剣持志郎…少々弱気で考え込んでしまう小学生。
ブルート…名前、製造目的不明のフレロボ。物静かな性格をしている。身長:210cm(角除いて180cm)、体重101Kg。
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園山留依…志郎の同級生で、何事にも負けない前向きな少女。
スナイル…明るく、気さくな性格をしたフレロボ。留衣の子守り担当兼ボディーガード。
身長:198cm(アンテナ除いて178cm)、体重85Kg。
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嵯峨山紅蓮…志郎達の同級生である乱暴者。金稼ぎの為ならなんでもする。
ディッキー…紅蓮の家で働くフレロボ。粗暴だが、紅蓮の事を心配している。身長:200cm、体重190Kg。
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ワイルダー…一明博士の下で働くフレロボタウンのリーダー。身長:174cm、体重71㎏
園山一明…フレロボ発明、開発始祖にして第一人者の好々爺。留依の祖父。
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ブロッサ…志郎達のクラスの担任フレロボ。教育熱心で生徒達の将来を心配している。身長:163cm、55㎏
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4-4
大騒動より水曜日の朝、志郎は静かな教室の扉の前で一人立ちすくんでいた。それも、ため息すらついていた。
(はぁ…ブルートがいなくなって落ち込んで、学校一週間も休んじゃった…将来の内申書、就職に影響がでなきゃいいけど)
(パパは『管理局から協力費が出たから元気出せ』って通帳見せてくれたけどすずめの涙じゃないか。なんでも換金すればいいってもんじゃない)
(もう、ブルートには会えないのかな。酷い事されてるって考えると、気が重いよ…こんな不安が続くならいっそ…)
(…ってダメだダメだっ!!暗い方向に考えちゃ!!僕達を見て、元気づけてくれている人がいるって知ったし、クラスの皆だってそう考えて気持ちを改めて頑張っている筈なんだ、僕だって…!!)
そう自分に言い聞かせながら、変わるクラスメイトに期待して志郎は引き戸を開ける。
だが、それは脆くも崩れ去った。
「ゴァァァァ、グァァァァァッ!!」
教室奥でブルーシートを床に敷き、大いびきをかいて眠る限界まで肥満体の男子生徒。
「クソが、また勝手に俺のコレクションを売りやがって…近所で人体発電機行きになった人がいるからって、俺関係ないだろが。愚親(ぐしん)がよ…」
椅子に深く腰掛け、机に向かってくだを巻く痩せこけた男子生徒。変わらない陰鬱な日常へとなっていた。いや、一つだけ変わった点があった。連なる席の中心に小金井が座っていた。それも、男子生徒三人に絡まれながら。
「オラオラ、なんか言えよ小金井サマよ、偉かったんだから、俺らのためになる説法くらい言えるだろコラ?」
「…ぼ、ぼ、ぼぼ僕は偉いんだ。誰もが僕の才能、政治的手腕に驚いて頭を下げ、感謝をする。でも今はそれを発揮出来ない状態なので、だ、だから時が来たらトップに返り咲くんだ」
命令通り、虚ろな表情のまま早口かつ小声で語る小金井。そんな彼に男子生徒の一人が顔を寄せる。
「あっそ、でもお前昨日の作業全部とちってたよな?それでも出来んの?」
「…」
「はいつまんなーい。やっぱりお前も価値ないわ」
「「「ギャハハハハハハ!!」」」
論破され、にやけ顔で俯く小金井を男子生徒達は指差して嘲笑する。どうしてこうなったか気になった志郎は恐る恐る近寄った。
「ね、ねぇ。小金井くんがどうしてここにいるの?」
「あ?あぁ、まずこいつの親父は政治家なんだけどよ。今回のチャリティーの責任者として辞めさせられたんだってさ。で、ガキの特教生としての授業料も払えなくなってここに堕ちたって訳だ。なにしろ、一流の人の命脅かしたとかでどエラい賠償金が来たとかでよ」
「んでよ、先週から俺らと作業してる訳なんだが、まぁぁぁぁぁ役に立たないこと。発電ペダル漕ぎはものの十分で体力限界でゲロ吐いて撒き散らして、その班はノルマ完了までめっちゃ時間かかったし、受付じゃ対応する人ごとに間違えて怒鳴られ続けてこっちもタイムロス。極めつけには話しかけてもこんな感じでぶつぶつ言うだけ。早い話が役立たずだぜ」
「しかもよ、コイツ体育の授業こっそり抜け出して女子のパンツ嗅いで盗もうとしたんだ。しかも二度。役立たずな上に人の屑。なんの価値もねぇよな?」
「でもよ、俺らコイツのいい所やっと見つけたんだぜ。オラぁっ!!」
男子生徒は小金井の机の脚をガンッ!!と、蹴り上げる。すると小金井は肩を揺らしてフスフスと出っ歯を剥き出しに笑い始めるのであった。
「ヘッ、どれだけいじっても気持ち悪く笑うだけだからいじりがいがあるぜ。な、このいじりって世のため人のため、楽しませるためにやってくれるんだよな?お前のアイデンティティだよな?」
「うん、うん、そよ…」
「「「ギャハハハハハハ、やったぁ!!」」」
相づちを打つ小金井に、男子生徒達は彼の頭頂部をペシペシと叩く。
「や、やめ…」
止めようとした志郎であったが、「やめなさいよっ!!」と女子の声が覆い被さった。佐恵子であった。傍らでは留依も仁王立ちしていた。
「どうしてそんな酷いことするの!?皆この前のチャリティーで未来に向かって頑張ろうって思ったじゃんっ!!それなのにこんな弱い者いじめして、応援してくれたアーティストの人達に申し訳ないって思わないの!?」
「…なんだよ」
男子生徒は露骨に苛立ちながら、佐恵子を睨む。
「お前だって散々コイツに苦しめられたじゃねぇか!!コイツは俺達と同じ才能も個性もない上、ウザくて役立たずな奴なんだ、生きる価値がねぇんだよ。そんな弱ぇ奴、つまはじきにして当然だよなぁ!?社会だって今、そうしてんだからよ!!」
「そ、そうかもしれないけど、そんな大人の真似事なんかよくないよっ!!」
「うるせぇなぁっ!!俺らの気持ちわかんねぇからそう言えるんだ。いいか、俺達にはもう普通の楽しみも、夢も将来もないんだ。災害だってまたも各地域で頻発してるし、その上電力も足りねぇから守りきれてない。そんでもって、人体発電機もあるしな」
「しかもよ、危うく洗脳されかけたがあんな一流のモン見せられて、非常時には優先的に守られて、こっちは劣等感が更に増したんだ。なんであいつらは夢と自由が与えられて、俺達にはなにもないんだってな。だからよ、少しでもこうして優越感を増やしてるって訳よ、わかったか?」
「…まぁ最も、夢叶えても、才能を喰われて捨てられるだけだって最近わかったけどな、な、留依?」
「う、ぐっ…」
呻く留依に、男子生徒はあえて改めて説明する。
「あの野城ってオヤジ、あの地位を裏金やら周囲の人間への嫌がらせで蹴落し掴んだらしいぜ。しかもよ、この前の女集団の一部は自分のちょっとしたお気に入りに『奉仕してもらって』特教生に特別に入れて組み込んだそうじゃねぇか。あぁそうだ、お気に入り以外はピンハネとパワハラとか無理強いとかもしてたみてーだな。ニュースで言ってたぜ。そのお陰で野城は辞職、才能の有無、個人の努力関係無しに女のグループは解散、今までの努力は水の泡ってわけだ」
「まぁなんだ。今の時代、夢への努力なんざ時間の無駄で才能喰われて、いざとなればハイポイ捨て。見るのでさえすぐ問題起きて裏切られてハイがっかり。だから自他ともに社会に期待せず、くそったれな労働だけして、自分より下のモン見つけて嘲笑う生き方の方がマシってわけだな、ワハハハハハハ!!」
「やめてっ!!そんな事言わないでっ!!第一、希望溢れる物見れば明日も頑張れるって思えるでしょう!?」
耳を塞でわめく留依と反論する佐恵子。
「そうだよ!!野城って人はともかく、他のアーティストや大人達はきっと私たちを守ってくれるはずだよ!!だから私、あれ見て大人になっても諦めず夢を追いたいって思ってるよ!!」
それでも、男子生徒は顔を寄せる。
「なんだよ、俺は事実言ってるだけだぜ?変に期待してショック受けるより、この方が楽だって…」
すると、勢いよく教室の引き戸が開かれた。ずんずんと入室したのはしかめ面の紅蓮であった。志郎達の下へと近寄った彼に、男子生徒はニヤリと笑う。
「よぉ紅蓮、お前もやらないか?この小金井ならぬデバゴン遊びをよ…」
「どけ」
「おいおい、ノリが悪いな。せっかくだから少しでも」
「いいからどけってんだっ!!」
「う…」
紅蓮の凄まじい剣幕に、男子生徒はたじろぐ。突き飛ばすように彼らを通り過ぎた紅蓮は、乱暴に教室のテレビの電源スイッチを入れた。画面がつくと同時に、周囲の非難が飛ぶ。
「お、おい!?勝手につけたら柊が黙ってないぞっ!!」
「そうだよ!!一蓮托生で反省文なんて嫌ですからねっ!!」
「うるせぇ黙ってろ!!」
「ツッ!?」
一喝で周囲が静まり、紅蓮は静かに答える。
「…今、首相からのお話とやらが生中継されている。町の噂じゃ俺達に関わる事らしい。しっかり聞いておくんだな」
ざわめく教室の中、テレビの中の品格ある中年男性、この国の首相がマイクを前にして真摯な態度で語り始めていた。
『…昨日、結論が出た通り、月面の採掘は落石と地盤沈下に伴い、基地は壊滅的被害を受けました。採掘が出来なければ、日本のみならず、我が国の宇宙開発技術へ莫大な支援してくださった北部中央連合国への支援が実質不可能、それだけでなくこのままいけばライフラインが枯渇、社会基盤が崩壊状態、更には増えすぎた人口に対し、電力不足でセルストッパーへの補給が難しくなり、範囲内であってもセルトランスとなりうる可能性が増えつつあります。皆様には大変申し訳ないと感じております』
『更にはもう一つ、残念なお知らせがございます。セルトランスはこれまで成人以降にしかならないとの見解がされていましたが、最近になって未成年以下もなりうるとの結論が下されました。この点に置かれましては、多くの若者が学業を終える前にセルトランスとなってしまうと考えております』
『そこで政府といたしましては、社会人となるのを早く、効率化させ、法律を改正した『人類社会永続特例法』を施行致します。まず内容としましては、各生徒が現在通っている学校を卒業後、小中高問わず政府と管理局が予め決めた就職、進学先へと進んでいただきます。なお、どの先となるのかは政府とフレロボのコンピューターが判断します』
「な、な、えぇっ!!」
「嘘ぉっ!?」
一気に驚愕の声を吐く教室。当然首相は聞き手の表情を知らずに淡々と続けた。
『その基準は、校内での素行、労働意欲、労働能力の高さから判断致します。ですが、もし万が一、能力判定から不合格となった場合…』
『…その方には申し訳ないのですが就職先が決まるまで人体発電機へと入って頂きます。勿論、席が空くまでですので短期間となる可能性がございますのでご安心くださいませ。それと、社会人、成人の中にいらっしゃるかもしれない働いていない、働いていても生産性のない方々にもこうしたコンピューター評価によって人体発電機行きにもなります。ご容赦ください』
生徒達は絶句。首相は深くため息をつくと、言葉を続けた。
『…このような制度を作った上、補償や支援すらないのは断腸の思いでございます。ですが!!どうかなにとぞご理解をして頂き、そして未来へご期待下さい!!我が国には数多くの文化があります!!それらをどうか支えにして、今日、明日を生き抜いて下さい!!』
『最後に、この制度には多くの考案者、賛成者によって成り立っております。私は彼らの責任を背負って辞任を…』
プツン…
もうこれ以上、話を聞きたくない。そう言わんばかりにクラスメイトの男子の一人がテレビを消した。教室は静まり返っていた。突然の新しい苦しい制度に、考えがまとまらずなにも言えないからだ。やがて、留依が口を開いた。
「な、なんていうか、すごい制度だね~、でも大丈夫だよ、よっぽどの事しなきゃ入らないと思うし…」
「なわけないでしょっ!!」
留依の女子友達が叫ぶ。思わず留依は口をつぐんだ。
「だって、私達常に怒られてんじゃん!!奉仕活動の作業しても、なにもしなくても!!佐恵子ちゃんが反省文書いてたのもう忘れたの!?能力の低さから発電機行きになるのは確定的じゃん!!」
「しかも就職出来たからって生活が安定するとは限らないじゃん!!もしかしたら給料足りなくて家賃とか払えずセルストッパー範囲外へと追い出され、そこでセルトランスになって、人体発電機に入れられて…どう足掻いてももうお終いだよ私達!!」
「あぁ~もう、やだっ!!どうしてこんな制度に大人達は反対しなかったの!?」
頭を抱える女子友達。だが次の瞬間、ハッとなって顔を上げた。
「…そうだ、この前の文化系の人達だ。あの文化人達が一般の大人達を楽しませて洗脳、制度の発足の注目を逸らさせたんだ。だって急にやるなんて不自然だもの。ね、皆どう思う?」
同意を求める女子友達。すると、周囲のクラスメイト達は一斉に意見を述べ始めた。
「そうだ、その通りだ!!仕事で心が疲労困憊の所を狙って洗脳したに違いない!!やり口が汚いぞ!!」
「クソォ!!あの時のオッサン連中の話は本当だった訳か!!っていうか、いい歳してあんなきな臭いモンをボーッと文化的なの享受してんじゃねぇよ!!少しは考えろ!!」
「多分この制度も『仕方がないね』位にしか思ってないんだなぁ…もうおしまいだよこの世界」
「ちょ、ちょっと皆落ち着いて…そんな訳が」
クラスメイトを宥めようと留依は教室中を駆け巡る。少し静かになった頃、留依の横を佐恵子がフラフラと通り過ぎた。
「ハハッ、どれだけ努力してスターになっても、最後には権力者の手先にしかならないのね…」
「そして、仕事を決められた以上、私にはもう夢を叶えられないって訳…」
「これからどう生きようか…更に毎日、怯える人生でさ…」
「さ、佐恵子ちゃん…!!」
留依は佐恵子を励まそうと近寄った。と、その瞬間であった。
「死ねっ!!」
小金井の机の脚を、佐恵子が思い切り蹴飛ばした。またも出っ歯剥き出しでフスフスと笑う小金井に、佐恵子は大笑いした。
「キャハハハハ!!」
それも、見下し、蔑むような視線で。
「なにその顔気持ち悪っ!!よく今まで鼠みたいな顔で生きてこれたわねっ!!なんにも出来ないんだから本当に鼠に生まれ変わったら?キャハハハハ!!」
「…ア、ソ、ソッスネ」
小金井は反論もせずに小声で俯く。と同時に、先程彼を『いじっていた』男子生徒達と、他のクラスメイトも彼の下へと集まった。
「おい佐恵子。そういう『楽しみ方』もいいけど、悪事を暴こうぜ。おいデバゴン、なんで女子のパンツ盗もうとしたんだ?正直に言いな?」
「あ、あの、女の子の蒸れた汗の匂いが好きで、えと…それと、それを嗅ぐ自分の姿を想像したら…えへへ」
「うわ、キッモ!!やっぱお前、人体発電機に行っちまえよ!!んで、二度と帰ってくんな!!」
「ア、サ、サセンス…」
「っていうか太陽系から出てけ!!」
「「「「ギャハハハハハ!!」」」」
教室には笑顔が戻った。努力や愛、将来に期待する事は止め、自分より立場が弱い悪人を貶し、『コイツよりマシ』『自分は正しい』という自信を保って、心を満たして。そんな中、志郎は彼らの円に混じる事なく、静かに呟いた。
「この世界は、強者が弱者を虐げて幸福感を得る。そうじゃなきゃ、やってられないのかな…」
「いや、でも、違う!!僕は認めたくない!!もっとなにか、別の方法がある筈だ、別の、方法が…」
「「…」」
志郎と同じく立ち尽くす留依と紅蓮は、彼の呟きをただただ聞くだけだ。
「ワーハッハッハ!!」
「ギャハハハハハ!!」
クラスの嘲笑、一人で俯き小金井の薄汚い顔を添えて。
どうも皆さんっ!!
これにて、前半が終了致しました!!
果たして後半、子供達の将来はどうなるのでしょう!?
それではまた、第五話をお楽しみに~っ!!
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