ポケットモンスター サイクルを極めし転生者 作:Notebook119
「……ポケモンバトルって、こんな感じなのか。」
少年は呆然としていた。
目の前では、二人のトレーナーが戦っている。
「いけ! 一気に決めろ!」
「耐えろ! 反撃だ!」
ヘルガーとカメールのバトル。
圧倒的ヘルガー不利対面。
互いに技をぶつけ合う。
迫力はある。
間違いなく、ポケモンバトルだ。
だが。
神崎レンには、一つだけ気になることがあった。
「……誰も交代しない。」
レンは腕を組む。
相手の有利な技を受け続ける。
不利対面でも突っ込む。
一体のポケモンに全てを託す。
それが、この世界の常識だった。
しかし。
レンは知っている。
前世で何千回も戦った。
勝つための方法を。
「ポケモンは6匹まで持てるんだぞ…。」
「なぜ1匹だけで戦おうとする?」
レンがこの世界に転生してから、半年。
彼は確信していた。
この世界には、まだ存在していない戦術がある。
サイクル戦。
有利なポケモンを出す。
不利なら引く。
相手の交代先を読む。
少しずつ削る。
最後にエースを通す。
地味。
派手ではない。
だが、勝率という一点において、これほど強い戦い方はない。
「……いた。」
ポケモン研究所の砂漠エリア。
レンは一匹のポケモンを見つけた。
小さな体。
短い足。
まだ幼いヒポポタス。
一般的なトレーナーなら、素通りするかもしれない。
派手な技を持つわけでもない。
素早いわけでもない。
進化前だから能力も低い。
しかし。
レンは目を細めた。
「君だ。」
ヒポポタスが警戒する。
レンはゆっくりしゃがむ。
「君には才能がある。」
「今はまだ弱い。」
「でも……完成した時、君は相手の勝ち筋を破壊できる。」
ヒポポタスは首を傾げる。
普通なら意味が分からない言葉。
でもレンには見えていた。
進化後。
カバルドン。
高い耐久。
優秀な特性。
ステルスロック。
あくび。
砂による盤面制圧。
何より。
「相手に選択を迫る力」
それこそ、レンが求めるものだった。
同じくポケモンを受け取りに来ていた新米トレーナーからが不思議そうにレンに問う。
そんな周りの反応もレンは歯牙にもかけない。
「強そうだから選ぶんじゃあないよ。」
「勝つために必要だから選ぶんだ。」
最初のバトル。
相手は炎タイプのガーディ。
「ヒポポタスじゃ勝てないだろ!」
タイプ上は有利なヒポポタスだが、明らかにスピードタイプのポケモンが相手。
この世界の常識だと攻撃なんて当たりっこないと誰もが思うだろう。
だが、ヒポポタスが場に出ただけで砂が舞う。
特性すなおこしだ。
「何をしているんだ?」
相手は困惑する。
レンは答えない。前世から変わらないサイクル戦の第一歩。
まずは盤面を作る。
ガーディがたいあたり。
ヒポポタスは耐える。
そして、
「なきごえ。」
攻撃を下げる。
また耐える。
相手が徐々に焦れてくる。
「なんで倒れないんだ!?」
レンは静かに言う。
「勝負は一撃で決めるものじゃない。」
「有利な状況を積み重ねるものだ。」
旅の途中、ヒポポタスは何度も敗北する。
速いポケモンには翻弄される。
強力な技には吹き飛ばされる。
周囲からは散々な言われようだ。
「そんなポケモンで大会を目指すのか?」
「もっと攻撃力のあるポケモンを使えばいいのに」
しかしレンは知っている。
今は未完成なだけ。
この子がいつか――
カバルドンになった時。
この世界のトレーナー達は初めて知る。
「倒せない」という恐怖を。
そして進化の日。
ヒポポタスの体が光る。
レンは静かに笑う。
「やっと来たな」
進化した姿。カバルドン。
砂を巻き上げながら、大地に立つ。
レンは確信する。
「これで俺のサイクルの始点が完成した。」