無職転生 ~性格改変_エンジニアリング視点での魔術構築~   作:haru-ha

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【設定について】
本作は『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』の二次創作小説です。
pixivに掲載していた小説のセルフ転載となります。

以下の独自設定(IF設定)を含みます。
・原作と違って、元々存在していたルーデウスの自我は失われず、そこに「ある男」の記憶だけが継承されたという解釈で執筆しています。
・そのため、原作のルーデウスとは性格や口調、判断基準が異なります。

【注意事項】
・原作のストーリー改変(生存IFなど)が含まれる可能性があります。
・キャラの独自解釈、および設定の捏造が含まれます。
・原作全編のネタバレに配慮しておりません。
なんでも許せる方のみ、お進みください。


第1節 魔術は解析可能な現象である

気が付いたら、真っ暗な世界に漂っていた。

 

暖かな暗闇に浮かびながら、しばらく体を揺らしていると、唐突に目の前に光る板が現れた。

 

ここでは特にすることもなく、私はただその板を見つめる。

触れてみると、そこにはある男の一生が映し出された。

 

その男が生まれてから死ぬまでの景色が、主観視点で流れていく。

幼少期はそれなりに優秀で、可愛らしさも感じられた。周りにも良い人間が集まっているようにも見えた。

 

しかし、大人になる過程で彼は努力を怠り、ある事件をきっかけに人生を急激に転落させていく。周囲の気遣いも突っぱね、いわゆる「引きこもり」となったようだ。

 

そこから先は、見ていて苦痛だった。鏡に映る男の姿は、見る影もなく醜悪に変貌していた。

 

最後には家族に家を追われ、偶然居合わせた数人の若者を庇って、彼は死んだ。

 

映像が光の板ごと消える。それと同時に、この世界も急激な変化に襲われた。

狭い暗闇の世界から追い立てられるような圧力を感じ、異常に細い管を通って、私の体は歪められながら強引に外へと押し出された。

眩い光と共に、私はこの世に生まれ出た。

 

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生まれ落ちてから、数か月が経った。ようやく首が座ったところだ。ぐらぐらと不安定な首がようやく安定して、急に抱っこされたときに恐怖を感じることも少なくなってきた。

 

赤子の身では動き回ることも、話すこともままならない。

腹が減れば泣いて親を呼び、排泄すればまた泣いて呼び、眠くなれば寝る。そんな生活だ。

幸い、両親は優しく子供好きだった。さらに、家には一人メイドがいて、彼女が対応してくれることもあった。

 

普通の赤子であれば、この生活に疑問を抱くことはないだろう。

しかし、私は生まれる前に「あの男」の一生を追体験した身だ。精神的な知識量は、30歳を超えていると言っていい。

愛情を注いでくれる両親には感謝しているが、世話を焼かれることには、どうしても羞恥心が勝ってしまう。

 

(精神年齢三十路超えの中身で排泄物の処理をしてもらうというのは、なかなかに堪える。せめて自分でトイレくらい行かせてほしい。早く成長して、せめて自分の身の回りくらいは自分でできるようになりたいものだ)

 

赤子の身では視界もひどくぼやけている。

だが、少なくとも両親が話す言語は、私が見た『記憶』の中には存在しないものだった。

記憶の中の世界には様々な国と言語があったが、そのどれとも合致しない、と思う。私はあの男とは全く別の世界に生まれたのだろうか。文化水準も、あちらの世界より大きく劣っているように見受けられる。

 

何にせよ、まずは言語の習得が必要だ。『記憶』によれば、幼少期こそが言語習得の黄金期であるらしい。

どうせすることもなく暇を持て余しているのだ。両親の言葉を咀嚼し、発音を覚えることに全力を注ぐことにした。

 

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私の名は、ルーデウス・グレイラット。

 

先日ようやく一歳になった。両親の話す言語も無事に習得し、少し舌っ足らずではあるが、意思の疎通は問題なく行えるようになった。自分の名前もようやく分かった。

 

父の名はパウロ、母の名はゼニス。そして、メイドの名はリーリャだ。

 

両親は変わらず愛情を注いでくれるが、リーリャだけはどこか一歩引いた対応をしている。

どうやら、私の発達は異常に早いらしい。通常の赤子は一歳でようやく立ち上がり、早い子でようやく意味のある単語を話し始める程度だ。

それと比べれば、大人と対等に会話をし、バランスを取りながら自由に歩き回る私を、彼女が不気味に思うのは当然のことだろう。

 

だが、だからこそ私はリーリャと信頼関係を築きたいと考えていた。

最近気づいたことだが、私の持つ『記憶』とこの世界の常識は、根本から異なっている。記憶を頼りにしすぎれば、いずれこの世界から浮いてしまうだろう。

一刻も早く、この世界の常識を知る必要がある。能天気すぎる両親よりも、私に違和感を抱いているリーリャこそが、常識を学ぶための教師として相応しいはずだ。

 

私は自分にできる範囲で、リーリャの手伝いを買って出た。

彼女は不審げな顔をしながらも、申し出を拒否できず、渋々それを受け入れていた。

両親は「なんて良い子だ」と手放しで褒めてくれた。

 

そんな下心があるとはいえ、単純に暇だったのも事実だ。

この世界には娯楽が少ない。保育園も幼稚園もなく、一人で外に出ることも許されない。退屈は人を殺すというが、私はすぐにその退屈に音を上げ、何かしらの作業を欲していたのだ。

 

しかし、その生活も長くは続かなかった。

村の中でも大きな家とはいえ、住人はわずか四人。その中の一人が管理を専任していれば、一歳児に手伝えるような仕事などすぐに底をつく。ちょこちょこと付き纏う私に、ついにリーリャが音を上げた。

 

「ルーデウス坊ちゃま。お手伝いをされるのは大変立派ですが……このままでは、私の仕事がなくなってしまいます」

「すみません、リーリャさん。ですが、他にやることがなくて……」

 

リーリャは少し困ったように眉を下げ、棚から一冊の本を取り出した。

 

「……坊ちゃま、これを」

「これは?」

「魔術の教本です。字は既に読めるのでしょう?分からないことがあればお聞きください」

 

渡されたのは、そこそこの厚みがある古びた本だった。

これが、私が「魔術」という未知の深淵にのめり込む、すべてのきっかけとなった。

 

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それからというもの、私は一日中魔術教本と向き合う日々を送った。

 

「汝の求めるところに大いなる水の加護あらん。清涼なるせせらぎの流れを今ここに――」

 

呪文を唱えると、それに呼応するように体の中の「何か」が熱を帯びて動き出す。

 

「『水弾(ウォーターボール)』」

 

差し出した掌の上に、バスケットボールほどの水球が出現した。

……非常に興味深い。私の持つ記憶において、このような現象は空想の中にしか存在しなかった。

ここが「あちらの世界」とは物理法則の異なる、異世界であることを改めて確信した。

 

何もない空間から水が生じることに、驚愕を禁じ得ない。

質量保存の法則はどうなっているのか。

先ほど体の中で蠢いていた何かの力が、明確に減っているのを感じる。これが「魔力」というものだろうか。

 

続いて火、風、土の初級魔術を試してみた。教本の記述に嘘はなく、どれも問題なく発現した。

 

だが、全属性を試したところで、急激に倦怠感が襲ってきた。体内の魔力を相当に消費したらしい。

 

エネルギー源は同一であるはずなのに、変換次第で全く異なる現象を引き起こせる。魔力とは、変幻自在のリソースということだろう。

呪文を唱えることで魔力が正しいプロセスで練られ、体外へ放出される。いわば、プログラムのコードのような役割を担っているのだと推測した。

――プログラムであるならば、編集も可能なはずだ。

 

リーリャからは「初級魔術のみにすること」と厳命されているが、このままではすぐに飽きてしまう。

呪文というプログラムコード、インターフェースは必須なのだろうか?体内における魔力の動きは把握できた。呪文によって受動的に魔力を操作するのではなく、直接かつ能動的に魔力を操作することはできないだろうか。

 

私は目を閉じ、先ほどの魔力の動きを脳内で反芻した。

体の中の蠢きを、意図的に、精密に動かしていく。

 

数時間の試行錯誤の末、私はついに無詠唱で『水弾(ウォーターボール)』を発現させることに成功した。

魔力の動かし方を変えれば、威力の調整や形状の変化も自由自在だ。

 

「はは……面白いな、これは」

 

魔力を使い果たしたのだろう。急に視界がぐらりと揺れ、床に倒れ込んだ。

最高の暇つぶしを見つけた充足感の中、私は深い眠りへと落ちていった。




最後までお読みいただきありがとうございます。

本作のルーデウスは原作のルーデウスとは全く異なる性格で書いております。
実際に遺伝を考えたときに、『死産だったはずのルーデウス』はパウロに似た性格になりそうなものですが、生まれる前に情報を捻じ込まれて別の意味で性格が歪んでしまいました。ある意味、反面教師だったのかもしれません。

原作の『魔力』、『闘気』の設定は非常に興味深いと感じています。それらを独自解釈して、広げていければと考えています。

毎日18時ごろに次話アップロードできればと思います。
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