クロスボーン・ガンダムX-5   作:バード鳥鳥

10 / 12
第1章⑩ 鎖の鉄球

――止められるか?

 

リオは、フェーレンの言葉に絶句する。

 

「む、無理!!」

 

フェーレンはフッと微笑する。

 

「正直で結構」

 

「とりあえず一つだけ言っておく」

 

「疑って、悪かったな」

 

次の瞬間。

 

白いF91が加速した。

 

まるで閃光。

 

一直線にX-6へ突撃する。

 

白いF91が、戦場を切り裂く。

 

速い。

 

リオの目では追いきれない。

 

残像だけがデブリ帯を走る。

 

ハロプトが静かに答える。

 

『機体性能だけではない』

 

『操縦技術で限界を超えている』

 

F91は接近してきた木星残党機を二機撃破。

 

ビームが閃くたびに爆発が起こる。

 

だが。

 

X-6だけは違った。

 

異形の右腕が、F91の動きに食らいつく。

 

フェーレンが舌打ちする。

 

「ちっ……!」

 

巨大な指が開く。

 

X-6が異形の掌からメガ粒子砲を放つ。

 

デブリごと消し飛ばす火力。

 

F91が紙一重で回避。

 

しかし。

 

避けた先へX-6本体が回り込む。

 

ビーム・ザンバー。

 

F91が腕のビーム・シールドを展開して受け流す。

 

火花。

 

その瞬間、F91は機体をひねり、回し蹴りでX-6を後方へ蹴り飛ばす。

 

しかし、ダメージはほとんど見られない。

 

その動きを横目で見ていたリオ。

 

「普通についていけてる、アイツに……」

 

リオはすぐに正面へ視線を戻す。

 

X-5がサルコファゴとバタラの射撃をかわした。

 

F91が距離を取る。

 

「ふう、なんて奴だ……決定打を与えるにはこれしかないか」

 

直後。

 

F91の背部ユニットが展開。

 

F91の主力火器。

 

Variable Speed Beam Rifle。

 

可変速ビーム・ライフル――V.S.B.R。

 

白い機体が狙いを定める。

 

「避けるなよ、黒いの」

 

発射。

 

閃光。

 

ビーム・シールドですら防げない、高出力ビーム。

 

だが、X-6の異形の右手が前へ出た。

 

巨大な掌。

 

その中心が開く。

 

ギィィィィィ――。

 

空間が歪む。

 

リオも思わず目を向ける。

 

ハロプトが即座に反応。

 

『あれは――』

 

ビームが、止まった。

 

あり得ない。

 

ヴェスバーの閃光が、異形の掌の前で拡散していく。

 

まるで飲み込まれている。

 

フェーレンが目を見開く。

 

「……マジかい」

 

ハロプトが低く解析する。

 

『ダブル・Iフィールド』

 

リオが叫ぶ。

 

「なんだそれ!?」

 

『木星帝国系理論兵装』

 

『Iフィールドを多層展開し、高出力ビームを偏向・分散させる』

 

「そんな――っ、!」

 

その時。

 

ペズ・バタラがこちらへ突っ込んでくる。

 

『厄介だな』

 

ハロプトはそう呟きながら攻撃を回避する。

 

ヴェスバーですら貫けない。

 

白いF91が後退する。

 

フェーレンが苦笑した。

 

「ちっ、勘弁してくれよ」

 

「ヴェスバーを止めてくれるかよ……!」

 

X-6の赤いツインアイが、不安定に明滅する。

 

「……ヤ……メ……」

 

「……コ……ロ……シテ……」

 

ノイズ混じり。

 

複数の人格が重なった悲鳴が聞こえてくる。

 

リオは顔をしかめる。

 

ガルドが笑う。

 

「素晴らしいだろう!!」

 

「お前たちではどうにもならぬよ!!」

 

ガルドは動かず、歓喜するように笑い、吠える。

 

「貴様ら力なき連邦のダニどもでは、到達できぬ力の象徴だ!ははは!」

 

リオは反論しかける。

 

だがやめた。

 

今はそれどころじゃない。

 

棒立ちで喋っていてくれるなら、

 

むしろ好都合だった。

 

そして、F91が再び構える。

 

だが今度は慎重だった。

 

「あのF91でも、決めきれない……!!」

 

ハロプトが静かに答える。

 

『ああ』

 

『わかっている』

 

その瞬間。

 

X-6が一気に加速した。

 

掌内部から、メガ粒子砲を発射しながらF91へ一直線。

 

F91が回避する。

 

X-6が異形の右腕を振り回す。

 

巨大な指がF91を掴もうと迫る。

 

だが、白い機体は紙一重で回避を続ける。

 

ハロプトが話す。

 

『リオ、突撃しろ』

 

「えっ」

 

『X-6の意識がF91に集中している』

 

『ガルドも浮かれている』

 

『チャンスだ』

 

一瞬。

 

リオの視線が腰部ラックに向いた。

 

そこには、ジャンク置き場から拾ってきた鉄球があった。

 

考えてる時間はない。

 

偶然とはいえ、F91が作った隙。

 

ガルドは勝ち誇ったまま動かない。

 

残存する木星戦力も、連邦軍との交戦に拘束されている。

 

今しかない。

 

『ヒートソードで接近戦を仕掛けろ』

 

「……いや」

 

チェーンハンマーを固定ラックから引き抜く。

 

『待て。それを使う気か』

 

「加速しながらの攻撃、そんで」

 

「アイツでも読みきれない武器というなら」

 

「これしか、ない!!」

 

リオは操縦桿を前へ叩き込む。

 

「うおぉぉぉぉ!!」

 

X-5がフル加速。

 

ボロボロのスラスターが悲鳴を上げる。

 

警報。

 

《機体フレーム負荷警告》

 

《スラスター限界出力》

 

巨大鉄球の鎖が宇宙で唸る。

 

その瞬間。

 

猛烈なG。

 

「ぐっ……!!」

 

視界が歪む。

 

肺が潰れそうになる。

 

「くっそ……!!」

 

「Gがすごすぎる……!!」

 

X-5の機動性能は、ピーキーすぎる。

 

まともな訓練もないリオには地獄だった。

 

それでも、止まれない。

 

X-6がF91へ意識を向けている。

 

今しかない。

 

リオは歯を食いしばる。

 

「俺はわからない!!」

 

『何をだ』

 

「振ったって当たるかわかんねぇ!!」

 

チェーンハンマーが暴れる。

 

重い。

 

軌道も読めない。

 

宇宙空間でこんな武器、普通は使わない。

 

だから。

 

リオは叫んだ。

 

「だからそこはお前に任す!!」

 

「へたくそな俺を助けて生存させろ!!」

 

「それがお前の仕事だろ、ハロプト!!」

 

無茶苦茶だった。

 

丸投げだった。

 

普通のAIなら拒否してもおかしくない。

 

だが。

 

ハロプトは数秒沈黙した後。

 

小さくため息をつくように言った。

 

『……呆れる』

 

リオが叫ぶ。

 

「悪かったな!!」

 

『だが』

 

ハロプトの声が静かに変わる。

 

『それは正しい』

 

リオが目を見開く。

 

『お前は未熟だ』

 

『戦闘経験も足りない』

 

『だから』

 

『足りない部分は私が補う』

 

チェーンハンマー軌道予測。

 

X-6移動ベクトル。

 

デブリ流動。

 

戦術演算開始。

 

リオが笑う。

 

「任せた、相棒!!」

 

数秒沈黙。

 

そして。

 

『……了承した』

 

X-5がさらに加速する。

 

周囲の細かな破片が、噴射に弾き飛ばされた。

 

X-5の急加速に気づいた木星MSが振り向く。

 

「ガンダムめ、何かする気――ぬおっ!?」

 

だが。

 

ヘビーガン隊が前へ出る。

 

「隊長のためにガンダムが動くのならば!」

 

「邪魔はさせん!!」

 

ビームが交差する。

 

木星残党機が足を止める。

 

ヘビーガン隊が進路を塞いでいた。

 

そして、チェーンハンマーが回転を始める。

 

ギャリギャリギャリ!!

 

悦に浸っていたガルドが、そこでようやく気付いた。

 

「何!?」

 

リオが叫ぶ。

 

「当たれ、当たってくれよ!!」

 

「ジャンク屋!?」

 

フェーレンが驚く。

 

X-6が振り向く。

 

異形の右手はすぐに迎撃態勢へ入る。

 

だが。遅い。

 

ハロプトが静かに告げる。

 

『打撃軌道補正』

 

『慣性計算完了』

 

『――今だ』

 

「くぅ・ら・えぇぇ!!」

 

リオは全力でチェーンハンマーを振り出した。

 

鉄球が、鎖を伸ばしながらX-6へ走る。

 

回転。

 

回転。

 

回転。

 

常識では読めない軌道。

 

古めかしい、ただの質量兵器。

 

素人による無謀な一撃。

 

だが。

 

その全てをハロプトが補正していた。

 

『命中予測完了』

 

ハロプトが機体姿勢をわずかに補正する。

 

X-6が反応する。

 

異形の右手が前へ出る。

 

迎撃――だが、遅い。

 

ダブル・Iフィールドは、高出力ビームへの対抗兵装。

 

質量を持つ鉄球は止められない。

 

異形の掌が進路を塞ぎきるより早く。

 

巨大な鉄球がX-6の頭部へ叩き込まれる。

 

ガゴォォォン!!

 

キィィィィィッ!!

 

鉄球は止まらない。

 

回転しながら、X-6の頭部装甲を削り進む。

 

装甲が砕ける。

 

火花が散る。

 

赤いツインアイの片目が弾け飛んだ。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告