巧が残した物は未だに分からない事が多すぎる。
「・・・プロトビルド、エヴォルかぁ」
今は、戦兎の出勤に合わせて、駐車場にいる俺はエヴォルの事を思い出す。
当初は、プロトビルドとして運用していたシステムであり、現在の戦兎が使っているビルドドライバーの原型機となった存在。
俺もあまり詳しい情報は覚えていないが、ビルドドライバーを作る際に、人間が使えるように調整して造ったと巧は言っていた。
そして。
「・・・また、メモリーの不調か?」
何やら、記憶が曖昧である。
時折、ふと大切な何かを思い出したら、すぐに消える。
まるで、俺に何かを忘れさせるように。
そんな考えていると。
「んっ?」
駐車場のアスファルトに残る僅かな水たまりが、俺の赤い識別灯を反射してチカチカと光っている。
俺は今、ライドモードで駐車場の隅に停まっている。戦兎は東都先端物質学研究所へ出勤中だ。天才物理学者の仮面を被って、氷室幻徳の下で研究員ごっこをしているはずだ。
(あいつ、仮面の下でどんな顔してるんだか)
エヴォルの記憶を反芻していたせいで、動力炉の熱が少しだけ高い。記憶領域に霧がかかったみたいな感覚が、俺を苛立たせる。
「んっ?」
思考が途切れた。
耳--いや、音声センサーが、特定の周波数を拾ったからだ。
ウゥゥゥゥゥン……!!
低く、長く、不快な音。空気を震わせるあの音は、間違いなく──。
「警報? 研究所のか?」
ビーッ、ビービーッ!
音は確かに研究所の方から響いてくる。日常点検の音じゃない。もっと切迫した、危険を知らせる音だ。
俺は即座にライドモードの出力を上げた。エンジン……いや、動力炉の回転数が上がり、振動がフレーム全体を駆け抜ける。
(戦兎、何かあったのか?)
疑問が言葉になる前に、研究所の側面──地下駐車場から見える地上部分のコンクリート壁が、内側から爆発した。
ドォォォン!!
「うおっ!?」
衝撃波が俺のボディを煽る。タイヤがアスファルトの上をスッベると音を立てた。
瓦礫と砂煙が噴き上がる中から、二つの影が飛び出してくる。
一つは、仮面ライダービルドだ。
『天空の暴れん坊!ホークガトリング!イェーイ!』
変身音が瓦礫の向こうから聞こえた。あれはホークガトリングフォーム。空を飛べるフォームだ。
もう一つの影は、ビルドに追われるように空中へ飛び出した。スマッシュだ。フライング系か何かか、鳥のような翼を持った怪人が、きりもみ状に回転しながらビルドを振りほどこうとしている。
「おいおい、空中戦かよ! 房中大丈夫かあいつ!」
ビルドがガトリング砲を乱射する。ダダダダダダッ! 光弾が空を切り、スマッシュの翼を削る。スマッシュがギャアアアと叫びながら体勢を立て直し、ビルドへ突っ込む。
二人は絡み合ったまま、研究所の上空で複雑な軌道を描き始めた。
(すげえ動きだ。でも、あのスマッシュ、わざと研究所の奥へ誘導してねえか?)
その時だ。
通信回路にノイズが走り、聞き慣れた声が飛び込んできた。
『ビリー! 聞こえるか!』
「戦兎! 何事だ!? 上空で派手に暴れてるじゃねえか!」
『スマッシュに襲われた! だが、これが罠かもしれない!』
「罠?」
『研究所のパンドラボックスが狙われている可能性がある!』
「なんだって!?」
戦兎からの通信を聞くと共に、俺はすぐに人型へと変形し、研究所へと向かう。
そこでは、警備を行っていたはずのガーディアンが研究所の警備を行っていた人達を襲っていた。
これは、かなり計画的のようだ。
「させるかよ!」
俺は瞬時に懐からプロトトランスチームガンを取り出し、バイクフルボトルを装填する。
「蒸着!」
瞬時に蒸着した俺は、そのまま、人を襲うガーディアンを撃ち抜きながら、走る。
「なっ、お前は!なんだ?」
「今は良いから!逃げろ!」
そうしながらも、俺は眼前にいるガーディアンを見る。
ここで警備していた奴だから、多少見覚えがある。
故に俺は引き金を強く握る。
「・・・お前等をこれ以上、人殺しの道具にはさせねぇよ」