情熱と衝動のまま書ききりました。後悔はないです。
80の叫びも虚しく、黒い奔流は二人を呑み込み、銀の広場を眩い光で包み込んだ。
……そして、二人の姿は消えた。
その瞬間だった……ドクン、ドクン。
二人の鼓動が重なり、視界が白く染まる。
互いの心が、温もりが、想いが、境界を失って溶け合っていく。
あの日80が語っていた、あの感覚。
意識が溶け合い、一つになっていく……
気が付くと、カルディアとボーイは真っ白な空間にいた。
不思議と恐ろしくなく、むしろ温かい。
向かい合い、お互いの名前を呼ぶ。
その声はもう耳ではなく、心へ直接響いていた。
二人の間に言葉は要らなかった。
互いが何を思い、何を願っているのか、全て分かる。
カルディアは静かに微笑んで、右手を伸ばした。
『……ボーイ、一緒に戦おう』
ボーイは涙を拭い、力強く笑って同じく右手を伸ばした。
『もちろん!』
その返事と同時に手が触れ合うと、眩い光が二人を包み込んだ――。
絶望に膝をつき、茫然と二人がいた場所を眺める事しか出来ない80。
「……ん?誰だお前、死に損ないか?可哀想に、今殺してやるからな……」
エボルトは哀れみの籠った声音で、80に向かって右手を掲げた。黒い光弾が大きくなっていくのを見ながら、頭では逃げなければ、と理解していた。
だが、無力感から動けずにいた。
エボルトが手を振り下ろそうとした、その瞬間。
紅黒い光と銀色の光が渦を巻く、渦は次第に大きくなり、周囲の瓦礫を巻き上げ始めた。
吹き荒れる光の嵐に、80は思わず腕で目を庇う。
「これは……!」
エボルトも初めて笑みを消した。
光はさらに強く輝く。銀、紅、黒。
三色の輝きが一つへ溶け合い――。
やがて、世界を満たしていた光が、静かに晴れた。
「そんな……」
80は息を呑んだ。
そこに立っていたのはボーイでも、カルディアでもない。
二人を足して二で割った姿でもない。
灰色と紅、黒に銀の体色の戦士。
それはまるで、新たな一人の戦士の様だった。
「君達……なのか?」
その戦士はゆっくりと振り返る。
眩しくて紅と黒が混じる体色からは、カルディアの強さ。
穏やかな眼差しと、青く輝くカラータイマーにはボーイの優しさ。
二人の面影が、確かにあった。
その戦士は80へ向かって、小さく微笑む。
その笑顔を見た瞬間、80は確信した。
「……君達なんだね」
戦士は静かに頷いた。フュージョンフォームとなった二人は、エボルトを見据えた。
先程まで圧倒されていたはずなのに、不思議と恐怖はない。
その背中からは、揺るぎない自信だけが伝わってくる。
エボルトは口元を吊り上げた。
「面白い、ならば見せてみろ!お前達二人の力を!」
次の瞬間、二人の姿が掻き消えた。
「ッ!?」
エボルトが認識した時には、既に眼前まで迫っていた。鋭い蹴りが唸りを上げる。
咄嗟に上空へ飛び退いたエボルトだったが、その動きを読んでいたかのように二人が追撃する。
拳、蹴り、光弾、一撃ごとに空間が震え、銀の広場へ爆音が響き渡る。
エボルトも黒い光弾を連続で放つが、その全てを二人は最小限の動きで避けていく。
避けるだけではない、攻撃の隙を突き、正確に反撃を叩き込んでくる。
「チッ……!」
先程まで余裕だったエボルトの表情から笑みが消えた。
「なるほどな……二人で一人、か」
距離を取るように大きく後退したエボルトは、更に高く浮かび上がる。
そして、両腕をゆっくり掲げた。
空間が歪む、漆黒の重力が集束し、その上空に巨大な闇が姿を現す。
ブラックホール。
その異質さに、ブラッド族達と戦っていた宇宙警備隊も集まってくる。
周囲の瓦礫が音を立てて吸い込まれ、地面が軋み始めた。80は思わず息を呑む。
「あれは……!」
エボルトは邪悪な笑みを浮かべながら叫ぶ。
「避けるのか!?避けたら光の国は消滅するぞ!さぁ…!どうするカルディア!」
二人はは答えない。
静かに右手を掲げる。
銀色の光が円を描き、その内側へ紅黒いエネルギーが流れ込んでいく。
二つの光は反発することなく溶け合い、一つの巨大な光輪となった。
慈愛を思わせる銀の輝き、全てを破壊する紅黒の輝き、相反する力が、一つとなる。
エボルトが腕を振り下ろした。
「消えろッ!!」
巨大なブラックホールが落下する。
それと同時に、フュージョンフォームも静かに腕を振るった。
光輪が一直線に飛翔し、二つの必殺が真正面から激突した。
轟音、衝撃波。
世界そのものが揺れたかのような振動が光の国を駆け抜ける。
ブラックホールが光輪を飲み込もうとする。
だが、光輪は止まらない。
銀の光が闇を浄化し、赤黒い破壊の力が、その核を切り裂く。
「何……!?」
エボルトの表情が初めて驚愕に染まる。
ブラックホールは徐々に押し返され、その巨大な闇は音もなく崩壊していった。
残されたのは、呆然と浮かぶエボルトだけだった。
「……ほう」
エボルトは静かに息を吐いた。悔しさではなく、どこか満足そうな笑みだった。
「なるほど…!もう俺が知ってるカルディアじゃないな」
二人は何も言わず、静かに彼を見つめる。
その眼差しには揺るぎない意志だけが宿っていた。
「あ〜あら参った参った」
エボルトは頭を掻きながら苦笑する。
「俺のブラックホールを押し返すとはな」
そして、ゆっくりと機械鎧を解除した。
白い装甲が光となって消え、生身の姿へ戻る。
そのまま二人の目の前まで降り立つと、視線を向けた。
「カルディア…!お前、ちゃんと強くなったんだな」
その声音には、どこか兄としての誇らしさが滲んでいた。
「言っただろ?我を通すなら力を示せって、お前は、それを証明した」
エボルトは肩を竦め、大袈裟にため息をつく。
「妹がここまで我を通したんだ、兄の俺が意地張ってちゃ、兄失格だな」
そう言って笑うと、振り返りながら部下達へ手を振った。
「引き上げるぞ」
エボルトが短く命じると、散開していたブラッド族達は一斉に集結する。
紅い流星が次々と空へ舞い上がり、彼らは撤退の準備を始めた。
その去り際、エボルトはゆっくりと光の国を見渡す。
駆け付けたウルトラ兄弟、宇宙警備隊、そして、ウルトラの父。
彼らの警戒する視線を受けながらも、エボルトは肩を竦めて笑った。
「光の国……いつか滅ぼしてやろうと思っていたが」
そう言って視線をカルディアへ向ける。
「カルディアが気に入っているみたいだからな……」
呆れたように息を吐き、不敵な笑みを浮かべる。
「滅ぼすのは後にしてやる、チャオ!」
その言葉を最後に、ブラッド族の部隊は紅い流星となって宇宙の彼方へ消えていった。
光の国に、静寂が戻る。
それを見届けたフュージョンフォームの身体が、柔らかな光に包まれた。
銀色と紅黒い光がゆっくりと分かれていき、やがて一人の戦士は、ボーイとカルディアの二人へ戻る。
二人は同時に膝をつき、そのまま意識を失って倒れ込んだ。
「カルディア!ボーイ!」
80は咄嗟に駆け寄り、二人の身体を抱き留める。
その様子を見つめていたウルトラの父は、どこか穏やかな顔をした二人を覗き込み、小さく微笑んだ。
「将来が楽しみな二人だな」
「……はい!」
80は胸を張り、力強く答えた。
その瞳には、教師としての誇りが宿っていた。
二人が目を覚ました時、そこは銀十字だった。
健康診断を終えたウルトラの母は、二人へ優しく微笑みかける。
「もう大丈夫ですよ。無理は禁物ですが、今日から退院して構いません」
「ありがとうございます!」
ボーイが元気よく頭を下げる。
カルディアも小さく会釈すると、二人は並んで銀十字を後にした。
帰り道、今日は一体化せず、それぞれの姿で歩いている。
柔らかなプラズマスパークの光が、二人を優しく照らしていた。
「ねぇ、カルディア」
「どうした、ボーイ」
「僕達のこと、もう皆知ってるみたいだね」
行き交う住民達が笑顔で手を振り、ボーイも嬉しそうに手を振り返した。
カルディアは少しだけ居心地が悪そうに視線を逸らす。
「……光の国の奴らは、本当に変わっている。私だってブラッド族だぞ」
その言葉に、ボーイは首を横に振った。
「違うよ。皆、カルディアのことを知ったんだよ。優しいところも、強いところも、だから受け入れてくれたんだ」
カルディアは少しだけ目を見開く。
「……そういうものか」
「うん!」
ボーイは満面の笑みを浮かべる。
「僕は嬉しいよ!」
「もうカルディアのことを隠さなくていいんだもん!これからは、カルディアの良いところを皆にも知ってもらおうよ!」
はしゃぐボーイに、カルディアは照れ隠しのように鼻を鳴らした。
「……はぁ、面倒事が増えなければいいがな」
そう言いながらも、その表情はどこか穏やかだった。
「カルディア!」
「なんだ」
「これからもよろしくね!」
「……当たり前だ」
少しだけ口元を緩めたカルディアに、ボーイは嬉しそうに笑う。
二人は他愛もない話をしながら、ゆっくりと家路につく。
本来なら、決して交わるはずのなかった光と闇。
それでも二人は出会い、支え合い、共に歩む道を選んだ。
その先には、きっとこれまで以上に困難な試練が待っているだろう。
それでも……二人なら、乗り越えていける。
光の少年と、闇の少女。
二人の物語は、まだ始まったばかりなのだから。
この二人はこれからも、沢山の事を一緒に経験していきます。
なお、この後大怪獣バトルウルトラ銀河伝説TheMovieに繋がる予定なので、二人には頑張ってもらいたいです。
ここまで読んでくれてありがとうございました。