剣持志郎…少々弱気で考え込んでしまう小学生。
ブルート…名前、製造目的不明のフレロボ。物静かな性格をしている。身長:210cm(角除いて180cm)、体重101Kg。
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園山留依…志郎の同級生で、何事にも負けない前向きな少女。
スナイル…明るく、気さくな性格をしたフレロボ。留衣の子守り担当兼ボディーガード。
身長:198cm(アンテナ除いて178cm)、体重85Kg。
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嵯峨山紅蓮…志郎達の同級生である乱暴者。金稼ぎの為ならなんでもする。
ディッキー…紅蓮の家で働くフレロボ。粗暴だが、紅蓮の事を心配している。身長:200cm、体重190Kg。
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ワイルダー…一明博士の下で働くフレロボタウンのリーダー。身長:174cm、体重71㎏
園山一明…フレロボ発明、開発始祖にして第一人者の好々爺。留依の祖父。
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ブロッサ…志郎達のクラスの担任フレロボ。教育熱心で生徒達の将来を心配している。身長:163cm、55㎏
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7-4
更地の中で僅かに広がる無機質なドームを前にし、永遠と続きそうな海と地平線を背にして、フュージェリンは眠る。聞こえるのはそよ風に揺れる木々の葉擦れと波の音。辺りは静寂さに包まれていた。と、それを裂くように更地にいくつもの足跡がつき、小声ながらも様々なざわめく声が聞こえてきた。
「よし、敵影はないようだ。ついてきて下さい」
先頭で先導するのは修理を終えたワイルダー、スナイル、ディッキーにブロッサ。後から忍び足で続く自衛用フレロボの中には一明に留依、志郎の父である大五郎とその妻真由美の姿があった。彼らの前方にあるのは微動だにしないフュージェリン。先日の激戦を知って、誰もが警戒しているのだ。にもかかわらずフレロボ、人が向かうのはやはり切り離せない友、家族の絆があってこそである。ふと、群れなす中で真由美が口に手を当てて見上げた。
「志郎ーっ!!どこにいるの、志郎ーっ!!」
「ママ、大声を出すんじゃない!!あのロボットが襲ってきたらどうするんだ!!」
慌てて口を塞ごうとする大五郎の手を、彼女は両手で抑える。
「だ、だって!!ワイルダーさんが大丈夫と言ってるんだから大丈夫なんでしょう!?一秒でも早く志郎を探さなきゃ!!あぁ…あの時、博士からのタウン入居の誘いを断っていれば、こんな目には…」
「ママ、今ここでそれを言うのはやめなさいっ!!博士に申し訳ないと思わないのか!?」
タウンの話を耳にするなり、一明は夫妻に背を向けばつが悪そうに俯く。その表情から心境を汲み取った大五郎は彼を尻目に妻を咎めた。
「大体、元を正せば悪いのは人財管理局じゃないか。子供を騙して、罰を与えるなんて言ってセルトランス化、燃料扱いさせるなんてさ。まぁそのせいかしらんが局長が行方不明、力が弱まって解体したけどな」
「それでも志郎や子供達が消息不明になったのは変わらないじゃないっ!!志郎、どこにいるの!?ママとパパが来たわよーっ!!出てきて頂戴!!」
真由美はいてもたってもいられず、顔を上げて我が子の名を呼び続ける。その瞳は潤んでいた。だが彼女は拭う事さえしなかった。
「志郎くーんっ!!どこにいるのーっ!!」
「おーい、志郎ーっ!!」
見かねて、留依とスナイルも友の名を呼ぶ。
「志郎ーっ!!返事をしてくれーっ!!」
「志郎くん!!」
続いて、ワイルダー、一明も続く。
「紅蓮ーっ!!」
「志郎くん、紅蓮くーん!!先生が来たわよーっ!!」
一方でディッキーは紅蓮を、ブロッサは教え子の名前を呼んだ。しかし、誰もが呼び終え、こだまが響き終わっても、返事はなかった。察した真由美は嗚咽を漏らした。誰もが力なく口に当てた手を降ろす。また静寂が広がる。その時、ギギギ…と、重く錆びついた金属を引きずる音と共に、ドームの頂点部分が僅かに開かれた。ちょうど、人が一人通れる大きさである。内部からせりあがって現れたのは、純白の羽衣に身を包む、志郎であった。
「し、志郎…?志郎っ!!」
現れた彼に気が付いたのは、大五郎であった。周囲の人、フレロボも続く。全員の視線が自身に集まったのを知った志郎は、静かに口を開いた。
『皆、お久しぶりですね。体調はお変わりないようでなによりです』
「無事でよかった…!!さぁ、パパと帰ろう!!そんな所で一人じゃ寂しいだろう!!」
『…パパ、残念ですが僕はもう帰れません。やるべき事が出来たんです』
「えぇっ!?どういう事だ!?そんな事言ってママまで困らせないでくれ!!」
差し伸べた手を我が子に却下され、大五郎は条件反射のように驚愕の声、反対意見を述べる。だが、志郎のまっすぐな瞳、決意の固い表情に動じる素振りはなかった。何事かと誰もがその場から動かず顔を見合わせる。瞬間、ふと気がついたディッキーは誰よりも前に立った。
「志郎!!ウチの人達はどうしているんだ!?俺が再起動した時、紅蓮の両親も突然いなくなったんだ、まさかと、思うが…その中に」
『そうだよ、ディッキー。紅蓮とその家族はヒューストレージとなってこのドームでデータの一つとして幸せに暮らしている。でも安心して、彼らは自分自身の意思でそこに留まる決意をした。セルストッパーの件も考慮してね』
「う、うむ…正直複雑だけどよ、自覚ある上で幸せならいいのかも、な…だとしたら、お前はそこでなにしてるんだ?コイツも、まさか…」
『うん、僕の方も見せた方が早いだろうね』
そう言うと、志郎は静かに羽衣の袖を捲った。見るなり、人は目を見開いて息を呑み、フレロボはコンピューターで視認を改めるのがやっとであった。なぜなら、袖で隠れていた彼の腕は純白のマニュピレータで構成されていたからだ。
『驚かせてごめんなさい。見ての通り僕の身体は全て機械となりました。外側だけじゃない。脳含めて全て…それは全て永遠を生きる為、この星を救ってくれと願う紅蓮や人々の為に』
もはや、誰も言葉をかける者はいない。両親でさえ。ただただ、志郎が出力する声紋に耳を傾けるだけであった。
『エリカ博士が作り、暴走してしまった原子変換能力は今、僕とブルート、タウンに暮らしていたフレロボが手にしました。そこで、僕らはこの力を使って平和を取り戻したいと思います』
『まずは将来が絶望的な、もしくはセルトランスになってしまった子や親をヒューストレージに変え、そこで新たな人生を過ごして貰い、やりたい事をやらせてあげます。ですが以前のように永遠に洗脳して暮らす訳ではなく、あくまでも一時的にです。これまで街を追いやられ、人体発電機に入る他なかった人を考えれば、こうしたチャンスを与えてあげるしかないと僕は思います。非人道的存在だと後ろ指を指されても』
『無論、この世界で頑張る人にもこちらから支援を惜しみなく与えます。争いが起これば直接止めに行きます。元をいえば原子変換能力は本来その為にあるのですから…それで、以上の事が何百年も続くと思います。少なくとも、セルトランスや格差といった問題が解決する、その時まで…だからパパ。家を離れてしまいますが、どうかお許しください。僕は前のように諦めず、最後までやり遂げたいのですから』
「…そうか。お前がそうしたいのなら俺は止めない。期待してるぞ、志郎」
大五郎は我が子の瞳を見つめ、大きく頷く。その傍らで、真由美は膝をついて両手で顔を覆った。手の下からは涙がとめどなく流れていた。
「泣くなママ。志郎はやりたいことを見つけたんだ。自分だけでなく、未来を見据えた戦いを。大丈夫、ブルートだっているんだ。絶対うまくいくよ。見送ってやるのが親ってもんだろう?」
「で、でも…うぅ…」
夫は妻を抱きしめる。子は繋がりあう両親を見下ろし、微笑むとドームの中へと降り始めた。
『ありがとう、パパ。僕はブルートやフレロボと共に世界中を駆け回ります。いつか昔のような平和な時が来るまで…それでは』
「志郎くんっ!!」
不意に、留衣が叫ぶ。
「待ってて!!私、一生懸命勉強して、大人になったらセルトランスへの解決策を絶対見つけてみせるから!!それで、もし終わったら前みたいに一緒に遊ぼう!!子供だの大人だの忘れてさっ!!キレイな公園でさっ!!」
「志郎、お前の覚悟は聞いたぞっ!!俺は留依と一緒に進むぜっ!!そっちの管理を頼む!!悪い方向には走んなよ!!」
スナイルが言い切るより早く、志郎の姿はドームに入って見えなくなった。だがその直前、僅かに見えた。彼が親指を天高く立て、サムズアップする姿を。留衣は忘れないだろう。お互いの使命、そして約束を。輝ける未来の為に─。
それから何年経ったのだろう。人ならば忘れてる頃だ。フレロボタウン跡地改めフレロボドームと呼称されたここに、一台の乗用車が駐車されていた。その持ち主は何の変哲もない、どこにでもいるであろう男の物であった。ドーム内で男は幼い赤子を抱き、妻と共に膝をついて懇願している。憂いを帯びた目の先に見えるのは、志郎であった。
「お願いしますフレロボ神様!!この子と妻にセルトランスの兆候が出てしまって…!!その上、治すどころか生活する蓄えもなく、それでも車の燃料だけでもなんとか工面したのですが、このままでは死を待つばかりです!!どうか、どうか寛大なお恵みを!!」
『顔を上げてください。様なんてかしこまらなくても大丈夫ですよ。わかりました。あなた方をヒューストレージ化させ、そこでしばらくの間生活して頂きます。そして、そこで子を育てるといいでしょう』
「おぉ…ありがとうございます!!」
『でも、勘違いなさらないでくださいね。セルトランスが解決したその時、あなた方は培った経験と記憶を糧にもう一度、人として戻り、現実にまた直面していただきます。その時はこちらから支援をしますが、最後にはそうなる覚悟は、ありますか?』
「はいっ!!それが、この子の為となれば」
『わかりました。では、三人とも目を閉じて…』
志郎の掌からあふれる暖かな光が、瞼を閉じた一家を包み込む。それが風のように去っていくと、ヒューストレージが一つ、床に転がっていた。拾い上げた志郎は彼らとの会話を続けた。
『いかがですか、皆さん?新しい生活は?おぉ、綺麗な一軒家で健康な子と夫婦で過ごしている?なるほど、という事はお子さんにとってその環境は最高の教育の場という訳ですか。いいですね。是非とも、頑張ってくださいね』
話を終えると、志郎はフレロボドーム内の地下深く、深くへと進む。昼間にも関わらず、内部は日光が完全に閉ざされて暗い。天井に明かりがぽつぽつと取り付けられているだけである。暗がりの道中の傍ら、かつてタウン内で活躍していたフレロボが労働に勤しんでいた。彼らは眼前の廃材、廃棄物に掌をかざすと、次々と固体、液体燃料、電気バッテリーへと変えている真っ最中である。順調だな、と、頷く志郎が着いたのはその奥、そびえ立つ塔であり、その壁面に開いた無数の穴にはヒューストレージがちりばめられたように嵌められていた。志郎は開いた穴の一つに出来たてのヒューストレージを嵌めると、他の物達に次々と視線を送り、話しかけ始めた。
『おはよう紅蓮!!そっちの様子はどう?え、弟さんがテストで頑張って七十点取ったって?すごいじゃん!!』
『ん、なんですか柊先生?もう~昔の件は謝らなくていいですから、新しい道を目指す準備を続けましょう、ね?』
「志郎、また一組データの中に入った人が増えたのか?」
盛り上がる会話の中、背後から話しかけたのは、ブルートであった。
『うん…あの人達、幸せそうだったよ。勿論、いつかは…って注意をした上でね』
「そうか、それはよかった。幸せは誰もが経験すべきだ」
『うん、といってもそれが虚構だって皆知っている上だけどね…』
「だが、これまでのような絶対的な不幸せを死ぬまで味わう事はなくなった。幸せの味を知り得た筈だ。それはこれから生きていく上での糧となる」
『そう、そうだよね…』
背後からは機械が駆動するモーター音、天からは空気を変えるファンの回る音と振動が響く。雑音ながらも、しゃがむ二人は塔をじっと見上げる。言葉はない。それでも彼らにとっては一緒に過ごす事自体が幸せの一つであった。それだけではない。
『よし、出来たっ!!』
どれだけデッサンが崩れ、色彩が目茶苦茶でも絵を描く自分に対する達成感。
「うん、この前よりよくなってるんじゃないか?」
そして、頑張る友を見つめたいと願う心であった。と、ブルートの通信機に連絡が入った。
「どうしたワイルダー?なに、物資を求めて争いが起こっている?セルストッパーの電力が弱まったのが原因の一つか。わかった。すぐ駆けつけよう。志郎、続きは後だ」
『オッケー!!また止めに行かなきゃね!!必要な物を与えて、セルストッパーを直せば未来に向かってまた頑張れるって思ってくれるもんね!!留依ちゃんみたいにさっ!!』
「その通りだ。行くぞっ!!」
外に飛び出したブルートはわずかに宙に浮く傍ら、志郎は大きく深呼吸する。体内に呼吸器官がある訳ではない。気持ちを切り替えんと、人らしさを忘れんとする儀式として行っているのだ。
「準備万端だ。乗れ志郎!!」
『うんっ!!』
志郎が背中に飛び乗ると同時に、ブルートは天高く飛翔する。瞬く間に、ドームからは姿を消した。二人は雲を切り裂き、青空を背に並行するように飛行する。志郎は現場に着くまで情報の整理を、脳内コンピューターで行っていた。
『なるほど、彼らが欲する物はこれとこれとこれ…なら、街に溢れてる武器とゴミを変えれば事足りるか。でもその前に説得もしなきゃな。だとしたら頼りにしてますよ?僕の機能の一つ、対話用コンピューターさん?』
彼は笑みを浮かべてコツコツと、『彼』がいる側頭部を指で叩く。すると、ネットワーク用のコンピューターがある情報を入手した。
『え?人体発電機を全て撤去予定?フレロボドームによる電力確保、セルトランスの治療、予防に関しての治験を始めた?…やった、やったぞ!!僕の願いが一歩叶った!!嬉しいよっ!!バンザーイっ!!』
小さな希望を前に、手を上げて喜ぶ志郎。
「志郎!!背中で暴れてはダメだ!!」
対して、ブルートは揺さぶられるボディバランスを必死に取っていた。
『あっ、ゴメンブルート。つい嬉しくて…でも、僕の予備データはドームにあるから大丈夫だよ…ね?』
「そういう問題じゃないっ!!全く…」
二人は飛び、駆け、進む。全ては、また明日昇る太陽を誰もが幸せに見られるその日まで─。
フレロボ・ブルート完
どうも皆さん。
フレロボ・ブルート、いかがだったでしょうか?
彼らの未来、価値観、そして幸福はどう動くのでしょうか?
それは、彼ら自身の手に委ねられている。と私は思っております。
少なくとも、強い意志があれば、どんな困難にも打ち勝てる…と。
では最後に、エリカとフュージェリンなどの画像を投稿して失礼します。
【挿絵表示】
ご愛読、ありがとうございました!!