巡回監視艦『群雲』の休憩談話スペース
2人の男女が話をしている。マルコ少尉とリリア少尉だ。
「だから反対したのよ!あの子は16歳で普通の女子高生!体験するべきじゃないことを体験したのよ!」
「・・だがリリアも見ただろう?あの子のあの才能。アレは本物だと思う・・」
「だからって戦争の道具にするの⁉︎」
「違う!だからこそだ!あのまま野放しにしていたらヴェンっていう子と同じような目に合うかもしれない。」
・・リリアはそう言われて黙る。
「でも・・もしあの子が本当にそうならこのまま連邦にいるのも危険じゃない・・・・」
「だから俺たちのいる群雲に一緒に乗ってもらうんだ。それならあの子を守ってやれる・・」
「・・マルコ・・・・じゃあやっぱりあの噂は本当なの・・?」
「断言できない。そうじゃないと信じたい。それにあの子が本物ということも・・・・」
「・・・・あの〜・・」
突然声をかけて2人は急に立ち上がり宙に浮いてしまった。
リリアの握り締めた給水パックから水玉が吹き上がりマルコにポコポコ当たって弾けていく。
「一体全体どうしたんだ急に!まだ具合がすぐれないか⁉︎」
「だだ大丈夫⁉︎気持ち悪い⁉︎お腹空いたかな⁉︎」
・・・・急にどうしたんだ2人とも・・夫婦漫才みたいになってる・・何話してたんだろ・・噂とか本物とか・・
「あーいやー・・そのー・・色々心配かけてごめんなさい!」
ヒメノは頭を下げた。その慣性で浮いてしまう。
「ああ!いや、その!もう大丈夫だから!私パイロット続ける!」
慌てて天井を軽く蹴り2人の元に戻るヒメノに2人は驚愕する。
「でも!またあんな目にあったりしたら!」
「大丈夫!リリアさん!言ったでしょ?ヴェンを見つけるためならなんだってやるって!もっと上手くなってエースパイロットにだってなんだってなってやる!もうあんなことにはさせない!」
「・・ヒメノ・・でも・・」
言いかけたリリアの肩をマルコが掴む。
「・・本当にいいんだな?」
深く頷くヒメノ
「私は百戦錬磨のヒメノ・カストル!言ったことは絶対やり抜いて見せる!」
リリアは不安そうだがマルコは満足そうだ。
「よし!カストル!今船はもうじき月に到着する。今回の任務内容はホワイトドールのパーツ回収及びテロリスト集団の摘発巡回だ!」
「パーツ?」
「あのホワイトドールは地球直轄コロニーで開発されたのだが一部のパーツは月の工場で作られている。月でしか作れない特殊合金制でね。」
「月に工場があるの⁉︎人いるの⁉︎」
「・・?そりゃそうだ。月は人類が宇宙に出た初期の頃から開発されている都市だ。遺跡も多くオーパーツも出るとかなんとか。
「オーパーツ⁉︎謎の飛行機オブジェとかクリスタルドクロとか⁉︎」
目を輝かせて質問攻めしてくるヒメノに珍しくマルコが押されてる。
「あー・・そういうオカルトチックなのはないと思うわ・・何百年も前のモビルスーツの残骸とか宇宙船の残骸とかそういったものよ・・」
少女の夢を潰すのが申し訳ないといった感じの笑顔で答えるリリア
「ただいつの時代かわからない物も多く出土するらしい。そういった意味でのオーパーツだ。」
ヒメノは明らかになんだつまんね〜といった顔をしていたので2人は笑う。
「まあ元気になったことだし食事にしよう!それが終わったら艦長に挨拶だ!」
「艦長・・・・はい!」
活気を取り戻したヒメノと共に2人は食堂へ向かった。
食事を終え中央ブリッジに上がったヒメノ達
艦長らしき厳つい中年の男が座っていた。
「イワオ艦長!カストルが任務復帰可能になりましたことをご報告いたします。」
マルコがかしこまった口調で声をかけた。
・・こいつがこんな丁寧に喋るってことはやっぱり見た目どうり怖いのかな・・
「ご心配おかけしました。す・・申し訳ございません!」
精一杯の丁寧語で話すヒメノ。
「・・うん・・本当に大丈夫なのか?」
「はっ!以前ご報告させていただいたように腕は確かですし実績も申し分ありません!この通り心身共に回復いたしました!本人の気迫も十分です。どうか!」
「・・わかった・・・・2人とも監査役としてしっかり頼む・・」
「「はっ‼︎」」
緊張したまま中央ブリッジを出たヒメノ達
「今のがこの艦の艦長イワオ・スターク大佐だ。」
「あんなふうに見えてあなたのこと一番心配してたのよ」
・・意外・・あの怖いおじさんが心配・・
「ああ、青ざめた顔して慌ててたな。」
・・マジか!あの怖いおじさんが慌ててただと⁉︎
「!・・ああ。もう着くな。他のみんなも招集するから2人は先に着替えてモビルスーツデッキに行っていてくれ。」
マルコは2人と別れ隊員達を呼びに行った。
「そういえばホワイトドールのパーツ回収ってなんで?壊れてないのに。」
「ざっくりいうと装備変更ね。あなたのVRMSの映像とボルジャーノン、ズサンとの戦闘記録からあなたにあった装備に変えた方がいいんじゃないかっていう意見が出てて。」
「私にあった?」
「そう。前々から別装備の準備も想定してたみたいでそれを元にしたから意外と早く上がったのよ」
・・装備変更・・この間初めて乗ったのにまた感覚変わるのか・・大丈夫かな・・
パイロットスーツに着替えコックピットブリッジに上がるヒメノ
ノペッとした顔の零式が仁王立ちしている。
「リリアさん。連邦ってこれとホワイトドールしかいないの?」
「あー・・大昔の大戦時はいっぱい種類あったみたいだけど今は基本的に地球圏内のコロニー全土を連邦政府が管理していてよっぽどなことない限り戦闘は無いし、予算の都合もあるみたいで・・」
・・あー大人の都合ってやつか・・この様子だとリリアさんもこれのデザインに物申したい感じだなぁ・・
コックピット内に入るとホワイトドールと違いVRMSの擬似コックピットに似ていた。
・・あ〜量産タイプっぽいからこれをモデルにしてるのか・・
とヒメノは妙に感心して中を見回す。
『モビルスーツ小隊!全機発進準備にかかれ!』
マルコの声が艦内アナウンスで響く
・・え〜っと、エンジン始動がこれか。VRMSと本当に一緒だな。向こうのモビルスーツは自分で外見カスタムできてよかったなー。これ見た目がちょっとアレだからなー・・・・
そこでリリアから通信が入った。
「ヒメノ!今回は艦から直接出撃だからカタパルトデッキから射出になります。マルコ少尉から順番に出るからよく見ててね!スキーの時ロープウェイから滑り降りる感じよ!」
「了解です!」
元気よく返事したもののコロニー育ちのヒメノはスキーをやったことも見たこともない。
「マルコ・ビエラ少尉!零式出ます!」
大きな声で宣言してからカタパルトデッキのシューターが動きモビルスーツが滑るように前に移動していく。
デッキ先端にシューターが付くと共にマルコ機は少し屈伸してジャンプ体制を取って宇宙空間に飛び出して行った。
続いてリリアも出る。
「リリア・モンテーニュ少尉!零式出ます!」
他の隊員も同じように出撃していく。
・・みんなフルネーム叫んで出るのか。なんで?・・そういうもんなのか?みんな零式なのに機体名も言うのか?なんでだ?・・
と考えてるうちにヒメノの番になった。
・・うお〜緊張するなー。失敗したらひっくり返ったりするのかな・・
「ヒメノ!緊張しなくていい!スキーの時ロープウェイから滑り降りる感じだ!」
・・だから知らんわ‼︎こいつが言うとなんか嫌味っぽくて腹立つな!・・
「すー」
ヒメノは深呼吸して緊張をほぐす。
「ヒメノ・カストル!零式出ます!」
ヒメノは初めてのカタパルト出撃を綺麗に決めて宇宙空間に飛び出して行った。