賭けに掛けるは幾星霜 作:とくめーきぼーでーす
作品への感想、ミスのご指摘などどしどし送っていただけると幸いです。
俺が通っている学園、『星霜高校』には、
特別なルールが存在する。
それは、入学したら卒業か退学まで外に出られないということと、入学時に仮想通貨として百万円相当の学内専用通貨が渡され、それを卒業時現金として交換できるというルールだ。
学内通貨は基本『チップ』と呼ばれ、学内にあるさまざまな施設で使うことができる。
コンビニ、ファミレス、カラオケ、映画館など、学内にある施設は多岐にわたる。
その中には、いわゆる賭け…ギャンブルを行うことができる施設もある。
チップという名前からわかるように、チップは学内でギャンブルに使われているというわけだ。
それだけならわからなくは無いが、この学園がおかしいのはここからだ。
ギャンブル以外でチップが増えない。
入学時に渡されるのは百万円相当のチップだ。
それだけで三年間の生活を賄えるだろうか。
いや、よほどの倹約家でなければ寮の家賃と生活費で百万円をどこかで使い切るだろう。
つまりこの学園では、ギャンブルをしなければ生活ができなくなってしまうということだ。
それだけにとどまらず、学園ではギャンブルの授業やギャンブルの補修まである。
三年間ギャンブルを学ばされるわけだ。
わざわざこの学校に入った奴に、ギャンブル嫌いはほぼ居ない。
故に、学園中が勝った負けたで大騒ぎしている…そんな救えないところっつーわけだ。
そして今、俺はまた一戦を終えた所だった。
「はぁ、また負けかよ」
「当たり前でしょ。
ブラックジャックで20なのにダブルダウンする馬鹿がどこにいるのよ」
「ここだけど?」
「あっそ。
人のアドバイスは聞いたほうがいいわよ」
そう、俺はクソザコだった。
いや、頭を使うゲームは得意なんだ。
ただ、、、
ギャンブルしてると99%の当たりより1%の大当たりを求めてしまうというだけだ。
結果、ハズレを引く。
俺はそういう人間だ。
もう残りのチップは三千円分ぐらいしかない。
楽に稼げるバイトとかねーかなー。
うげっ。
つーか一ヶ月で十万スったら補修だっけ。
やばいじゃん。
もうすぐ、つーか明日から五月だぞ。
はあ、補修嫌だな。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
四月:所持金ランキング
・・・
・・・
・・・
補修ライン…………………………………………
500位 ・・・
・・・
600位 黒鉄 樹 3,000
五月、俺が学園に来ると、所持金ランキングなるものが廊下に貼られていた。
順位が低いことは覚悟していたが、流石に最下位とは思わなかった。
-ピンポンパンポーン-
校内放送の音がする。
「補修対象になった人たちは、全員14時までに学生証を持って体育館に集合してください」
-ピンポンパンポーン-
今は、、12時か。
飯食べたら体育館行くか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
体育館の扉を押し開ける。
そこには、スクリーンのようなものに補修内容が映し出されていた。
⭐︎補修要項⭐︎ーーーーーーーーーーーーーーー
補修は毎月初めの所持金ランキングのワースト100の生徒の義務だよ。
そこから抜け出せれば補修は受けなくてOK。
ここからが本題だよ。
君たちは、言っちゃ悪いが、あまりにも賭けに弱いか、運がめちゃくちゃ悪い。
そんな君たちの為に、少しでも賭けに勝ちやすくする為、思考力上昇の試験を考えたよ。
その名も、『革命将棋』
ルールは電子生徒手帳に書いてあるよ⭐︎ーーー
俺は電子生徒手帳を開く。
『革命将棋 ルール概要』
1,駒は設定された方向に動かすことができる。
2,駒と駒が重なればその駒を取ることができる。
3,駒は相手側の陣地の端から三列目に入ると強制的に成る。
4,王将を取れば勝利。
5,相手の駒を取るたびにチップ加算。
6,駒が取られればチップ減少。
7,自分の駒が少なくなるたび、革命ポイントの加算。
8,革命ポイントを使えば一ターンの行動回数が増える。(一回目のターン増加2ポイント、二回目4ポイント、三回目6ポイント…)
9,勝利すれば加算ポイント2倍。
(敗北しても+分のポイントは加算)
※将棋で反則の行為は行うことができません。
「……は? 将棋で革命ってなんだよ」
革命ならチェスの方がいいだろう、という意味の発言だったのだが、隣に座っていた同じ補修組らしい女子が、溜息を吐き言った。
「つまり、勝てばチップが貰えて、負けたらますます底辺ってことよ」
「救済じゃなくて追撃じゃねえか」
俺は初対面の人間に『いや、そうじゃなくて』とかいう“否定から入るムーブ”をできる度胸はないので、途轍もない馬鹿みたいになってしまった。
きっと、彼女には俺のことなど所持金最下位のカスとでも思われていることだろう。
会場には百人近くが集まっていた。皆、俺と同じように所持金ランキングの底辺組。ざわめきと緊張が入り混じった空気の中、スクリーンに名前が映し出されていく。
【第一回戦 黒鉄 樹 VS 西園寺 隆二】
「……マジか、初戦からかよ」
対戦台に座ると、向かいには明るい茶髪の男子が座った。表情は涼しく、目が鋭い。
「へえ、君が黒鉄? 最下位の」
「……悪かったな」
お前もこの中にいるんだから下位じゃないか、
その言葉を飲み込んで言った。
開始の合図と共に、独特の電子将棋盤が光を放つ。
駒がホログラムで浮かび上がり、掴んだ駒の進行方向へと矢印が伸びた。
将棋をやったことはない。
ルール説明によってある程度は理解したが、それでも定石などは何も知らない。
一つ一つの駒を掴み、進める場所を確かめる。
とりあえず、今動かせるのは歩だけか。
俺は歩を掴んで、前に進める。
「……へえ」
茶髪は微笑み、次の瞬間彼は迷わず歩を掴んで前に進めた。
茶髪は、ただ俺を冷たく見つめていた。
ターンが進んでいき、俺の目の前で相手の歩が俺の歩を飲み込み、チップのカウントが相手側で変化した。
【西園寺 +500ポイント】
「……っ」
同時にこちらのポイントは同じ分だけ減る。
500ポイント。
相手が取ったのは、最も弱い『歩』だ。
それで500ポイントということは…。
一歩間違えれば、勝敗の前に金がなくなる。
「さて、次はどうする?」
茶髪が余裕そうに微笑む。俺は深呼吸して盤面を見下ろす。
とにかく、前に駒を進めよう。
俺ができたのは、そんな悪あがきだけだった。
意外にも茶髪は駒をあまり取らなかった。
だが、それは茶髪の戦略だった。
革命ポイント。
このゲームの中枢であろう要素。
行動回数増加というあまりに大きいメリット。
きっと、弱者が逆転する為の要素だったのだろう。
だが、相手が駒をほぼ取らなければ、革命ポイントもたまらない。
もちろんそれでは相当の実力差がなければ通用しない。
だが、茶髪は俺より圧倒的に強かった。
「はぁ。
いくら最下位とはいえ、あまりにひどすぎないかい?」
茶髪ががっかりしたように言い放つ。
そんなことはわかってる。
でも、どうすればいいってんだよ。
何か策はないのか?
ルール概要を見ながら思案していると、なんだか違和感を感じた。
考えすぎかもしれない。
だが、博打をするなら今しかなかった。
(駒が重なれば駒を取れる……?)
いや、でも。
これではポイントが減ってしまう。
こんな賭けなんて、楽しく…
…。
そうやって、また負けるのか?
俺は…それでいいのか。
俺は。
自分の飛車を掴み、意図的に自分の歩にぶつけた。
【自駒撃破!革命ポイント +1】
【黒鉄 -500ポイント】
「……は?」
周囲がざわつく。
「なんで自分の駒が…?」
そうだ。将棋のルール説明をそのままするのに、『駒が重なれば駒を取れる』と言うのはあまりに回りくどい。
そこに、違和感を覚えた。
後ろで見ていた補修組の女子が困惑混じりの声を出す。
俺は無視して盤面に集中した。
自駒を減らせば革命ポイントが溜まる。
そして、革命ポイントが貯まれば、行動回数で一気に畳み掛けられる…!
「……なるほどね。
ルールにあるのは『駒が駒に重なれば取ることができる』という言葉だけ。
自軍の駒を取っちゃいけないとは誰も言っていないわけか。」
茶髪が初めて楽しそうな表情を見せた。
次のターン、彼は俺のもう一枚の歩を取り、通貨を稼ぐ。
俺はさらに自分の香車を犠牲にし、革命ポイントを稼いでいく。
【革命ポイント +1】
【黒鉄 -1000ポイント】
ホログラムの盤面が一瞬だけ赤く光った。
【革命ポイントが一定値に達しました】
【追加行動+1が可能です】
盤面上に赤く輝くアイコンが浮かんだ。周囲のざわつきが一層大きくなる。
「……おい、アイツ、まさか…!」
俺は深呼吸し、ホログラムに指先を伸ばす。追加行動のアイコンをタップすると、駒を動かせる手がもう一度訪れた。
「ここだ……!」
自分の角を前に進め、相手の歩を撃破。
【黒鉄 +500ポイント】
「……へえ、やるじゃん」
茶髪が俺を見て笑う。その目が少しだけ、さっきより真剣味を帯びていた。
「だけどさあ、僕もそろそろ本気で行かせてもらうよ…!」
次の瞬間、相手の銀が滑るように進み、俺の角を仕留めた。
【黒鉄 -1000ポイント】
「っ……!」
茶髪は、もう駒を取らないなんて油断はしないだろう。
いや、油断ではなく、あの時の俺には最適解だったのだろうが、とにかくこれから茶髪は駒を取ってくる。
俺のポイントが減り、心臓が跳ねた。
自分の駒を取ったことによるポイント減少と合わさり、マイナス分のポイントはもう俺のチップを上回りかけている。
だが同時に、革命ポイントがまた一つ増えた。
【革命ポイント +1】
盤面が再び赤く光る。
追加行動を使うチャンスだ。
俺はすぐに操作し、自分の銀を――自分の飛車にぶつけた。
【自駒撃破!革命ポイント +1】
盤面が赤く点滅し、革命ポイントのゲージが限界に達した。
【行動回数+2】
「……よしっ!」
俺はガッツポーズをした。
次の瞬間、ホログラムに赤い矢印が無数に浮かび、俺に許された三連続の行動チャンスが訪れる。
一手目、俺は飛車を前に走らせ、相手の銀を撃破。
【黒鉄 +500ポイント】
二手目、直前に開いたスペースから飛車をさらに左へ。
【黒鉄 +1000ポイント】
三手目、革命ボーナスの連続行動によりこじ開けたスペースに飛車を捩じ込む。
茶髪が僅かに動揺したのがわかった。
「いっけぇぇぇぇ!!」
俺は自らの飛車を王将に重ねる。
【黒鉄 +5000ポイント】
【通貨倍率ボーナス】
【総獲得通貨:+9,000】
会場がざわめきに包まれる。補修組の生徒たちが口々に叫んだ。
「うそだろ……! 最下位が一回戦で王将取り!?」
「序盤馬鹿だったのに!?」
スクリーンに【黒鉄 樹 WIN】の文字が映し出される。俺のチップは一気に1万2,000に跳ね上がっていた。
「……ははっ、やるじゃん」
西園寺は苦笑しながら立ち上がった。
「でも、ここからが本番だぜ。
まず君はスタートラインが他より遅れてるしね。」
第二回戦の対戦カードがスクリーンに映し出される。
【第二回戦 黒鉄 樹 VS 神威 真琴】
まさかの二連続…
「……次は誰だ?」
名前を見上げると、観客席の一角がざわめいた。
その中心から、長い黒髪を揺らしながら女子生徒が歩いてくる。
制服はきっちり着こなし、瞳は氷のように冷たい。俺の前の席に静かに腰を下ろした。
「黒鉄くん、ね。さっきの試合、全部見てたわ」
「……へえ、感想は?」
「面白い。それに……危うい」
開始の合図とともに、ホログラムの将棋盤が再び光を放つ。周囲の空気が一気に張り詰める。神威の指先が、まるで舞うように初手の歩を進めた。
(……速い)
さっきの西園寺とは違う。迷いが一切ないし、こちらの次の手まで読んでいるような鋭さを感じる。
俺は深呼吸し、先ほどと同じように自駒を犠牲にして革命ポイントを溜めにかかろうとした。だが、神威の駒が一手動くごとに盤面が狭まり、俺の計算を潰す。
「……く、俺の飛車が……」
「革命狙いは悪くないけど、予測されると弱いわよ」
神威は淡々と駒を進め、俺が革命ポイントを稼ぐたびに、逆に行動の余地を削っていく。
まるで、俺の策略を試しているかのようだった。
そのときだった――
【革命ポイントが一定値に達しました】
【追加行動+2が可能です】
「よし……ここからだ!」
俺は自分の桂馬を動かし、相手の守りの隙間を探す。だが次の瞬間――
「確かに、このゲームは革命ポイント狙いで行ったほうが明らかに有利よ。
最下位でそれに気づいたのは褒めてあげる。
でもね、必勝法をただなぞるだけで勝てるゲームなんて殆どないのよ。
この学園でそんな楽なゲームができると思わないことね」
真琴の指先がふわりと動き、俺の飛車を追い詰めるように角が滑り込む。
【黒鉄 -1,000ポイント】
「っ……!」
またチップが減り、革命ポイントは+1される。だが、盤面の状況は確実に不利だ。
「手順は面白いけど、穴も多いわね」
真琴が静かに言い放つ。その言葉に、自然と額に汗が滲む。
(このままじゃ潰される……!)
俺は追加行動を発動し、二連続の駒操作を試みた。
まずは自駒の桂馬を犠牲にし、革命ポイントをさらに稼ぐ。
そして次の手で飛車を横に逃がし、相手の防衛線に圧を掛ける——が。
「読んでた」
真琴の歩が一段前に進んだ瞬間、俺の飛車は完全に袋小路に追い込まれた。追加行動も潰され、盤面は赤く警告を放つ。
【王手】
「くっ……!」
周囲が息を呑む中、真琴は表情一つ変えず言葉を続ける。
「革命で勝ち上がるのは確かに賢い。でも、私がここにいる時点で、その戦法は通用しないの」
いくら負けの確率が高かろうと、俺は諦めたくない。
必死に思考を巡らせる。
(……まだだ。このルールの本質は『自分の駒も取れる』こと。それはつまり——)
俺は意を決して、盤面右隅の自分の香車を飛車にぶつけ、自駒を消した。
【自駒撃破!革命ポイント +1】
盤面が赤く明滅する。
【革命ポイントが最大値に達しました】
【行動回数+3】
俺は三連続の行動で、一手目に飛車を犠牲に囮にし、二手目でその後ろに潜んでいた角を解放。そして三手目、盤面左側から迂回させていたもう一枚の桂馬が、奇跡のルートで真琴の王将に迫る!
「焦ったわね?」
届…かない!
「3,駒は相手側の陣地の端から三列目に入ると『強制的に』成る。
ルールの穴は一つじゃない。
普通の将棋とは違うと気づいた時点で、あなたはこのルールに気づかなければならなかった。」
相手の陣地に入った時点で桂馬が成桂になり、
王将の一歩前で止まる。
「見ていて分かる。
貴方は、賭けに向いていない人間よ」
「それは順位を見れば誰でも分かるだろうが…」
「そうじゃない。
まあ、今の貴方にこれ以上言っても仕方ないでしょう」
俺は歯を噛み締めながら盤面を睨んだ。
桂馬は王将に迫っていたが、あと一歩届かない。
追加行動の権利も使い果たした。
盤面は静まり返り、周囲の声も聞こえなくなるほど集中していた。
「――チェックメイトね」
神威の指先がピクリと動く。角が鋭角に滑り込み、俺の王将に狙いを定めた。
【王手】
一気に心臓が跳ねる。逃げ道は……ない。自分の駒を犠牲にした結果、防衛網はスカスカだ。
「これで終わり」
次の瞬間、真琴の銀が俺の王将を捉えた。
【王将撃破】
【敗北】
【総獲得通貨 -3000】
ホログラムの光が消え、スクリーンに【黒鉄 樹 LOSE】の文字が浮かぶ。
会場の空気が一気に冷えたように感じた。
「……ははっ……」
思わず笑いが漏れる。
負けは負けだが、不思議と悔しさよりも達成感があった。
最後まで全力で賭け、あの瞬間だけは流れを掴めていたのだから。
真琴は静かに席を立ち、俺を一瞥する。
「あなた、悪くはなかったわ。次に会うときまでに、もっと研ぎ澄ましてきなさい」
そのまま背を向け、彼女は歩き去った。
観客たちはざわめきながらも、俺に向けて小さく拍手を送る者もいた。
スクリーンに次のカードが映し出される中、俺は一人、盤面を見下ろす。
(……まだ終わりじゃない)
チップは減ったが、コツは掴んだ。
次のチャンスで必ず――勝ち上がる。
そして、俺は静かに深呼吸をした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
体育館を出ると、夕陽が差し込んでいた。
補修組の生徒たちの何人かが俺の方を見て、ひそひそと話している。
「……黒鉄、次は勝てよ」
誰かが小さくそう呟いた。
俺は拳を握りしめ、心の中で誓った。
次こそは、絶対勝ってやる…!
こんなの、柄じゃないってわかってる。
でも、悔しい。
こんなの初めてだ。
負けたはずなのに、楽しくて。
でも、今までで一番悔しかった。
体育館を後にした俺は、学園の中庭に足を運んだ。
夕陽に照らされた校舎が赤く染まり、風が心地よく頬を撫でる。
ポケットの中には、減った学内通貨の残高が表示された電子生徒手帳。
数字は9,000円。負けたとはいえ、初期よりはまだ多い。
「……はぁ」
思わず、ため息が漏れる。だがその表情は、以前よりも晴れやかだった。
馬鹿みたいなギャンブル以外がこんなの楽しいと思えたのは初めてだった。
負けたのに、胸が熱くなるような感覚が残っている。
ふと、背後から声がした。
「黒鉄くん」
振り向くと、そこには補修組で隣に座っていた女子が立っていた。
淡い栗色の髪を少し結んでいて、さっきは俺をバカにしていた顔が、少しだけ和らいでいる。
「さっきの試合、見てた。
……まあ、負けたけど、最後まで粘ったのはちょっと見直したかも」
「お、おう……ありがとう」
彼女は少し頬を染めながら、手元の生徒手帳を見せてきた。
「私も一回戦で負けたけど、次は……一緒に勝ち上がろうよ」
「……ああ」
その瞬間、胸の奥に新しい火が灯るような気がした。
俺はもう、ただのクソザコじゃない。
賭けに勝つための道筋を、自分の手で掴んだんだ。
夕陽の下で拳を握りしめ、俺は小さく呟く。
「次こそは、絶対に勝つ」
その決意と共に、俺のギャンブル学園での物語は、ようやく始まったのだ。