光の国って観光地少なそう。
カルディアとボーイの一体化が許可された次の日、二人は一体化を解除しないままでいた。
だがそのまま家にいるのも退屈だろう、とボーイはカルディアに光の国を案内しようと思い立ち、宇宙情報センターへ向かった。
本当は、初めて光の国へ来た日に案内するつもりだった。だが……
『もし私の存在がバレた時、お前はブラッド族を招き入れた事に加えて国の情報を渡した犯罪者になるんだぞ』
と言われて泣く泣く止めた事があった。
しかし、今はもう監視付きとは言え滞在が許可されている。なら、観光スポットを紹介する位は良いはずだよね?
ボーイは張り切って調べていたが、元々光の国に観光できる所は少ない。
プラズマスパークタワーは国の最重要施設だし、宇宙警備隊本部にも行った事がある。
うんうん唸るボーイを不憫に思い、カルディアは口を開く。
『ボーイ、そんなに悩まなくても良い。私は観光がしたい訳では無いのだから』
「えー、でも僕はカルディアにも〜っと、光の国を好きになって欲しいんだ!」
『もっとって……私は別にこの国が好きな訳では……』
「カルディアは何処か気になる場所ってある?」
カルディアはボーイの圧に押されて、数秒考えるが、特に何も思いつかなかった。
『……強いて言うならば、この星の歴史が知りたい』
「なら歴史記念館だね、あそこにはウルトラ兄弟の記録も展示されていたはずだよ!」
学校の授業で行ったなぁ、とボーイは嬉しそうだ。
カルディアはほっと息を吐くと、ボーイを促して準備を整えさせた。
歴史記念館までは、専用の乗り物に乗って行くことが出来る。
ウルトラ族といえど、幼い者達は上手く飛ぶ事が出来ない。
また飛行できない他星人達の為に、光の国では専用の乗り物があり、レーンが張り巡らされている。
「おやつも持ったし、端末も……持った!」
『じゃあ出発だな』
ボーイとカルディアは歴史記念館へ向けて出発した。
窓から流れる光の国の街並みを眺めているうちに、思っていたより早く歴史記念館へ到着した。
早速中に入って二人分のチケットを買い、展示物を順番に見て回る。
『これがウルトラ族の前の姿か、私と似ているな』
「ほんとだ、地球人にも似ているみたい」
『地球か……三番目の兄が詳しく知っていてな、よく話を聞かせてくれたのを思い出した』
カルディアの言葉にボーイはふぅん、と返した。
前々から気になっていた彼女の三番目の兄、という存在。度々彼女が口に出している様子から、かなり慕っている様だ。
胸にモヤモヤとした物を抱えながら、ボーイは話題を変えようと口を開いた。
「ねぇ、あれ見てよ!ウルトラ兄弟の展示だ!」
『ボーイ、走るな……ほう、ウルトラマン。こいつから地球との関わりは始まったんだな』
「うん、教科書にも載ってるんだよ!僕も何時か立派な宇宙警備隊員になれるかな」
『成れる成れる、おい次の展示も見せろ』
「ねぇ適当過ぎない!?まぁ良いけど……」
走り出すボーイをカルディアは軽く諌めると、次の展示へと目を向けた。
その先にあったのはセブンの展示だった。
『セブンか』
「知ってるの?」
『有名だからな、ブラッド族の中でも警戒対象だった』
「えぇっ!?」
ボーイが思わず大声を出す。
『何だその反応は』
「だってセブンさん凄いんだね!」
『だからそう言っている』
カルディアの声には僅かに感心した色が混じっていた。そのまま展示を見て回り、タロウの前で足を止めた時だった。
『タロウか』
「タロウ教官だよ!」
『妙な奴だ……私を見てもあまり怯えなかった』
ボーイは少し考えて、口を開いた。
「優しい人だからじゃないかな」
『……変わった奴だな』
「褒めてる?」
『知らん』
そっぽを向いたカルディアに、ボーイは少しだけ笑うと、次の展示へと進んだ。
エンペラー星人の襲来、ベリアルの乱、命の固形化技術を狙った他種族からの襲撃。
そこには、何度も危機にさらされた光の国の歴史が並んでいた。
ボーイが食い入るように展示を見ているのに対し、カルディアは意外とセキュリティが甘いんだな、と思っていた。
やがて展示を一通り見終えた二人は、休憩スペースへ向かった。
人の少ないベンチに腰掛けると、ボーイは周囲を確認して、小さく頷いた。
「カルディア」
『何だ』
「出ておいでよ」
『ん』
光が溢れた次の瞬間、ボーイの掌の上に小さな少女が現れた。
少女……カルディアは辺りを見回し、念の為周辺のスキャンも済ませた。
「人はいないな」
「大丈夫そうだよ、ほら一緒に食べよう!」
ボーイは持ってきた袋を開くと、そこからクッキーを取り出した。
カルディアは目を瞬き、数秒沈黙した。
「……私の分もあるのか」
「当たり前でしょ?」
ボーイは不思議そうに首を傾げて、クッキーを砕いてカルディアに手渡した。
まるで最初から、それが当然であるかのように。
カルディアはそれを受け取り、小さく齧ると最初にボーイと会った時の事を思い出し、胸の奥が温かくなった。
「……ありがとう」
カルディアは、ボーイが聞こえるか聞こえないかの声量で小さく呟いた。
「え?」
「何でもない」
「今ありがとうって言った!」
「言ってない」
「言った!」
「言ってない」
ボーイは嬉しそうに笑い、カルディアは顔を背ける。
二人は暫く無言でクッキーを食べていたが、ボーイは意を決して口を開いた。
「ねぇ」
「何だ」
「三番目のお兄さんって、どんな人だったの?」
カルディアの動きが止まり、数秒沈黙した。
やがて彼女はぽつりと呟く。
「優しくて頭が良い……筋肉バカ、かな」
その声は少しだけ柔らかかったけれど、少しだけ寂しそうでもあった。
ボーイはそれ以上聞かなかった、今はまだ聞くべきではない気がしたからだ。
休憩を終えた二人は再び一体化し、帰路についた。窓の外には光の国の街並みが流れている。
「どうだった?」
『何がだ』
「光の国!」
カルディアは少し考えた。
『退屈な星だ、平和過ぎる』
「良い事じゃん!」
『まぁな』
ふっと笑い、少しだけ間が空く。
『だが……思ったより悪くない』
ボーイの顔がぱっと明るくなった。
「やった!」
『何がだ』
「カルディアが光の国を褒めた!」
『褒めてない』
「褒めた!」
『違う』
「褒めた!」
ボーイは周囲にバレないように顔を伏せて笑った。
その日の夜、ベッドに寝転がったボーイは満足そうに息を吐いた。
「今日は楽しかったね」
『そうか』
「楽しかったよ」
『なら良い』
「また行こうね」
『……あぁ、次はお前が行きたい場所に案内しろ』
「えっ」
『今日は私が決めたからな』
「う、うん!」
ボーイは笑った。カルディアもまた、気付かれないように口元を緩める。
光の国は好きではない、今でもそれは変わらない。
それでも、ボーイと歩く光の国は、思ったより悪くなかった。
「二人ともいいコンビだね」
「ベリィ〜ナイスな関係と見た!カルディアちゃん、私はウルトラマンナイス、よろしくね」
「僕はウルトラマンゼアスです!」
次回 第六話 新たな友達