剣持志郎…少々弱気で考え込んでしまう小学生。
ブルート…名前、製造目的不明のフレロボ。物静かな性格をしている。身長:210cm(角除いて180cm)、体重101Kg。
【挿絵表示】
園山留依…志郎の同級生で、何事にも負けない前向きな少女。
スナイル…明るく、気さくな性格をしたフレロボ。留衣の子守り担当兼ボディーガード。
身長:198cm(アンテナ除いて178cm)、体重85Kg。
【挿絵表示】
嵯峨山紅蓮…志郎達の同級生である乱暴者。金稼ぎの為ならなんでもする。
ディッキー…紅蓮の家で働くフレロボ。粗暴だが、紅蓮の事を心配している。身長:200cm、体重190Kg。
【挿絵表示】
ワイルダー…一明博士の下で働くフレロボタウンのリーダー。身長:174cm、体重71㎏
園山一明…フレロボ発明、開発始祖にして第一人者の好々爺。留依の祖父。
【挿絵表示】
ブロッサ…志郎達のクラスの担任フレロボ。教育熱心で生徒達の将来を心配している。身長:163cm、55㎏
【挿絵表示】
4-2
そしてチャリティー当日。会場は午前中の校舎裏の数百㎡の空き地で行われる事となった。ここは建物を取り壊して売地にしたような、硬い土が剥き出しになった更地であり、会場設営はそこに質素なイベント用テント(町内会用)に簡素なステージが置かれているだけの粗末な物であった。しかしそれでも、町中の数百の人々はこぞって集まっていた。
「は~い、並んで、並んで下さいっ!!大丈夫、まだ食べ物はありますよ~っ!!」
というのも、フレロボが先導する列の先にはおにぎり、から揚げ、カレーパンといった食料が配られるからだ。
「はい、どうぞ…!!是非ともフレロボをよろしくお願いします…!!」
配給係の人型フレロボがてきぱきと列を捌く。その背後では調理型フレロボが八本の手で同時に複数の料理を作り、次々と出来たてを人々に提供していた。
「ん、むぐっ、はぐっ、ぶほぉあっ!!」
人々は離れた場所に敷かれたブルーシートの上で食事を取る。中には、無精髭やよれた衣服を纏った者が貪るように食らいついていた。そんな光景を、隣接する志郎達クラスメイトは持参した教室の椅子に座って怪訝な目で見ていた。
「うわ、気持ち悪っ。唾をこっちに飛ばさないでほしいわ」
聞こえよがしにクラスの女子が言った。生徒達にも食料が配られていた。
「ってか、俺らも食べ物貰ったのはいいけど…これだけかよ」
しかし、苦言を呈する男子が膝に置いた弁当は、おにぎり二つにから揚げ一つ、バナナ半分に250mlの烏龍茶『だけ』であった。
「まぁ並ばないよりマシ…いや、これだけなら並ばせて欲しいな。なにしろ大人ですらズルしてんだし」
彼が指差す先では中年女性が列に並び直して何度も食料を催促していた。彼は以前志郎に悪態をついていた女性であった。話を聞いていた志郎は怯えて咄嗟に女性から視線を逸らす。向かった先はステージ前に立つ、警備用フレロボの中に混じるブルートだった。
「ブルート…」
「大体よぉ~、偉い人と特教生、ステージに立つ奴らの前だけ警備を厳重にしてるのも気に入らん。なんだ、アイツらだけしっかり守って俺達はどうでもいいってか?」
志郎に寄りかかる別の男子がステージを指差す。彼の言う通り、来賓の老齢の政治家や大企業社長達、そして数十名の特教生の席は四方を屈強なフレロボで囲み、仕切りも兼ねて鋼鉄製のスタンド式フェンスで囲んでいる。小学生ながらシワ一つない、おろしたてのスーツを身に纏う彼らは明るい笑顔が交差しあい、卑屈で淀む志郎達とは大違いであった。
「ふん、そんなの当たり前だろう」
と、志郎と男子に向けて、鼻を鳴らす者がいた。紅蓮であった。
「誰も俺達のことなんか初めから見向きもしないし、興味もわいていない。今回の集まりは俺ら一般人を著名人が励ます事。ついでに近隣の子供と大人を繋がらせるとしているが、飯や著名人がなければ誰も来ないに決まっている。つまり、俺達はそれぐらい守るに値しない価値のない存在って訳だな」
「だってそうだろう。ここにわざわざ来て下さった連中は飯ばっか食って、ステージの方しか見てねぇンだから」
食べ終えた人々はステージ前のブルーシートに座り、席を確保していた。全員、あのお方、このお方はまだかと目を輝かせ、傍らに座る子供達など見向きもしていなかった。
「全くくだらねぇ。なんだって休みの日にこんな小汚ぇ連中とお国傘下のお披露目会を見なきゃなんねぇんだ?こんな虚しいんなら、サボって小銭稼ぎした方がマシだ、なぁ?」
くだを巻き終えると紅蓮は席を立ち、椅子を持ち上げると列から離れ始めた。
「やっぱ俺帰るわ。貰えるモン貰ったしな。別に俺一人いなくなっても問題あるまい」
「僕も…」
「俺も帰る」
「保健室に行って寝て来よ…」
紅蓮に続いて、クラスメイトの男子も続々とその場を後にしようと立ち上がる。
「ちょ、ちょっと男子ぃ…!!」
ぞろぞろと帰る彼らを目にして、留依はおもわず立ち上がり、背を向ける男子達を引き止めようとした。すると、彼らの前に小金井が立ち塞がった。またも脇に女生徒二人をくっつけて。
「ちょっとちょっと君達ぃ?そんな勝手な事言っていいのかい?せっかく今回の企画を立てた僕のパパが君達一般人を特等席で招待してくれたんだよ?それを無下にしたら、どうなるのかわかってんだろう?通信簿が著しく低くなって、将来が余計に不安定になっちゃうかもなぁ~?」
「「きゃ〜っ!!庶民の将来の事も思案して忠告するなんて、小金井さん素敵~っ!!」」
褒め称える女生徒二人。
「ふふん…」
小金井はピンと鼻を高くする。と同時に、狙いを佐恵子に付けた。
「あっ、そうだ。えぇと佐恵子さんだっけ?先日は失礼しましたね。お詫びといっちゃなんだけど今回の集まりは僕のパパが根回ししてくれたんだ」
「え、は、はぁ…」
「どうだい、僕の凄さがわかったかい?なんてったって夢叶えしエンターティナーがこぞって集まってるんだから。わかったんなら今なら漏れなく先着一名様限りで僕の下にいるのを許すけど、どう?そんな奴らよりもっと幸せを感じられるよぉ~?」
「…え、えぇっと」
突然の提案に困り果てる佐恵子。対して、権力を振るわれ未だにうろたえる男子達であった。が、紅蓮だけは椅子を盾にして小金井の前に詰め寄った。
「おう、てめぇの親父がここをプッシュしたからってどうだってんだ。てめぇ自身の才能じゃねぇだろうが。第一、誰がこんなてめぇらの自己顕示欲の塊を見せてくれって頼んだんだ?政治部の人間なら底辺暮らしの需要ぐらい把握しとけ、な?」
おおよそ小学生とは思えない紅蓮の凄み。
「う、うぅ…」
その前に小金井はたじたじ。女生徒も閉口する。その時であった。彼らに、大人の人影が覆い被さったのは。
「小金井くん?こんな所で油を売ってはなりませんぞ?早く特教生に戻ってください」
「あ、ひ、東山さん…ごめんなさい」
人影の正体、小金井に呼ばれた東山という男はジャケットを脱いだスーツ姿で高身長、筋骨隆々で坊主頭の中年であった。まるで大入道のようにも見える。彼はそそくさとその場を去る小金井を微笑んで見送ると、紅蓮達に向けてその笑顔が嘘であったかのような仏頂面へと変貌した。
「さて…君達はここでなにをやっている?何故持ち場から離れているんだ?黙って待つ事すら出来ないとでもいうのかね?」
「あ、あの、その、えぅ…」
突然大の大人に叱られて、顔を見合わせる事しか出来ないクラスメイト達。と、紅蓮が前に一歩出た。
「なにって帰るんスよ。そもそもアンタ誰だ?偉そうに」
「私は人財管理局局長、東山全才(ぜんさい)。今回の祭典を視察しに来たのが目的だ」
威風堂々と名前と目的を明かす東山。クラスメイトは一気にざわついた。
「じ、人財管理局…!?」
「確か、人の雇用とか、人体発電機まで管理してるっていう、あの…」
「フレロボ以外の人間は管理局に数人しかいないよな、確か…すごく優秀な」
「お、おい紅蓮やめとけって。逆らうと洒落にならないって…」
警告しようと一人の男子が紅蓮の肩に手を乗せる。しかし当の本人は肩を振ってその手を追い払った。それを見た東山は苦笑する。
「ふん、そんなに怯えんでくれたまえ。それよりも君達に一つ聞きたい事がある…君達は、ステージに立つ者や特教生がただ才能と産まれの立場だけで特別扱いされているのが不満なのかね?」
「あ?そうだけど」
「なら一つ言わせて貰おう…考えが甘いっ!!」
「っ!?」
東山の声量は決して大きくはなかった。が、迫力が十分であり、その場にいるクラスメイト全員がビクリと身体を震わせる程であった。
「…まさか君達はステージに立つ者、特教生が全員あの才能をなんの努力も得ずに手に入れて、特別扱いされていると思っているのか?それは違う」
「彼らは日々、必死で鍛錬した。あまりの辛さ、限界を感じて涙を呑んだ事もあるだろう。しかしそれでもやめなかった。無限の可能性を信じて。そしてなにより応援してくれる方々を想って」
「それを知らずになんだね君達は?そんな彼らのガンバリを興味ない、つまらないと断言して好き勝手悪態をつき放題。一体今の君達と彼ら、どっちが情けないと思うんだね、んんっ!?」
東山の視界の下に散らばるクラスメイトはばつが悪そうに彼を見る。その中で紅蓮は、彼に顔を背けて通り過ぎようとした。
「…だからってどうだってんだよ。見たくないモンにないって言ってなにが悪ぃんだ、くだらねぇ。帰らせてくれ」
「それでいいのかっ!?言っておくが今の君はただの弱虫だぞ」
「…あぁっ?どういうこった?」
その場を後にしようとした紅蓮であったが、『弱虫』の一言を聞いてピタリと足を止めて東山の方を向いた。
「面倒な事から逃げて逃げて逃げて逃げ続けてるだけのただの卑怯者にしか過ぎないって言ったんだ。なにしろ今の君はご飯を貰うだけ逃げる恩知らずだという事だしな、そうだろう?」
「ぐっ…」
「さ、席に戻るんだ。男なら言われた事をキチンと最後までやり遂げろ。見るだけなんだからそれ位出来るだろう?」
気がつけば、帰ろうとしていたクラスメイトは皆、席に戻って行儀良く座っていた。
「…くそったれ」
紅蓮は不服そうに席を元の列に戻してどっかりと座る。
「よろしい。それじゃあゆっくりと見ていたまえ」
見届けた東山はステージへと消えていく。紅蓮は彼がいないとわかるや否やブツブツと口を動かしていた。ふて腐れる彼の前に、留依がひょっこりと顔を出した。
「まぁまぁ。普段有料のコンテンツが無料なんだから損はないでしょ?ね、せっかくなんだから見てみよ?」
「…ケッ」
チャリティー開始までもう間もなく。出演者が控える大型のテントへと入った東山の前に待っていたのは、メンバー毎に別のコスチュームに身を包んだ数十人の若者アーティストグループや発達した筋肉を持つトップアスリート十数人、更には顔立ちの良いコメディアン数組など様々な分野のトップが整列した姿であった。そんなきらびやかで風格ある彼らの列を老年の男性が割って歩み、東山の前で深く一礼した。
「お待ちしておりました、東山局長っ!!このような機会をわたくし小金井に授けて頂き誠にありがとうございますっ!!」
「ふむ、これだけの短期間でよく準備した物だ。さすがはこの県の政治する者だ」
「いえいえそんなもったいないお言葉!!…ささ、皆なにをしているっ!!」
小金井と名乗る男は若者達へと振り向く。
「特教生時代から今日まで、君達が所属する文化の類や事務所を『文化特別保護法』によって守ってくれたのは誰だと思う!?こちらにいらっしゃる東山局長でいらっしゃるんだぞっ!!頭が高い、頭が高いぞっ!!」
言われた若者達は一歩歩み、同じく頭を下げる。
「「「「東山局長、ありがとうございました!!」」」」
彼らの感謝を肌で感じ取り、東山は満足げであった。すると、一人のグループアーティストである男子を指差した。
「君は確か、fire-bustersのセンターであるフジミヤくんだったね。今日の集まりは君達グループを一目見るのが目的だと聞いている。多くの人々を感動させるのを、私は期待しているよ」
「は、ハイッ!!俺、誰よりも注目して見せますっ!!それに、俺の歌で、皆が抱えてる不安や悩みを吹き飛ばして、元気にしてやりますよっ!!」
「その調子だ。それじゃ、私は他を見てくる」
東山は列を後にする。彼の背を見送るように、若者達は全員頭を深く、深く下げるばかりであった。東山が移動したのは暗がりのステージ裏。そこではステージ設営用のフレロボ十体が迅速かつ丁寧に準備を進めていた。設営の現場責任者もまたフレロボであったが、東山が入った事を知ると彼を静かに見つめている者が一体。ワイルダーであった。
「…なにかねワイルダー?私になにか不満があるのかね?」
ため息混じりに問い掛ける東山。ワイルダーに表情がなくとも不満げなのに気づいていた。
「…コンピューター計算で出た疑問があるだけですよ。このチャリティーになにか裏があると、ね」
「ほう?」
「なにしろ管理局がやった事といえば、金や才、立場のある者は手厚く保護し、それ以外の者は奪うだけ奪い、やりたがらない事の押し付けをしていた訳ですからね。それを、手の平を返すように無料で庶民の方々に色々と与える訳とは…ハッキリ言って、信用できません」
「それは君の考えすぎだ。我々はただ搾取するだけの組織じゃない。これからの厳しい時代、少しでも励みになるようにこの企画を考えた。それだけの話だ」
「…その言葉、信じますよ。少なくとも今日だけは」
「さ、そろそろ時間だ。各員スタンバってくれたまえっ!!」
開演の時刻となった。ステージの、幕が上がる。
どうも皆さん!!
さぁ、いったいどのようなショーが始まるのでしょう!?
長話もなんなので、次へ~!!
7/30投稿