大怪獣バトルウルトラ銀河伝説TheMovie 良い映画なので皆見てください。
前編
光の国、銀の広場では今日も穏やかな時間が流れ、行き交うウルトラマンやウルトラウーマン達の笑い声が響いていた。
広場の片隅では、カルディアがボーイの肩に腰掛け、その光景を眺めている。
「いや〜、今日も平和だね〜」
嬉しそうに辺りを見回すボーイに、カルディアは興味なさそうに頷いた。
「そうだな」
平和。その一言で片付けられるほど、今日の光の国は穏やかだった。
「……っ」
突如、カルディアの表情が変わった。
全身を悪寒が駆け抜ける。経験でもない、勘でもない。
ブラッド族としての本能そのものが、激しく警鐘を鳴らしていた。
……来る。
何か、とてつもなく厄介な存在が。
カルディアは空へ視線を向ける。
底知れない闇、それは確かに、こちらへ近付いて来ていた。
「ボーイ」
「ど、どうしたの?」
「一体化だ」
「え?」
説明する時間はない。
カルディアはボーイのカラータイマーへ触れると、有無を言わせず一体化した。
『カルディア!?』
「黙ってろ」
次の瞬間。
ボーイの身体は銀の広場から一気に飛び立った。
最高速度で迷うことなく、その場を離れる。
『カルディア、どこ行くの!?』
「安全な場所だ」
『安全……?何か事件でも起こってるの?』
「あぁ」
カルディアの視線は前だけを見据えていた。
「厄介な奴が来た」
辿り着いたのは、光の国全体を見渡せる上空。
宇宙警備隊と謎の黒い巨人が交戦している様子を確認出来る、ぎりぎりの距離だった。
カルディアは空中で静止し、その戦いを見据える。
黒い巨人。以前、歴史記念館で見た資料が正しければ名は……ベリアル。
その身体から放たれる禍々しい気配は、ブラッド族であるカルディアですら、本能的な危険を感じるほどだった。
強い。それも今まで戦ってきた相手とは次元が違う。長男や、エボルトに匹敵する程の強さ。
カルディアは僅かに目を細めた。
もし、あの男がボーイへ危害を加えるなら。
その時は、何を犠牲にしてでも迎え撃つ。
『カルディア?』
「……どうした、ボーイ」
『宇宙警備隊、大丈夫かな? あの人に押されてるみたいだけど……』
カルディアは暫く戦況を見つめ、静かに答えた。
「奴らもプロだ、簡単には負けん」
『……うん』
「安心しろ」
短く言い切り、再び戦いへ視線を戻す。
ベリアルがボーイへ危害を加えない限り、自分から動くつもりはない。
それが最善の判断だ……その筈だった。
『あっ、カルディア! あの人、プラズマスパークタワーに入ってくよ!』
「狙いはプラズマスパークか……不味いな」
プラズマスパーク。それが奪われれば、この星は滅びる。
光の国が滅びれば、ボーイは、きっと悲しむ。
……ならば。
「……チッ、ボーイ」
『なに?』
「ベリアルを止めるぞ」
『うん!』
返事を聞いた瞬間、カルディアは加速した。
タワーへの最短距離を一直線に突き進む。
入口を探す時間すら惜しい。
「邪魔だ!」
轟音。タワーの壁を強引にぶち破り、プラズマスパークが安置されている広場へ飛び込んだ。
「貴様がベリアルだな」
カルディアはゆっくりと立ち上がる。
「プラズマスパークは渡さんぞ」
「ふん」
プラズマスパークへ手を伸ばしかけていたベリアルが、乱入者へ視線を向ける。
「餓鬼に何が出来る?」
そこに立っていたのは、小柄なウルトラマン。
ボーイ。だが、その瞳に宿る鋭さは、子供のものではなかった。
更に全身から放たれる、研ぎ澄まされた殺気。
ベリアルは僅かに目を細め、やがて口元を歪める。
「お前……ただのガキじゃねぇな」
「試してみるか?」
次の瞬間、カルディアは床を蹴った。
一直線にベリアルの懐へ潜り込み、拳を叩き込む。ベリアルは片腕で受け流す。
ギガバトルナイザーが横薙ぎに振るわれた。
「ッ!」
激しい衝撃。カルディアの身体が宙へ浮く。
だが、空中で即座に体勢を立て直し、その勢いのまま蹴りを放った。
拳、蹴り、肘打ち、光弾。休む間もなく攻め続ける。
相手に攻撃する隙を与えない。
それがカルディアの戦い方だった、だが。
「甘い!」
ギガバトルナイザーが迫る。
「っ!」
回避が間に合わない。
両腕を交差させ、まともに受け止める。
凄まじい衝撃が全身を突き抜けた。
カルディアの身体が大きく吹き飛ばされ、床を何度も跳ねる。
『カルディア!』
「騒ぐな!」
すぐさま立ち上がる。痛みを確認する暇などない。再び突撃。今度は足払い。
ベリアルの体勢が僅かに崩れた。
その隙を狙い、腕へ飛び付く。狙うのは眼。
「チッ!」
だが、振り落とされ、床へ叩き付けられる。
その直後、ギガバトルナイザーが振り抜かれた。
「ほう」
ベリアルが何かに気づいた様に低く笑う。
「ブラッド族か」
「……っ!」
「随分面白ぇことになってるじゃねぇか」
カルディアは咄嗟に身を捻り、直撃を避ける。
だが、一瞬だった。
視界の端で、ベリアルが嗤う。
「しまっ……」
僅かな隙、ベリアルは見逃さなかった。
ギガバトルナイザーがカルディアを弾き飛ばす。
そして、ベリアルの手が、プラズマスパークへ伸びた。
「フハハハハハ!」
高笑い、プラズマスパークが引き抜かれる。
その瞬間だった。光の国全体を、凍てつく冷気が駆け抜けた。
「……!」
カルディアは息を呑む。
床が白く染まり、建物が次々と凍り付いていく。
戦士達も動きを止め、一人、また一人と氷像へ変わっていった。
『カルディア! みんなが!』
カルディアは素早く視線を巡らせる。
タロウ、ウルトラの父、ウルトラの母。
三人が寒波へ飲み込まれようとしていた。
今なら、まだ間に合う、助けられる。
『タロウ教官が!』
「……」
カルディアの拳に力が入る。
一歩、足が動きかけた。
だが……視線を落とす。
今、自分が動かしているのはボーイの身体だ。
ここで分離すれば、この寒波にボーイは耐えられない。
彼等を助ければ……ボーイが死ぬ。
『カルディア!』
「……すまない」
それは誰へ向けた言葉だったのか、自分でも分からなかった。
カルディアは唇を噛み締め、背を向けた。
最高速度でその場を離脱する。
寒波を振り切るように、何も見ないように、ただ前だけを見て、飛び続ける。
彼女が守るべきものは、一つだけ。ボーイ。
それだけは、絶対に失う事ができなかった。
小さくなっていくその背中を、ウルトラの父は静かに見送っていた。
「……タロウも、最後の灯火を護ってくれた」
凍り付き始めた身体で、小さく微笑む。
「ボーイにも……カルディアがいる」
その言葉に、隣に立つウルトラの母も優しく頷いた。
「えぇ」
カルディアは一度だけ、こちらを振り返りかけた。
だがすぐに前を向き直った、その一瞬だけ見えた横顔。
そこに宿る葛藤を、二人は見逃さなかった。
「あの子は最後まで、ボーイを守ることを選んだのね」
ウルトラの母が静かに微笑む。
「……行きなさい、ボーイをお願いね」
その声が届くことはない。
それでもカルディアは、迷いを振り切るように加速した。
寒波の彼方へ消えていく。
ウルトラの父は、その小さな背中が見えなくなるまで目で追い続けた。
「ありがとう」
感謝の言葉もまた。
カルディアの耳へ届くことはなかった。
だが、二人の胸には確かな想いがあった。
あの少女は、自分が守ると決めた命を、最後まで守り抜いた。
だからこそ、ウルトラの父とウルトラの母は、迫り来る寒波へ静かに身を委ねることが出来た。
一方。
カルディアは吹き荒れる大寒波の中を飛び続けていた。
周囲を素早く見渡す。
逃走経路、利用出来そうな遮蔽物、残存エネルギー。頭の中で、次々と情報を整理していく。
考えろ、ボーイを生かす、それだけを考えろ。
その時だった。
「……?」
遠方で二つの光が見えた。
ウルトラマンとセブン、二人は巨大なバリアを展開し、大寒波へ必死に耐えている。
だが、その光は徐々に押され始めていた。
『ウルトラマンとセブンだ!』
「そうだな」
『助けなきゃ!』
カルディアは小さく舌打ちする。
「今からでは間に合わん」
『でも!』
「助けても、お前が危険になるだけだ」
『お願い!』
「……」
カルディアは目を閉じた。
脳裏を過るのは、先程寒波へ飲み込まれていった三人の姿。
「……本当に」
小さく息を吐く。
「面倒な奴だな」
『え?』
その直後、ボーイの身体は最高速度で飛び出していた。
吹き荒れる冷気を真正面から突き抜ける。
全身を叩く寒波など意にも介さず、一気に二人の元へ辿り着いた。
「ボーイ!?」
ウルトラマンとセブンが同時に目を見開く。
「何故ここにいる!」
「まだ質問する余裕があるんだな」
尊大な口調、セブンはすぐに察した。
「……カルディアか」
カルディアは答えず、二人の背後へ静かに歩み寄る。
「動くな」
短く告げ、両手を二人の背へ当てた。
紅黒い光が掌から溢れ出す。
「これは……!」
エネルギーが二人の身体を通り、展開されたバリアへ流れ込む。
弱まり始めていた光が、一気に輝きを取り戻した。
「バリアが強化された!」
軋んでいた光の壁が安定し、大寒波を少しずつ押し返していく。
やがて、吹き荒れていた冷気が静まり始めた。
三人はようやく安堵の息を吐く。
『すごい!すごいよカルディア!』
インナースペースで、ボーイが飛び跳ねながら歓声を上げていた。
「当然だ」
カルディアは腕を組み、得意げに胸を張る。
「何か言ったか?」
ウルトラマンが首を傾げた。
カルディアは露骨に眉をひそめる。
「別に」
その様子に、セブンが苦笑した。
「ボーイと話していたんだろう」
「……」
「おい、無視はやめろ。無視は」
必死なセブンに、ウルトラマンは思わず笑みを漏らす。
カルディアはそんな二人を一瞥すると、すぐに真顔へ戻った。
「それで」
凍り付いた光の国を見渡す。
「これからどうする」
「このままだと、私達はともかく他の奴らは星ごと滅びるぞ」
現実へ引き戻す一言だった。
ウルトラマンは静かに頷き、カルディアの前へ歩み寄る。
「カルディア」
「なんだ」
「ありがとう。君達のお陰で、エネルギーをほとんど消費せずに済んだ」
「……」
返事はない、一瞬だけ寒波へ飲み込まれていく、ウルトラの父達の姿が脳裏を過った。
助けられなかった。
その事実だけが、胸に残っている。
カルディアは小さく息を吐いた。
「……ボーイの優しさに感謝しろよ」
ぶっきらぼうな声、ウルトラマンは静かに微笑んだ。
「あぁ」
彼はボーイの目線へ合わせるように、腰を下ろす。
「ボーイも、ありがとう」
セブンも優しく微笑む。
「ありがとう、ボーイ」
『えっ!?』
インナースペースのボーイは目を丸くした。
『わっ、わっ! ウルトラマンとウルトラセブンにお礼言われちゃった! ど、どどどどどうしようカルディア!』
「……」
『カルディア!』
カルディアは呆れたように肩を竦める。
「はぁ……」
そして、二人を見る。
「ボーイは、もっと深く感謝しろと言っている」
『言ってないよ!?』
ウルトラマンとセブンは顔を見合わせた。
「はは……」
二人から小さな笑いが漏れる。
『カルディアぁ!』
「うるさい」
ウルトラマンは笑みを浮かべたまま、空を見上げた。
「さて」
表情を引き締める。
「私とセブンはエネルギー節約のため、地球人の姿に擬態する」
「メビウスが戻って来るまで、ここで待とう」
カルディアは静かに頷いた。
その表情は相変わらず不機嫌そうだった。
だが、胸の奥に残る重苦しさは、先程より、ほんの少しだけ軽くなっていた。
メビウスとレイが光の国へ到着した直後。
突如現れた宇宙人と怪獣によって、二人は襲撃を受けていた。
「メビウス!」
レイがバトルナイザーを構え、モンスロードしようとした、その時。
赤と銀の小さな影が飛び込んできた。
「あれは……ボーイ?」
メビウスが目を瞬いた、だが様子がおかしい。
ボーイは怪獣へ一直線に突っ込むと、躊躇なく顔面へ飛び蹴りを叩き込んだ。
怪獣が吹き飛び、更に追撃。
転倒した怪獣の上へ飛び乗り、容赦なく頭部へ連打を叩き込む。
「えっ」
「うわぁ……」
メビウスとレイが固まった。
怪獣が何とか起き上がろうとするが、ボーイは尻尾を掴んだ。
「邪魔だ!」
そのまま振り回す。
地面へ一度、二度、三度……何度も、何度も叩き付ける。
「……あれは」
「カルディアだな」
レイの呟きに、駆け付けたセブンが遠い目をした。
「良かった」
メビウスは安堵の息を吐く。
「カルディアが無事なら、ボーイも無事なんですね」
その間にも、怪獣が悲鳴を上げる。
何とか逃れようと暴れるが。
「遅い」
スペシウム光線が直撃し、怪獣は爆発した。
『勝ったぁ!』
「当然だ」
レイは少し引いていた。
「今のは……まだ子供みたいだが……」
「あぁ」
ウルトラマンが苦笑する。
「色々訳ありでな」
説明しようとした、その時。
紅黒い光がボーイを包み込んだ。
光が膨らみ、やがて人間大となった光の中から、一人の少女が姿を現した。
身体から滲み出る異質な気配。
「やっと終わったか」
カルディアは面倒そうに首を鳴らした。
「紹介しよう」
ウルトラマンが一歩前へ出る。
「彼女はカルディア。見ての通り、ブラッド族だ」
「ブラッド族……」
レイの視線が僅かに鋭くなる。
だが、ウルトラマンは穏やかに続けた。
「だが今は、ボーイという子と一体化し、光の国のために戦ってくれている」
「勘違いするな、ボーイが戦うと言った。だから私は戦っている」
即座に訂正する。
「こんな態度だけど、本当は優しいんだよ」
ね!とメビウスが笑顔でカルディアを見る。
カルディアは無視した。
「それで」
レイへ視線を向ける。
「こいつがお前達の言っていたレイオニクスか?」
レイは一歩前へ出て、右手を差し出す。
「あぁ、俺はレイ。君はブラッド族らしいが……力を貸してくれるなら心強い。一緒に戦おう!」
カルディアは差し出された手を一瞥した。
『カルディア、ちゃんと優しく言うんだよ』
「うるさいぞ、ボーイ」
「ボーイ?」
「はぁ……」
カルディアは面倒そうに片手を振る。
「ボーイが望んだから、力を貸してやるだけだ」
『カルディア!』
「何だ」
『握手!』
「断る」
『えぇ!?』
不思議そうに首を傾げるレイへ、メビウスが苦笑しながら説明した。
「今、カルディアはボーイと一体化しているんだ」
「一体化?」
「うん。ボーイの身体ではこの気候に耐えられないから、今はカルディアが主導権を握ってるんだよ」
「その……ボーイという子は大丈夫なのか?」
「あぁ、無事だ」
『良いなぁ。僕も地球の人とお話してみたい!』
「片を付けたら話せばいいだろう」
『本当!?約束だよ!』
「はいはい」
適当に返事をすると、カルディアは周囲を見渡した。
光を失った光の国。
辺り一面が凍り付き、先程まで多くの戦士達が行き交っていた場所とは思えないほど静まり返っている。
「それで」
ウルトラマン達へ視線を向ける。
「ベリアルは何処へ行った」
「恐らく怪獣墓場だ」
答えたのはセブンだった。
「ギガバトルナイザーを手にした以上、奴の目的は眠っている怪獣達だろう」
「怪獣墓場……」
レイの表情が険しくなる。
「なら、急いだ方が良さそうだな」
「あぁ」
ウルトラマンが顔を上げる。
「だが、その前に行く場所がある」
その視線の先。
凍り付いたプラズマスパークタワーが、静かに聳え立っていた。
「タワーへ向かおう」
「プラズマスパークは奪われたんじゃないのか?」
レイの問いに、ウルトラマンは頷く。
「確かめたいことがある」
その言葉を最後に、一同はプラズマスパークタワーへ向かった。
凍り付いたタワー内部は、静寂に包まれていた。
カルディアは何も言わず、先頭を進むウルトラマン達の後を歩いていく。
『カルディア』
「なんだ」
『ここ……』
「あぁ」
ここは、少し前自分がベリアルと戦った場所だ。
そして、プラズマスパークを奪われた場所。
「……」
カルディアは僅かに目を細める。
あの時、自分がベリアルを止めていれば。
「……チッ」
『カルディア?』
「何でもない」
考えるな、今更考えたところで、何も変わらない。
やがて、一同は最上部へ辿り着いた、そこには……
「タロウ教官!」
メビウスが声を上げる。
凍り付いたタロウが立っていた。
その両腕には、胸元に抱くように小さな光が残されている。
「これは……」
レイが息を呑む。光を失った世界、その中で。
その光だけが、確かに輝いていた。
「プラズマスパークの……残り火だ」
ウルトラマンが静かに呟く。
カルディアは動かなかった、ただ、タロウを見つめる。
『……カルディア』
「……」
『タロウ教官、生きてるよね?』
「死んではいない」
短く答える。
「エネルギーが尽きているだけだ」
『良かった……』
ボーイが安堵の息を吐く。
カルディアは何も言わなかった。
その時、タロウの胸に抱かれていた光が、僅かに揺らいだ。
「……!」
光はまるで意思を持つかのように、ゆっくりと浮かび上がった。
メビウス、ウルトラマン、セブン、そして、カルディアへ光が注がれる。
「これは……!」
身体に力が戻っていく。
カルディアは眩しそうに目を細めた。
「なるほど」
小さく呟く。
「あいつ……この状況で光を残していたのか」
『タロウ教官、すごいね!』
「……あぁ」
カルディアは凍り付いたタロウを見て暫く黙った後。
「馬鹿だな」
『えぇ!?』
「自分が凍り付くまで守る奴があるか」
吐き捨てるような言葉、だがカルディアは静かにタロウへ歩み寄った。
「……」
凍り付いた姿を見上げる。
「お前が守った光、無駄にはしない」
誰にも聞こえないほど、小さな声だった。
『カルディア……』
「行くぞ」
すぐに背を向ける。
ウルトラマンは、その小さな背中を静かに見つめていた。
「次は怪獣墓場だ」
セブンの言葉に、全員の表情が引き締まる。
「ベリアルを倒す」
メビウスが拳を握る。
「そして、プラズマスパークを取り戻します!」
「あぁ!」
レイが力強く頷く。
カルディアは小さく息を吐いた。
「……仕方ない」
『カルディア?』
「行くぞ、ボーイ」
『うん!』
「ベリアルを倒して、プラズマスパークを取り戻す」
瞳が鋭く細められる。
「今度こそな」
その一言を最後に。
一同は怪獣墓場へと向かった。
怪獣墓場。
死した怪獣達の魂が眠るその場所へ、ウルトラ戦士達とスペースペンドラゴンが降り立った。
機体の傍らには、青と赤の巨人、ウルトラマンダイナの姿もある。
彼とはここへ向かう途中で出会い、共に戦うこととなった。
「ここが……怪獣墓場」
レイが険しい表情で周囲を見渡す。
不気味な岩山、地面から噴き上がる炎。
そして、辺り一帯に漂う、無数の怪獣達の気配。
「随分と趣味の悪い場所だな」
カルディアが吐き捨てる。
『カルディア……なんか、いっぱい気配がするよ』
「あぁ」
目を細める。
「囲まれている」
その言葉と同時だった。前方、左右、岩山の上。
次々と巨大な影が姿を現す。
「怪獣軍団……!」
メビウスが身構えた。
無数の怪獣達が、一斉に咆哮を上げる。
その数を見て、ダイナが僅かに肩を竦めた。
「随分と歓迎されてるみたいだな」
「嬉しいか?」
「いや、全然」
「なら黙って戦え」
「厳しいねぇ!」
次の瞬間、怪獣軍団が一斉に動いた。
「来るぞ!」
ウルトラマンの声が響く。
ウルトラ戦士達も同時に飛び出した。
拳が怪獣の顔面を捉える、光線が暗い空を切り裂く。
セブンのアイスラッガーが、怪獣達の間を縫うように飛ぶ。
メビウスの剣が敵を薙ぎ払う。
ダイナは迫る怪獣の腕を受け流すと、その勢いを利用して地面へ投げ飛ばした。
「よっと!」
だが、その背後から別の怪獣が巨大な爪を振り上げる。
「後ろだ、馬鹿!」
「え?」
小さな影が飛び込んだ。
カルディアは怪獣の顔面へ飛び蹴りを叩き込む。
巨体が大きく仰け反った。
着地し、即座に踏み込み腹部へ拳を突き刺した。
怯んだ怪獣の角を掴み、強引に頭を引き下ろす。
「邪魔だ!」
膝蹴り、鈍い音が響いた。
「おっと……サンキュー!」
ダイナが片手を上げる。
「礼を言う暇があるなら前を見ろ!」
「本当に厳しいな!?」
『カルディア、助けたんだからもう少し優しく言えばいいのに』
「黙れ」
「ん?」
「お前には言っていない」
「えぇ……」
困惑するダイナを放置し、カルディアは次の怪獣へ飛び掛かった。
拳を叩き込み、骨が軋む感触がするが、怯んだ怪獣の腕を掴み、その勢いのまま投げ飛ばす。
だが、今回はただ目の前の敵を倒しているだけではなかった。
「メビウス!」
「えっ?」
カルディアが叫ぶ。
メビウスが振り返った瞬間。
その頭上をスペシウム光線が通過し、背後から迫っていた怪獣の肩を撃ち抜く。
「やれ!」
「ありがとう!」
メビウスブレスが輝く。
「メビュームシュート!」
光線が怪獣へ直撃、巨大な爆炎が上がる。
カルディアは、それを確認することなく飛び去った。
次、セブンへ迫る怪獣に紅黒い光弾を撃ち込み、注意を逸らす。
「セブン!」
「分かっている!」
アイスラッガーが閃き、怪獣が倒れる。
次、ウルトラマンの死角。
「右だ!」
カルディアの声にウルトラマンは即座に反応した。
振り向きざまに拳を叩き込み、怪獣を吹き飛ばす。
「助かった!」
「なら次を見ろ!」
カルディアは止まらない。
『カルディア、すごい! みんなを助けてる!』
「勘違いするな」
『え?』
「こいつらが倒れれば、私達の負担が増える」
『……ふふ』
「何だ」
『なんでもない!』
「気持ち悪い奴だな」
『酷い!?』
カルディアは小さく舌打ちし、迫る怪獣の顔面へ拳を叩き込んだ。
怪獣軍団の数は多いが、ウルトラ戦士達は、少しずつ敵を押し返していた。そして……
「ゴモラ!」
レイがバトルナイザーを掲げ、ゴモラが咆哮を上げて怪獣軍団へ突撃した。巨大な角が敵を吹き飛ばす。
「行け、ゴモラ!」
レイの声に応え、ゴモラが再び咆哮する。
その姿をカルディアは戦いながら横目で見ていた。
「……なるほど」
『どうしたの?』
「あれがレイオニクスか」
怪獣と心を通わせ、共に戦う。
ブラッド族の寄生でも洗脳でも支配でもない。
「随分と奇妙な関係だな」
『仲良しなんじゃない?』
「怪獣と?」
『カルディアと僕みたいに!』
「全く違う」
『即答!?』
その時だった。
「フハハハハハハ!」
禍々しい声が、戦場全体へ響き、カルディアの表情が変わった。
その視線の先には、ギガバトルナイザーを肩へ担ぎ、ベリアルが立っている。
「ベリアル……!」
ウルトラマン達が一斉に身構えた。
「随分と楽しそうじゃねぇか」
ベリアルが嗤う。
「俺の怪獣共を相手に、よく頑張ったもんだ」
「……貴様」
カルディアが一歩前へ出る。
「また会ったな、ブラッドのガキ」
「今度は逃がさん」
「フン」
ベリアルは鼻で笑った。
「威勢だけはいいな」
「その口、引き裂いてやろうか?」
『カルディア!喧嘩売らないで!』
「既に敵だ」
『そういう問題じゃないよ!』
ベリアルはカルディアから興味を失ったように視線を逸らす。
その目がレイを捉えた。
「……ほう、レイオニクスか」
「……!」
レイが身構えた。
「お前がベリアル……!」
「面白ぇ」
ベリアルはギガバトルナイザーを地面へ突き立て、レイへ手を翳した。
「少し遊んでやろう」
彼の手から禍々しい力が広がる。
「っ……!?」
レイの身体が大きく震えた。
「レイ!?」
ヒュウガが叫ぶ。
「ぐっ……あ……!」
レイは頭を押さえ、その場へ膝をついた。
「何だ……これ……!」
「レイ!」
ZAPクルーが駆け寄ろうとする、だが。
「近付くな!」
カルディアの声が響き、全員の動きが止まる。
カルディアはレイを凝視していた。
「……何かがおかしい」
『レイさんが?』
「あぁ」
レイの身体から溢れる気配が先程までとは違う。荒々しく暴力的、そしてどこか覚えのある。
他者の意識を、外側から無理矢理捻じ曲げるような感覚。
「……あの野郎、洗脳したのか」
「フハハハハ!」
ベリアルの笑い声が響く。
「どうした、レイオニクス!」
「ぐ……ああああああッ!」
レイが絶叫したその瞬間、ゴモラが咆哮を上げる。
「グオオオオオオオッ!!」
空気が震えた。
「ゴモラ……?」
ヒュウガが目を見開く。
荒い呼吸に獰猛な瞳、全身から溢れ出す暴力的な力。
「……まずい」
カルディアが呟いた。
ゴモラが動く……巨大な尾が振るわれた。
「避けろ!」
ウルトラマンの声に、ウルトラ戦士達が一斉に散開する。
尾が地面を薙ぎ払い、岩山が崩壊した。
「ゴモラ! どうしたんだ!」
ヒュウガが叫ぶが、ゴモラは止まらない。
敵も味方も、関係なく攻撃を始める。
「レイ!」
レイは頭を押さえ、苦しみ続けていた。
その姿を見てベリアルが嗤っている。
「……なるほど」
『カルディア?』
「あいつが原因だ」
カルディアはベリアルを睨む。
「洗脳ではないな……レイブラッド因子を暴走させたのか」
ゴモラが再び咆哮を上げた。
その視線がスペースペンドラゴンへ向く。
「……っ!」
『カルディア!』
「分かってる!」
カルディアが地面を蹴るが、一瞬頭の中で計算してしまった。あのゴモラの攻撃を正面から受ければ、ボーイは。
「ッ!」
ほんの僅かに躊躇してしまったその前を、赤い影が横切る。
「セブン!?」
迷いはなかった。
セブンはスペースペンドラゴンの前へ飛び込んだ。ゴモラの攻撃が直撃する。
「ぐあああああッ!」
「セブン!」
巨体が吹き飛ばされ、地面へ叩き付けられる。
だが勢いが治まらず、何度も、何度も転がった。
「……!」
カルディアの動きが止まる。
『セブンさん!』
セブンは震える腕で身体を起こし、スペースペンドラゴンを見る。
無事だ、それを確認すると僅かに息を吐いた。
「……馬鹿が」
カルディアが呟く。
セブンの手が頭部へ伸び、アイスラッガーを掴む。彼は残された力を振り絞り、空へ投げた。
光となったアイスラッガーが、怪獣墓場の彼方へ飛び去っていく。
それを見届けると、セブンは倒れた。
「セブン!」
ウルトラマン達の声が響く。
『カルディア……』
「……」
『セブンさん……』
「分かってる」
カルディアは拳を握り締めた、先程の光景が脳裏から離れない。
ゴモラの攻撃に襲われそうになるスペースペンドラゴン、それに迷わず飛び込んだセブン。
その姿がカルディアの胸に、深く突き刺さった。
カルディアは本編完結後、ボーイに性格や思考が寄っていますが根っこの部分は変わってません。害悪宇宙人です。
彼女の最優先事項は
ボーイ>>>後々出てくる身内(キルバス、エボルト以外)>>>光の国で仲良くなった人達>>>>その他大勢の自分に害を及ぼさない一般人>>>>>>キルバスとエボルトです。