カードゲーム作ったら世界が滅んだ   作:The.T

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 色々説明回。
 思ったより長引いたので次も説明回。
 バトル回だけ読みたい人は飛ばしてもなんとかなると思います。ゲームルール面での説明はゲーム内で行うので。



4話 若き錬金術師、コリナ - Corrina, Young Alchemist

 

「いよっしゃああ!!!」

 

 教室の中に歓喜の声が響く。

 

 決着と共に幻影(ビジョン)は消え失せ、カード達は持ち主の元へ戻っていた。

 恐竜に踏み潰され竜に焼き払われた机やイスも、初めから何もなかったかのように元通りだ。実際に何もなかったのだから当たり前だが。

 

「ネッパ君、すごいじゃん! やったね!」

 

 少し離れていた場所から見守っていた同級生の少女が満面の笑みを浮かべて駆け寄ってくる。

 まるで自分のことかのように喜んでいる彼女を見たネッパは少し気恥ずかしくなり、顔を逸らした。

 

「へっ、こんなもんよ! けどまあ、その。俺の(チカラ)だけで勝てた訳じゃねーんだよな……」

 

 ネッパには分かっていた。勝てたのは幽霊少女から貰った遺物(レガシー)カード――《ダブルアップ》のおかげであり、これまでの自分のデッキでは負けていたことが。

 

 それにきっと、もっと上手くやれたはずなのだ。

 幽霊少女の言うように《無垢なる種子》に《火花》を打っていればジュラクが《ティラン・セウルス》を出すターンは1ターン遅くなり、自分が先に《火炎竜-バーン》を出せていた。

 それなら火力カードと合わせてすぐに《ティラン》を処理することができ、《ダブルアップ》なしでも有利な試合運びができたはずだ。

 

「はあ……なんと言うか俺、まだまだ弱いんだな…」

 

 思わずため息を吐いてしまう。

 そんなネッパに向かって一つの怒声が届いた。

 

「ネッパてめぇ、この俺に勝ったってのになんて(ツラ)してやがる! 勝者が胸張らねェと負けた俺の株も下がるんだよ! もっと誇りやがれ!」

 

「……っ!」

 

 宿敵からの思わぬフォローへの驚きで息が詰まる。

 確かにそうだ。こちらの事情などネッパ自身と幽霊少女にしか分からず、周りから見ればネッパの完勝である。

 

「そうだよネッパ君! ようやく勝ったんだからちゃんと喜ばないと!」

 

 周囲へと目をやれば、この少女だけではない。

 いつの間にか揃っていた多くのクラスメイトがネッパを祝福していた。

 

「そうだよな……よし! もう一回言うぞ、ジュラク。 俺の! 勝ちだ!!」

 

「クソうぜぇからそのピースをやめろ! ……おい放課後空いてるな? ぶっ潰してやるから覚悟しとけよ」

 

「放課後か?もちろん空い――「すいません、放課後は私の用事に付き合っていただけますか?」――あっ忘れてた」

 

 横から割り込んできたのは幽霊少女。

 先程までは場の空気に合わせてニコニコと微笑んでいたが、ネッパの発言に慌てて声を上げた。

 

「約束、覚えてますよね? 手伝ってもらいますから」

 

 なんだか詐欺に嵌められたような気はするが、約束は約束だ。

 もらったカードのおかげで勝てたのもあり、なんだか逆らいづらい。

 

「ごめんジュラク! 今日は用事あるから先に帰るわ!」

 

「あん? 勝ち逃げかよお前」

 

「違うって…明日。明日またやろうぜ!」

 

 そう言い残して自分の席へと去っていくネッパに、ジュラクはため息をついた。

 元から自由なヤツではあったが、自分が抑えきれなかった以上はもっと面倒なことになりそうだ、と。

 

「ところでジュラク君、今日は学校来るの早かったよね?」

 

「あん? 別にそういうこともあるだろ。アイツだって同じじゃねえか」

 

「偶然ね〜 ……もしかして、探しものでもあったの?」

 

「し、知らねぇ。誰が他人(ヒト)のカードなんか……」

 

「あっやっぱり! 昨日のネッパ君のカード探しに来てたんだね。やりすぎだったって反省したのかな? でも残念、私が見つけちゃいました〜!」

 

「何を自慢してんだお前。俺はそんなんじゃないっての!」

 

 チャイムが鳴り、逃げるようにして自分の席へと向かうジュラク。

 もしかしたらあの女の方がネッパより面倒なのではないかと思い、また1つため息をついた。

 

 

◆◇◆

 

 

 放課後

 

 校門を出たネッパは一度ランドセルを置きに家へ帰り、街中へと向かっていた。

 

 何をするのか……どんな人をどうやって探すのかは、既に幽霊少女から話を聞いている。

 なにせ彼女は一日中あの学校に居座っていたのだ。ネッパが声を出さなければ怪しまれることもないため、必要なやり取りは済ませることができた。なんなら授業中にもネッパが居眠りしないようにサポートしていたほどだ。

 

 そんなこんなで、今はとあるカードショップを目指していた。

 ネッパとしては自転車で行きたいくらいの距離なのだが、それを提案された幽霊少女が「それは私に走れってことですか!?」と怒ってしまったために二人仲良く歩いている。

 そうなれば道中は会話が弾む。朝の勝負に関するアドバイスだとか、渡された遺物(レガシー)カードの扱い方だとか、よく知らなかったカード効果の処理だとか、とにかく色々と話した。

 

「そういえばさ」

 

「なんですか?」

 

 しかし。

 しかし、だ。

 

 幽霊少女は楽しそうにそういったカードの話をしていたが、それとは別でネッパには気になることが山ほどあった。

 なので、とりあえず一つ聞いてみることにした。

 

「お前の名前、なんて呼べばいいんだ?」

 

 こうしてちゃんと会話するようになると、いつまでもオバケだの幽霊少女だのと呼ぶわけにはいかない。ちゃんとした名前か、せめて存在としての正式名称でもいいから呼び名がほしかった。

 

「あれ? まだ言ってませんでしたっけ、こりゃ失礼。私の名前はコリナ。錬金術師のコリナです」

 

「れんき……? とりあえず、コリナでいいんだよな。改めてよろしく!」

 

「はい。こちらこそよろしくお願いします! いや〜名前を呼ばれるっていいですねえ……」

 

 何やら感慨深そうに空を見上げているコリナだが、ネッパとしては聞きたい疑問がまだまだあった。

 

「それで、コリナは結局その……なんなんだ? オバケ?」

 

「う〜ん説明が難しいですね…… 正確に言うなら肉体から魔力だけを抽出した霊体なんですけど、まあオバケでもそんなに間違いじゃないですし……」

 

「???」

 

 小学生には難しすぎる言葉の数々にネッパの頭は沸騰しそうになる。そもそもこの時代の人間に理解できる内容ではないため、小学生である点は関係ないのだが。

 

「オバケと思ってもらって大丈夫です。これでも千年前のオバケなんですよ?」

 

「本当にオバケだったんだ…… 昼間だけど平気なのか?」

 

「あはは、大丈夫ですよ。そういうオバケじゃないので」

 

「オバケだけど、オバケじゃない……?」

 

 よく分からなかったが、とにかくそういうものらしい。オバケといえば夜!というイメージだった彼にとって、それ晴天の霹靂であった。

 

「じゃあさ、なんで俺にだけ体が見えたり、声が聞こえたりするんだ? 霊感とかそういうヤツ?」

 

「霊感ですか……もうそれでいいかもしれませんね。魔力を一定以上持っている人なんて今時ほとんどいませんし、起きてることも同じですし」

 

「学校のヤツらに姿を見せたりできないのか?」

 

 実はネッパにはやりたいことがあった。このオバケモドキ少女を使って、ジュラクにドッキリを仕掛けたいのだ。

 普段は横暴な彼がこういったオカルトにも強い態度をとるのか、とても気になる。

 

「う〜ん…《魔術式片眼鏡》を使えばなんとかなりますけど……現状では現実的じゃありませんね」

 

「片眼鏡?」

 

「カードですよ。遺物(レガシー)の《魔術式片眼鏡》を実体化させるんです。……まあ試作型の1枚しかなかったはずですし、今どこにあるのか知りませんけど」

 

 難しい言葉が多くてよく分からなかったが、とりあえずは無理らしい。

 残念ながらみんなで一緒に遊ぶことはできなさそうだ。

 

「そうだ、私もひとつ聞きたいことがあったんです」

 

「なんだ?」

 

 自分が知っていて彼女の知らないことなんてあるのだろうか、とネッパは首を傾げる。

 これまでの会話で彼女の知識量や頭の良さは十分に理解していた。

 

「あなたが持っている遺物(レガシー)のバーン……《火炎竜-バーン》って、どうやって手に入れたんですか?」

 

 《火炎竜-バーン》

 それはネッパが大切にしているカード。

 しかしその質問には少しおかしな所があった。

 

「《バーン》?あれは別に遺物(レガシー)じゃないだろ。ただの貰い物だし」

 

 そう、家に伝わるお宝でもなければ、高いお金を払って買ったでもない。正真正銘の貰い物である。

 ちょっとした人助けをした時に、そのお礼として貰ったのだ。まさかその程度で遺物(レガシー)カードを渡す人なんている訳がない。

 

「も、貰い物!? あれは正真正銘の遺物(レガシー)ですよ! 誰に貰ったんです!?」

 

「なんだよそんなに慌てて……もしあれが本当に遺物(レガシー)だったとしても、コリナとは別に関係ないだろ?」

 

「大ありです! 私が探している人の可能性が非常に高いんです!」

 

「え〜? それは違うんじゃねえか?」

 

 慌てふためくコリナに対し、落ち着いて否定の意見を返すネッパ。

 これにはちゃんとした理由があった。

 

「だってコリナが探してるのって男なんだろ? 俺に《バーン》をくれたのは女の人だったぜ?」

 

 思い出すのは、1年前の夏休み。

 

 公園で遊ぼうと意気揚々と家を出たネッパが見つけたのは路上に倒れ伏した女で。

 どうしたのかと声をかければ「ご、ごはん……」などという信じられない言葉を発し――

 

「女? そんなはずは……まさか全く関係ない誰かがハッキング技術を? こんな時代に?」

 

「――なあ、着いたぜ。ここだろ?」

 

 コリナの思考がまとまるまで話しかけないつもりだったネッパだが、その前に目的地に着いてしまった。

 

「あ、そうですね。入っちゃいましょうか」

 

「こんなでっけぇ店初めて入るぜ……」

 

遺物(レガシー)の持ち込み買い取りを受け付けてるお店なんてこの辺じゃ他にありませんからねえ…… さて。私はここでしばらく見張りしてますから、あなたは適当に時間潰しててください。必要になったら呼びます」

 

「呼ぶっつったってどうすんだよ? そんな大声出したら怪しまれるだろ」

 

「大丈夫です。どうせあなたにしか聞こえません」

 

 なるほど、と頷いたネッパは、そのままカードショップを散策し始めた。

 

 自分が普段から通っている店とは違ってレアリティの高いカードも飾ってあり、非常にワクワクする。

 到底手が届かない値段(少なくとも5桁!)のカードばかりだが、見ているだけならタダだ。

 そうして適当に練り歩いていたネッパは、ひとつのショーケースの前で足を止めた。

 

「あれ、あのカード……もしかしてコリナ?」

 

 ふと目についたのは魔導具をサポートする青のカード。そのイラストに描かれているのは白衣を着た少女で、顔にもとても見覚えがある。

 カードの名前を見ようと背を伸ばすと――

 

「お、おいふざけんな! 遺物(レガシー)の買い取りしてるんじゃないのかよ!」

 

 店の中に怒号が響いた。

 





 コリナちゃんプレゼンツ、今日の1枚!
 今日のカードは…これ!

《魔術式片眼鏡》!

 1コストの無色魔導具――フィールドに残り続ける置き物で、1エナ払うことで任意の存在に色や種族を追加できます!

 対象にとられた時の効果を誘発させたり、種族サポートを他人に受けさせたり……魔石を染色することで、無色デッキでも色つきのエナジーが出せるようになったりも。

 とにかく変なコンボデッキのパーツにされることが多いこのカードですが、最適化の過程で抜かれてしまうことがほとんどです。
 まあ単体では一切仕事をしませんし、コンボパーツにするなら全体に特定の種族を追加するカードとかの方が扱いやすいですからね。ターン1がないとは言っても毎回1エナは要求されるわけで……

 数々の嘘デッキを生み出した呪われし片眼鏡。
 みんなも使ってみてください!

 それでは、またね〜!
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