ウルトラ×ブラッド   作:karaageだぜ

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続きました。10話位で完結予定です。
アイディアが止まりません、楽しいです。


第二話 紅き影

ボーイがカルディアと一体化し、光の国を散歩していると、急に大きな揺れが襲った。

ボーイが困惑している時、カルディアは冷静に状況を分析していた。

 

『ボーイ、上を見ろ、敵襲だ』

 

「て、敵襲?!ど、どどどどうしよう?!」

 

『落ち着け、私がいるからお前は大丈夫だ。建物内に入れ、他の奴らは知らんが……宇宙警備隊が何とかするだろう』

 

「う、うん……流石にここまでは来な、来たーーー?!?!」

 

ボーイはカルディアの指示で建物内に避難して一安心していたが、壁を突き破ってやって来た怪獣に腰を抜かしてしまった。

 

『ボーイ、変わるぞ!』

 

『カルディア?!勝てるの?!』

 

「舐めるな」

 

ボーイから体の主導権を代わり、カルディアは邪悪に笑って怪獣と対峙する。

久しぶりに感じる戦いへの高揚感の中、自身に迫ってくる怪獣の拳をいなしつつ、腕を掴んで勢いを利用し、壁の外へ投げ飛ばした。

壁に空いた穴から外に出たカルディアは、まだ向かってくる怪獣の目や関節を潰し、時にもぎ取った腕を他の怪獣へ投擲し、怪獣達を盾に使用して戦う。

 

 

 

宇宙警備隊が到着した時、既に怪獣達は倒されていた。

残虐に殺された怪獣達の死屍累々、その惨状の中心部に一人の子供が立っていた。

 

「君!大丈夫かい?怪我は……っ?!」

 

隊員の一人が駆け寄るも、振り向いたその子が放つ禍々しさに息を飲んだ。

 

「ボーイ、宇宙警備隊だぞ。しかもマントを着ているのはウルトラ兄弟じゃないか?喜んで良いんだぞ?」

 

『こんな状況じゃなければね!!!!』

 

「ふふ、そう怒るな」

 

警備隊員が臨戦態勢を取る中、その子供は楽しげな口調で、まるで誰かと話している様だった。

 

「……君が怪獣達を倒したのか」

 

タロウが警戒しつつも言葉をかけると、その子は顔を動かして彼を視界に入れた。

 

「そうだ、それにしても遅かったな。私がいたから良かったものの……まぁ、ボーイの頼みだからな」

 

「…君は誰だ?」

 

「……私か?私は……ウルトラマンボーイだ」

 

『ちょっと!僕の名前を名乗らないでよ!』

 

「仕方ないだろうボーイ、この体はお前のだ」

 

「まさか…その子の体を乗っ取ったのか?!」

 

タロウの言葉に、ウルトラマンボーイ?は顔を顰めた。

 

「言い掛かりはよせ、同居しているだけだ」

 

『あーもう!カルディアはもう引っ込んで!僕がちゃんと説明するから!』

 

「分かった分かった」

 

ボーイが俯き、顔を上げた時には禍々しさは消え去っていた。

 

「あ、あの!誤解しないでください、カルディアはちょっと言葉足らずで面倒臭がりなだけで!でも優しいんです!僕を守ってくれただけなんです!」

 

ワタワタと両手を動かして説明する子供…ボーイに、タロウは警戒を解かずに近付いた。

 

「あ、あの……?」

 

「……一先ず君は一緒に来てくれないか?説明もしてくれるね?」

 

「は、はい……」

 

『安心しろボーイ、ヤバくなったら私と逃げような』

 

「あぁもう、カルディアは黙ってて!」

 

 

 

 

ボーイが連れて行かれた先は宇宙警備隊本部の一室だった。

小さな机を挟み、向かいにはタロウと数名の隊員が座っている。

 

「さて……まずは君の話を聞かせてくれるかな」

 

「は、はい……」

 

ボーイはぎこちなく頷いた。

 

「えっと……カルディアは悪い人じゃなくて、その……お腹が空いてる時に僕が……」

 

『ボーイ』

 

「え?」

 

『私が話した方が早い』

 

「絶対ダメ!!!」

 

しかし抵抗も虚しく、体の主導権は奪われた。

ボーイはすっと背筋を伸ばし、纏う雰囲気が変わった。

 

「初めまして、ではないな。さっきぶりだ」

 

隊員達の空気が一瞬で張り詰めた。

 

「君がカルディアだね」

 

「そうだ」

 

あえて体の部位を破壊して殺す残虐性、それに寄生能力……

タロウは導き出した答えに恐れを抱きながらも、それを悟られない様に冷静に問うた。

 

「あの怪獣達のやられ様を見るに……君はブラッド族か?」

 

沈黙。カルディアは数秒考え、

 

「そうだ」

 

とぞんざいに答えた。

 

『カルディアーーー!!』

 

ボーイの悲鳴がインナースペースに響いた。

タロウ達の視線が鋭くなる。

 

「……随分あっさり認めるんだな」

 

「隠す意味が分からん」

 

『あるよ!!めちゃくちゃあるよ!!』

 

「私はお前達が嫌いだが、嘘は余り付くべきではないと習った。だから嘘は付かない」

 

その言葉に部屋の空気がさらに重くなる。

隊員の一人が身構えたのを、タロウは手で制した。

 

「光の国に潜入した目的は何だ」

 

「ない」

 

「何?」

 

「いやあるな……ボーイと一緒にいたい、あとご飯も食べたい」

 

「……は?」

 

「あと寝床の確保」

 

カルディアが語った理由に、警備隊員達は絶句した。

あのブラッド族が一人に執着している?だと、有り得ない、いや、だが……

 

『カルディアお願いだから真面目に答えて!!』

 

「私は真面目だ、ボーイと一緒に居たいだけだぞ」

 

落ち着きを取り戻したタロウは尋問を続けた。

 

「怪獣達を倒した理由は?」

 

「ボーイを守るためだ」

 

即答だった。

 

「……それだけか」

 

「それだけだ」

 

「光の国を守るためではなく?」

 

「違う、何故そんな事を聞く?」

 

カルディアは首を傾げる。

 

「私は光の国などどうでもいい」

 

隊員達がざわめく。もしや敵対するつもりだろうか?

だがカルディアは続けた。

 

「だがボーイはここが好きだ」

 

彼女の返答に、静まり返る部屋。

 

「だから壊されると困る」

 

『カルディア……』

 

「それだけだ」

 

タロウは彼女の今までの返答を、一先ず信用する事にした。

しかし、これだけは聞いておかなければならない。

 

「ウルトラマンボーイは君がブラッド族だと知っていたのか?」

 

インナースペースにいるボーイの顔から血の気が引いた。

だがカルディアは特に気にせず答えた。

 

「知っていたぞ」

 

『言わなくていいからーーー!!』

 

ボーイの悲鳴に、カルディアは不思議そうに首を傾げた。

 

「……そうか、知っていたのか」

 

「そう言っているだろう」

 

カルディアは眉を顰め、まさかだが、と言葉を続けた。

部屋に重く冷たい殺気が充満し、タロウでさえ気圧されている。

 

「ボーイに何か罰を与えるつもりか?お前達は他者に手を差し伸べた者を罰するつもりか?」

 

『カ、カルディア……』

 

「ボーイは黙っていろ、もしそうならば私も全力で抗うぞ」

 

「……私では判断が出来ない。今までの事はゾフィー隊長にテレパシーで伝えてある。その判断が下るまで、君達を拘束しなければならない」

 

タロウが静かに告げる。

ボーイはびくりと肩を震わせた。

 

『こ、拘束……?』

 

「心配はいらない。君達に危害を加えるつもりはない。ただ――」

 

そこまで言った時だった。

 

「待て」

 

殺気を孕んだ低い声が場を支配し、ボーイの身体から再び禍々しい気配が溢れ出す。

 

『カルディア?!』

 

「拘束するのは私だけにしろ」

 

空気が張り詰めた。隊員達が一斉に身構える。

 

「ボーイは関係ない」

 

「そういう訳にはいかない」

 

「何故だ」

 

カルディアの声は静かだった、だが静かだからこそ恐ろしい。

 

「この件の原因は私だ。ボーイは私を助けただけだ」

 

「だとしても、君達は現在一体化している」

 

「なら一体化を解除するから、私だけ拘束しろ」

 

『カルディア!』

 

「黙っていろ」

 

カルディアは吐き捨てるように言った。

 

「お前が罰を受ける理由はない」

 

『でも!』

 

「ない」

 

短い言葉だが、有無を言わさない圧が込められていた。

 

「お前は私を助けた。それだけだ」

 

タロウはその様子を黙って見ていた。

ブラッド族、光の国と長年敵対する危険種族。

何度も衝突を繰り返してきた、彼等によって殺された宇宙警備隊員も多い。

だが今目の前にいる少女は、自分の身ではなくボーイの事ばかり気にしている。それが妙に引っ掛かった。

 

「カルディア」

 

「何だ」

 

「君は勘違いしている」

 

タロウはゆっくりと言った。

 

「私達はボーイを罰するために拘束する訳じゃない」

 

「……なら何故だ」

 

「君を守るためでもある」

 

絶えず放たれていた殺気が、止まった。

カルディアはタロウの言葉をの続きを待った。

 

「ゾフィー隊長の判断が下る前に混乱が広がれば、君達はもっと危険な立場になる」

 

「……」

 

「だから今は大人しくしていてくれ」

 

カルディアは答えない。

眉根を寄せ、耐える様に拳を握り締めていた。

 

『カルディア……』

 

「……気に入らん」

 

数秒の沈黙の後、やがて小さく呟いた。

 

「だがボーイが望むなら従う」

 

そう言って彼女は引き下がった。

タロウは心の中でホッと息を吐いた。彼女がこの提案を拒否して暴れ出そうものなら、ボーイもブラッド族を引き入れた罪に問われてしまうだろう。

 

「分かってくれたか、2人とも付いてきてくれ」

 

タロウはカルディアを連れ、宇宙警備隊本部にある小部屋に案内した。

 

「狭い部屋だな」

 

「すまない、空いている部屋がここしか無かったんだ。我慢してくれ」

 

「まぁ良いか……」

 

「呼びに来るまでここで待っていてくれ」

 

 

タロウはそう言って部屋を出ていった。

出た途端に厳しい顔つきになった彼は、ゾフィーからテレパシーで伝えられた場所へ向かった。

タロウが向かった先は宇宙警備隊本部の中でも、特に機密性が高い会議に使われる場所だった。

そこには現在光の国から離れているレオとアストラ、80、メビウス、ヒカリを除いたウルトラ六兄弟が集められていた。

彼等の議題はただ一つ、ブラッド族の少女、カルディアの処遇だった。

 

「結論は明白だ」

 

最初に口を開いたのはセブンだった。

 

「ブラッド族を光の国に置いておく理由がない」

 

「同感です」

 

ジャックも続く。

 

「現在問題を起こしていないからといって、今後もそうだとは限りません」

 

「けれど彼女は怪獣から住民を守りました!」

 

タロウが反論する。

 

「それは結果論だ」

 

エースが厳しい声で言った。

 

「彼女自身も認めていたはずだ。光の国を守るためではなく、ボーイを守るために戦ったと」

 

タロウは言葉に詰まった。それが事実だった。

 

「それに」

 

ウルトラマンが言葉を続けた。

 

「ボーイと一体化している事実が問題だ、即刻分離すべきだ」

 

マンの言葉にジャックが頷く。

 

「待ってください!」

 

タロウが立ち上がった。全員の視線が集まる。

 

「彼女は危険かもしれない。ですが私は……彼女を完全な敵だとは思えません」

 

「何故そう思う?」

 

ゾフィーが静かに問う。

 

「ボーイです」

 

タロウは即答した。

 

「彼女は終始ボーイの事ばかり気にしていました」

 

誰も口を挟まない。

 

「拘束を告げた時も、自分ではなくボーイを心配した」

 

「だから何だ」

 

厳しい顔をしたセブンが言う。

 

「情があるから安全だと?」

 

「違います」

 

タロウは首を振った。

 

「少なくとも嘘はついていません」

 

「……」

 

「光の国が嫌いだと言った」

 

「……」

 

「ボーイが好きだとも言った」

 

「……」

 

「彼女は自分を良く見せようとしないんです」

 

会議室が静まり返る。

ゾフィーは腕を組んだまま目を閉じていた。

やがて口を開く。

 

「タロウ」

 

「はい」

 

「お前は彼女を信じたいのだな」

 

「……はい」

 

ゾフィーはしばらく考え込み、静かに告げる。

 

「だが我々は宇宙警備隊だ」

 

タロウが目を伏せる。

 

「一個人の感情で判断は出来ない」

 

誰も反論しない、それが現実だった。

 

「よって決定する」

 

ゾフィーが立ち上がる。

 

「カルディアとウルトラマンボーイは分離する」

 

タロウが椅子に座り込み、悔しげに拳を握る。

 

「カルディアは監視下に置く」

 

「……」

 

「身柄は私が預かる」

 

その瞬間、ざわめきが起こった。

タロウは驚きに目を見開き、ゾフィーを見詰める。

 

「ゾフィー兄さん自ら?」

 

「危険です!」

 

隊員達が次々に声を上げるのを、ゾフィーはてて制した。

 

「だからだ、危険だからこそ私が責任を持つ」

 

会議室は再び静まり返った。

 

「彼女を排除するつもりはない、だが信用もしない」

 

その言葉は厳しかった。しかし、カルディアに与えられた初めての猶予でもあった。

 

「彼女自身に証明してもらおう、自分が敵ではないという事を」

 

ゾフィーはそう締めくくった。

 

 

 

 

『カルディア、変わろうか?』

 

「止めた方が良い、何かあった時お前じゃ反応できないだろ」

 

『何かあった時って……何も無いでしょ。ここは宇宙警備隊の本部だよ?』

 

「だからだ」

 

カルディアは簡易的なベッドに腰掛けて、ボーイと話していた。

警戒を続けるカルディアとは対照的に、ボーイは楽観的だった。

それは人の悪意に触れた事が無いからなのか、幼さからなのか……

カルディアは星々を旅していた時、あらゆる悪意に晒されてきた。

その星の王族から宴に招かれたと思えば食事に毒が盛られていたり、何もしていないのにいきなり攻撃されたり……

勿論星ごと全て滅ぼしてきたが、今までの経験から考えると、今の状況はむしろボーイごと私を滅ぼそうとしているのでは?と疑いを深めていた。

 

『ねぇカルディア』

 

「どうした」

 

『ありがとう、カルディアは僕の為に譲歩してくれたんだよね』

 

「まぁな」

 

深い思考に沈むカルディアに、ボーイが優しく声をかけた。

ボーイは彼女が優しい事を知っている。

確かに彼女の戦い方は怖いし思考が危険な時もあるけど、決して自ら誰かを傷付けようとはしない。

ボーイと彼女自身に害が及びそうな時になって始めて、彼女の凶暴さが現れるのだ。

 

『きっと大丈夫だよ、僕達2人だったら最強!でしょ?』

 

「ふふ、そうだな」

 

もしボーイが傷付けられる事になれば、宇宙警備隊も、光の国も、私が滅ぼせば良いだけだ。

カルディアは随分甘くなったなものだ、と内心思いながらベッドに横たわった。

 






「……僕」

ボーイの声が震える。

「何も出来なかった……」

次回 監視者達
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