ケイオス・ラベル -異世界冒険譚(偽)-   作:らいとそると

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第5話 暗闇の中で

『どうして──なぜ──』

『消滅させ──世界の均衡──』

『──!どうか!どうかあの子を──』

『無理だ!──!』

『お願いします!──あの子を救う──けてみせます!』

『な───?』

『あの子は、私達の愛だから──』

 

──光と、闇が、何かを、話していた……。

 

 

 

「う……ん……?」

 

 ゆっくりと、視界が広がっていくが、暗くて何も見えてこない。

 ガタガタと地面が揺れて体が痛い。

 

「ここは……そ、そうだ!俺は……ウィステリア!」

 

 意識がようやくはっきりとし、何があったのか思いだした。

 俺は、あの緑の男に返り討ちにあって気絶させられた。

 問題はその後だ。

 

 ウィステリアは?村はどうなったんだ?俺は──。

 

「神様、起きられましたか……?」

「ウィステリア……?」

 

 暗闇から、ウィステリアの声がした。

 声のした方へ動こうとして──そこで、俺はようやく自分の状態に気付いた。

 両手に木製の枷が付けられ、首には金属の首輪が付けられていた。

 ……どう見ても、囚われてしまっている。

 

 ガタガタという音と振動、地面や周りは、感触から木製っぽい感じ……ここは、木箱の中で、運ばれている?

 窓にあたるものが無いせいで、真っ暗なのか。

 

「ウィステリア……何があったのか教えてくれるか?」

 

 正直、聞くのが怖かった。

 だけど……聞かないといけない……聞かないわけにはいかない。

 

「はい……神様が気を失われた後、集落は滅びました……。老人や抵抗した人達は皆殺され、大人しく降参した者は囚われ、枷を付けられて馬車へ乗せられました……」

「……そうか……」

「わたしと神様は特別だって言われて、他の人たちとは別の馬車に……」

「それじゃ、ここには俺達だけなのか」

「はい……」

 

 結局、俺は何も出来なかった。

 村は滅ぼされ、ウィステリアを逃がす事も出来ず、俺自身囚われの身だ。

 

「ごめん……ウィステリア、俺は──」

「神様、わたしは悪い子です」

「え?」

 

 ウィステリアの、今まで聞いたことのないハッキリとした声に戸惑う。

 

「目の前で長が刺された時も、皆が殺されている時も、わたし……いい気味だ、天罰だって、罰が当たったんだって……」

「ウィステリア……」

「だって……あの人達……あんな──あんな奴等!お、お父さんも、お母さんまで殺した!あんな奴等!う、ううううううううううううう……」

 

 ウィステリアの嗚咽が、あまりにも苦しい……。

 なんと言えば、声をかければいいのか……わからない。

 

「……わたし、小さくてあんまり覚えてないけど…でも……お父さんとお母さんが仲が良かったのは、おぼえてたんです。あいつらは、それも……!どうして!?人族だから、なんなの!?」

 

 これは、ずっと彼女が押し殺されていたものなんだ……。

 あの村は、一体何をやっていたんだ……!

 

「……ごめんなさい……」

「え?あ、いやその……こっちこそ、ごめん。俺、なんて言ったらいいのか……」

「違うんです……。貴方は関係なかったのに、巻き込んでしまった……私が、ちゃんとした巫女じゃなかったから……ただの人だった貴方を、わたしのせいで……」

「それは……」

 

 それは違う。

 そう、言えはしなかった。だが……。

 

「言っただろ?俺は、ガゼルだって」

「え……?でも、それは……」

「あー!わかるよ!?こんな頼りない神がいるかってさ!」

 

 少し、大きめの声で、出来るだけ明るく話す。

 頼む……今だけ、あと少し、声よ震えないでくれ。

 

「言ってくれた願い事は叶えられなかった!ホントごめん!次は、きっと叶えて見せるからさ──だから……」

 

 だから──俺を一人にしないで──

 

 言葉を続けられない。これ以上は……

 涙がポロポロとこぼれて、止められない。

 

「あ……ご、ごめんなさい!わたし、そんなつもりじゃ……」

「だ、だい、じょう、ぶ……」

 

 全然、大丈夫じゃ、なかった。

 俺は─俺も、もう限界だった。

 声を押し殺して、泣いてしまっていた。

 ウィステリアの、そっと黙って傍にいてくれる気配を感じる。

 慰めるつもりが逆に慰められたのが情けなく思い、けれど少し安心している自分がいた。

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