   作:ミコユラ

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第2話 虹色の巨石

 

────S・E.1000年 1月

 

ヒメノ達が住む地球直轄コロニー「星契(カヴァナント)

その最外層に近づく1隻の小型戦艦。

 

宇宙に浮かぶその小型戦艦から1機のモビルスーツが射出された。

 

その体は白くうっすらと真珠のような輝きを放ち、大きな盾を持つ騎士のような姿をしている。

頭部にはV字の角のようなものが生え、その双眼はうっすらと青緑色に光っている。

 

モビルスーツのパイロットの元に通信が入る。

「ビエラ少尉!所属不明のシャトルはそこの下側の廃棄ブロックから侵入した模様ですっ!」

 

「了解!それにしてもこの新型は動きが機敏すぎて慣れないな・・」

「アナタ慣れてる機体あるの・・・?」

ぼやくパイロットに無線の奥の女性が少し呆れたように声をかけた。

 

「ひどいなリリアっ!俺だって零式ならもう少しマシにやれるさっ!それにコロニーの擬似重力下なら問題ないっ!」

 

「・・・そう・・」

女性はぶっきらぼうに言うと通信を切ってしまった。

「・・・なっ‼︎もしもしっ⁉︎・・・フンッ!もし奴らがモビルスーツで来たとしてもこの新型ならっ!みんなをあっと言わせてやるさっ‼︎」

 

男はそう言いながら機体を廃棄ブロックへ進めた────

 

 

────ヒメノ達が通う宇宙工科高校1年生達は3学期を迎え、

校外演習としてコロニーの最外層「大天門窓」を訪れた。

 

初めて見る宇宙空間に皆おおはしゃぎ。

中でもヒメノは特段奇声を上げながら窓の端から端まで走り回っていた。

 

「うはぁー!ヴェン見て見て!今星が流れた!うおぃっ!また流れた!あっちは⁉︎」

ヴェンの袖を引っ張りながら右往左往

あっちに行っては急旋回、こっちに行っては急旋回

ヴェンはまるで乗り物酔いでもしたかのような顔で青ざめている。

「アキホ!ミランダ!すごいよ凄すぎ!宇宙ヤバァッ!・・・・・何?・・・」

 

2人に声をかけ振り向くと両手を頬に当てて赤面し視線をずらしながらニヤついている。

「・・何?」

 

怪訝な表情のヒメノは冷静に周りを見渡すと全員似たような奇怪な所作をしながらニヤニヤしている。

 

・・なんなんだコイツらは・・・

 

ヴェンを振り向くと今にも吐きそうなくらい青ざめてぐったりしている。

 

・・・顔の赤い奇怪な奴らがいる中なぜお前は青いんだ・・?

 

そんなヴェンを見て呆れた様にヒメノが愚痴る。

「なんでこんな素晴らしい景色見てそんな感じなのさ⁉︎ロマンのないやつだな!」

 

対するヴェンは青ざめた顔で小さく声を絞り出した。

「・・・・・・違う・・引っ張りすぎ・・揺らしすぎ・・・・」

 

ヒメノはやっと冷静になってハッとした。

皆の奇行の原因がわかったようだ。

 

何よりなんかヴェンに申し訳ないような気がする。

「あー・・ハハハ・・・・ごめんね・・大丈夫?」とぐったりしたヴェンの背中をさする。

 

その様子を見たクラスメイト一同は満足そうに頷いたりしている。

 

「情け容赦ないいじめっ子というだけで無くしっかりとしたアフターケアがあってこそのあの関係性だな!」

「鬼嫁」

「ヴェンは果報者だな・・・」

 

・・・コイツら殴っていいかな・・?

 

しかしそんな自由行動時間の束の間の平穏な日常。

それは突然崩れ去る事となる。

 

突如数人が頭を抑えてうずくまり始めたのだ。

目の前の友人達の異変に驚き声をかけるヒメノにも突然耳鳴りが起こり足を止める。

続けて激しい頭痛に襲われたヒメノはたまらず頭を抑え立っているのもやっとの状態になってしまった。

 

ヒメノの脳裏に見たことのない光景が浮かび、何処からか叫び声のようなものが聞こえて来る。

 

大きな町に巨大なコロニーが空から落ちて来る。

それが地面に激突した衝撃で街は消し飛びさらに叫び声が上がり木霊(こだま)してゆく。

 

情景が暗転し気がつくとヒメノの視界は元の大天文台を映した。

 

・・・何今の・・こんなことあったっけ・・いやない!

ありえない!ニュースにもなってないし!

 

混乱するヒメノがふらつく視界をどうにか気合いでハッキリさせふと大窓を見ると暗闇の宇宙の向こうから光る物体が近づいてくるのが見える。

 

岩だ。ものすごく巨大な岩。その岩は虹色に輝く光を放ち、その光はまるで天の川のように軌跡を残しながらこちらに飛んでくる。

 

・・何あれ・・・やばくない?・・・あの速度・・ぶつかるじゃんっ‼︎

 

「ヴェン!早く町の方に逃げないとコロニーにぶつかったら大変だよ!」

 

慌ててヴェンの方に目をやると巨大な虹色の岩を見つめてボーっと突っ立ている。目を丸く見開き心ここに在らずといった表情。

固まった表情のままヴェンの口が動き、聞き馴染みのない単語が飛び出した。

 

「・・・・ガンダム・・・・」

 

・・何いってんだコイツこんな時に!こんな肝の小さいやつだったっけ・・小さかったか・・いや今そんなこと考えてる場合じゃない。無理矢理引っ張って連れてかないと!

 

ヴェンの腕を掴んで引っ張り走り出そうとしたその時、突如地響きが起こる。

悲鳴が上がり皆がしゃがみ込んだり転んだりしている。

 

「なんなの次から次へと‼︎」

苛立ちを叫びに変えた瞬間爆風が起こりヒメノは吹き飛ばされてしまった。

勢いよく地面に叩きつけられむせるヒメノ。

「いっつー・・くっそ!なんだよ!・・・ヴェン⁉︎どこ⁉︎」

 

痛みに耐えながら立ち上がると先ほどまで掴んでいた腕の主がいない。急いであたりを見渡すも土埃が蔓延した室内は人影を探すことすらできない。

 

 

「ヴェン⁉︎ヴェン!返事してよ‼︎」

 

悲鳴や怒号が飛び交いヒメノの叫びはかき消されてゆく。

 

爆発が起こった方に目をやると爆煙の中に巨大な人影が見える。

爆煙が収まりその姿が露わになるとそれは巨大な機械人形、モビルスーツだった。

 

紫色に染められた体に太い手足、半球状の頭部の口元からは対称に伸びたホース状のものが後部にまで回っている。

目元の黒いガラスの奥には一つの赤く丸い光がまるで何かを探すサーチライトのように左右に動いている。

 

・・コイツ・・・・ボルジャーノンだ!

 

それは歴史の教科書にも載っているほどの有名な人類が最初に開発したモビルスーツであった。VRMSのチュートリアルでも扱う事になるのでこの機体の認知度は高い。

 

そこにまた地響きが起こりまたしても巨大な人影が姿を現す。

白い真珠のような輝きを放つ騎士のようなモビルスーツ。

その双眼がボルジャーノンを捉え青緑色の光を強めた。

 

・・コイツも見たことある・・教科書の・・なんだっけ・・アレだ!大昔の大戦時の英雄・・え〜・・・ホワイトドールだ!

 

ヒメノはスッキリした!という顔をしてすぐハッとする。

 

・・いやそんなこと考えてる場合じゃないって!

ヴェンを探さないと!なんなんだコイツら!

 

混乱するヒメノをよそにボルジャーノンが手に持つ巨大なマシンガンをホワイトドールに向かって放ち始めた。

流石に大窓を狙いから外しているようではあるがそれは威嚇射撃の度合いを超えているように見える。

「マジか!コロニー内で発砲しやがったコイツ!」

 

対するホワイトドールはシールドで防ぐも未だ混乱の最中にいる民間人を気にしてか動きが硬い。

すかさずボルジャーノンが飛びかかり張り手を打ち込んだ。

吹っ飛ばされたホワイトドールは尻餅を着くも咄嗟にボルジャーノンを蹴飛ばし追撃は逃れる。

また大きな地響きが走る混乱の室内。

 

・・コイツの動き・・・・・鈍臭いにも程があるっ!イライラすんなぁっ!

 

防戦一方で動けずにいるホワイトドールを見て苛立ちを隠せないヒメノは吐き捨てる様に言い放った。

「下手くそが!」

 

そう呟いた時、尻餅をついた衝撃のせいか急にホワイトドールのハッチが開いた。

その瞬間ヒメノの頭で何かが音を立てて飛び走っていく。

脳裏に浮かぶ光景。

 

ヒメノが伸ばす手の先に見える、同じくヒメノに向かって手を伸ばすヴェンが見えた。

 

「・・ヴェン・・・これに乗れば・・・・・っ‼︎」

 

自分でも気づかないうちに走り出していた。

 

脅威的な身体能力を見せつけるが如くコックピットまで駆け上がっていく。

中を覗くと若いパイロットが慌てた様子でこちらを見ていた。

 

ヒメノはパイロットの胸ぐらを掴み外へ引っ張り出す。

「何するんだ!民間人は避難しろ!これは遊びじゃないんだぞ!」

パイロットのその言葉は苛立ちの中にいるヒメノの琴線に触れてしまった。その涼しげな目元が鋭く吊り上がる。

 

「だったら遊んでないで民間人の避難誘導しとけダボカスがっ‼︎」

 

怒鳴ると共に体勢を低くしパイロットに対して体を横に向けたヒメノは腕を後ろに送り勢いよく足を伸ばした。

 

「ぐぅぅおぉっ・・・っ⁉︎」

 

綺麗な中段側頭蹴りが決まりパイロットは体を大きくのけ反らせ飛んでいく。

 

 

パイロットを蹴落としたヒメノは荒い鼻息のまま座席に座りハッチを閉じる。だいぶ型式は違うが大体の構造はVRMSの擬似コックピットと同じであった。

 

・・・操作パネルも大体同じだ!これならっ‼︎

 

ヒメノはアクセルを軽く踏み込みレバーを引く。

 

尻餅をついていたホワイトドールが立ち上がる。

その様子を見ていたパイロットは痛みに耐えながらも驚愕する。

「なんで動かせる⁉︎何者だあの子⁉︎」

 

いくら初の本物のモビルスーツとはいえVRMSの強者であるヒメノには立ち上がることなど造作もない。

問題はここからである。

 

「何これ・・動きが重い・・これが本物のモビルスーツか・・・・」

 

・・あぁ・・・勢いでここまで来てしまったがどうしよう・・

本当にあいつが悪者なのか?でもさっきのパイロット民間人のこと気にしてたしな・・・・・

 

そう考えている間にボルジャーノンが再び発砲する。

 

「えっ‼︎うわっ‼︎」

ヒメノは反射的に自分の顔を手で覆ってしまった。

それに呼応するかのようにホワイトドールはシールドを構え銃弾を弾いてくれた。

 

「え・・・?あっ!シールド‼︎なんでっ!よかったあぶねぇっ‼︎」

 

・・あいつは絶対悪者だ・・・・

 

ボルジャーノンを睨みつけながらヒメノは確信する。

 

・・クソッ!あいつのせいでみんなめちゃくちゃだ・・・・ヴェンまで行方不明になっちゃった・・チクショウ!

 

レバーを握るヒメノの手に力が込められる。

「ヴェンに何かあったらぶっ殺してやる‼︎」

 

ヒメノは全力でアクセルを踏みレバーを倒し込んだ。

ホワイトドールはボルジャーノン目掛けて突進していく。

 

「なっ⁉︎・・うわっ!やべぇっ早いっ!」

ゲームで扱った機体の動きと違い自身の想定よりも機敏なホワイトドールに驚くも後には引けない。意を決して、というよりもヤケクソと言う方が正しいかもしれない。そのまま突っ込むホワイトドール。

 

「くっそぉぉおおらぁぁぁぁ‼︎」

敵機にぶつかる直前にアクセルを緩めレバーを引く。機体は急旋回し相手の背後に回るや否や、その遠心力を乗せた肘打ちをボルジャーノン目掛けて振り下ろした。

 

衝撃で倒れたボルジャーノンの上に立つホワイトドール

 

「はあっ!はあっ!ハッ!ボルジャーノンの倒し方にはテンプレがあるんだよ‼︎」

 

そう言うとヒメノの動かすホワイトドールはボルジャーノンの頭部吸気口につながるホース状のパーツに手を伸ばした。

 

「おらぁぁぁ‼︎」

 

叫ぶと共にホワイトドールはホースを鷲掴み頭部ごと勢いよく引き寄せる。

首から繋がるワイヤーやケーブルが音を立ててちぎれていきオイルが辺りに撒き散らされた。

 

頭部を失ったボルジャーノンはその動きを止め沈黙する。

 

 

「ハアッハアッ!・・勝った!・・・ハッ!ザマァ見ろっ‼︎・・・はあっ!・・はあっ・・・」

 

そう言い放ったヒメノの手足は小さく震えていた────

 

 

────宇宙が見渡せる大きな窓がある部屋の一角。

 

1人の男が立っていた。

長い黒髪を後ろで縛り、サングラスをかけている男は(くう)に浮かぶホログラム液晶を見ている。

 

画面に映るホワイトドールの姿が見える。

 

部屋にもう1人男が入って来た。

黒髪の顔立ちの整った男が背筋を伸ばし口を開く。

 

「お呼びでしょうかアクィラ様・・・」

 

そう呼ばれた男は笑顔で返す。

 

「・・やあ・・・イー・・ちょうどいいところに来たな・・見たまえ・・・素晴らしいな・・・あの少年といい・・・この子も実に面白い・・・」

 

イーと呼ばれた若い男は画面を見て呟いた。

「これは・・・まさか・・・」

 

「ああ・・・ガンダムだよ・・・」

 

サングラスの男はニヤリと笑いながらホワイトドールを見つめていた────

 

 

 

 

 

 

 

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