ストックなくなったので不定期更新となります。
この章のプロットと棋譜は完成してるのでそこまで遅くならないはず……
「お、オレはわざわざ
買い取り用の受付を覗き込むと、ヒョロガリの不健康そうな男が店員へ向かって怒鳴りつけているのが見えた。
「ですから、
そしてめっちゃ正論で詰められていた。
そりゃそうだ。1枚数百万はするものを、現場の判断だけでポンと買い取れる訳がない。
よっぽどのことがなければ傷や折れ目のつかないこのカードではあるが、汚れの有無やそもそも本物の
「き、今日! こ、この場で! 買い取れって言ってるのが聞こえないのか!」
「教会認定の鑑定書などお持ちでしたら即日の買取も可能となっておりますが……」
「せ、世界で一枚、これだけの激レアカードなんだぞ!? ほ、本当にいいんだな!?! こ、後悔するぞ!」
「申し訳ございません。そういったことはできかねます」
あの男はまともに会話もできないのだろうか。
自分の要求を言うだけ言って、店員の出す案には一切耳を貸そうとしない。
「――じゃ、じゃあいいや。こんな店じゃなくても欲しがる店はい、いくらでもあるんだ」
そんな捨て台詞を吐いて店から出ようとする男を見ていると「ネッパ君」と声をかけられた。
見ればコリナがヤンキー男を指差している。
「あの人、追いかけますよ」
「えっ、アレを?」
聞いていた話と違う。
確かに男だし
「いえ、探してた本人ではないんですけど、とても気になる物を持ってたので」
「気になる物?」
「はい。存在しないはずの
「は?」
「詳しいことは後で説明します。今はとにかく追いかけますよ!」
そう言って走り出した彼女の後を追い、ネッパも渋々足を踏み出した。
「そもそも
猫背な長身の男を見失わないよう人混みの中をすり抜けながら進むコリナと、人を避けながら横につくネッパ。
目的の男が車を使わずに歩きであることを確認してからは走るのをやめ、尾行して目的地を探る作戦に切り替えていた。
「知らねぇ、なんか高いやつだろ?」
その道中、ちょうどいいので、と前置きしてコリナが説明を始める。
「高いのは希少……数が少ないからです。結果的なものにすぎません」
「じゃあなんだってんだよ?」
「カードの
「本物? どういうことだよ?」
「
意味が分からなかった。
このカードゲームはみんなに人気で、世界大会もあるような競技でもある遊びだ。遊びのはずなのだ。
「それって、危ないんじゃ……」
「はい、とても危険です。それこそ人を殺す程度のことは簡単にできてしまいます。だからこそ政府や『教会』は
「ほ、ほんとかよ?」
「オバケがいるんですよ? そういうこともあるでしょう」
それは話が違うんじゃないか。
そう突っ込む気も起きないほど、ネッパは混乱していた。
その様子を気にする素振りもなく、コリナは話を続ける。
「話を戻します。
「……まあ大体分かった。実体化とかは置いといて、とにかく古いカードってことだろ? それで、さっき言ってた『存在しないはず』ってのはどういうことなんだ?」
「あの男が見せびらかしていたあのカード、千年前にはまだ作られてなかったんですよ。確かに案はありましたが、実際に
「誤差だろそんなん…」
「問題大アリです! 『終末戦争』より後に生まれたカードの
あの人。
それは彼女が探していると言っていた人物だろう。
さっきのカードショップに今日訪れる可能性が高いとのことだったが、それを待たずに飛び出してきてしまった。
「間違いなく、あの人に繋がる手掛かりになります。さっきの場所で待ちぼうけするよりはコッチの方がマシでしょう」
「まあそれはいいけどよ……俺は結局何すればいいんだ?」
「私の代わりにあの男と話して情報を手に入れてください。そうですね……どうやって
「はあ!? 絶対無理だろそんなん!」
コリナからの要求はかなりハードルが高いものだった。
少なくともネッパには身が重い。
「私は隠れて観察することはできますが、頭の中身までは見れないんです。過去の行動を調べるのって難しいんですよ?」
「だからって…… ああもう! 分かったよ、やりゃあいいんだろ!?」
無言でデッキケースを指差して威圧されれば彼は従う他にない。
そもそも契約を無視したら今後一生つきまとって視界を妨害すると脅されているため、二人の力関係は明白であった。
「で、どこまで追いかけるんだ?」
「できれば家を突き止めて――あっやばッ! 路地裏に入られました! 走ってください見失いますよ!」
壁と壁の間、細い道へと姿を消したヒョロガリ男を追い、二人は慌てて足を動かす。
彼等は気づいていなかった。
こんな場所で裏路地に入る意味に。
「あれ、アイツどこ行ったんだ?」
「確かにここに入ったはずです。抜け道はありませんか?」
音を立てないようにその場所を覗き込んだ二人は驚愕に目を見開く。
なにせ、そこは袋小路になっていたのだ。にもかかわらず、男の姿はどこにもない。
一番奥の壁を叩いても硬い感触が返ってくるだけで、隠し扉や
「まさか瞬間移動できる
「なあどうする?一旦戻るか?」
「そうですね、じゃあ…… えっ、え?」
少年からの提案に頷きつつ振り向いたコリナが視線を上げて固まる。
釣られて自分も振り返れば、そこには探していた男がいた。
――蜘蛛のように壁と壁の間に手足を突っ張り、二人を見下ろす形で。
「や、やっぱり…… お、オレのこと尾行してたな?」
自身が見つかったことに気がついた男はドサリと飛び降り、路地の入り口を塞ぐ。
「こ、こんなガキとは思わなかったが、まあいいか。
胸ポケットからデッキを取り出した男が
まさかこんな時に勝負を仕掛けてくるとは思わず動けないネッパをよそに、男はデッキの中から何かのカードを探し始めた。
「いけない! ネッパ君、早くデッキの準備を! 対戦を受けて!」
「はあ!? なんで!?」
「いいから! 早くしないと
男は目当てのカードを見つけたらしく、引き抜いてこちらへ向けようとしていた。
「ええいやるぞ!
間一髪。
ネッパの宣言により二人の間で
男が握っていたカードも引っ張られるようにデッキへと飛んで行き、シャッフルに巻き込まれた。
「チッ…… 勘のいいガキめ… ま、まあいい。こ、このまま捻り潰してやればいいだけだ…」
男は一瞬ネッパの方を睨んだが、すぐに自分の元へ配られたカードへと興味を移す。先程までの不穏な動きはひとまず止まったようだ。
「良かった。間に合った…… ごめんなさいネッパ君、こんなことに巻き込むつもりはなかったんです。まさか
「謝る前に説明してくれよ。さっきのはなんだったんだ!?」
何が何だか分からない。
あの男は何をしようとしていて、なぜコリナの言う通りにしたらそれが止まったのか?
だがしかし、その混乱を解決する前に事態は先へと進んでいた。
「お、オレの先攻だ…… 《契約不履行》を
[ヒョロガリ ライフ 20→17]
「さ、さあ。手札を見せて貰うぞ……」
《
(黒)②
呪文
この呪文は、代替コストとして(黒)とライフ3点を支払って使用してもよい。
プレイヤー1人を対象として発動する。そのプレイヤーの手札を確認し、カードを1枚選び捨てさせる。
唱えられたのはピーピングハンデス。
後攻プレイヤーであるネッパには当然防ぐ術がなく、相手の前に小さなウィンドウが表示された。
「な、なるほど。赤ドラ…… ならこ、これだ…」
男が指でウィンドウを叩くと、ネッパの手から1枚のカードが弾けるように飛び上がる。
そのカードは――
「《火炎竜-バーン》をピック」
慈悲なく、容赦なく、ネッパの切り札が叩き落とされた。
◆◇◆
「いらっしゃいませ〜!」
「買い取りの予約をしていた者なのだが」
「はい、いつもお世話になっております! 担当の者を呼んできますので――
――ではこちら、確かにお預かりいたします」
「ああ、よろしく頼むよ」
「いやしかし、毎度ながら高品質な
「こちらだって助かっているんだ。Win-Winというものだろう」
「とんでもございません。最近は怪しい
「怪しい?」
「ええ。
「……ふむ。鑑定はしたので?」
「いえ。鑑定を提案致しますと、皆さんすぐにご帰宅なさるので……まあよくある
「しかし詐欺をするにしても、目録外のカードとはおかしなものだ。……そうだね、少しこちらでも調べておこう」
「ああ、それでしたら先ほどそういった方がいらっしゃいましたよ。監視カメラのログをご確認なさいますか?」
「いや、いい。それより何のカードを持ち込んでいたのか教えてくれないかい?」
「ああ、それでしたら確か……」
………
……
…
「さて、探すか……
「あ見つけた。あっちか。まあ動いている気配もないし、のんびり行きましょ」
コリナちゃんプレゼンツ、今日の1枚!
今日のカードは…これ!
《袋小路》!
黒の邪悪なご挨拶。代表的なピーピングハンデス呪文です!
1枚捨てさせるだけなのに3コストも必要……なんてのは額面上の話。この呪文は3点のライフコストを支払うことで、なんと1エナで使用することができちゃいます。
逆に言えば魔石が溜まってきた後半ではライフを減らさずに唱えることもできるため、「引いたけどライフがなくて打てない」なんてことも起こりませんね。
相手の選択肢をじわじわと奪い、袋小路へと追い詰めましょう!
理不尽コンボを許すな! 頑張れ真面目なハンデス使い!
トップ解決されたら笑顔でGG!
それでは、またね〜!