──マルコ率いるモビルスーツ小隊は月面低空を飛んでいた。
巡回監視艦「群雲」は月面の連邦工場に入港していく。
ヒメノは初めて間近で見る月面に感激しっぱなしだった。
「すげー‼︎真っ白!写真で見るよりずっと真っ白!クレーターまみれ‼︎」
と最初の方はこんな感じだったがその景色が延々続く。
・・・・お〜・・ずっとこんなんか・・さっきから景色一緒じゃん・・ぱっと見違いがわからんな・・
「マルコ・・さん。月って本当に人住んでるの?」
ヒメノの素朴なマルコが答える。
「ああ。まあと言ってもコロニーみたいに栄えてるわけじゃない。各地工場周りに地下シェルター団地があってそこに住んでる。全人口入れても3万人行かないほどだ。」
「あ〜・・なるほど。じゃあ太古の地下神殿とか謎の巨大洞窟とかドームに囲まれた大都市とかもないのか・・」
他の隊員達もヒメノの発言に笑う。
「ん〜・・さっきも言ったが人類が宇宙に出てまだ500年余り、月に進出したのは初期の頃だが基本工場地という歴史が長く生活物資の運搬まで全て工面することは現実厳しい。」
「まあそれでコロニーか・・」
「そうだ、ここを生活拠点として反映させ維持するのよりはコロニーを増やして生活する方が効率的ってことだ。」
「500年か〜じゃあ埋まってるものも意外とまだ使ってそうな形っぽそーだね」
「いや。意外とそうでもない。さっき少し話しに出したがいつの時代に作られたのかがわからない物も多く出土すると言ったな。あれ、本当にわからないんだ。データベースにない機体ばかり。むしろそっちの出土の方が多い。」
「宇宙人のモビルスーツってこと⁉︎」
中隊回線に爆笑が起こる。
「はっはっはは!その可能性もあるな」
・・あ!バカにされてる!うわ!全員の目が!リリアさんまで!くっそ〜ロマンのない奴らだなー、ヴェンなら目かっ開いて食いついてくるのに!・・
「まあその話関連で行くと実はボルジャーノンもオーパーツの一つだ。」
「⁉︎どういうこと?」
「人類最初のモビルスーツだが最初の1体をどこで誰が作ったか資料がない。そんな世界最大とも言える画期的な発明なのに資料が無いなんておかしいだろ?」
・・あのボルジャーノンがオーパーツ?ん〜地味だな。ボルジャーノンだしな・・・・
そんな話しをしながら小隊が飛んでいると群雲オペレーターから連絡が入る。
「マルコ少尉!ホワイトドールのパーツ交換作業開始されたとのことです。外したパーツは群雲に搬入します。」
「了解!こちらは今のところ異常は無い。」
そう報告するマルコが地平線に小さく動く影を見かける。
「全機警戒体制‼︎何かいるぞ!」
・・宇宙人か⁉︎・・じゃなくて敵⁉︎・・
カメラを最大望遠にして確認する。
ボルジャーノンだ。
「全機!ボルジャーノン3機を目視で捕捉‼︎迎撃体制‼︎」
全機が拡散しドーム状に弧を描きながらボルジャーノンに迫っていく。
・・くっそ!この機体重いな!ホワイトドールならあそこまでひとっ飛びで詰められるのに!・・
量産型である零式は巡回警備が主な想定仕様なので戦闘向きでは無い。ヒメノは初めて乗る機体に苛立ちを隠せない。
ボルジャーノンがマシンガンを発砲してくる。
がこの低重量下での実弾はこの距離では威嚇にもならない。
「ビーム装備がないのか?一気に畳み掛けるぞ!」
「地面に足をつけるな!ホバリングではボルジャーノンの方が性能が上だ!」
マルコや隊員が叫ぶ
マルコ機がビームライフルで1機のボルジャーノンのバックパックを撃ち落とした。
1機が動きを止めその場に倒れた。
「ヒメノ!モビルスーツのランドセルを狙え!そうすれば爆発はしない!」
「ランドセルってバックパックか!了解!」
・・確かにランドセルっぽい・・
ヒメノ機ともう1機の零式が1体のボルジャーノンを追い詰める。
ヒメノが撃ったビームライフルがボルジャーノンのバックパックを貫いた。
「やった!」
ボルジャーノンはその場で沈黙する。
リリア機も残った1体を沈黙させたようだ。
「全機沈黙!パイロットを拘束するぞ!」
号令と共に隊員達が沈黙したボルジャーノンに飛んでいく。
マルコは違和感を覚える。
向こうにボルジャーノン4機がコックピットハッチを開けた状態で跪いているのが見える。
動き出す様子がない。
「全機!新たな敵影確認!パイロットは未搭乗と思われる!周辺警戒を怠るな‼︎」
マルコが叫び終わると共に細い光線が走り零式1機が爆発した。
「なんだ‼︎何が起きた⁉︎」
光線の先を見るとそこには何もない。
・・‼︎・・
咄嗟にヒメノは上へ飛んだ。
刹那にまた光線が走りヒメノ機の膝から下が撃ち抜かれていった。
「うああぁぁぁ‼︎‼︎」
衝撃で揺れるコックピットでヒメノが悲鳴を上げる。
・・・・どこから⁉︎足がやられた⁉︎・・・・
・・飛ばなきゃやられてた・・・・死んでた・・・・
ヒメノの脳裏に再び戦場の恐怖が蔓延する。
・・・・一回当たったら死ぬ・・・・どこ?・・どこにいる・・
「ヒメノ‼︎落ち着いて‼︎」
「‼︎リリアさん⁉︎」
「落ち着くのよ!ボルジャーノン4機がそこにある!つまり敵は最低でも4機‼︎こっちは6機いる!落ち着いて攻め返せば勝てない相手じゃないはずよ!まずは冷静に相手の正体を見極めるの‼︎」
・・冷静に・・・・見極める・・・・
「すぅー‼︎フー‼︎・・・・押忍‼︎」
・・なんだ?・・何か・・・・‼︎
「後ろ‼︎みんな飛んで‼︎」
ヒメノの声と共に皆が急上昇する。
細い光線が走った。皆はそちらを見る。
・・何あれ・・・・宇宙人?あれモビルスーツなの・・?
ヒメノ達が見た光線の主は小さく外壁作業用宇宙服のような形をした珍奇な形のモビルスーツだった。
「早い!見失うな‼︎」
「・・・・‼︎・・右‼︎」
ヒメノが叫ぶと共にまた光線が走ってきた。
避け損ねた零式の左手が炸裂した。
「リリアさん‼︎」
「大丈夫かすっただけよ‼︎ヒメノは敵の気配に集中して‼︎あなたにしかできない‼︎落ち着いて敵に集中‼︎」
・・‼︎・・・・いた!
反射で撃ったビームライフルが敵機に命中した。
敵機の右半身が炸裂したが爆発はせずゆっくり落ちていく。
・・またか・・?・・・・いや大丈夫!・・この感じ!死んでない‼︎・・
「群雲!ホワイトドール整備はまだか‼︎⁉︎」
マルコが叫ぶ。
「現在両腕の交換が完了したとのことです‼︎」
「その状態で整備は一旦停止‼︎出撃準備‼︎」
「まだ換装完了してませんっ‼︎」
「今そんなこと言ってる場合じゃない‼︎急げ‼︎」
・・ホワイトドール‼︎・・
「ヒメノ‼︎ここは任せて工場に急げ‼︎ホワイトドールに乗り換えろ‼︎頼む‼︎」
「・・でも!」
「でもじゃない‼︎急げ‼︎犬死にしたいか‼︎」
「・・!わかった‼︎」
ヒメノの零式は片足を失いバランスを崩しながらも工場の方へ向かう。
・・ホワイトドールならあんな奴らのスピードに負けない‼︎急がないとみんな死ぬ‼︎死んじゃだめだ‼︎・・
工場に着くとホワイトドールがロックを外された状態で立っていた。
「早く乗り換え!くっそ中途半端な重力しやがって‼︎」
慣れない低重力にもたつきながらもホワイトドールのコックピットに乗り込むヒメノ。
「今整備説明を・・!」
「うるせぇっ‼︎急いでんだ後にしろ‼︎」
叫ぶヒメノに押し黙る整備員。
急いでエンジンを始動しながらハッチを閉じる。
「‼︎」
工場の目の前に先程のモビルスーツが1機飛んできた。
「ついてきたのか!向こうは⁉︎」
「ヒメノ‼︎こっちは1機撃墜した‼︎もう2機が見当たらない‼︎大丈夫か‼︎」
マルコからの無線で皆の無事に安堵しながら殺気を感じ飛ぶヒメノ。
「うおぉぉ‼︎やっぱこっちの方が断然いい‼︎」
敵の狙いを工場から背けるためジグザグに走るヒメノ。
その軌跡は月の砂で白く輝いていた。
敵機が光線を放つ。
「・・見える‼︎」
当たる直前で急旋回し敵機の後ろに回り込んだホワイトドール。
「チェェストォォォ‼︎‼︎」
咄嗟に貫手を繰り出したホワイトドールの指先から短い光刃が突き出した。
敵機の頭部に命中しそのままゆっくり落ちていく。
「‼︎・・もう1機!」
ヒメノの視線の先にはもう1機のモビルスーツが逃げるところだった。
「逃すか!」
アクセル全開で敵機を追うヒメノ。
手首のビームガンを放ちながら追い込む。
急に敵機が急旋回しこちらに突っ込んできた。
「上等だぁ‼︎散々掻き回して逃げてんじゃねぇぇ‼︎」
ホワイトドールは回転しながら敵の突撃をいなし振り向きざまに肘打ちを繰り出した。
肘の先から指と同じように短い光刃が突き出る。
「オラァァぁぁぁ!!!!」
ホワイトドールは回し肘打ちで敵機上部を切り裂いた。