ポケットモンスター サイクルを極めし転生者 作:Notebook119
森の中。
風が切れる音がした。
「……速い」
レンは足を止める。
目の前を横切った影。
緑色の身体。
鋭い鎌。
そして、圧倒的な瞬発力。
「ストライク」
ヒポポタスが警戒する。
だが、レンは興味深そうに観察していた。
「なるほど」
「能力は高い」
「でも……」
レンはすぐに気付いた。
数分後。
ストライクは野生ポケモンと戦っていた。
速い。
強い。
攻撃力も高い。
相手の攻撃をかわし、一撃で倒す。
普通のトレーナーなら歓声を上げるだろう。
「すごい!」
「最強のアタッカーになれる!」
しかし。
レンは違った。
「……危ないな」
ストライクは勝った。
しかし。
相手の攻撃を無理に受けている。
避けられる攻撃も、正面から受けている。
理由は簡単。
「自分が倒せばいい」
そう思っているから。
レンは前世で何度も見てきた。
強いポケモンほど陥る罠。
火力への過信。
自分一匹で全部解決しようとすること。
「君は強い」
レンが言う。
ストライクが振り返る。
「でも」
「その戦い方だと、いつか負ける」
ストライクは怒った。
自分は弱くない。
この森で負けたことなどほとんどない。
鎌を構える。
レンに挑む。
「……やっぱりそうなるか」
「ヒポポタス」
ヒポポタスの戦意に呼応して、辺りに砂嵐が舞い始める。
戦闘開始。
ストライクが一瞬で距離を詰める。
速い。
ヒポポタスでは追いつけない。
「れんぞくぎり!」
鋭い攻撃。
しかし。
「耐える」
ヒポポタスは踏ん張る。
ストライクは驚く。
普通なら怯む一撃。
それを受け切った。
「ステルスロック」
レンはまだ攻撃しない。
ストライクは焦る。
「なぜ攻撃しない?」
そう言いたげな目。
レンは淡々と答える。
「勝つ準備をしているだけだ」
次の瞬間。
ストライクが再び攻撃。
しかし。
「ロトム」
「交代」
ウォッシュロトムが現れる。
ストライクの攻撃を受け流す。
「な……」
ストライクは困惑する。
さっきまで戦っていた相手が消えた。
レンは説明する。
「相性が悪いなら下げる」
「それだけだ」
「でも、それは逃げじゃない」
ストライクが突撃する。
ロトムは攻撃。
「ボルトチェンジ」
電撃。
そしてロトムがボールへ戻る。
ヒポポタスが出る。
ストライクは初めて理解する。
このトレーナーは。
自分を倒そうとしていない。
戦場そのものを操っている。
「もう一度」
レンは言う。
「今度は君の番だ」
「とんぼがえりを使え」
ストライクが首を傾げる。
「攻撃して逃げる技」
そう思われている技。
この世界では評価が低かった。
一撃で倒せない。
相手を倒す技ではない。
だから弱い技だと思われていた。
レンは続ける。
「違う」
「とんぼがえりは逃げる技じゃない」
「次に勝つための技だ」
ストライクが動く。
鋭い爪で攻撃。
そしてそのまま森へ下がる。
レンは笑った。
「そうだ」
「今の動きだ」
ストライクは気付いた。
自分の速さは相手を倒すためだけではない。
有利な仲間へ繋ぐためにも使える。
戦いが終わった後、ストライクはレンを見る。
最初は思っていた。
自分より強いポケモンを使うだけの人間だと。
しかし違った。
この人間は自分の強さを理解している。
そして、もっと強くなる道を示してくれる。
「……一緒に来るか?」
レンがボールを差し出す。
ストライクは少し迷う。
そしてボールに触れる。
こうしてレンの構築に新たな駒が加わった。
夜、レンはノートを書き込む。
「進化後」
その欄には。
ハッサムと記されていた。
「鋼の耐性」
「テクニシャン」
「インファイト」
「バレットパンチ」
「とんぼがえり」
「つるぎのまい」
まだ先の話。
でもレンには見えている。
このストライクがいつか相手の攻撃を受けながら、
戦場を支配する鋼の戦士になる未来が。