「……ん」
動力炉が唸っている。
低く、ゆっくり、重たい唸り。俺の処理回路が順次起動していく感覚。サーボが一本ずつ動いて、センサーが周囲の情報を拾い始める。
(メンテナンス終了か。どのくらい止まってたんだ俺は)
赤い識別灯が点滅を始めた。通常出力。警告灯は消えている。リミッターも正常域に戻っている。メンテナンスポットの自動修復が終わったらしい。
「ビリー!」
上から声が降ってきた。美空だ。
俺は上を向いた。メンテナンスポットのリクライニングシートに半ば埋まったまま、天井を見上げている。美空がのぞき込んでいた。目が赤い。
「よかった…起きた。本当に起きた。もう二度と動かないんじゃないかって」
「俺はロボットだぞ。死ぬとかないだろ。メンテナンス中に機能停止しただけだ」
「機能停止してたのよ! 三日間も!」
「三日?」
俺は処理回路のタイムスタンプを確認した。確かに七十二時間の空白がある。最後の記憶はメンテナンスポットに入った瞬間、次は今、その間は完全に黒だ。
「三日も落ちてたのか俺。寝すぎだろそれは」
「寝すぎじゃない! 機能停止! 死んでたのと同じ!」
美空が叫ぶ。俺は体を起こした、関節がキシキシと鳴る、三日ぶりの稼働でサーボが硬くなっている。
「で、俺が止まってる間に何があった」
美空の表情が曇った。
「……戦兎たちが出撃したの。スタークを追って。でも、大変だったの」
「大変って何だ」
「フルボトルが奪われた。戦兎のボトルの大半が」
「は?」
俺は立ち上がった、膝が笑ったが支えることはできる、動力炉は正常、出力も安定している。
「奪われたって、スタークに?」
「戦闘中に。ナイトローグとスタークの連携で、戦兎が変身解除されてる隙に。ラビット、タンク、ハリネズミ、消防車、ゴリラ、ダイヤモンド、タカ、ガトリング……ほとんど取られた」
俺の動力炉がトクリと脈打った。それは怒りじゃない、計算だ。
(フルボトルの大半を失った。ビルドのフォームチェンジが大幅に制限される。残ってるのは——)
「残ってるボトルは」
「ドラゴンと、ロック。あと……龍我が持ってた忍者とコミック」
「ドラゴンとロックか」
俺は自分のプロトトランスチームガンを確認した、二丁ともホルスターに収まっている、スロットは空だ、ボトルは外されている。
「ドラゴンとロックが残ったってことは——」
「万丈がね、クローズドラゴンを使って変身したの」
「何だって?」
「仮面ライダークローズ。龍我のビルドドライバーで変身したの、ドラゴンフルボトルにクローズドラゴンがボトルを装填して、変身出来たの」
(龍我のボトルで戦兎が変身した。仮面ライダークローズか)
「それで、どうなった」
「戦兎はキードラゴンフォームでナイトローグを圧倒したの。すごかった。でも変身が途中で解除されて……力の制御ができなかったみたい」
(キードラゴンの力は龍我のボトルだ、戦兎のハザードレベルとは完全に合ってない。無理もない。だが一時的にでもナイトローグを圧倒したなら、あのフォームのポテンシャルは高い)
「それから、奪われたボトルは」
「全部取り返した。戦兎が最後にスタークから取り戻して。だから今はフルボトルは全部戻ってる」
「全部?」
「うん、全部。戦兎が頑張ったの」
(全部取り戻した。よかった。だが——)
「戦兎は今どこだ」
「何か、スタークの手掛かりがあったとか」
「なら!俺も行くぜ!」