80とカルディアとボーイの顔合わせは平和的に終わった。
早速次の日から戦闘訓練が始まり、三人はコロセウムに集まった。
「早速訓練を始めよう、一体化して戦う時エネルギーの供給も、戦闘もカルディアが担っていたんだよね?」
「そうだ、ボーイには私との一体化を保つ為の繋ぎを任せている」
「繋ぎ?」
「あぁ、主に私がダメージを負った時、意識を失わない様に呼びかける役目だ」
「そうなの!?」
カルディアの説明にボーイが驚いた。
「そうだ、と言ってもお前と一体化してからダメージを負った事はないがな」
「そういえば何時も圧勝だったもんね」
ドヤ顔で胸を張ったカルディアを真似して、ボーイもふふん、と胸を張った。
それを微笑ましく見ていた80だったが、両手をパン、と鳴らして二人の注目を集めた。
「本当はエネルギーの供給と戦闘は分担した方が良いんだが、ボーイはまだ子供だからね。カルディアの戦闘に慣れる事から始めようか」
「はい!」
「じゃあ一体化して光線技を撃ってみようか、ボーイは光線を放つ時のエネルギーの流れを意識して」
「分かった」
80の言葉に素直に従って一体化したボーイとカルディア。主導権はカルディアが握っている。
カルディアは以前資料で見たスペシウム光線の構えを取り、コロセウムにある的に向かって放った。
「こんなもんか?」
『わっ、なにこれぇ!?』
「ボーイ、どうだ?エネルギーの流れは掴めたか?」
「80、ボーイは混乱している様だ。一体化して初めて光線を撃ったからな」
『すっごいよカルディア!何これ、なんか、エネルギー?の流れが分かったよ!すっごい!』
「80、どうやら掴めたらしい」
インナースペースで騒ぐボーイの様子を80に伝えると、彼は苦笑いをして口を開いた。
「良いね、凄いぞボーイ。じゃあ次はエネルギーの流れを補助するんだ」
『補助!?僕まだ上手く光線が撃てないのに……』
「ボーイは光線技が得意じゃないんだぞ、難しいと思うが」
「じゃあボーイ、カルディアと同時に光線を撃ってみよう。カルディアはボーイに合わせてみて」
「わかった、やるぞボーイ」
『うん!』
80の助言を受けてボーイはインナースペースでスペシウム光線の構えを取った、同じくカルディアも構える。
ボーイがエネルギーをチャージして光線を放った瞬間、カルディアも放つ。
「っ!?これは……」
『わっ、わぁっ!?』
「同時に放つ事でカルディアも意識出来ただろう?エネルギーに滞っている場所があるから、ボーイはそこにエネルギーを流すんだ、そうすれば少ないエネルギーで光線を撃てるはずだ」
80の解説に、手を数度握って感じた感触を思い出しているカルディア。
「なるほど、確かにボーイの補助があればもっと効率的に戦える。ボーイ、出来そうか?」
『うん、やってみる!』
「さぁ、もう一度、構えて!」
カルディアとボーイは同時に構え、息を合わせてスペシウム光線を放った。
ボーイは滞っている場所きエネルギーを流して、カルディアを補助する。すると、光線が的に当たった瞬間、先程と比べて大きな爆発が起こった。
『出来た、出来たよカルディア!』
「あぁ、お前のお陰だ。ありがとう、ボーイ」
「二人ともよく出来ました、じゃあ次は……」
喜ぶ二人を嬉しそうに眺めていた80だったが、少しだけ口元を緩めると、静かに構えを取った。
「二人ともよく出来ました。じゃあ次は……実戦形式といこう」
その一言に、カルディアは楽しそうに笑う。
「……面白い。やるぞ、ボーイ」
『うん!』
「安心して。私の目的は君達を倒すことじゃない」
80は穏やかな笑みを浮かべたまま続けた。
「君達が、本当に一つになれているかを確かめることだ」
「なるほど……試験という訳か」
「そういうこと」
開始のブザーが鳴ると同時に、カルディアが床を蹴った。
残像を残しながら一気に80との間合いを詰め、拳を繰り出す。
しかし80は慌てる様子もなく、体を半歩だけずらした。
拳は空を切り、さらに手首を軽く添えられただけで、カルディアの体勢が大きく崩れた。
「っ!」
「踏み込みは悪くありません。ですが、力み過ぎですね」
80はそのまま掌で軽く肩へ触れる。
たったそれだけでカルディアは数歩後ろへ押し返された。
「くっ……!」
『カルディア!』
「大丈夫だ」
カルディアはすぐに立て直す。
今度は左右へ高速移動しながら死角へ回り込み、蹴りを放つ。
しかし80は振り向くことなく、その蹴りを腕一本で受け止めた。
「速いですね。ですが、まだ読みやすい」
その言葉にカルディアは舌打ちする。
「チッ……」
「カルディア」
80は攻撃を受け流しながら穏やかに問い掛ける。
「今、ボーイの補助が一瞬遅れましたね」
『えっ!?』
インナースペースでボーイが驚く。
「カルディアが踏み込む瞬間、君のエネルギー供給が少し止まりました」
『ぼ、僕!?』
「だから体勢が崩れたんです」
カルディアは一瞬だけ目を閉じ、体の感覚を確かめた。
「……確かに、一瞬だけ動きが重かった」
『ご、ごめん!』
「謝らなくていい」
「そうですよ、ボーイ」
80はにこやかに笑う。
「気付けたことが一番大切なんです」
カルディアは静かに頷き、構えた。
「次は頼むぞ、ボーイ」
『うん!』
今度は80が自ら踏み込んできた。
鋭い掌底、流れるような回し蹴り、無駄のない連撃が次々と迫る。
カルディアは受け流しながら反撃の隙を探すも、80は決して深追いしない。
攻め込み過ぎず、距離を保ちながら二人の動きを観察していた。
「ボーイ」
『はい!』
「カルディアの右腕を見てごらん」
『右腕……?』
「そこだけエネルギーの流れが少し弱い」
ボーイは意識を集中させる。
カルディアの体内を巡る紅い光、その中で右肩付近だけ流れが細くなっているのが見えた。
『ここだ!』
ボーイはそこへ自分のエネルギーを流し込むと、カルディアの右腕が軽くなる。
残像だけが次々と現れ、位置を捉えられない。
気配を感じて振り向けば既におらず、一旦距離を取ろうと飛び退くと、狙ったのかの様に攻撃が飛んでくる。
まるで空間そのものを支配されているような感覚だった。
『カルディア、左!』
「!」
ボーイの声と同時に左から拳が飛んでくる。
カルディアは紙一重でかわす。
『今度は後ろ!』
振り返る、そこには既に80がいた。
カルディアは体をひねり、蹴りを放ったが、80は受け止める。その隙にボーイが叫んだ。
『今だよ、カルディア!』
「任せろ!」
ボーイがエネルギーを流し込んだ瞬間、カルディアは驚いた。
「これは……!」
ボーイの力が、自分の力へ自然と溶け込んでいく。今まであった違和感が無くなり、拳に力が乗る。
次の瞬間、カルディアの拳がこれまで以上の速度で80へ迫った。
80は驚いたように目を見開きながら、その拳を受け止める。
「素晴らしい!今の補助は完璧です」
『やったぁ!』
「よくやったぞボーイ」
ボーイの喜ぶ声が響き、カルディアも少しだけ口元を緩めた。
「では最後です」
80が静かに構えた次の瞬間、その姿が消えた。
カルディアが反応した時には、80の掌底は既に目の前まで迫っていた。
「速い!」
紙一重でかわす。だが反撃しようにも、
カルディア全身の力を拳へ乗せて一直線に放たれた拳は80の胸元で止まる。
同時に、80の掌もカルディアの胸へ届く寸前で静止していた。
静寂が訪れる。
先に笑って構えを解いたのは、80だった。
「合格です」
カルディアはゆっくり拳を下ろす。
「……なるほど、私一人ではこの一撃は届かなかった」
『僕もカルディアがいたからだよ!』
ボーイの言葉に、カルディアは照れ臭そうに鼻を鳴らした。
「当然だ」
80はそんな二人を満足そうに見つめる。
「一体化の強みは、一人が強くなることではありません。互いの足りない部分を補い合い、二人で一緒に強くなる事です」
二人は静かに頷くが、80は少しだけ表情を引き締めた。
「ですが、一つだけ課題があります」
カルディアはその意味を理解し、静かに呟く。
「……意識外でも出来るようにする、か?」
「その通りです」
80は頷いた。
「今のままでは、いくら効率的に戦えるとはいえ、長期戦になると先にエネルギーが尽きてしまいます」
ボーイは拳を握る。
『もっと強くならなきゃ!』
「そうだなボーイ、一緒に強くなろう」
80は優しく笑った。
「焦らなくて大丈夫、君達なら、必ずその壁を越えられます!」
その言葉に、ボーイが笑い、カルディアも口元に笑みを浮かべた。
「あぁ」
『うん!』
二人の返事が重なり、訓練室には心地よい余韻が静かに広がっていった。
80も多忙で毎日指導を受けられる訳ではないが、二人は着実に強くなっていた。
だが時折妙な感覚に襲われる。それは二人の息がピッタリとあった時、まるで二人の意識が溶け合う様な、まるでお互いの体の境界が曖昧になっていく様な……そんな感覚だ。
「……その感覚、本当にあったんですか?」
「はい」
二人の報告に、80は少しだけ目を見開いた。
「私も文献や伝聞でしか知りませんが……」
80は一度言葉を切ると、数秒考え込み口を開いた。
「タイプチェンジの前兆かもしれません」
「そうなのか」
「えぇ、兄さん達に聞いた事があります。スーパーウルトラマンタロウになる時、意識が溶け合っていく感覚がする……らしいです」
「じゃ、じゃあ僕達ほんとにフュージョンフォームになれるんですか!?」
「おそらくね」
二人の報告を聞いた80が予測を伝える。それを聞いてボーイは目を輝かせた。
「その名前、気に入ってるのか?」
「うん!あっカルディアは気に入らない?」
「いや、良いと思うぞ」
盛り上がるボーイを見守るカルディアと80だったが、80が口を開いた。
「カルディア」
「なんだ」
「君達は強くなっています、これからも絆を深めていってくださいね」
80の言葉にカルディアは面食らった様だが、すぐにニヤリと笑った。
「当たり前だ、私達二人なら最強らしいからな」
そう言ってカルディアは80の肩に腰掛けた。
80は驚いたように目を丸くしたが、すぐに穏やかな笑みを浮かべ、カルディアと共に無邪気にはしゃぐボーイを見守っていた。
「……すまない、護れ……なかった……」
「違うよ……カルディアはずっと僕を護ってくれた!」
次回 第十話 襲来