捕虜が幽閉されている地下独房──
マルコが扉を開けるとそこに椅子にベルトで拘束された1人の若い男性が座っている。
傍らにはマルコと同じ制服を着た女性が立っていた。
「その子が例の?もう決まったの?」
「ああ!二つ返事で決まりさ!」
何カッコつけて言ってんだ・・そこまででもないだろうに・・
それにしても何この男・・顔真っ白じゃない・・人間?・・
「何だその小娘は?ハッ!連邦政府は学生のお遊びをしてるのか⁉︎」
「その学生の遊びの結果君はここで拘束されているということだ。」
「⁉︎」
「そう、君のボルジャーノンを撃墜したのはこの子だ。我が軍のエースパイロット!」
いつから私がエースパイロットになったのだ?・・コイツ盛りグセがあるな・・
「さて・・そこの彼女からもう話しはあっただろうがもう一度付き合ってもらう。君たちの目的は何かな?わかりやすく頼む。」
その話ぶりからするとイカれた発言が多かったのかな
まあテロリストってそんなイメージあるしな・・
「何度でも言ってやるさ!我らはアクシズと共に貴様ら地球人に粛正を下す者!時は来たのだ!アクシズは帰ってきた!聖典に記された終焉の時!我々は白い悪魔なぞに屈指はしない!」
「・・わかりやすく頼むと言ったのに・・」
あー・・なるほど・・わかんない・・・・さっぱり・・
!・・今聖典って言った⁉︎
「聖典ってこれ⁉︎」
ヒメノがブレザーのポケットからヴェンの本を取り出した。
「⁉︎なぜ貴様がそれを持っている⁉︎それを持っていてなぜアースノイド共に味方する⁉︎」
・・これやっぱりやばい本だったんだ・・だからヴェンが・・・・!
ヒメノは大事な事を思い出す。
「ヴェン!あんたヴェンをどうしたの⁉︎どこやったのよ‼︎」
捕虜の胸ぐらを掴んで詰め寄るヒメノ
マルコと女性は慌ててヒメノを引き剥がす
鼻息の荒いヒメノに向かって男は言った
「知るかそんなやつ!」
「貴様らの仲間が数名民間人を拉致したという目撃情報が入っている。真実か?」
「・・ハ・・ハハッ!ああそういうことか・・ならそいつはアクシズに選ばれたのだろうな!」
「さっきから意味わかんない!アクシズって何よ!あんたの仲間⁉︎」
「ウハハハッ!何も知らない小娘が!あの虹の巨星こそアクシズ!我らニュータイプに希望をもたらし悪しき地球に粛正を下す!」
マジで何言ってんだコイツ・・完全に言っちゃってる・・話にならない・・
ただマルコと女性は至極真面目な顔で聞き入っている。
突然机にホログラム液晶が浮かび始めた。
映像にはサングラスをかけ黒い長髪を後ろで束ねた酷く白い顔の男が立っている。
マルコに無線連絡が入る。
「少尉!何者かが地球圏全空域に電波ジャックを仕掛けました!
発信源特定できません‼︎」
映像の男が口を開く
「全宇宙の皆様、私は星に選ばれし者達『エリュシオン』首領、アクィラ・アードラーというものだ。まず先の攻撃によりコロニーに住むスペースノイド諸君らに多大な被害をもたらしてしまったことを深く詫びる。あの様なことは我々も望んではいなかった、申し訳ない」
男は深々と頭を下げる。
なぜか黙って聞き入ってしまう不思議な声色だ・・
「スペースノイド諸君!我々は地球連邦政府に対し宣戦布告する。
私は歴史の観測者にして重力に魂を縛られたもの達に踏み躙られてきたものの代弁者。聖典に記された1000年に1度現れる虹の衛星アクシズと共に地球人共が生み出した世界を滅ぼす白い悪魔を討伐する。そして全宇宙に平和と自由をもたらすことを約束しよう」
軍隊とかテロリストとか頭パーばかりしかいないのか?
あのでかい石ころとこの本なんの関係があんのよ・・本当に白い悪魔なんているの・・?
ん・・?地球人が生み出したって言った?・・白い・・ホワイトドール?・・まさか・・
マルコと女性はまたしても真面目な顔で映像を見ている。
え・・マジなの?白い悪魔ってホワイトドールのこと?英雄じゃないの?悪魔なの・・?
映像の男はまた続ける
「我らと共にアクシズに選ばれしニュータイプ達よ!連邦政府の欺瞞と悪意に満ちたこの歴史に終止符を!真実を知り今こそ立ち上がる時だ!」
ホログラム映像が突然消えた。
「さっきからアクシズとかニュータイプとかなんなの?」
そう聞かれたマルコは答える。
「アクシズはよくわからないがニュータイプとは宇宙に適応したスペースノイドの一部を指す言葉だ。なんというか・・エスパーの様な者達のことを言うらしい。昔の大戦時にもニュータイプ達が関わっていたと言う話しかわからない。」
エスパー?パーだマジで。エスパーなんているわけないじゃん。スプーン曲げとか透視で世界が救えるか!
「じゃあヴェンはエスパー疑惑で拉致されたっての⁉︎スプーン曲げどころか空気さえ読めないダボスケが⁉︎」
「・・?スプーン?まあその可能性はある。君が持ってるその本・・そのヴェンという子の持ち物なんだね?」
「そうだけど・・何?」
「その本はどうやら彼らのいう聖典らしいな。それを持っていたということは少なからず彼らの関係者と疑わざるを得ない。」
「何言ってんの⁉︎ヴェンがこんなテロリストどもの仲間なわけないじゃん!小さい頃からずっと一緒だったのよ⁉︎天然だけどエスパー感なんてゼロだったし!地球を滅ぼそうなんて考えもしてなかった!私と一緒で地球に行くって・・・・」
喋りながら涙が溢れてきた・・
マジでどこで何してんだあのダボスケ!どこ行ったのよ・・!
女性がヒメノにハンカチを差し出す。
「マルコ、ひとまず彼女が落ち着いてから話しましょう。大切な人だったのね・・・・」
久しぶりにまともな人に出会った気がするヒメノ。
マルコは訝しむような目つきででヒメノを見つめていた。