虹色の星空 -Argonauter-   作:ミコユラ

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第46話 今を生きる

 

────────アクシズの虹色に輝く粒子が舞い上がる暗闇の世界。

 

黒い煙を節々から立ち上らせる黎明(れいめい)は静かに佇みながら巨大な花を見つめている。

 

1枚だけ残された花びらを生やした巨大な物体。

その中心部から生えた機械人形。それは血管の様な模様が時折赤く光っている。

 

ゆっくりと細い根のような管を引きちぎりながら上昇し、その全体を見せた天征(てんせい)。

 

華奢な体躯ながら四肢は鋭利な刃物のようにシャープなエッジの効いた赤黒いモビルスーツ。

その背には脊柱のような凹凸のある節が多数生えており、西洋甲冑の様な頭部から覗く尖った双眼は赤く輝いている。

 

アクィラは笑顔で手を掲げ、まるでライラを歓迎するようだ。

 

「素晴らしいよ・・!あの戦士達を相手に・・・その黎明の姿・・・君の心の内を曝け出したようだな・・・」

 

ライラは目を細める。

自身に過去の偉人達の残影をあてがい、それぞれの地球への想いをぶつけるかのような、ライラ自身に何かを気づかせるつもりなのであろうか。

 

あの4機の心情。それぞれの人類への想い、それを感じた。

 

しかしライラは先の戦いで矛盾する自分の心を自覚してしまった。

 

彼らの為し得なかったその先、この世界の救済。人類の希望の光を絶やすまい。改めて決意を強める自分。

 

それに反しこの世界全てを憎悪し自らの手で幕を下ろそうとしていた頃の自分、深く閉じ込めたはずのそれは心の奥底から這い上がってきてしまった。

 

最も信頼していたかつての友。堕落したその姿を目の当たりにしたのだ。一つの絶望の確信。それが引き金になってしまった。

 

「アクィラ・・・貴様は彼らを通して何を見たかった・・?私が貴様に共感するとでも思ったか?」

 

アクィラは首を振る。笑顔を絶やさないまま。その笑顔はまるで何かが待ち遠しくてたまらないと言った様子。

 

「いや・・・君の覚悟を見たくてね・・・想像以上だった・・・それと同時に感じたよ・・・やはり君は私と心を同じくする同志になり得る存在だ・・・友よっ!」

 

天征は黎明に向かって猛スピードで迫る。

かつて戦った時とは比べ物にならないほどのスピード。

ライラは無表情のままに機体を天征へ差し向ける。

 

光弾を放ち合う両者。

そのスピードを持って相手の光弾をかわしながら暗闇の世界を駆けてゆく。

 

「かつての貴様は世界の歪みを憂い・・それを正そうとしていたはずだ!それが何故世界を・・・!地球を消そうなどとっ!」

 

「ハハハッ!私が地球の愚民共を見限ったとでも⁉︎・・・逆だよライラ!」

 

光刃を抜いた天征が黎明の懐に飛び込む。

黎明も光刃を抜き鍔迫り合いに持ち込む2機。

激しい輝きは2人の心のぶつかり合う火花にも見える。

 

「奴らが私やイー・・・そして君までも切り捨てたのだ・・被害妄想の果ての手前勝手な理由付けでっ!」

 

「フンッ!その怨念返しってか⁉︎浅はかにも程があるぞアクィラ!」

 

激しい鍔迫り合いにより溜まったのであろうエネルギーが炸裂し、両者は遠く弾き飛ばされる。

なおも強く吹雪く虹色の輝きは両者を囲むように渦を巻き集まってきた。

 

天征はまた光弾を連射しながら辺りを飛び回る。

その光弾を正確な射撃で撃ち落としながら黎明も同じく飛び回り天征に迫ってゆく。

 

「くだらないな!このまま野放しにすれば全世界を滅亡に追いやると気づいたからだ!宇宙に出(いで)た人類は前へと進んでいるのにも関わらず!」

 

黎明は緑色に輝くリングを天征目掛けて投げつける。

ブーメランのように光の弧を描きながら飛ぶリング。

 

「ガンダムなどと言う過去のまやかしにすがり!愚民共は周りの者を道連れに籠へと閉じこもろうとする!見当違いの扶助(ふじょ)による洗脳!そして命への不義理!」

 

天征はその背からうごめく脊髄の様な触手を多数伸ばして緑色の光刃を纏ったリングをいとも容易く弾き飛ばす。

触手を伸ばしたまま黎明に迫る赤黒い機体。

 

ライラはそれに向かって光弾を放ち続ける。

冷酷な表情の中にどこか悲しみを浮かべながら。

 

「それでも貴様が愚民を一掃したところで何が変わる!追い出された民は恐怖のままに世界を憎むだろう!私たちの様に!それは新たな歪みとなる!」

 

光弾をかわしながら迫る天征に向けて走る黎明は自身の発する黒煙により汚れ、その体が闇に染まりつつある。

 

いつからか黎明の光刃までもが激しい煤煙のように黒く染まり、双眼を赤く光らせるその姿はもはや異形の怪物のよう。

 

「希望を潰し続けるよりよっぽど世界のためだとは思わないか⁉︎君やエマ・シュリク!フー、リル・ドッペル!そしてディスケ・モンテーニュ!」

 

天征の触手が黒い煙を貫くも、どういうわけかすり抜けて手応えがない。

黎明は黒い太刀を振り下ろして触手を1本切り裂いた。

すかさず飛び抜ける天征。

 

「愚民は全ての希望を握りつぶす!彼女の可能性を直視せず!伝説の英雄などと言う自らを誤魔化す定義を立てて!」

 

「何を言っている!ボケたか⁉︎」

 

再び光刃をぶつけ合う両者。天征の光刃とぶつかる黒い太刀はあたりに煤を撒き散らし、暗闇の空間すら闇に染めてゆく。

 

「エマ・シュリク!彼女は君を超えた真のニュータイプ!その光でこの世界を照らすはずだった!」

 

ライラの目が見開かれる。

ライラ自身感じていた事だった。

エマを救いきれなかった。この世の光を曇らせてしまった。そして彼女の可能性を塞いでしまった。

 

それはライラの胸に深く突き刺さった杭そのもの。

 

「ディスケ・モンテーニュの実験・・・そしてフーの誕生・・・全て彼女から得たデータを元にした物だ・・・」

 

「まさか・・フーが捨てられたのは・・・⁉︎」

 

黒い太刀を弾き飛ばして後ろに飛ぶ天征。両者は動かずにただ佇んで向かい合っている。

 

「彼女のデータに及ばない物など伝(・)説(・)の(・)再(・)臨(・)とは言えない・・・と言う事だ・・・君という人間を買い被りすぎたようだな!愚民共は!」

 

「そんなくだらない事で・・・私のせいで・・・あの子は・・・2重の苦しみを・・・」

 

ライラは両手で顔を覆う。

伝説の英雄という美化された存在となった事で起こった悲劇。

リルへの贖罪。エマへの悲嘆。フーへの懺悔。ディスケへの憐れみ。

そしていつまでもまやかしにすがり続ける愚民共への激しい憤怒が湧き起こる。

 

「全ては伝説の英雄を自らの下に生み出し世界を自らの物とするため・・・奴らは君を求めていたんだよ・・都合よく操れる君をだ。」

 

ライラの中の何かが崩れてゆく。

 

深淵の闇となったホワイトドール、黎明は静かにライフルを上げ、その銃口を天征に向ける。

 

「そうだ・・・それでいい・・・君は魂を同じくする者・・その憎悪を吐き出し共に世界を粛正しよう・・・!」

 

ライラの表情は冷め切っていた。微かに残した希望への渇望すらも捨て去ってしまったかのように。

先の言葉。かつての友はあの時本当に死んだのだと。それを殺したのはライラ自身でもある。

 

今目の前にいる男はその抜け殻に見えた。

彼の崇高な想いは歪み、堕ちた。

 

せめてその抜け殻は自身で葬る事が彼へのせめてもの弔いではないか。

 

その後の事などどうでもよくなってしまった。

 

疲れたのだ。

 

400年足掻き続けて来たライラは友の真の死を確信して疲れてしまった。

 

すでに涙は枯れてしまった。

 

アクィラは狂気を孕んだ笑顔を向けてモニターに映る黎明、そしてその奥に見えるライラに向けて手を伸ばす。

 

「こちらに来いライラ!愛しているよ・・・心から!・・・こっちに来いライラァッ!」

 

ライラは冷たい表情のまま口を開く。

 

「アクィラ・・・ずっと一緒だったな・・・ガキの頃からずっと・・・」

 

闇に染まった指がライフルの引き金にゆっくりとかかる。

 

「お前を愛していたよ・・・1人の人間として・・・友として・・・男として・・・愛していたんだ・・・」

 

手を伸ばすアクィラに対して赤く染まる冷たい瞳で見つめ返すライラ。

 

「・・・さらばだ友よ・・・・消えてなくなるがいい・・・・・・」

 

冷たく重い声が暗闇の空間に響く──────

 

 

 

 

──────あいも変わらず鬼ごっこに興じているかのような晦煌(かいこう)と黒蓮(こくれん)。

 

しかし逃げ惑いながらも反撃の一手を探っていた少年。

 

「貴様らのような餓鬼が世界の行末を案ずるなど分不相応にも程があるのだっ!その無礼な振る舞い!仕置きだけでは済まさんっ!」

 

「キレた母親かよっ!そんなことしてる場合じゃ無いだろ!イー子さんっ!」

 

やはり逃げながらしっかり茶化しと侮辱を入れるヴェン。

 

「・・・・・・」

 

もはや怒鳴る価値すら感じなくなってしまった男。

晦煌は無言のままに光線を四方に撒き散らす。

 

それをすり抜ける黒蓮に向かって腕の砲門から光線を放った。

先程のように花びらのビットが集まり花冠を作る。

光線はそれに吸収されるかのように霧散し、ビットは更に輝きを増す。

 

「デウケース・・貴様は地球を守るだのあの小娘を守るだのとほざくが何がしたいのだ・・?チョロチョロと優柔不断にしか見えんぞ!ハッキリしろっ!」

 

「急に説教かよ!アンタ達こそ何がしたいんだよ!人を泳がせてニヤニヤしたり隕石落とそうとしたり!そっちこそハッキリしろ!」

 

イーは至極真面目な顔で話を返す。

 

「質問に質問で返すな!そういう常識から身につけろと言ってるんだ!答えろ!貴様は何を成したいっ⁉︎」

 

先程の敵意から打って変わって普通の、学校の先生のような説教に変わって来た異様な雰囲気、少年は調子が狂い少し口に詰まりながらもどうにか返そうと思案する。

 

「何を・・・って・・・決まってんだろ!生きるため!この世界で・・・!」

 

言いかけ次のセリフが湧いて来たことで急に赤面し出す少年。イーは黙って聞き入っている。

ヴェンは息を正し、声を張って堂々と声を出す。

 

「アイツと一緒に大人になって・・・!アイツが笑ってて・・・アイツと一緒に笑いながら生きてくためだっ!そのために!アクシズでもガンダムでもぶっ飛ばす!」

 

フッと思わず鼻で笑ってしまったイー。すぐさま咳払いで誤魔化したが少年は聞き逃さなかったようだ。

 

「なんだよ!聞いといて鼻で笑うとは失礼な!」

 

またため息をつくイー。

この戦いで何度目だろうか。

 

「貴様は言葉は幼稚だがその根本はアクィラ様に近いのかもしれんな・・・本当に・・・はぁぁぁ〜」

 

心底疲れた者のため息。思わず心から心配してしまった少年。

 

「大丈夫かアンタ!1日何回ため息つけば気が済むんだよ!そんなに疲れてんなら休暇取ればいいだろ!今時社畜根性なんてはやんねぇぞ?」

 

またもや眉間に皺を寄せて歯を食いしばるイー。

この少年の事を評価しようとするたびこの非礼。

これのせいでどうも素直に褒める事ができず、逆に嫌悪感が増すのだ。

 

「空気の読めなさ加減も・・・っ⁉︎」

「なんだ⁉︎」

 

なんとも言えない雰囲気の中、突如重く暗い空気がアクシズ中を包み込んだ。

威圧でも無い不気味で粘度の高いもの。

 

「・・・少佐・・・⁉︎・・・アクィラ様!」

 

晦煌は突然バーニアをフル点火して何処かへ飛んでいってしまった。

1人残された少年は唖然としている。

 

「・・・ヒメノ・・?・・・あの声!」

 

この暗い雰囲気の中で少女の不安な声を感じ取った黒蓮もまた晦煌が飛び去った方向へと向かう──────

 

 

 

────────疑問に疑問で返し合う2人。

 

ノウェは悪に堕ちた親友に魂の叫びをぶつける事で救い出そうと躍起になっていた。その結果が「え?」という一言。

 

何故だ⁉︎この熱い気持ちになんでそんな軽くアホっぽい一言を返せるのだ⁉︎どうしちまったんだ相棒⁉︎という感情が混ざり合い、爆発した事で図らずもノウェが発した一言。

それはそれら全ての感情を内包し超越した言葉。

 

「え?」

 

同じ思考レベルを持つ男達はお互いの思慮を咀嚼する能力など持ち合わせてはいない。

 

アルはノウェのその一言の持つ意味を全力で解析しようとした。

 

無理だった。

なので先程と同じ言葉を返してみる。

 

「・・・どゆこと?」

 

「え・・・どゆことって・・・なんでそんなんなっちゃったのって・・・」

 

「え・・・そんなんなっちゃったって・・・え・・・俺変わっちゃった?」

 

話が全く噛み合っていない。

ノウェは親友が悪の道に堕ちたものだと思っている。しかし当のアルにはそんな自覚など微塵もない。

 

「・・変わったぁ・・・ぁぁって言われると変わってない・・ぃぃ・・・違う!このでかい石っころ地球にぶつけて壊しちまおうなんてくだらねぇ事するなんてよぉっ!見損なったぜ!・・・っつ〜事なんだけどぉ・・・違うの?」

 

「え・・・初耳・・・マジで⁉︎」

 

本気で驚いている声色。

ノウェは頭がこんがらがって来たようだ。

素朴な疑問が湧いてくる。

 

「え・・じゃあなんでアイツらと一緒にいんの?」

 

「そりゃ助けてもらったし!蝕狼くれたし!長生きすればその分長くお前と戦えるって!カラオケもいっぱい奢ってもらったしよぉ!まぁ〜イーコさんはよくキレてっけど悪い人じゃないしみんな楽しいぜ?」

 

エリュシオンの餌付けは大成功のようだ。

自身の身を置く組織について全く警戒もしていなければその行動目的すら把握してはいなかった。

 

「えぇ〜・・・今さ・・・この石っころ地球に向けて飛んでんだ・・・」

 

「え⁉︎マジで⁉︎こんなん落ちたら地球やばいじゃん‼︎」

 

「そうなんだよ!地球滅茶苦茶になったら宇宙も滅茶苦茶で決着どころじゃないぜ!」

 

「大将!いけないぜそりゃあっ!」

 

「おっ!じゃあ説得に協力してくれよ!」

 

「あったりめぇじゃん!」

 

蝕狼は残された華奢な後腕を差し出し、ケーブルや駆動骨部を剥き出しにした状態で小さな紅焔の拳とぶつけ合う。

 

「「行くかっ!相棒っ!」」

 

話の途中から妙にドロドロとした嫌な空気を感じてはいたが特に気にしていなかった2人。

紅焔と蝕狼は戦いをやめてその空気が流れて来ているだろう方向を目指して飛び始めた──────

 

 

──────お互いに光弾を撃ち合いかわし合う2機のホワイトドール達。

 

外見の年齢は違えど同じ顔を持つ者同士。

その思想は全く混じる事なく反発し合う。

 

「貴様のその姿!無理矢理成長を止めねば生きながらえることもできない出来損ないがっ!」

 

廻羅(かるら)は刃のようなビットを蒼翠(そうすい)に嗾(けしか)ける。

蒼翠はそれに対抗するかのように種子のようなビットを排出。

それは展開してたんぽぽの綿毛のような形状になり飛び回り、廻羅のビットから放たれる光弾を弾いてゆく。

 

「それでも1(・)人(・)の(・)人(・)間(・)と(・)し(・)て(・)生きて来たの!せっかく普通に生きれる体を持ってるのにフーと来たらっ!」

 

蒼翠はまた違う形状の種子を複数放つ。

それは廻羅の眼前まで飛ぶと破裂し、白い綿のような物体が膨らみ視界を潰す。

 

「小賢しいっ!私は生きるさ!人間となって生きてやる!さっさとくたばれぇっ!」

 

苛立ちを強めて綿を払おうとした矢先、その綿は廻羅の腕に絡みつき動きを鈍くさせる。

 

「クソがぁっ!戯れるなと言っている!ふざけるなぁっ‼︎」

 

叫びと共に翼から激しく漏れ出す赤黒い輝き。

それに引火するかの如く綿は燃え広がり、その赤黒い炎は廻羅を包み込む。

 

「つまらない意地張ってるからそんな目に遭うの!お姉ちゃんが人生の大先輩として教えてあげる!」

 

節々から赤黒い輝きを放つ廻羅。その輝きを持って黒炎を消し飛ばし蒼翠に向かって迫る。

 

「貴様如きから教わるものなどないっ!くたばりぞこないがぁっ!」

 

再び光刃がぶつかり合う。お互いの機体は眩い輝きを放ち、それに照らし出された冥蘭(めいらん)はぼんやりと黒く光っている。

 

「ミス辺獄(リンボ)に向かって失礼な!偽物でもライラ(オリジナル)を超えられるっていう生き証人だよ!」

 

「意味のわからん事をベラベラとっ!貴様が超えられるなら私にも出来るはずだろうっ!」

 

叫び合っている内にいつの間にかリルのペースに乗せられ始めたことに気がついたフーはハッとした表情。

釣れた!の表情でニヤリと笑うリル。エマも少し安心したのか微笑みを浮かべ始めた。

 

「どうかな!私はこの愛くるしい見た目とおしとやかさでライラを差し置いてぶっちぎりでミス辺獄を勝ち取ったの!それは私が偽物ではなく1人の人間として評価された証明!アナタにそれが出来る⁉︎」

 

先の憎悪に歪んだ顔ではなく外見年相応のムッとした表情で蒼翠を睨みつけるフー。

完全に姉の挑発に焚き付けられている。

 

「ハッ!そんなガキんちょが1番になれるほど堕ちたコロニーなど!貴様がそこで1位なら私はこの宇宙で1番の投票数取ってやるよ!ブス共‼︎」

 

「ほとんど同じ顔のクセによくも言えたわねっ!ブーメラン!その厚顔無恥な図々しさ!ライラそっくり!」

 

「一緒にするな!このフー・バラクの淑(しと)やかさに敵う女などこの世界にいてたまるかっ!私はこの宇宙の中で銀色に輝く一番星!貴様ら野蛮なブス共とは違うのだっ!」

 

ライラの遺伝子には自分の外見を天よりも高く見れる因子でもあるのだろうか。

忘れてはいけないのが両者は光刃による鍔迫り合いの真っ最中。

つい先程までぶつけていた激しい憎しみと劣等感はどちらがより美しいか、宇宙規模で言ってしまえばみみっちい争いへと降格してゆく。

 

「なら勝負よ!ライラも入れて誰が一番か!全宇宙をハックして決めるのっ!」

 

「ハッ!そんな口車に乗るとでも⁉︎今ここで貴様らを殺すと言っている!」

 

リルは決まった!と目を光らせて笑う。

このくだらない問答でフーの自尊心を限界まで引っ張り出すことに成功したようだ。

 

「あぁ〜・・全宇宙の前で負けるのが怖いんだぁ〜・・・その程度の自信しかないんだぁ〜・・・一番星ってその程度なんだぁぁ〜!」

 

「なっ!ふざけるな!ハハッ!いいだろう!全宇宙の前で無様な吠え面かかせてから処刑してやるよクソ女!」

 

「アハッ!上等!お姉ちゃん達を舐めちゃいけないよ!」

 

そう笑いながら蒼翠は飛行形態に変形し何処かへと飛んでいってしまう。

悔しさに顔を真っ赤にしたフーは廻羅の翼から爆明を噴射してそれを追う。

 

途中から挑発ではなく本気になっていたリルとあっさりと釣られ、本気でムキになるフーに呆れ笑いを浮かべていたエマは突如不穏で重い空気がこのアクシズを包み込んだ事に悪寒を覚え、2人が飛び去った方向を不安げに見つめていた──────

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