無職転生 ~性格改変_エンジニアリング視点での魔術構築~ 作:haru-ha
本作は『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』の二次創作小説です。
pixivに掲載していた小説のセルフ転載となります。(所々、追記・修正しています)
以下の独自設定(IF設定)を含みます。
・原作と違って、元々存在していたルーデウスの自我は失われず、そこに「ある男」の記憶だけが継承されたという解釈で執筆しています。
・そのため、原作のルーデウスとは性格や口調、判断基準が異なります。
【注意事項】
・原作のストーリー改変(生存IFなど)が含まれる可能性があります。
・キャラの独自解釈、および設定の捏造が含まれます。
・原作全編のネタバレに配慮しておりません。
なんでも許せる方のみ、お進みください。
Side: ルーデウス
城塞都市ロアでの生活は、嵐のような日々だった。
私は正式にエリス・ボレアス・グレイラットの家庭教師として、彼女の教育を任されることになった。
教えるのは算術、読み書き、そして魔術。
サウロスからは「孫娘を魔術師にしろ」と会うたびに大声で激励(あるいは脅迫)されていたが、現実は甘くない。
エリスは算術と読み書きを「退屈な拷問」と断じ、隙あらば机を蹴り飛ばして庭へ逃げ出そうとする狂犬そのものだった。
その空気を変えたのは、護衛であるギレーヌが「あたしも習いたい」と言い出したことだった。
ギレーヌは私の両親も所属していたS級パーティ黒狼の牙の元メンバーだ。パウロとゼニスが結婚することになり、パーティが解散した後、彼女は一人で冒険者を続けていたという。
「……あたしは、字が読めず計算ができなかったせいで、騙されて報酬を奪われ、警告文も読めず、何度も死にかけた。剣だけでは冒険者として生きていけないんだ」
ギレーヌの実感のこもった、重く切実な言葉。それを聞いたエリスは、憧れの師がそこまで言うのならと、ようやく渋々とペンを握るようになった。
魔術の授業については、私は独自のカリキュラムを組んだ。
「エリス、魔術は攻撃手段である前に、冒険者の生存率を上げる道具です」
将来ギレーヌのように冒険に出たいと願うエリスに合わせ、汎用性の高いものから教える。
まずは『水』。ダンジョンや荒野で飲み水の確保は最優先事項だ。
次に『火』。火起こしの手間が省ければ、野営の安全性は劇的に上がる。
「熱っ!また焦げたわ!」
「魔力を込めすぎです。もっと静かに流しましょう」
時折、エリスの暴走でカーテンが燃え上がるぼや騒ぎはあったが、ギレーヌと共に訓練を重ねるうちに、二人は呪文を介して初級魔術を扱えるようになった。
また、エリスの強い申し出により、午後の剣術訓練には私も参加することになった。
剣王ギレーヌに教えを請える機会など、一生に一度あるかないかだ。喜んで拝命した。
残念ながら水神流の指導は受けられなかったが、剣神流の速さに特化した二人の攻防を間近で見ることは、何よりの経験になった。
エリスの剣術の才覚は凄まじかった。私の水神流は防御に長けているが、彼女の野性味溢れる連撃を捌くのは、日増しに困難になっていく。
(……力量が近い相手との実戦形式は、パウロとの訓練では得られなかった緊張感がある。だが、やはり闘気を纏えない私の体では、いずれ限界が来るだろうな……)
そんな予感を抱きつつ、私は彼女の振るう剣を必死に受け流し続けた。
さらに、もう一人の家庭教師から「どうにかしてください!」と泣きつかれ、エリスのダンス訓練にも同席することになった。
来たる誕生日パーティに向け、彼女は淑女として踊らなければならない。
エリスの運動神経は抜群だ。それなのに失敗を繰り返す原因を観察した結果、ある結論に達した。彼女は動作が「鋭すぎる」のだ。
「エリス、剣の修行と同じですよ。リズムを聞いて、あえてワンテンポ『待って』から足を動かしてください。あなたの反応速度なら、それでも間に合います」
この「溜め」の意識を伝えた途端、彼女のステップは劇的に改善された。
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Side: ルーデウス
家庭教師の合間を縫って、私はロアの上空に浮かぶ異変の調査に全力を注いでいた。
肉眼で見れば、空にただ「赤い球体」が浮いている不思議な光景に過ぎない。人々は既にそれに慣れ、風景の一部として受け入れている。
だが、私の
私は瞳に魔力を過剰に注ぎ込み、感度を最大まで引き上げた。
「……っ、う、あ……」
視界が急激に歪む。赤い球体を中心に、空間そのものが雑巾のように絞られ、捩れているのが見える。
感度を上げるほどに歪みは酷くなり、やがて視界の上下左右すら消失した。脳が情報を処理しきれず、私はたまらず術式を解除し、その場に崩れ落ちた。
激しい眩暈と嘔吐感。冷や汗が止まらない。
(……間違いない。『記憶』が警鐘を鳴らしている。これは自然現象なんかじゃない。いずれこの領地を飲み込む、未曾有の厄災の種だ)
私は館に戻り、図書室での調査に明け暮れた。
何か、過去に似たような事例はないか。結界魔術を応用して、このエネルギーを封じ込めることはできないか。
新しい執事に許可を取り、図書室へ向かうと、そこには主であるフィリップがいた。
彼は魔神語の本すら読み解く私を、底知れない化け物を見るような目で眺めていた。
「……本当に感心するよ、ルーデウス。君は、実に『使い道』がありそうだ」
彼が私を政治的な駒として利用しようとしているのは明白だった。ボレアス家の跡目争い……フィリップ自身の息子たちを本家に取られた恨みや、権力闘争。
(……まあ、利用されるのは構わない。その代わり、私はこの街を守るためのリソースをここから引き出す)
調査中、エリスの母であるヒルダが図書室に姿を見せた。
「これはヒルダ様、お日柄もよく……」
私が丁寧に挨拶をしても、彼女は一瞥もくれずに私を無視した。彼女にとって私は、「自分の息子を奪った本家」から送られてきた、憎きノトス出身の息子なのだ。
「……気にしないでくれ。彼女は、我が子を本家に人質として取られたショックから、まだ立ち直れていないのだよ」
私は思考を切り替え、古い資料の山に潜った。
結界魔術はミリス神聖国が独占しているため、体系的な書物はなかったが、断片的な「古代の術式」や「地脈の理論」が記された奇書をいくつか発見した。幾つか魔法陣の資料が得られたのも嬉しい誤算だった。
私はそれらと、自分の持つ『記憶』の物理法則を照らし合わせ、独自の防御術式の構築を開始した。
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Side: ルーデウス
サウロスとフィリップに頭を下げ、私は異変に備えるための準備を加速させた。
住民の一部避難、そして大量のガラス板と特殊な魔力塗料の提供。私の必死な訴えに、サウロスは「恩人の頼みだッ!!」と快諾してくれた。
赤い球体を包む「膜」が日に日に薄くなっていくのが分かる。
破裂する臨界点。私は毎日データを記録し、その瞬間を逆算した。
(毎日同じ時刻に観測を続けるだけの地味な作業だが、災害予測とは得てしてそういうものだろう)
そんな中、エリスの十歳の誕生日パーティが開催された。
青色のドレスを着たエリスは、普段の凶暴さを封印し、少し緊張した面持ちでサウロスの隣に立っていた。
私もボレアス家のご厚意で誂えてもらった正装に身を包み、ギレーヌと共に壁際で待機する。
「今日はグレイラット姓を名乗るなよ。『今は』余計な政治的火種は不要だ」
フィリップが小声で釘を刺してくる。私は静かに頷いた。
パーティが始まると、エリスは多くの貴族からダンスに誘われたが、彼女はそれらを全て一蹴し、私の元へまっすぐ歩いてきた。
「ルーデウス様。わたくしと、踊っていただけますか?」
「……喜んで、エリスお嬢様」
ガチガチに固まっている彼女に、私はいたずら心で微弱な冷気を首筋に当てた。
「ひゃっ!?……もう、ルーデウスったら!」
彼女の頬が膨らみ、緊張が解ける。
私たちは音楽に合わせ、優雅に、そして力強く踊った。周囲の貴族たちが息を呑む。練習を重ねた成果、そして彼女本来の鋭い動きが、見事な美しさとなって結実していた。
サウロスは感動のあまり、鼻水を垂らしながら「うおおおん!」と号泣し、私たち二人を肩車して会場を走り回った。
パーティが終わり、私はエリスとギレーヌを部屋に招いた。
指示通り、メイドたちが運んできた料理。何も食べていなかった二人は、すごい勢いでそれを平らげていく。
私は、二人にプレゼントを手渡した。
「卒業祝い、というわけではありませんが……私からの贈り物です」
渡したのは、私が魔法陣の量産資材を流用して自作した、意匠を凝らした二本の杖。
ギレーヌは膝をつき、感動に震えながらそれを受け取った。
「これで……あたしも、魔術師を名乗れるのか……!」
エリスへのプレゼントも渡し、彼女はギレーヌを見て期待の目を向ける。
「あたしの種族には誕生日プレゼントの習慣はなくてな……」
落ち込むエリス。私はギレーヌに「普段身につけているものでも、彼女にとっては最高のお守りになりますよ」と耳打ちした。
ギレーヌは少し考え、自分の指に嵌めていた、一族に伝わるという「魔除けの指輪」をエリスに贈った。エリスはそれを、何よりも嬉しそうに受け取った。
私の誕生日にも、パーティを開いてくれた。
私はただの家庭教師のつもりでいたので、非常に驚いた。少し、ブエナ村を思い出して目が潤んでしまった。
意外だったのが、ヒルダが涙ながらに私を抱きしめたことだ。自身の息子を思い出し、庇護欲が湧いたのかもしれない。
サウロスが、ノトス・グレイラットの現当主を潰してルーデウスを当主に据えると騒ぐ。
フィリップはそれを抑えるが、私がノトスの当主になるのは歓迎で、大きくなるまでに土台を整えると謀略を練っている。
ヒルダは、エリスと結婚しろといい、エリスは照れて困っている。
……いつの間にか、このボレアス家は、私の第二の家族になっていた。
そして、彼らから贈られたのが、『
製作者はチェイン・プロキオン。エルダートゥレントの腕を用いて作られた杖で、その先端にはぐれ海竜のAランク魔石が付いている、貴族でも家宝級の逸品だ。
私は震えるほど感動した。早くこの杖を自分に馴染ませ、
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Side: ルーデウス
私の誕生日パーティーから数日後、いつものように赤い球に向かう。
ほぼ毎日、これを観察していた。
……臨界点が、近い。いつ破れてもおかしくはない。
訪れるであろう厄災に、背筋が震える。
既に周辺の住民には、無理をいって避難してもらっている。サウロスとフィリップのおかげだ。
赤い球の周りに、結界魔術と土魔術の複合魔法陣を敷き詰める。結界魔術の初級がベースだが、効果は聖級くらいまで向上しているだろう。
赤い球を中心に、五重の壁となるように配置した。
ふと、背後に気配を感じて振り返る。エリスとギレーヌが剣術の訓練の時のように武装して、こちらに歩いてきていた。
「なぜここに……っ!ここは危険です!今すぐ離れてください!」
エリスとギレーヌは、決意を込めた目で答える。
「危険だから、来たのよ」
「お前が街を守る間、我々がお前を守ろう」
その心遣いに、涙が出そうになる。
「……っ!私が守り切れなかった時に、サウロス様とフィリップ様、ヒルダ様のことをどうするのですかっ……!?」
そうは言っても、向こうも引かないらしい。
時間が、もうない。
突如、空の色が変わる。
そして、
ギレーヌもこの異変を感じたようで、眼帯を外して魔眼で辺りを伺う。
「……凄まじい魔力だ。ロア上空に渦巻いている」
「っ!一度館に戻った方がいいんじゃない!?」
「だめだ!今すぐ街を離れたほうがいい!」
いや、それも間に合わない!もう、来る!
赤い球が脈動を始めた。膜はもうひび割れて、中から邪悪な光が漏れ出している。
全開で魔力を開放し、五重の結界が展開され、辺りに光が満ちる。
その瞬間だった。急に背後に気配が生まれる。
見慣れない剣が、首元に突き付けられた。
「小僧、あの異変は貴様の仕業か?」
ここまでお読みいただきありがとうございました。
異変を抑える結界魔術に関しては独自解釈です。
このときのルーデウスはまだ初級結界魔術しか使えないのですが、それではこの異変は防げないと考え、使えるものを使って、やりくりした結果となります。
このルーデウスは階級社会が当然であるという認識をもっているので、エリスが傲慢でも『貴族ならそういうもの』程度で考えています。なので、エリスのあの『お願い』もありませんでした。
引き続きお付き合いいただけると幸いです。