剣持志郎…少々弱気で考え込んでしまう小学生。
ブルート…名前、製造目的不明のフレロボ。物静かな性格をしている。身長:210cm(角除いて180cm)、体重101Kg。
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園山留依…志郎の同級生で、何事にも負けない前向きな少女。
スナイル…明るく、気さくな性格をしたフレロボ。留衣の子守り担当兼ボディーガード。
身長:198cm(アンテナ除いて178cm)、体重85Kg。
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嵯峨山紅蓮…志郎達の同級生である乱暴者。金稼ぎの為ならなんでもする。
ディッキー…紅蓮の家で働くフレロボ。粗暴だが、紅蓮の事を心配している。身長:200cm、体重190Kg。
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ワイルダー…一明博士の下で働くフレロボタウンのリーダー。身長:174cm、体重71㎏
園山一明…フレロボ発明、開発始祖にして第一人者の好々爺。留依の祖父。
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ブロッサ…志郎達のクラスの担任フレロボ。教育熱心で生徒達の将来を心配している。身長:163cm、55㎏
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5-1
「う~むむ、信じられん、こんなシステムを実現していたとは…エリカ博士、君は恐ろしい人だ」
電気一つつけないフレロボタウン研究室で、一明は画面一杯に図式を表示させたパソコンと対面して呟く。彼が話題にするのは、大型の水槽の中で、あぐらをかいて静かに座るブルートであった。そのボディはいくつものケーブルに繋がれ、機能を停止している。すると、一明の背後に立っていた東山がブルートの顔を覗き込んだ。
「それで博士、このブルートは手に触れた物を別の物に原子レベルで変えられるのですかな?例えば、ゴミでも有益な物へと?」
「簡単に言えばな。そう、例えるなら、君らが放りっぱなしのゴミから、人をくくりつけてでも喉から欲しがるエネルギー資源でも、なんでもだ」
一明は東山に視線を合わせる事なく、淡々と答える。受け手の東山は苦笑しながらため息をついた。
「博士ぇ、そんな邪険に言わないでください。まるで私が極悪人のようではありませんか。人体発電機は当時、反対意見がありませんでしたし、私は国に、あなたを支援するよう持ちかけた者ですぞ?」
「その恩着せがましい所だ。それと人体発電機は君らが国民を文化とマスメディアで国民の視線を逸らしてる間に、コソコソと進めたからだろうに。なにが反対者ゼロだと胸張って言えるんだ?」
「どうも話が水掛け論ですな…話を戻しますが、このブルートはあのエリカ博士とその仲間のフレロボが設計していたのですな?」
「…そうだ、これは私とワイルダーの想像だが」
ようやく振り向いた一明の視線の先、部屋の奥には、ワイルダーが立っていた。といっても、ブルートと同じくケーブルに繋がれ、データをインストールしている真っ最中であった。
「当時、ブルートの能力を完成させるには時間がかかった。しかもエリカ博士とガーディアン隊の目の前にはセルトランスが迫っている。そこで彼らは人知れず、遠くに出向いていたワイルダーにも言わずにブルートを隠し、研究を続行させたのだ。証拠として、スナイルが言ってた廃寺にはソーラーパネルと、学習型コンピューターがあったからな。そして十年の月日を費やして今、研究は完成させたのだ」
「なんと、そこまでの研究が小さなコンピューターに出来るというのか…」
「出来るとも。誰かさんの監視から逃げながらな」
一明は振り向いて皮肉を言ったつもりだが、対する東山はキョトンとしていた。やれやれと言わんばかりに、彼は前を向き直した。
「…更に言うなら、フレロボのコンピューターの利用目的は『過去の技術と原理を短時間で学習し、完全に継承、進化を持って未来へ繋げる』事だ。特にブルートはコピー不可能な程の膨大なメモリーとスペックが備わっていて、あのとんでもない能力を完全に使う事が出来るのだ」
「ほぉ…まぁそれはともかく、要はブルートを使えば色んな物が作れるという事ですな?」
「あぁそうだ。私はブルートが平和利用される事を祈って…」
「待ちなさい、それだけはなりませんぞ!!まずはこの国だけでブルートを独占し、エネルギー資源大国となって世界を平伏させましょう!!ついでに、どこにも負けない超兵器も併せて造って、二度と逆らえないようにして…」
「アンタこそ待てっ!!下手に使えば、取り返しがつかないかもしれないんだぞ!!」
一明は東山の話を遮って、警告を促した。
「いいかね局長、ブルートの能力は未知数なんだ!!それなのに下手に扱えば、この世界が最悪の形で変貌するかもしれないんだ!!無機物だけじゃない、動物や我々の姿もだ!!」
「第一、こんな能力を権力行使の為に使うなど言語道断!!平和の為に使うべきではないのかね!?」
「…博士、あなたはまるでわかっていない。この世界の情勢を」
呆れた風に東山は言うと、手にしたタブレットの画面を一明に見せる。映し出されていたのは、山中の水力発電設備とダムへ壁一面にへばりつく、無数の虫型のロボットであった。
『緊急指令、緊急指令!!国籍不明のロボットを撃滅せよ!!繰り返す…!!』
映像ではスピーカーから流れる大音量の指令の下、十数体の自衛用のミリタリー迷彩柄の自衛用フレロボが必死で虫型ロボットを追い払っていた。
『ちっくしょう…!!なんだってこんなに来やがるんだ…!!』
自衛用フレロボの中に、スナイルまでもが駆り出されていた。飛び交う銃弾と、虫型ロボットの間で、彼は愚痴をこぼしながらスナイパーライフルを構え、次々と虫型ロボットを狙撃する。しかし多勢に無勢。残骸の塊となった仲間の中から飛び出した虫型ロボットによって、スナイルは右腕を刺される結果となった。
『ぐぁぁぁ!!いってぇ!!痛覚ないけど!!』
『大丈夫か、スナイル隊員!!』
自衛用フレロボのマシンガン連射で虫型ロボットは次々と吹き飛び、スナイルは一命を取り留めた。最も、腕部は大きく抉れて、見るも無惨な姿へと変貌していた。映像終了。東山はタブレットの画面を消し、一明を静かに見つめた。
「…いいですかな博士?今この国は電力を求めて国籍不明のロボットが日夜発電所を襲っているのです。かつてテロで使っていた物を再起動させてね」
「それだけではありませんぞ。北部中央連合国が武力をちらつかせて、毎日のように我が国に日々電力資源の催促をしているんです。なにしろ月面採掘の際に支援を頂いたのに、それを無駄にしてしまったのですから」
「ですから、我々はこのブルートを使って無限にエネルギーと兵器を生産し、奴らを見返すのです!!そう、世界の頂点に、未来の子供達を立たせる為に!!」
「…子供の事を思って、だと!?なら、なおさらだ!!いいかね、まずアンタらの無茶苦茶な指導によって、その子供達は楽しみや家族を奪われているんだ、そこはわかっているかね!?それで、そんな子達が、暗い部屋の中で、なにを考えていると思う!?『僕達も将来はどうなるんだろう』だの、『人生を終了させたい』だの、だ!!」
「まず今大人がやるべきなのは、子供達に負担や不安を押しつけるのではなく、これまでの罪を償い、目指したい将来、やりたい事を後押しし、それを他国に見せて、分け合うべきだろう!!ブルートという、無限の能力を持って!!そうではないか!?」
「子供?子供というのは日本を背負える程の将来有望な才を持ち、なおかつ大人に従順で、躾が出来た価値ある者を指します。浪費しか能のない者など知りませんな」
「き、貴様…!!」
東山の物言いに、一明は立ち上がって激怒。その時であった。
ギュアアアアアアアン…!!
起動音と共にブルートの角の発光部分が、エメラルドグリーンに光り輝いたのは。
「む、なんだ…?」
「もう完了したのか…!!」
一明は怒りを抑えて、再度パソコンに向かい合う。彼がスクロールし、黒い画面に表示されていたのは、無限とも取れる白い文字の羅列であった。
「…博士、これは?」
背後から覗き込む東山の問い掛けに、一明は見向きもせずに答える。
「ブルートのコンピューターに入れた、この世界の知識だ。入れたのは世界情勢に時事、生物学に各分野の理数文献、イン、アウト問わずの娯楽や文化、果ては人々の掲示板やSNSの書き込みからネットミームまで、とにかくネットにある物全てだ。これには最低数ヶ月を要すると思っていたが、まさか数日で全て取り込むとは…」
「なんと…そんなのを入れて、博士はなにをなさるおつもりなのですかな?」
「そうじゃない、正確にはブルートの人格を通して、彼の奥に潜むもう一つの『AI』が要求したのだ。実験でケーブルを繋いだ瞬間に、このパソコンに表示されたんだ。それで、その見返りとして例の能力を見せてくれるって話だったんだが…」
立ち上がった一明は水槽を開け、だらりと垂れ下がったブルートの腕を上げると、真下にあったのは粘着質のある灰色の物質であった。一明はそれをピンセットで取り上げ、ビンの中へと密封した。
「見ろ、ブルートの手から生み出された物だ。信じられんが、これは新種の生命体だ。しかも、生きている」
「因みに、これで三度目だ。生んだのは…偶然なんかじゃないぞ」
ビンの中の生命体はドクン、ドクンと脈打っていた。一明は慎重にビンを専用の冷凍庫へと仕舞い込んだ。冷凍庫には同じ状態のビンが二つも並んでいる。東山は息を呑みつつ、一明に冷静に問いかける事にした。
「そんな馬鹿な…これが新種だと、しっかり調べたのですか?」
「当然だ。生物学、ついでは物理学とありとあらゆる分野の教授やフレロボに送って聞いたが、見たことも聞いたこともないと返答されたんだ。因みにその際、彼らから面白い追記があったよ…」
「というと?」
「これは現在何も出来ないが、少しずつ成長しているのは確実だ。だから成長次第では色々な生物、物質になる無限の可能性があるとな。つまり今後、このブルートの扱い、学習によってはどう進化するかわからないって事だ。アンタもくれぐれも無用な育て方はやめておきたまえ。なにしろどうなるか、未知数なのだからな」
「なるほど…だとしたら尚更、この無限の力を我が国の貢献に使いたくなりましたな!!」
「アンタ、ワシの話を聞いとったか!?下手に学習させたらまずいと言っとるんだ!!」
「なにをおっしゃいますか博士?この国を守る理由のどこに悪用性があるのですか?さ、ブルートとやら。子供の為を思うのならば、兵器の一つ位作ったらどうかね!?」
「お、おい!!勝手に開けるな!!」
一明は無用に水槽を開ける東山を窘めた。しかし彼は聞く耳を持たずに水槽内へ身体を入れ、覗き込むようにブルートを睨みつけた。それでもブルートは聞く耳を持たぬように微動だにせず、『なにか』を作り出す素振りすら見せなかった。角さえも光を止めた。東山は無視するブルートを、相手によって態度を変える舐めた態度と捉え、業を煮やし、彼の角を掴んで揺らした。その時、彼のズボンのポケットから、ハンカチがはらりと一枚、水槽へと落ちていった。
「おい、聞いてるの、か…!?」
すると瞬間、ブルートの手はハンカチからナイトソードを作り出し、一閃に薙ぎ払った。直前に足元の剣を察知した東山は後方の水槽外へと下がる。斬撃は東山の左手の甲を掠めるだけであった。傷口からはツー…と血が流れる。この結果に、一明が激怒するのも無理はなかった。
「だから言ったんだ!!迂闊に触れるなと!!ブルートの…いや、ブルートの奥に潜むもう一つのAIが、相手が自分や社会にとって害をなすかそうじゃないかを判断するんだ!!だってそうだろう!!今のアンタは人を殺める兵器を作るなんて言い出すんだからな!!」
「ふん、機械が人の意見の良し悪しを判断するのか…まぁ、誰彼構わず襲う頭の価値のない人間よりはマシか。となると、博士はこの偉大なAIに選ばれたお方、と自負するのですかな?」
「ワシはそんなつもりはない。それより今ので使い方次第で危険だって事は理解しただろう。それで、ワシは他の教授や専門家と話し合ってこの力の使い方を考えた。それがこの計画書だ」
一明はパソコンを使って東山のタブレットに計画書を送信した。東山はWord上で約百ページにも渡るそれをふんふんと熟読し、ものの三分で強く頷いた。
「なるほど、大体わかりました。このフレロボを安全に運用するには、将来を思い悩む子供達の尽力が必要なのですな?それも、フレロボタウンで?」
「そうだ、なにしろ持ち主の子供の悲鳴、応援によって力を発揮したのだからな。恐らく子供の純粋な願いによってブルートの能力は正しく発揮出来るのだ。詳しいセッティングはこちらで行うから、問題あるまいな?」
「まぁいいでしょう、使うのはどうせ取るに足らない子供達だ。どうなろうと国には影響を及ぼしますまい。しかし、もし失敗すればブルートは人財管理局に預からせて貰います。いいですな?」
「わかった。いいだろう」
「よろしい。少なくともあなたの結果次第で、海外から帰れない娘夫婦がどうなるか、念頭に置いておいてください。それでは失礼」
そう言って、東山は足早に研究室を後にする。
ダンッ!!
彼が去った瞬間、一明は怒りのままに机を拳で叩いた。
「…くっ!!なにが『取るに足らない子供達』だ!!大人の価値観、都合で将来と可能性を勝手に潰しただけだろう!!奴め、特教生以外はどうでもいいというのか!?」
「すまんブルート…君の能力はもっと平和に扱うべきだというのに、身勝手な力だけの大人が蔓延って価値と権力ばかり求めてしまうのだ…しかし、この計画を持ってすれば、この世界は平和になる筈だ。頼んだぞ。未来を救ってくれ」
水槽の扉を閉めつつ、一明はブルートへと謝罪する。当のフレロボは一人、いや一体、眠るばかりであった。
どうも皆さん!!
なにやらブルートにトンデモない秘密があるようですね!!
では、長話もなんなので、次へと参りましょう~っ!!
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