──暗闇を1人歩くヒメノ──
・・どこここ・・真っ暗で何も見えない・・・・
向こうに人影が見える。
無礼なボサボサの青黒い髪・・・・黒い変なスーツ着てるけど見間違いようのない後ろ姿・・・・ヴェンだ・・
・・ヴェン‼︎・・
ヒメノは叫ぶもその声は彼には届いていないようだ。
ヴェンともう1人人影が見える。
・・・・アイツ・・・・映像で出た男だ・・なんだっけ・・アキラとかなんとか・・ヴェンと何してるの・・?・・私の声聞こえないの?・・
黒い長髪を後ろで束ねサングラスをかけた長身の男。
なかなか見ないほどの真っ白な顔。
エリュシオン首領「アクィラ・アードラー」その人である。
アクィラはヴェンに語りかける。
「気分は落ち着いたかな?」
相変わらず不思議な声色だ。
ヴェンは俯きながら小さく頷く。
「君のその感じ方は本物である証明だ・・気に病むことはない・・戦時において自身を守るためだったのだ・・」
「・・それでも・・俺がしたことに違いはない・・アレは相手の記憶か?・・」
「恐らくそうだろうな・・だが何度でも言うが君が気に病むことはない・・君のそのある種の優しさは君の武器になり得る・・ただ諸刃の剣でもあることを知ってほしい・・」
顔を上げるヴェンに男は続ける。
「戦場に出れば君は一つの状況単位に過ぎない存在となる・・冷たい言い方かもしれないがそれも事実だ・・1人の感情で戦況が大きく傾くことさえある・・君のその優しさは敵ではなく想い人のみに捧げるのが賢明だと私は思う・・」
「・・俺は・・・・」
「・・・・無理強いはしない・・だが君は助けたいのだろう?・・ならば前へと足を踏み出すべきじゃないか?」
「・・そうだ・・俺は約束したんだ・・ずっと一緒にいて・・守るって・・」
「そうだ・・君のその誓いを守るため・・そして想い人を奴らの『狩り』から守るために・・そしてそれは世界を滅びの運命から守ることにもつながる・・」
・・何の話してんだよ・・想い人って私か?私なのか?私ここにいるよ!・・見ろ!こっち見ろダボスケ‼︎おい!おーい‼︎聞け‼︎
ヒメノは何度も呼びかけるが聞こえないようだ。
近づいて殴ろうともしたが一向に近づけない。
「・・その目・・意は決まったようだね?・・」
「ああ・・アイツを守るためなら何だってやるさ・・それにもうこんなことは起こさない・・強くなるよ・・」
「いい子だ・・ヴェン・・」
・・何まとめに入ってんだよ!聞けよ!ここにいるんだよ!私・・・・私人殺しちゃったんだよ・・ヴェン・・聞いてよ‼︎
ヒメノがそう叫び手を伸ばした瞬間ヴェンが何かに気づいたように後ろを振り向いた。
・・ヴェン‼︎
伸ばしたヒメノの手は赤黒く染まっていた。
・・⁉︎・・何これ・・
次第に2人が遠く離れていく。
・・嫌だ・・行かないで!・・行かないでヴェン‼︎
「ヒメノ⁉︎」
ヴェンがそう叫んだ時には2人の姿は暗闇に消えていた・・
「行かないで‼︎」
叫びながら目を覚ましたヒメノは見知らぬ部屋のベッドに横たわっていた。
「ヒメノ!気づいたの⁉︎」
ヒメノの傍らにはリリアが座っていた。
あたりを見回すとどうやら医務室らしい。
ヒメノは自分の頬に涙が流れているのに気付き拭った。
「大丈夫⁉︎あなた丸二日も眠っていたのよ!」
二日・・・・じゃあさっきのは夢・・?・・
「・・リリアさん・・ここは?・・」
「巡回監視艦『
「・・!・・コロニーを出たって・・今宇宙ってこと・・?」
リリアは暗い表情で頷く。
そこにマルコが入ってきた。
「起きたかヒメノ・・気分はどうだ?ずいぶんうなされていたようだが・・」
・・あの夢のせいか・・それとも・・・・
「こんな状態で何だが、今本艦は月に向かっている。航路はもう変更できないが・・月での任務が終われば一度『星契』に戻り君を家へ帰すこともできる。ヒメノ・・君はどうしたい?」
「ちょっと!今その話をしなくても!」
「だからこんな状態で何だがと言ったんだ!決めるなら早いほうがいい。」
「なんて無神経な!16歳という多感な時に我々が戦争に巻き込んだからこんなことになってるのよ⁉︎」
「わかってる!だから彼女に再度選択してもらうのだ!」
・・ああ・・やっぱりあのモビルスーツ撃墜したの夢じゃないんだ・・・・私人殺しちゃったんだ・・・・
「・・・・ごめん2人とも・・少し1人にして・・・・」
「・・そうね・・ごめんなさい・・・・あなたの部屋も用意できてるから案内するわね・・・・」
ヒメノは乗組員に与えられる1室に案内される。
「ここがあなたの部屋よ。ベッドやシャワーカプセルも付いてるから自由に使って・・まずはゆっくり休んでね・・」
「・・うん・・・・ありがとうリリアさん・・」
そう言ってドアを閉めたヒメノはしばらく何もせず体育座りのまま部屋の宙を浮いていた。
・・あっちはは夢だったのかな・・ヴェン何やってんだろ・・まさか本当にあの変なやつと・・・・
ヒメノは頭をブンブン振って想像をかき消す。
ふと部屋の角に自分のカバンを見つけた。
中を漁るとヴェンの本が出てきた。
・・何度かからかい目的で取り上げて読んだことあるけど内容さっぱり覚えてないな・・・・
ヒメノは本を開き1ページ目に目を通す。
──虹は去った 破壊からの再生 再び足を踏み出そう──
・・一行目からすでにだるいな・・何でこんな本持ってんだバカ・・
ページをパラパラめくり適当なとこで止めてまた目を通す。
──今再びの新天地へ 民を間引き 再び己に歯向かうことなきように
──再び化身を生み出す 世界は裂けた 新たなる希望を踏み潰す
──希望に喰われてはならない 王の化身は悪魔と化すだろう
・・・・あー無理・・もう無理・・こんな本読んでても何にもならん!
ヒメノは本を放り投げて窓から見える宇宙を眺めた。
アクシズと呼ばれていた巨石はいまだに虹色に輝いていて宇宙を漂っている。
・・白い悪魔って言われたな・・やっぱりホワイトドールが世界を滅ぼすのかな・・・・てことは私が悪魔になるの?・・ヴェンはそれを止めようとしてるの・・だからアイツのとこいるの・・?
また頭をブンブン振って想像をかき消す。
・・違うそうと決まったわけじゃない!アレは夢だ!夢!
再びアクシズ眺めたヒメノ。
ふとアクシズの周りに小さな光が円を描くように走った。
・・なんだろう・・なんか不安じゃなくなってきたな・・なんで?
・・そうだよ!ヴェンを探して助けなきゃ!こんなとこでクサクサしててもしょうがないじゃん!
両頬をバシッと叩こうとするが無重力のため力なくペチンッとなった。
「また戦うことになるかもしれない。それでも!」
「「また会いたい!」」
・・⁉︎・・・・ヴェン・・?・・気のせいか?・・
「強くなる!もっと操縦上手くなってあんなこと二度と起こさない!」
ヒメノはアクシズに向かって叫んだ。
「私はヒメノ・カストルだ‼︎やってやる‼︎」
ヒメノは部屋を飛び出して行った。