でもこの作品のエボルトはこんな感じなので……あと、今回カルディアが変身しますが、この作品は二次創作なので好きな感じに詰め込みました。
その日、カルディアとボーイは銀の広場でお菓子をつまみながら喋っていた。
穏やかな時間を過ごしていたが、急にカルディアが何かを感じた様に飛び上がった。
「っ!?」
「どうしたの、カルディア?」
「エボルトだ、いやそれだけじゃない。あのクソ兄、一個小隊連れてきたな!?ボーイ、お前はここに……いや、こうなればどこも安全じゃないか……」
珍しく焦っている様子のカルディアに、ボーイは混乱しながらも情報を整理する。
エボルト、カルディアのお兄ちゃんで、ブラッド星の王様……そんな人がどうして隊を率いてここに来るの?まさか……
ぐるぐる回って抜け出せない思考は、カルディアの鋭い声で霧散した。
「ボーイ、一体化するぞ!」
「えっ、わ、分かった!」
二人が一体化した瞬間、銀の広場に紅い流星群が尾を引いて落ちてきた。
それらは建物を容赦なく破壊し、光の国に悲鳴が響く。
粉塵の中から姿を現した白い機械鎧の男は、周囲をゆっくり見渡すと、傍にいた人物に何事かを言伝する。
傍らの部下へ一言だけ命令を下す。
「散れ」
次の瞬間、ブラッド族達は一斉に街へ散開し、破壊を始める。
誰もがその異様な威圧感に言葉を失った。
そして男は、ただ一人。カルディアだけを見つめて笑った。
「よっ、カルディア!久しぶりだなぁ!」
「エボルト……何をしに来た」
「何ってお前……俺達はブラッド族だぞ?この星を滅ぼしに来たに決まっている!光の国は目障りだからな、カルディア、手伝ってやる。一緒にこの星を滅ぼそうじゃないか!」
白い機械鎧……エボルトは大仰な仕草でカルディア語りかける。
彼にとっては、入れ物のボーイなどどうでも良いのだ。
ボーイはエボルトの放つ禍々しさに圧倒され、声も出せない。
「断る」
「……ほう、何故だ?」
「ここはボーイが好きな場所だ、壊されると困る。さっさと軍を率いて帰れ」
カルディアの毅然とした態度に、ボーイは徐々に落ち着きを取り戻していく。
妹に断られたのが意外だったのか、不思議そうに首を傾げているエボルト。
「あぁそうか、これが反抗期か!よしよし良いだろう!これもお前の成長の為だ、だが……我を通すには力を示さねばなぁ?」
エボルトは言葉を終えると同時に、黒い光弾を放った。
咄嗟に回避するカルディア、だが追撃が迫る。
最初は避けられていたものの、徐々に対応が出来なくなっていく。
「どうしたカルディア!その入れ物を壊すのがそんなに怖いか!?」
「ッ!」
『カルディアッ!大丈夫!?ねぇってば!』
ボーイの必死の呼び掛けを無視し、カルディアは思考を巡らせる。
光弾を捌き切ったとしても、後にエボルトがいる。
このままではボーイを護りきれない、それならば……!
カルディアは一瞬だけ目を閉じた。
(すまない)
次の瞬間、強制的にボーイとの一体化を解除した。
ボーイは分離した勢いで、後方へと弾き出されて地面に転がった。
「カルディア!どうしちゃったの!?」
「ボーイ!お前は逃げろ!私ではお前を護りきれない!」
「やだよ、カルディアッ!一緒に……!」
カルディアに追い付こうと走り出したボーイの足元に、黒い光弾が着弾する。
態と威力を弱めているのか、痛みは感じなかった。
「ボーイとか言ったか、そこで見ていろ!俺達ブラッド族の遊びをなぁッ!」
エボルトが邪悪は笑い声を響かせながら浮かび上がり、停止した。下にいるカルディアを待っている様だ。
カルディアはプランクプレーンからドライバーを取り出し、腰に装着した。
大きく深呼吸すると、ドライバーにあるレバーを回してエネルギーを充填させて、呟く。
「……変身」
“Are You Ready?”
ドライバーからけたましい音とともに、音声が響き、カルディアの体を機械鎧が覆っていく。
「当然だ」
“Chaos…”“Ruin…”“Catastrophe…”
“KALDIA!!”
“The Universe Will Cry…”
“And Everything…”
“…Will End.”
“Fuhahahaha!!”
「さぁ、滅びの時間だ」
カルディアが機械鎧を纏うと、遠くからでも分かる程の、圧倒的な圧がボーイを襲う。
カルディアはエボルトと同じ高さまで浮かぶと、数秒見つめ合い……拳と拳が激突する。
轟音と共に衝撃波が銀の広場を駆け抜け、建物の壁に亀裂が走った。
「ははははっ!! いいぞカルディア!!」
エボルトは笑いながら蹴りを放つ。
カルディアは腕で受け止めるが、そのまま数十メートル吹き飛ばされる。
空中で体勢を立て直し、紅い光弾を無数に展開。
「消えろ!」
雨のように降り注ぐ光弾。
しかしエボルトは片手を振るだけで全て撃ち落とした。
「その程度か?」
黒い光線が一直線に走る。
「っ!」
カルディアも光線で迎え撃つ。
二つの光線がぶつかり合い、空間が激しく軋んだ。
互角――そう思えたのも一瞬だった。
「遊びは終わりだ」
エボルトが静かに呟く。
黒い光が一気に膨れ上がり、カルディアの光線を押し返した。
「なっ……!」
光線は一瞬で飲み込まれ、黒い奔流がカルディアへ直撃する。
爆煙が空を覆うも、煙を突き破って飛び出したカルディアは、肩で息をしながらエボルトを睨みつける。
装甲の一部は砕け、火花が散っていた。
「ふむ……少しは強くなったようだな」
エボルトは感心したように頷く。
「だが」
次の瞬間、その姿が掻き消えた。
「――遅い」
背後。
カルディアが振り返るより早く、重い拳が背中へ叩き込まれる。
「がっ……!」
機械鎧が軋み、カルディアは地面へ叩き落とされた。
銀の広場が陥没し、瓦礫が宙へ舞う。
「カルディア!!」
ボーイが叫ぶ。
カルディアは立ち上がろうとするが、エボルトは容赦なく追撃する。拳、蹴り、光弾。
一撃ごとに機械鎧へ亀裂が走る。
カルディアは反撃する隙すら与えられない。
「どうした?」
エボルトは嗤う。
「昔のお前なら、その入れ物を盾にしてでも勝っていた」
「……」
「いつからそんな弱点を作った?」
カルディアの瞳が揺れる。
……違う、弱点じゃない、護りたい存在だ!
「黙れッ!!」
カルディアは渾身の拳を叩き込む。
だがエボルトは、それを片手で受け止めた。
「そうだ、その目だ!ようやく少しだけブラッド族らしくなったじゃないか」
邪悪な笑い声に喜色を交え、エボルトはそのまま腹部へ拳をめり込ませる。
鈍い音と共に機械鎧全体へ亀裂が走った。
「っぐ!!」
さらに膝蹴り、蹴り上げ。
最後に至近距離から黒い光弾が放たれる。
爆炎と衝撃がカルディアを襲う。
空中で耐えきれなくなった機械鎧が悲鳴を上げる。
紅い亀裂が全身へ広がり……砕け散った。
装甲片が雨のように降り注ぎ、カルディアは力なく地面へと落ちる。
「カルディアァァァアッ!!」
ボーイは全力で駆け出し、倒れたカルディアを抱き起こす。
「カルディア!しっかりして!」
「……来るな」
かすれた声だった。
「逃げろ……ボーイ……」
「嫌だ!」
ボーイは首を振る。
「一緒に逃げよう!」
「……無理だ」
カルディアは薄く笑う。
その一言が、ボーイの胸を締め付けた。
いつも自信満々だったカルディアが、初めて弱音を吐いた。
「……すまない」
小さく零れた謝罪。
カルディアは震える唇をゆっくり動かす。
「護れ……なかった……」
その言葉を聞いた瞬間、ボーイの瞳から涙が溢れた。
「違うよ……」
震える声で答える。
「カルディアはずっと僕を護ってくれた!」
エボルトはゆっくりと降り立つ。
「終わりだ」
掌に黒い光が集まる。
それだけで周囲の空気が震え始めた。
「安心しろカルディア」
エボルトは笑う。
「入れ物を消せば、お前も昔に戻るだろうよ」
黒い光弾が完成する。
カルディアは力なくボーイを見る。
「……逃げろ」
「嫌だ」
「逃げろ!」
「嫌だ!!」
ボーイはカルディアを両手で掬い、胸の前で抱き締めた。
「僕は絶対にカルディアを一人にしない!」
突然のブラッド族の襲来に、最初こそ宇宙警備隊は混乱に陥っていた。
しかし、ウルトラの父の的確な指揮の下、隊員達はすぐさま各地へ散開し、侵攻してきたブラッド族への迎撃を開始する。
80もまた、現場で隊員達へ指示を飛ばしながら戦っていた。
「東区画は避難誘導を優先!負傷者は銀十字へ!」
「はい!」
飛来する光弾を光線で撃ち落とし、一人のブラッド族を蹴り飛ばす。
だが戦いながらも、80の胸には拭えない違和感があった。
(……おかしい)
周囲を見渡す、崩れた建物、燃え上がる街並み、逃げ惑う住民達。被害は決して小さくない。
それなのに――。
(人的被害が、少なすぎる)
ブラッド族は躊躇なく命を奪う種族だ。
カルディアから何度も聞かされている。
だというのに、倒れているのは瓦礫の下敷きになった者や軽傷者ばかり、まるで。
(……時間を稼いでいる?)
その瞬間だった。
遠方から凄まじい衝撃波が伝わり、80は反射的に顔を上げる。
光の国の中心部、灰色と紅の機械鎧、そして白い機械鎧。
二つの影が凄まじい速度でぶつかり合っていた。
光線が交差し、爆発が連続して起こる。
「カルディア……!」
あの灰色と紅の機械鎧は、見間違えるはずがない、彼女だ!
そして、あの姿で戦っているということは――。
「ボーイも、あそこに……!」
80の表情が険しくなる。
カルディアなら簡単には負けない、三人で続けてきた訓練、ボーイとの連携、エネルギー効率の改善。あの二人ならば。
そう思っていた、しかし。
白い機械鎧は一歩も退いていない……いや。
押している!?80の胸を嫌な予感が貫いた。
(あれほどのカルディアが……押されている!?)
80はすぐさまゾフィーにテレパシーを送った。
(ゾフィー兄さん!)
(80か!状況を報告してくれ)
(カルディアとボーイがブラッド族の王と思われる個体と交戦中です!私は二人の救援へ向かいます!)
一瞬、沈黙が流れる。
やがてゾフィーの低い声が響いた。
(待て80。その白い機械鎧は、おそらくブラッド族の王・エボルトだ。一人で挑むには危険すぎる。私達の誰かと合流してから――)
「それでは間に合いません!!」
思わず声が漏れ、80自身も驚くほど感情が乗っていた。
(落ち着け80!)
(それでは間に合いません!!)
(80!)
(私は教師です!!)
(80……)
80は拳を握り締める。
(教え子を見捨てることなど、出来ません!!)
通信を切る。返事を待つ余裕などなかった。
80は全速力で空を駆けた。
建物を飛び越え、炎を越え、爆発を越え。時折邪魔してくるブラッド族を蹴散らし……
ただひたすらに、二人の元へ。
(間に合ってくれ……!)
訓練の日々が脳裏をよぎる。
必死に光弾を避けていたボーイ、そんな彼を厳しく、それでいて優しく導いていたカルディア。
そして最後に、自分が二人へ掛けた言葉。
『君達は強くなっています。これからも絆を深めていってくださいね』
(あの二人なら、大丈夫だ)
そう信じていた、だが。
広場へ辿り着いた80の目に飛び込んできた光景は、その願いを打ち砕いた。
砕け散った灰色と紅の機械鎧。
地面へ倒れ伏すカルディア、その身体を必死に抱き締めるボーイ。
そして、ゆっくりと掌を掲げる白い機械鎧。
禍々しい黒い光が、掌の中で脈打っていた。
「安心しろ、カルディア」
エボルトが愉快そうに笑う。
「その入れ物を消せば、お前も昔に戻れる」
「やめろッ!!」
80は叫びながら飛ぶ。あと少し、あと少しで届く。
カルディアが何かを叫んだ、ボーイは首を横に振る。
そして、迷うことなくカルディアを強く抱き締めた。
「僕は絶対にカルディアを一人にしない!!」
その言葉を聞いた瞬間、80は全てを悟った。
(そうか……二人の絆は、もう……)
80が手を伸ばす。
しかし、その指先が届くよりも早く。
エボルトは静かに腕を振り下ろし、黒い光弾が放たれる。
「カルディアッ!ボーイッ!!」
叫びも虚しく、黒い奔流は二人を呑み込み、銀の広場を眩い光で包み込んだ。
……そして、二人の姿は消えた。
「……ボーイ、一緒に戦おう」
「もちろん!」
次回 最終話 未来へ