早いモノでカトレアの治療、そしてルイズの治療から一年経っていた…経っていたんだ。
気付いたらヴァリエール家に滞在し続けていた。
最初のきっかけは、俺は気にしてなかったけど、エレオノールと仲直り?みたいな事をして、それから魔法について語ったりしていた。
それを見たルイズが「シオンとずっと話すのはズルいわ、エレオノールお姉様…シオン私ともお話しましょ‼」なんて言って話をせがんできたり…
夜は一緒に寝ましょう、だなんてカトレアとルイズと一緒に寝ながらお互いの世界の話とかを寝物語に話したりしていた。
そんな俺が旅に出ようとするとルイズが泣きそうになるので中々旅に出れなかったんだ。
それも今日でお終いにしないとな…
―――――
ヴァリエール家の朝食の場において。
「そろそろ、旅に出たいと思う。」
「そうか…わかった、引き留めてすまなかったね。」
ピエールは元々こうなるのが仕方ないと思っていた為に、否定しない。
「家の娘達が聞き分けなかったですからね、良くも一年も居てくれたものです、ありがとう、シオンさん。」
これまで、娘達、そして自分達の力になってくれた事に敬意を表するカリーヌ。
「そう…まだあなたから聞きたい事有ったんだけどね…」
しおらしくなり、この状態で常に居てくれるなら婚約破談などなくなるであろう、エレオノール。
「シオン…行っちゃうの?ここに居ても良いのよ?いや、私は残って欲しいわ。」
カトレアは我儘だとわかりつつも、お願いをする、彼には救われた、そして、そんな恋した彼には行って欲しくないのが彼女の本音だった。
「ホントに…出てっちゃうの?私、まだまだシオンと居たい、アナタと一緒に過ごしたいの。」
眼に雫を浮かべ、泣きそうになっているルイズ、その瞳にはシオンが居なかった日々それが思い起こされていた。
「カトレアとルイズには悪いけど、今回は本当に出るから、一年も居て、ヴァリエール家の人たちとも仲良くなれた、でも…俺は外を見たい、旅をしたいんだ。」
「うう…」
「ルイズ、泣かないでよ、湿っぽく送り出されるより笑って送り出されたいさ。」
「シオン…だってぇ…シオンが居ない人生なんて…」
「俺だって寂しいさ、けど…外を見たい…この気持ちは誤魔化せないんだ。」
そう言うシオンに助け船を出すピエールとカリーヌ。
「ふむ…ではシオン君、君とルイズ、カトレアの二人の婚約を認めてくれないかね?君が帰ってくると言うなら二人も納得するだろう。」
「婚約…かぁ、でも俺貴族じゃないよ?そんな俺が急に貴族令嬢の二人と婚約って無理じゃない?」
「不可能では無いのです、裏技の様なモノですが、手はありますよ、シオンさん。」
「お父様、シオンも困ってます、それに婚約でしたら私が…」
「お黙りなさいエレオノール、アナタは目の前の縁談をどうにかしなさい。」
「ぐう…」
ちゃっかり婚約者の枠に入ろうとするエレオノールだったが、カリーヌは甘く無かった。
「婚約…?シオンと?」
「嫌かね?ルイズ?」
「そんな事無い、とても嬉しいわ、お父様。けど私はワルド様と婚約が。」
「その事は上手く向こうに話しておくとしよう、ルイズが嫌だと言うなら、カトレアのみになるが…カトレアは断るかい?」
「お父様、私が婚約したいのは、このハルケギニア中探してもシオン以外いませんよ。」
「お父様、そういう事なら私も、シオンと婚約したいです‼」
「そうか…どうかね、シオン君?二人は嫌いかね?」
そう言われると嫌いと言えないシオンは少し頬を膨らませ、大人のズルさにせめてもの反抗しながら答える。
「そういう所、ズルいよ…大人のズルさってのは嫌いだけど…ルイズとカトレアは嫌いじゃない。」
ルイズとカトレアの表情が花のように明るくなる。
そんな二人を見ながらピエールは笑い、シオンにアドバイスをする様に語り掛ける。
「大人はズルいんだ、そして貴族はもっとズルを使う、だから騙されたりしない様にね。」
「そう言ってる人がズルしてるじゃん。」
「可愛い二人の娘と婚約するんだ、これ位のズルはさせてもらわないとね。」
「…わかったよ、たまには帰ってくる。」
「それでいい、そう言えば、ルイズは15になったら学院に通うが、シオン君、君はどうする?」
「学院かぁ…正直学べる事有るの?って思ってるんだけど。魔法単品で考えれば俺が使ってる方が使えるのはこないだエレオノールと話して解ったし。」
「そうね、魔法に関してはシオンの居た世界の方が優れた魔法を使っていたのは確実ね。」
「こういうのは集団生活をする…というのが大事なのですよ、それに人脈は作っておいて損はないです。」
「むう…」
カリーヌからも援護射撃が飛んできて悩むシオン。
「シオン、私と学院行きたくないの…?」
上目遣いで聞いてくるルイズにシオンは降参するしかなかった。
「わかったよ、俺も学院に行く、と言っても四年後か、それまではのんびり旅しながら、たまにここに帰ってくる…それでいいかい?」
「うん‼」
どんな恐ろしい化け物だろうと…神だろうと反逆する彼はルイズの涙には弱いのであった。
―――――
時間は少し経ってピエールの書斎にて、出る前の最終確認をしていた。
部屋にはシオンとピエールのみ。
「君が売る薬の価格や、売る薬の品質に関してだが…」
「あーそれに関してはエレオノールが協力してくれたから大体の価格は決めた、不老不死の薬は売るのは辞めとく、結構金になりそうだったんだけどね。」
「君の規格外さには本当に驚かされるよ、しかし不老不死と言うモノは恐ろしいのでね…」
「ま、薬作りの腕が鈍るから作るだけ作っとく用にするよ、ヴァリエール家の皆さんは要らないの?」
「要らないな、老いを楽しむのも大事な事だよ。」
「そっか。」
「もしも…君が不老不死になるとしたら…二人はどうするつもりだい?」
「俺が不老不死になるのは確定だから…その時に二人に聞くかな、別にそれで置いていく…とかはするつもりじゃないけど。」
「そうか…君は二人の意見を尊重してくれるのだね…」
「当たり前じゃん、自分の嫁さんにちゃんと相談しないのは仲悪くなる原因だって、教えてくれたのはピエールさんじゃん。」
「ふふ…今は名前で構わないけれど、いつかお義父さんと呼んで欲しいものだね。」
「そのうち、気が向いたらね、それじゃぁ…行くよ。」
「寂しくなるね、でもまた会おう。」
そう言ってシオンは書斎から立ち去り…ヴァリエール家の屋敷から去るのだった。
窓から立ち去るシオンを見つめているルイズは泣いていた、シオンには伝えることは伝えた…だから、この涙で泣くのは最後にしよう…
次シオンが来た時は立派なレディになって迎えよう、そう誓うルイズだった。
そんなルイズを見て彼女の成長に喜びながら頭を撫でるカトレア。
「「またね、シオン。」」
彼女たちと彼が会うのはそこまで遠くないのであった。
次回から、ゲルマニア編入ります。