おれはドラゴン。人間はしぬべき 作:4645 (ケモ系大量生産クリーチャー)
ひと仕事終えたドラゴンが帰宅し、近所の池の辺で怪しい木の実等を無計画にモグモグして腹を壊し始める程度の時間が経過したが、一方その頃。
ヤバそうな狂信者系女ことノザワナナの地元であるシンシューマツモト王国では、その気配の一時的消失を受けた神聖ジューワ・リソバ教四天王達によるクソ適当かつクソどうでもいい用語過多でありがちな緊急会合が開かれていた。
「ノザワナナがやられたか…」
四天王の中でも序列二位を誇ったり誇らなかったりする中間管理職オヤッキーは、上座の良い席でオーラファーミング的ポーズをしながらそう発言した。
その声色には深い疲れと懸念が色濃く現れている。
「クク…ヤツは四天王の中でも持ち前のピリリと辛い言動のせいで腫れ物扱い………更に1人だけ名前の語尾が伸ばし棒でないところも少し浮いている……特に居なくなったとて困りはしない…………」
序列一位かつ四天王の首領を務めるシナノスイーターはかなり現実的な人物評価を得意としていた。
なお、四天王の残りの一名の名前はスキー・ジョーである。
「しかし…このままでは我らが†世界首都ナガノニア†計画に差し障り、あのお方の怒りを買うやもしれませぬぞ…」
人物紹介を雑に消化されても怒らないパウダースノーのような優しさと折衝能力を持つスキー・ジョーは、明らかに外人枠っぽい名前なのにも関わらず達人高齢者キャラである。
実は100年以上の歴史がある雪上滑走競技と同様に、彼のチャーミングポイントもまた意外な深みのある人間性だ。
「クク…あのお方の気は我らがシンシューマツモト王国の妙に縦長の国土よりも長いのだ…そう簡単に気を悪くするわけがあるまい………」
シナノスイーターが楽観的な意見でその場を締めくくり、三人はそれぞれひとつずつ手に持ったグラスをチンと触れ合わせる。
…特に議題設定のない会議によって特に結論のないまま何となく会合を終える雰囲気になってしまっただけのように見えたかもしれないが、実は今の三人にとってこの会合は結論を出すためのものではない。
どちらかと言えば現状と全員の思考回路をなんとなくすり合わせておくための、言わばコミュニケーションに近いものであり、新入社員がその意味を理解せずにコスパタイパ現代化と称して攻撃したがるタイプの感情的業務処理とも呼ぶべき行為であった。
「…オヤッキー… そういえば空席はどうする…クク…」
「ああ、そこは我が甥のサンゾクヤキーを一時的に当てるとしよう…」
「ああー…あの子かあ…うう〜ん……」
ともあれ、夜は老けていくばかり。
四天王の宅飲みは続く…
そして吾輩が出てこなくなり上記の本当にどうでもいいような人間サイド視点がこの後一章まるごと続く…
◇◇◇
…いやちょっと待ってほしい。
この話の主人公は吾輩のはず。
人語も話せず化け物故に人里に安易に降りることもできない主人公の扱いに困り果て一旦退場させた後にどうでもいい人間サイドの物語を一章まるごと続ける必要はない。
待て、待て待て待て、話せばわかる。話し合おうではないか
先程述べたように吾輩主人公なのに三話目でもう扱いに困っている感が出てきてしまっていることは重々承知である。
やっぱり人間相手に口で喋れもしなくて普通にバケモンなので人里に下ろしてモブと絡ませることすらも難しいドラゴンはうごかしにくいのだ。
「くわぁんぬ…」
すごく悲しそうな声色で鼻を鳴らす我輩。
…我ながらちょっとあざとかったかもしれない。
ありがちな千里眼的チートスキルを使ってネーミングや設定がクソほど適当なおそらくロケット団的存在であろう四天王たちの様子を眺めていた吾輩は、大きな嘆息をしつつスキル使用を止めると、ふわふわの葉っぱの寝床の上でモゾモゾと寝具の位置を整えた。
なんとなく、空が遠く感じる。
映画館を出たような、洞窟から急に外界に躍り出たような、そういう視覚的違和感を感じてしまうのは能力行使に慣れていないからであろう。
真上は満点の星空だ。
あっ今流星なんかが瞬いちゃったりして。ブリリアントである。
だがしかし、目をつぶると今日の出来事に対するモヤモヤが吾輩の心の内から湧いて出てきてしまう。
「くぇぁ………」
…固有名詞が多い…!たぶん7、8個は新しい単語が出てきたぞ…!!
6月の小学生の英語の時間か…?吾輩は人の名前を覚えるのが苦手なのだ。激しくやめてもらいたい所存である。
いや、6月の小学生の英語の時間か?という喩えに関しては訂正した方が良いかもしれない。今どきの小学校ではアクティブラーニングだのグループワークだのヒトラーユーゲントだのシャニイングウィザードだのの妙な取り組みが沢山行われているため、昔のように物憂げな横顔で雨のしとしとと降り注ぐ中庭をぼうっと眺めていれば時間が過ぎ去るようなものでも無いらしいのだ。
少なくともありがちなレベルアップとか教えてくれるタイプの天の声さんはそう補足している。
なんか、わかんないけど小さなお子さんとかいるのかな…
閑話休題。
それと後だな、多分これきりしばらく登場期間が空くような設定用語を、出てきたので言うと長野ニアだのなんだのの変な設定をこんな最初期からポロポロ入れてしまうと作者も読者も両方後で忘れて何の話かわからなくなってしまう可能性が高いだろう。
だいたい世界首都長野ニアってなんなのだ…
世界の首都を長野にするってコト…!?
「くわわ……!」
ああもうムカつく。
吾輩はどうしても気になってしまって、消灯後の最後に1回だけTwitterを見る時の感覚で四天王の会合の様子をもう一度覗いてみた。
するとちょうどこんなセリフが発せられているところであった。
「決まりだ…とりあえずノザワナナが最後に向かった地へ向かい、ヤツの姿を一応探すぞ…」
「こゃ!?」
いい歳のおじさんが鳥貴族でグハグハ笑っている時みたいな笑い声がドカンと響いた後に、グラスを傾けているであろう静寂が5秒ほど続き、更に思考をまとめる際に発せられる独り言フィラーがいくつか挿入され、最後の最後にようやく満を持した様子でシナノスイーターが集団に向けて口を開いた。
…何を言うのかと黙って聞いていれば、なんとコイツら全員こっちに来るようである。
え"え"………
もっと嫌な気持ちになってしまった吾輩は丸まった姿勢を崩して仰向けになると、そのまま全身の力を抜いて尻尾や手足を脱力させる。
チョー面倒くさそ〜である。
じゃあなんかもう、逆にこっちから出向いてやるべきなのかもしれない。
こいつらと入れ違いになるから変なことにならなくて済みそうであるし、あのお方ってやつに話を付ければ何とかなる気もする。
…なんとなく話通じそうだし…
まあ、なんだ。
ということで、次話。
ドラゴン街へ行く。デュエルスタンバイ!