────まるで玉座とも言える椅子から立ち上がった男、アクィラ・アードラーはヒメノ達に向かって歩き出した。
「久しぶりだな・・・ライラ・・・突然の呼び出しにも関わらず来てくれて嬉しいよ・・・」
笑いながら語りかけるアクィラにライラは腕を組み野蛮な表情で返す。
「ハッ!無理矢理連れ込んでおいて何を言うっ!・・・400年のうちにこんな事まで出来るようになったか・・退屈しなそうで何よりだな馬鹿野郎・・・」
そう、突然耳鳴りに襲われたヒメノ達。気がつくとそこには豪華な装飾のあしらわれた大広間だった。
「こんな芸当・・まともに考えて私1人で出来るわけないだろう・・?・・・これはアクシズが皆を歓迎してくれてる・・・と言う事だよ・・・理解できたかな・・?」
対するアクィラはポケットに手を突っ込んだまま冷静に笑っている。
・・すげえ!ライラの真っ向からの野蛮な煽りに何処か知性を感じさせる煽りで返したっ‼︎
「クッ!相変わらずの物言いだなっ‼︎400年間人を無視しといて第一声がそれかっ‼︎無礼な馬鹿野郎だっ‼︎」
「君も相変わらずだなライラ・・・懐かしいよ・・その物言い・・何も変わってないな・・安心した・・・」
・・なんか・・・痴話喧嘩っぽいな・・何この2人・・・
「今日ここに君たちを呼んだのは最後の話し合いをしたかったからだよ・・」
「最後の話し合いだと?フンッ!笑わせるっ!話しを聞こうともしなかった奴が何を言う!」
なかなか話の進まない状況にイラついたヒメノ。
「ちょっとライラ静かにっ‼︎今痴話喧嘩してる場合じゃないでしょっ‼︎先進まないからっ!」
「誰が痴話喧嘩などっ‼︎・・・まあそうか・・すまんな!言いたい事や殴りたい事が多すぎてなっ‼︎」
そう言うとライラはアクィラの足元に向かって唾を吐いた。
なんて野蛮で下品で素養のない伝説の美女なんだっ!
とヒメノは内心思ったが我慢して黙っている。
「・・フフッ・・・彼女の方が冷静なようだ・・ヒメノ・カストル・・初めましてだな・・ヴェンの具合はどうだい?」
「・・・っ‼︎・・テメェッ‼︎次ヴェンの名前出したらぶっ飛ばすぞっ‼︎テメェには言いたい事や殴りたい事が山ほどあんだよっ‼︎」
そう言うとヒメノもアクィラの足元に唾を吐いた。
その様子を見ていたライラは何故か引いている。
「ハハハハハッ!・・すまないな・・以後気をつけよう・・・ライラ・・実にいい子を引き入れたな・・・昔の君を見ているようだ・・・」
「ハーイッ!みんなっ‼︎ヒメノも引っ張られないっ‼︎先にお話しっ‼︎」
そこに割って入ったリルはやはり保育園の先生のようである。
「・・そうだな・・ありがとう・・リル・ドッペル・・・話しの続き・・・というより話を始めよう・・・」
アクィラがそういうと突然あたりにいくつか人ほどの大きさのモヤが生まれ、やがてそれは人の形を成していく。
そこに現れたのは4人。
イー・ファルコ、アル・ミザン、フー・バラク、そしてリュウ・カウダだった。
フーはライラを睨みつけるなり唸るように声を絞り出す。
「貴様ぁ・・・はあぁっ!・・はあぁっ!・・・聞いていたぞ・・・何が妹だっ‼︎・・はぁっ!・・・虫唾が走るっ‼︎・・残念だよ・・・意識だけでなければ今この場で殺してやれるのになぁっ‼︎・・・」
フーは未だに頭痛と吐き気、そして叫び声の残響に苦しんでいた。呼吸は荒く、立っているのもやっとのようだ。
・・この子がフー・バラク・・・本当にライラとそっくりだ・・・すごい苦しそう・・・
ライラはそんなフーを見て静かに、優しく語りかける。
「お前が私を憎むのは当然だ・・・すまなかった・・あの時気づいてやれなくて・・でも約束しよう・・・私がお前を救ってやる!」
「フッ・・・フハハハハッ‼︎・・・救うだとっ⁉︎戯れた事をっ‼︎・・・はぁっ・・・はぁ・・・誰もそんな事望んじゃいないっ‼︎・・私の望みはただ一つ!貴様らを殺して唯一の存在になる事だけだっ‼︎」
それを聞いたライラとリルは何処か寂しげな目を向ける。
「そんな・・!ライラとリルは本気でそう言ってるの分からないのっ⁉︎」
ヒメノがたまらず割って入る。
「ハハハッ‼︎小娘が何を抜かすっ‼︎・・ぐぅっ!・・・あぁっ‼︎・・きっ・・さまに分かるまい・・・偽物として生まれ偽物として廃棄された何者でもない紛い物‼︎・・それが私だった!・・私を生み出した事を全ての地球人に後悔させてやるさっ‼︎そこの女にもなぁっ‼︎ゥハハハハハッ‼︎」
・・・これも連邦が生み出した罪の一つ・・・酷すぎる・・・辛すぎるよ・・・こんなのっ‼︎
「改めて紹介しよう・・・彼女の名はフー・バラク・・・70年ほど前に私が連邦の研究施設の廃棄処理場から救出した・・
「貴様ぁっ‼︎」
ライラはアクィラに対して鋭い目つきで睨むがアクィラは涼しい顔をしている。
「・・君は彼女を見つけられなかった・・・それは事実だ・・・違うか?」
「ぐっ‼︎」
「アンタッ‼︎悪の親玉だからって言っていい事と悪いことの区別くらいつくだろっ‼︎ふざけんなっ‼︎」
「・・・フフッ・・君はいい成長をしたようだな・・・」
アクィラは満足気にヒメノを見る。
「何をふざけてっ・・・‼︎」
「小娘っ‼︎アクィラ様のお言葉を遮るなっ‼︎」
イー・ファルコは後ろで手を組んだまま叫ぶ。
「いや・・・構わないよイー・・・面白いじゃないか・・・いつの時も若い芽が育つ時はワクワクするものだ・・・」
アクィラは不敵な笑みを浮かべる。
「フフフフッ!確かに面白いなっ‼︎アクィラ‼︎いいなっ‼︎まさに青春ではないかっ‼︎」
モジャモジャの長い髪を頭のてっぺんでまとめたガタイのいい男。リュウ・カウダはやけにでかい声で話す。
「っ‼︎年齢に細かいオッサンは黙ってろよっ‼︎」
「何っ‼︎少女よっ‼︎いつ私が細かい事を言ったのだっ‼︎1000年以上生きた私に最早年齢などどうでもいい事っ‼︎言いがかりはやめてもらいたいものだなっ‼︎ハッハッハッ‼︎」
ヒメノは目を丸くした。
「1000年以上っ⁉︎・・・だって400歳以上とは言ってたけど・・・どう言う事⁉︎」
「なるほど・・・見ていたのか・・・彼の記憶を・・」
アクィラは少し嬉しそうにそう言う。
「そう・・・彼・・リュウ・カウダは『
リュウは誇らし気な顔でヒメノを見る。
「そう言う事だ少女よっ‼︎私は一度あの
「それを見ていてなんでこんな事を‼︎地球潰したら全部終わっちゃうじゃない‼︎何も始まらないじゃないっ‼︎」
興奮するヒメノにリュウはまた声高らかに続ける。
「私の目的はガンダム!それに尽きるなっ‼︎我が先祖を切り捨てた裏切り物が勝てなかったもの!ガンダムと戦い勝つ事が私の使命でもあるっ‼︎重力に魂を縛られた者など眼中には無いっ‼︎皆自由を求めるべきだと思うがねっ‼︎」
「・・そんなくだらない事で・・・そんなのただのプライドとエゴじゃないっ‼︎本当にちっちぇえなっ‼︎このっ・・・!」
「よせヒメノ・・・こいつこそ闘争本能に身を任せた愚かなムーンレイスの姿そのままだ・・・その髪型も・・・コンプレックスの塊のようだな・・・」
ライラに言われニヤつくリュウ。
「ほう・・・小娘っ‼︎貴様は私の容姿が気になるようだなっ‼︎いいだろうっ‼︎では・・・」
「いやいいっ‼︎・・・大丈夫だ‼︎」
「そうか‼︎」
・・・何⁉︎そうすればいいのかっ‼︎すごいぜライラ!
そのようなやり取りの中2人の男は静かに睨み合っている。
アル・ミザンが先に口を開いた。
「ノウェ・・・お前少し変わったか?楽しそうじゃねぇな!もっとアゲげてこうぜっ‼︎」
遊びに誘う友人の様に接するアルとは対照にノウェはまっすぐな表情で返す。
「アル・・・俺はただお前と戦い勝つ。それだけのために生きてきた・・・でもな!今の俺は地球と宇宙の未来を見てる!そのために戦うんだ!」
先程までの笑顔が消えて暗い表情になったアルはノウェを冷たい目で見つめる。
「・・そうか・・・お前・・・大人になったもんだな?せっかく会えたってのに・・・つまんねぇ〜感じだぜっ‼︎正直ガッカリだ・・・なら遠慮なくぶっ殺してやんよっ‼︎」
「ああ・・・来いよ!俺は負けねぇぜ!エマにも約束してっからなぁっ‼︎」
ノウェの言葉はいつもの軽薄さはなく力強い口調だった。
アクィラは皆を見渡し口を開いた。
「皆それぞれ紹介も終わった事だ・・本題に入ろうかな・・・」
そう言うとアクィラはかけていたサングラスを外し地面に落として踏み潰した。
ヒメノはその目を見て言葉を失う。
夢で見た通りアクィラの左目は白濁し周りには傷がある。
ライラも少し表情が曇る。
「私のこの左目は連邦共に奪われ像を映さなくなった・・・しかし魂の本質・・・世界の本質は映している・・・」
ライラは悲しそうな表情でアクィラに問いかける。
「世界の本質だと?それが見えているのならなぜアクシズを⁉︎」
「この部屋は太古の時代・・人類が真に初めて宇宙に出た時代・・その時のスペースノイドの一民族の都市であった頃のアクシズの姿を表している・・・」
アクィラは部屋を見渡す様に目を移らせ話している。
「その時代から数々の戦争があった・・・スペースノイドの独立・・それを縛り付けたい地球の民・・・地球内での内戦・・・そしてこのアクシズを拠点とした地球圏の統制のための再編・・・」
アクィラは一呼吸置いてまた語り出す。
「宇宙に希望を見出しそこに出たはずの人類は地球にいた頃と何も変わらない・・・ニュータイプという新たな希望が生まれても自らの闘争本能のままにそれを食い潰してきた・・・悲しいかな・・・何千年経っても人々は未だ争い続ける・・・!」
ヒメノは険しい表情でアクィラに叫ぶ。
「アンタがしてることも変わらないだろっ‼︎地球を潰して争いが終わるのっ⁉︎また争いが始まるだけじゃないっ‼︎」
「小娘っ‼︎貴様何度言えば分かるのだっ‼︎」
イーはヒメノに怒鳴るがアクィラは気にせず続ける。
「いや変わるさ・・・全ての地球人が宇宙から見た地球という希望を体験する事でその意識は確実に変わる・・・かつてある男も地球の民に絶望し同じ道を辿った・・彼もまた人類に残された希望を信じて・・・」
ライラが険しい顔で言い放つ。
「ならアンタは救世主にでもなるつもりかっ‼︎浅はかにも程があるっ‼︎」
「少佐っ‼︎アクィラ様はその様な低俗なお方ではありませんっ‼︎」
「まったく!イ〜コちゃんにも程があるぞっ‼︎その様な蛮行で変えた意識などたちまち元通りだろう・・ヒメノでも分かる事だぞっ‼︎」
「おおっ!今っ⁉︎もうやめてそれっ‼︎今真面目な話してるからっ‼︎」
ヒメノは信じられないと言った表情でライラを見る。
「フフッ・・・だがそうしなければまた同じ1000年が繰り返されるだけだよライラ・・・しかし同じ絶望を共有した全ての人類は同じ希望を見出すだろう・・・今の君たちの様に・・」
「貴様ぁ‼︎そこまで言うかぁっ‼︎」
ライラはアクィラに飛びかかった。だが何か見えない力に阻まれその拳は届かない。
その様子を見ていたリルは悲しそうな表情をしている。
「少佐っ‼︎無駄ですっ!ここはアクシズの意識内!いくら貴方でもっ・・・・・っ⁉︎」
その時ヒメノは突然駆け出しアクィラの頬に拳を叩き込んだ。
「アクィラ様っ‼︎」
全員が信じられないと言った顔でヒメノを見る。
アクィラもそのうちの1人だったがすぐに嬉しそうな笑顔に変わった。その唇の端からは血が流れている。
「いい加減にしろよイケメンジジィっ‼︎そんな悲しさの積み重ねでしか見られない希望だったら最初からいらねぇよっ‼︎私はみんなで笑って未来を見たいっ‼︎人様の人生邪魔してんじゃねぇっ‼︎」
「小娘ぇっ‼︎アクィラ様になんという事をっ‼︎」
しかし当のアクィラは笑っている。
「ハハハッ・・イー・・見ろ・・・このアクシズの意識内で彼女は私を殴り私は血を流しているっ‼︎・・・素晴らしいっ‼︎・・これぞ人類の可能性そのものじゃないかっ‼︎」
その笑顔は狂気に満ちていた。
ヒメノは恐怖を感じ後ずさる。
「なんなのアンタ・・・」
「ヒメノ・カストル・・・君が見せたその希望の光・・・それすら地球の者共は握り潰そうというのだ・・何度でもなっ‼︎・・・ガンダムという
ヒメノの前にライラが立ち塞がる。
「アクィラ・・・やらせると思うか・・?」
「できないと思うか?・・ライラ」
ライラは笑う。
「かつてアクシズが地球に落ちる時ある男は言ったさ。『たかが石ころ一つ押し返してやる』・・とな・・・これが私達の答えだっ‼︎アクィラ‼︎」
アクィラは嬉しそうな笑みを浮かべる。
「そうか・・・なら来るがいいっ‼︎・・アクシズは間も無く動き出すっ‼︎ガンダムもろとも地球の愚民共の浅はかなプライドを打ち砕いてやろう・・・」
アクィラがそう言うとヒメノ達の目の前が霞み元の医務室が現れた────