ヴァリエール公爵、ピエールは戦慄していた…始祖ブリミルはまだ試練を自分に課すのかと…
書斎の自分の机から水の秘薬を取り出し…
一気飲みした、二本も。
彼はルイズ、カトレアの二人が件の彼、シオンより聞いた賢者の石、そして異世界から来たという情報。
どちらを取っても公爵である自分に取っても手に余る。
古代の失われた知識を自在に手に入れる事が出来る?異世界の魔法を自在に使う事が出来る?
そんな事が出来るならこれまでのシオンの態度や行動に納得がいくが対応に困ると悩んでいる所にそんな爆弾は投げ込んでほしくなかった…と言うのがピエールの本音だった。
ルイズは凄いでしょ、と我が事の様に言わんばかりに胸を張っている…他の面子の表情が苦々しかったり悩まし気な表情で気づいて欲しかったピエールだが、まだ子供のルイズにそれを求めるのは酷か…と出てきた感情を切り捨てる。
「ふう…彼の扱いに関しては、カトレアとルイズの両方を婚約者として推薦する…そしてできれば家の子飼いの貴族の養子にする事で貴族籍を渡す…それを大前提とするので良いか?二人とも良いかね?」
「はい、お父様。私は元より私を助けてくれた人と結婚したいって思っていたので、願ったりです。」
「私とシオンが結婚…嬉しいけど私には婚約者のワルド様が…」
「それに関してはこちらで対処します、今は彼、シオンさんの立場が宙ぶらりんの方がいけません。」
「異世界の魔法…異世界の古代の知識…それを自在に操るメイジ…あー‼私はなんて勿体ない事を‼今すぐ少し前の自分をひっぱたきたい‼」
一人だけ感想が違うが、大体考える事は…シオンはヤバイ、扱いを間違えると全部吹っ飛ばす爆弾の様なモノだと言う事だった。
「エレオノールお姉様、シオンは気にしてなかったと思うし…それに聞いたら答えてくれると思うの。」
「おちび、ホント?嘘ついてない?」
「た、多分…」
「11歳年上でも良いって言ってくれそう?」
「そ、それは聞いてないからわかんない…」
「そこが一番大事なのよぉぉぉ‼」
本気で取りに言ってるエレオノールにドン引きのルイズ。
11歳上とかどんな若い燕だって話。カトレアの8歳上も…だが…
コンコン…とノックの音が響く。
「誰だね?」
「旦那様、お客人が話したい事が有ると言われ案内してまいりました。」
「おお、彼から来たのか、すぐに入ってもらいたい。」
「承知しました、シオン様…どうぞ。」
メイドがそう言うと同時に部屋に入ってくるシオン。
「どうも―、カトレアの様子だけ軽く見て寝ようと思ってね。」
「助かるよ、シオン君…それで…報酬に関してだが…」
「報酬?要らないけどね、助けられたから恩返ししただけだし。」
「それだけと言うにはこちらの恩が勝ちすぎていてね、いくら君が要らないと言っても、受け取って貰いたいんだ、何か欲しいモノは無いかね?」
「んー…なら少し滞在してても良い?薬売って旅しようと思うんだけど、その薬のストック作りたいし…後はカトレアとルイズの様子も見ときたいし。」
「そんな事で良いなら幾らでも居てくれて構わない、もっと欲しいものは無いのかな?」
「今は無いかな…ま、欲しいモノが出来たらお願いするかも。」
「ルイズとカトレアの様子ですか…何か問題でも?」
心配そうに問うカリーヌに安心させる様に笑みを見せ、シオンは頷く。
「一応俺は他人を診るのは初めてだから、手抜かりは無いと思うけど一応ね。」
「そうですか、必要な物が有ればいつでも言って下さい、二人に何かあれば事です。」
「一か月位…かな、此処に滞在するのは。」
「君に何も返せないのが悔しいよ…」
「俺の立場の事、考えてくれてたんだろ?師匠も言ってた、立場は人を変えるって。」
「君は…それでも、私達の庇護を受けるのは良しとしないのだね…」
「立場が無いと困るのはまだまだだって教わってね、悪いけど俺は俺の生きたい様に生きるさ。」
「そうか…」
沈痛な表情を浮かべる面々に笑いかけるシオン。
「そんな表情しないでくれよ、二度と会えない訳じゃない、たまには会いに来るさ。」
「でも…シオン…でもぉ…」
「一月後には笑って送り出してくれよ?君にはそんな表情似合わないよ、ルイズ。」
「それだけ、アナタがしてくれた事は大きかったのよ、シオン。」
「俺にとっちゃ恩返しただけなんだけどな。」
「なら、これも受け取ってくれないかしら?」
「?」
キョトンとするシオンとカトレアの顔が重なる。
「「「「⁉」」」」
「私、こういう経験無かったから上手く出来たかしら?」
「???なんで???」
「ふふ、アナタが悪いんだからね、シオン…何も欲しがらないから…ね?」
「ちい姉さま、ズルい、私も‼ねぇシオン、私ともしましょう‼」
「…頭の処理が追い付かねぇ…」
クスクスと笑うカトレアと、自分も同じことをしたいと強請るルイズ。
シオンの頭は一杯一杯だった、さっきまで飽和させた二人に飽和させられると言う、二人の思わぬカウンターパンチが決まった瞬間だった。
「思ったより、彼は嫌がっていない様子…もしかしたら婚約の件も…」
「お母様、二人には一か月で彼を落としてもらわないと…」
「二人とも、彼の意思が一番だと思うのだが…確かに上手くいって欲しいが…」
「ですので彼を落としてもらうのです、お父様。」
あたふたするシオンを見て、三人は押せば行けるんじゃないかと考え始めるのであった…
最初はさっさとシオンが欲しがる中にカトレアとルイズ入れようとしたんですがね、なんか違う、って思ったんで変えました、どっちの方が読者の皆さんは読みたかったですかね?