────ボルジャーノンとの戦いを制したヒメノは乱れた息を整えながらホワイトドールを降りる。
辺りを見渡すと地球連邦兵がワラワラ。さっきのパイロットが増援を呼んだのか皆で民間人救助にあたっている。
先程吹き飛ばされた瓦礫の山に戻りヴェンを探すヒメノ。
「ヴェン!ヴェン‼︎返事して‼︎」
最悪のイメージを頭でかき消しながら幼馴染を叫び探す。
ふと瓦礫の外に本が1冊落ちているのが目に入る。
それを見たヒメノの脳裏には何度もかき消したイメージが再び蘇った。
これ・・ヴェンの本だ・・・・
幼い頃からいつも持ち歩いていた本。遠くからでも見間違いようのない色。
なぜそれが瓦礫のふもとに落ちているのだろう。
ヒメノの手足、そして目元は震えていた。
おぼつかない足取りで近づくと風が吹き本のページがめくれる。
本のページが開かれる。ヒメノは震える手で本を拾い上げ開いたページの1節に目を通す。
「1000年に一度 虹色に輝く巨石が舞い戻る時 白い悪魔が世界を滅ぼすだろう」
何それ・・虹色の巨石ってまんまアレじゃん・・この本って本物の予言書だったの・・・・?白い悪魔も出てきて世界終わっちゃうの・・・・?
ヒメノは今起こっている事態と本の一節を照らし合わせ困惑する。
手足の震えが強くなる。
「ヴェン!どこ行ったのよ‼︎‼︎」
裏返る声で叫びながらヴェンを探すヒメノの目からはいつからか涙が流れていた。
訳わかんない・・なんなのこの本・・なんなのコイツら・・
どこ行っちゃたのよ・・・・ヴェン・・・!
涙を拭きながら拾い上げた本をブレザーのポケットにしまうヒメノ。
いや・・まだ決まったわけじゃない!
両頬をバシッと叩き気合を入れる。
その時突然連邦兵が大勢近づいてきてヒメノを取り囲んだ。
そして1人の連邦兵がヒメノの両手に手錠をかける。
「え・・・・」
「軍事兵器強奪及び戦闘状況介入につき逮捕連行する!」
・・マジで・・・・?
「はぁっ⁉︎なんでよっ!悪者倒したのにっ・・・!おいっ‼︎」
抵抗する暇もないままヒメノは連行されてしまった────
────連邦政府機関の支部施設の取調室に1人閉じ込められたヒメノ。
こんなことしてる場合じゃない・・どうにか逃げ出せないか?
そんなことを考えている間に扉が開き、1人若者が入ってきた。
「やあ!かわいい犯罪者さん。調子はどうだい?」
虫唾が走る調子で話しかけてきた男に飛びかかりそうなのをどうにか理性で抑えるヒメノ。
「なんで私が逮捕されなきゃいけないのよ!敵倒したでしょ⁉︎
被害も収まっただろうし結果オーライじゃん‼︎」
ヒメノは男に向かって叫ぶ。それに対して男は軽薄な調子で話しをはじめた。
「いやいや、まあひとまず落ち着いて話を聞いてよ。君は一民間人でありながら連邦政府の軍事兵器を強奪し戦闘状況に介入したんだ。十分逮捕に値する。」
「あんなヘッポコな操縦してたパイロットが悪いでしょうが‼︎私がやんなきゃもっと酷いことになってたかも知んないのよ⁉︎」
「だから落ち着いてって。そんな君に用意された選択肢は二つあるんだ。聞きたいかい?」
・・・なんでこんないちいちかんに触る喋り方するんだコイツ。
「何よ・・」
「一つ!このまま兵器強奪の罪で豚箱行き!」
笑顔で提案する男を今にも蹴り飛ばしたい衝動を必死で抑える。
・・うわ!すっげぇニヤニヤしてる!むかつく‼︎
「もう一つ!地球連邦政府軍付属のパイロットになる!」
・・・・・・あ?・・・何言ってんだコイツ・・やっぱ見た目通り頭パーなのか?
「フフフ・・驚いて声も出ないようだね!そう!君は選ばれたんだ!」
我慢の限界といったような顔のヒメノを差し置いて男は続ける。
「先程君が倒したボルジャーノンはとあるテロリスト集団のモビルスーツだ。そう!奴らは以前より連邦政府周りをチョロチョロしていたんだが・・これは明らかな戦争行為だ。」
身振り手振りをしながら語る男を
「来たる日に備えてこちらも兵力を備えておく必要がある。そこで君だ!ヒメノ・カストル!君のことは少し調べさせてもらった。」
忙しなく動いていた男の手がついにヒメノに向いた。
「VRMS大会の優勝者『白い閃光』!素晴らしいタイミング!これこそ運命!あのモビルスーツさばき!実に見事だった!」
男は両手をヒメノに向けて広げ笑顔を向けた。
・・うお〜早口でいっぱい話されたっ‼︎・・褒められてるのにすごい腹立つ・・なんで私が戦争やんなきゃいけないの⁉︎・・・・・え・・戦争始まんの・・?
「今恥ずかしながら我が連邦軍は圧倒的に実戦兵士が足りない。まさに猫の手も借りたい状態だ!そこで君に我が軍最新型ホワイトドールのパイロットになってもらいたいっ‼︎。」
・・・ん?・・・今私を猫に例えたのか?・・こういう素で無礼なやつ初めてだ。
「君はあの最新型モビルスーツに乗ってすぐに操縦し瞬く間に敵を倒した。その才能を世界の平和に是非役立ててもらいたい!どうかな?豚箱とどっちがいい?」
男はニンマリとした顔でヒメノに尋ねた。
いらんことを言わないと気が済まんのかコイツは・・!
でも豚箱やだしな・・ヴェン探せないし・・
このままパイロットになって戦争なんかやってもし死んじゃったらもうヴェンに会えない・・途中で逃げるか・・
そうだ!軍に入れば民間人捜索もしやすいしヴェン見つけたら逃げちゃえばいいのか!よし!それで行こう!
長い思考の末にヒメノは小さく声を出す。
「・・一つ条件があるんだけど・・」
男はニンマリ顔のまま聞き返す。
「何かな?」
「爆撃で行方不明になった人を探してるの。それを手伝って!」
男は満足そうな顔をして話を続ける。
「・・・・そうか・・わかった!決まりだな!後ほど被災者名簿を持ってこよう!奇跡的に死者はまだ出ていない。負傷者はいるがどこの病院に搬送されたかのおおよそは記述してある!」
先程までのニンマリ顔がなりを潜め力強い笑顔に変わる。
それを聞いて安心したヒメノの顔からも不安の色が薄まる。
生きてる!
一気に緊張がほぐれ全身の力が抜け視界がふらついた。
男はヒメノの手錠の鍵を外した後自分の手を差し出しハキハキとした調子で声を出す。
「ようこそ地球連邦軍へ!先程君に胸ぐらを掴まれコックピットから摘み出された挙句ホワイトドールから蹴り落とされて肋骨にひびを入れられたマルコ・ビエラ少尉だ!よろしく!」
・・マジか・・あいつか・・怪我させちゃったのか・・さっきヘッポコって言っちゃった・・まあ気にしてなさそうだしいいか・・
男の爽やかな笑顔に対して引きつった笑顔を向けるヒメノが手を差し出す。
マルコはその手をガシッと繋ぎ握手した。
マルコが持って来た被災者名簿に目を通すと知ってる名前がチラホラと見受けられる。
・・アキホとミランダも、みんな軽症・・・よかった!・・・・クラスのみんなも無事だ・・
そこでヒメノは違和感を覚える。
一番見たかった名前が名簿には載っていなかった。
恐る恐るといった様子でヒメノが尋ねた。
「・・・・・ここに名前が載っていない人はどうしたの・・?」
マルコはその様子を感じたのか先程までの軽薄さが鳴りを潜め真剣な面持ちで尋ねる。
「これはまだ断定はできないが、ボルジャーノンのパイロット以外に数名工作員が別シャトルで逃げたらしい、目撃情報からの推測でしかないのだが数名が拉致された可能性がある・・探している者が見つからないのか?」
小さく頷くヒメノ。
「そうか・・ならますますパイロットという立場がメリットになるな。敵を探れば出会える可能性が高まる・・」
マルコの語りかけに反応する余裕もないヒメノ。
「これから拘束したボルジャーノンのパイロットの尋問に立ち会う、君も来るといい。君はもう民間人ではない。敵の情報から探し人の情報も得られるかも知れん!」
その言葉にヒメノは顔を上げた。
・・・・捕虜・・あのボルジャーノンの・・・!・・アイツの仲間がヴェンを・・・!
「どこにいるのっ⁉︎アイツ・・!アイツらっ‼︎」
突然大声をあげて自分に詰めよるヒメノに押されたマルコは慌てて声を出す。
「こっ!この施設の地下独房だっ‼︎・・・びっくりさせるな!急にっ!」
「ボサっとしてないで早く連れてってよ!早くっ‼︎」
「わかったから怒鳴らないでくれっ!怪我に響くっ!」
マルコはまるで連行されるようにヒメノと共に取調室を後にした────