夜、ヴァリエール公爵ピエールの書斎にて、三人の男女が悩み、これからどうするか考えていた。
「困ったものだ、恩が積み重なってとんでもない所に彼をどうするか悩まんといけないとは…」
「ですが、今ならば、彼と私達の関係は悪くない…エレオノールは少々やらかしましたが。」
「う…仕方ないでしょう、お母様。あんなに凄いなんて…まだルイズと同年の少年だったのに…」
「そこだよ、問題なのは…大人ならば異国の賢者と言う事で誤魔化せた、しかしまだ彼は少年だ…どう扱ったものか…」
そう、カリスが言った通りシオンが大人なら、旅をしている異国の賢者と言う建前が使えて、只の食客だと扱えた。
しかし、まだ彼は少年だ、その才能を欲しがるモノは幾らでも湧いてくる…欲しがるモノの善悪は言うまでもないだろう、碌なモノではない。
「このまま助けてくれてありがとう、と言って報酬を渡してそのまま放置…と言うのも良くない…彼程の実力を放り出すなんてまずありえない。」
「ええ、彼が当家で力を奮ってくれる、それだけでどれだけ他家との差が付けられるか…」
「いくらこちらが彼を行き倒れから助けたと言っても重なった恩を考えると…」
「カトレアの件だけでもこちらの恩が勝つと言うのに、ルイズの事もある、それに…」
「彼が敵対勢力の味方になったとしたら…それだけで恐ろしい。」
「お母様でも勝てませんか?」
頷くカリーヌに頭を抱えるピエールとエレオノール。
そう、トリスティン最強と言われる烈風カリンその人ですら勝てないと確信させる程の圧力、それがシオンには有った。
「彼の事を知った馬鹿共に巻き込まれることも考えないといけなくなるとは…全くカトレアもとんでもない引きをしたものだ。」
「いっそカトレアかルイズを婚約させますか?カトレアに至っては年齢差も有るでしょうが、彼もカトレアを悪く思っていないと思います、ルイズも気が合うようですし、年齢も丁度いいですが…」
「私が入ってない理由は…「説明する理由要りますか?」ありません…」
婚約交渉、それも良いが、シオンが頷けばだ…等と全員が考えて頭を抱える。
彼は制御出来る様な人間ではない…それが三人の共通認識だった。
「彼が何を欲しがるか、それを聞いてからでもいいか。今この場で悩んでいても何も解決しないと思うのだが…」
「そうですね、彼にまず聞いてみる、それが可能な関係だと思います。」
「問題は彼がとんでもないモノを欲しがった時、それに応える事が出来るか…ですね。」
三人はまた頭を抱える、彼らに必要なモノは胃薬と頭痛薬かもしれない…
―――――
カトレアの部屋ではカトレア、ルイズ、シオンの三人がワイワイと会話している…シオンはカトレアに膝枕してもらっている。
「カトレアも明日には治療が終わるし、そしたらどうしようかねぇ…」
「このままウチに居ない?まだまだシオンから教わりたい事有るもの。」
「あらあら、ルイズはすっかりシオンがお気に入りね。」
シオンが居なくなって欲しくなく不安そうなルイズと、それを見てルイズが心を開けてほっこりし、ころころと笑うカトレア。
その二人の反応を見て考える様子を見せるシオン。
「んー、せっかく師匠から解放されたんだし、少しいろんな所見たいってのもあるんだよね。」
「解放?ちょっと前まで捕まってたの?」
「実験動物扱いで片手間に魔法とか錬金術とか色々教わってた。」
軽い感じで言うシオンに絶句する二人。
「ん?んーもしかして、重く考えてる?今はそうじゃないし、ある程度割り切ってるから気にしなくていいんだよ?」
「でも…」
「ま、恨んでる部分も有るけど、感謝してる部分もあるから、まぁいいんじゃない?」
「そう、それでもアナタは真っすぐなのね、シオン。頑張ったね。」
ルイズが泣きそうなのに対してカトレアは包み込むように頭を撫でる。
シオンはなすがまま、ルイズに笑いかける。
「ルイズも笑って欲しいな、せっかくの可愛い顔が台無しだよ?」
「うう…そんな事言われても私は誤魔化されないんだから‼」
「んー…こう言ったら良いって石の中の知識には書いてたんだけど、上手くいかないなぁ…」
「「石の中の知識?」」
「…あー説明してなかったか、まぁ二人には話しても良いか、カリスさん達に教えるかは任せるけど…」
そう言うと膝枕してもらっている頭と上半身を起こし、懐から赤い石を取り出す。
「起動」
シオンのその一言で青いモニターの様なモノが現れ、その中には無数の文字があった。
二人は目を丸くして見つめている。
「こいつは謂わば、古代の百万ページの索引無しの辞書ってとこかな、言語は統一されてないオマケ付きのね。」
「え?そんなモノ、使う事すら大変じゃない。」
「使いこなせる気がしない…もしかして使いこなせてるの?」
「まずこれを手に入れるのも大変なんだけど、一応中身の八割位はもう解読して理解して使えるかな。」
便利なんだぜ?なんて気楽に言うシオンに驚きを隠せない二人。
シオンは尚も続ける。
「古代の知識ってのが凄くてね、失われた技術の中には神の作り方なんか有るんだよねぇ。」
「神?ブリミル教が流布されている、ハルケギニアでは馴染みが無いの。」
「それでも世界を作った…と言うのは言われているから、凄いのは解る、けどその神を作る?」
シオンはそれを聞き、少し思案した後、気づいたかの様に手を叩く。
「あ、そっか、世界が違うから神に対する扱いが違うのか…なるほどね、言われないと気づかないや。」
「「世界が違う?」」
「そうそう、言ってなかったね、俺は別の世界から来たんだよ。」
二人の脳はもう飽和状態だった、そんな二人を見て彼は悪戯っ子の様に笑うのであった。