無職転生 ~性格改変_エンジニアリング視点での魔術構築~   作:haru-ha

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【設定について】
本作は『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』の二次創作小説です。
pixivに掲載していた小説(完結済)のセルフ転載となります。(所々、追記・修正しています)

以下の独自設定(IF設定)を含みます。
・原作と違って、元々存在していたルーデウスの自我は失われず、そこに「ある男」の記憶だけが継承されたという解釈で執筆しています。
・そのため、原作のルーデウスとは性格や口調、判断基準が異なります。

【注意事項】
・原作のストーリー改変(生存IFなど)が含まれる可能性があります。
・キャラの独自解釈、および設定の捏造が含まれます。
・原作全編のネタバレに配慮しておりません。
なんでも許せる方のみ、お進みください。


エピローグ26:女性たちの飲み会

Side:ロキシー

 

夜の帳が下りたルーデウス家のリビングには、穏やかなランプの明かりと、芳醇なお酒の香りが満ちていました。

 

今夜は、珍しく家に男性陣が一人もいない夜です。

夫であるルディと義父のパウロさんは、夕方から『龍の爪』事務所へと出かけていきました。

なんでも人神(ヒトガミ)を封印したことで肩の荷が下り、最近めっきり時間の空いたオルステッド様が、珍しく「たまには酒でも飲むか」とパウロさんたちを誘ったのだそうです。

 

かつては近寄る者すべてを恐怖させていたあの龍神様が、自ら他者との交流を求め、楽しそうに酒宴を開くようになるなんて……。数年前の私たちが聞けば、腰を抜かして驚いていたに違いありません。パウロさんも「龍神様となら美味い酒が飲めるぜ!」と大はしゃぎで出かけていきました。ルディは相変わらず苦笑いしながら、二人の保護者役として付き添っていきましたが。

 

子供部屋を覗くと、子供たちは皆すやすやと寝息を立てて夢の中にいました。

アルス、ララ、ルーシー、クリスティーナ、リリ、ジークハルト、そして幼いアイリスとルーシュ。

今夜はエリナリーゼさんの息子であるクライブ君もお泊まりに来ていて、子供たち全員でひとしきり大暴れした後に、魔力が切れたように眠ってしまったのです。特にルーシーとクライブ君はまるで本当の姉弟——あるいはそれ以上の仲の良さで、並んで眠る姿は天使のようでした。

 

小さな寝顔を一人ずつ見つめていると、こんなに愛おしい存在をこれほど多く授かった自分の幸運を改めて噛み締めずにはいられませんでした。

 

「ふぅ……ようやく寝かしつけが終わりましたね」

 

私がリビングの扉を閉めて戻ると、テーブルを囲んでいた女性陣から一斉に温かい笑い声が漏れました。

 

今夜の参加者は、私とシルフィ、エリス、アイシャの四人。

そしてお義母様であるゼニスさん、リーリャさん、そして遊びに来てくれたエリナリーゼさんです。

 

「ロキシー、お疲れ様。さ、こっち座って!ルディ特製の果実酒を新しく開けたところだよ」

 

シルフィが手招きして、グラスに琥珀色の甘いお酒を注いでくれました。

 

「ありがとうございます、シルフィ。……それでは皆さん、今夜は心ゆくまで語り合いましょうか」

 

「「「乾杯!」」」

 

カラン、と氷の涼やかな音が響き、賑やかな女子会が幕を開けました。

 

「ぷはぁっ!やっぱり子供たちが寝静まった後の酒は最高ね!」

 

エリスが豪快にジョッキを空け、ぷはっと息を吐き出しました。

 

「本当にね。子供たちが大きくなって、最近ようやく手がかからなくなってきたけれど……小さい頃は本当に体力勝負だったわ。特にアルスとジークなんて、ちょっと目を離すと屋根の上に登っているんだもの!」

「ふふ、エリスのお転婆が遺伝したんじゃないかしら?」

「なっ……!シルフィ、あたしは屋根の上で剣を振ったりなんて……あ、昔やってたわね」

 

エリスが頭を掻いて照れ笑いを浮かべます。

 

「でも、本当に助かりましたよ。リーリャさんやお義母様、それに侍女さんたちがいてくれたからこそ、私たちもこうして無事に育て上げられたんですもの」

「滅相もございません、ロキシー様。皆様の愛らしいお子様方のお世話をさせていただけるのは私にとっても至上の喜びにございます」

 

リーリャさんが上品に微笑み、ゼニスさんも「みんな、立派に育ってくれて嬉しいわ」と目を細めました。

 

「でもね……正直なところ、もう子供は十分産んだかなって思うのよね」

 

エリスが頬杖をつきながら、ぽつりと呟きました。

 

「あたしも同感です、エリスさん。これからは子供のお世話に追われるだけじゃなくて……もっと旦那様との二人の時間を大切にしたいなって思うんです」

 

アイシャがお酒を含みながら、どこか恥ずかしそうに、けれど真剣な瞳で言いました。

 

「うんうん、分かるよアイシャちゃん。ルディとゆっくりお話ししたり、手を繋いでお散歩したりする時間がもっともっと欲しいよね」

 

シルフィもコクコクと頷いています。妻たち全員の想いは、完全に一致しているようでした。

 

「そういえばエリナリーゼさん。クライブ君の子育ての方は順調ですか?」

 

私の問いかけに、エリナリーゼさんは優雅にワイングラスを傾けました。

 

「ええ、とっても順調ですわ。あの子、最近ますますクリフに似て勉強熱心になって困っちゃいますの。ルーシーちゃんとも本当に仲が良くて……ふふ、将来が楽しみですわね」

「本当にね。二人が並んでいると絵になるもの」

「それでね、皆様にご報告があるのですけれど……私とクライブも、そろそろミリス神聖国のクリフの元へ移住しようかと考えておりますの」

 

「「えっ……!?」」

 

私とシルフィが思わず声を上げました。

 

「移住……しちゃうんですか、エリナリーゼさん?寂しくなります……」

「あら、アイシャちゃん、そんな顔をなさらないで。クライブがラノア魔法大学を正式に卒業した後に移動する予定ですけれど、今の世の中にはルーデウスの作った『転移魔法陣』がありますでしょう?ルーデウス自身、お仕事でしょっちゅうミリスとシャリーアを行き来していますし……寂しくなる暇なんてありませんわよ」

「あ、それもそうですね!」

 

「ええ。ミリスの貴族社会でのお付き合いに疲れたら、いつでも転移陣を使ってこのシャリーアの家に愚痴を言いに飲みに来ますわ。その時は泊めてくださるかしら?」

「もちろん!いつでも大歓迎よ!」

 

エリスが力強く胸を叩き、みんなで笑い合いました。

 

「それにしても……」

 

エリナリーゼさんが、感嘆のため息をつきながらリビングの調度品を見回しました。

 

「ルーデウスは、本当に途方もない男になりましたわね。人神(ヒトガミ)を封印して、ようやく世界が平和になったというのに……相変わらず世界中を飛び回って、伝説を塗り替え続けているじゃありませんか」

「あはは……旦那様は本当に、立ち止まるということを知りませんからね」

 

アイシャが苦笑しながらおつまみのチーズを口に運びました。

 

「そもそも『七大列強の第三位・雷神』という時点で、歴史の教科書に載るレベルの怪物ですのに。最近じゃあ、ラノアやアスラに国立美術館を建てて、甲龍王ペルギウス様ですら絶賛する芸術家としても名を馳せていますし……」

「そうそう!ザノバ人形店の美術品部門の売り上げ、今期もとんでもない黒字を叩き出しているんです!旦那様が作った作品を型取りした彫像が各国の貴族から飛ぶように売れていて……もう金庫がパンパンなんです!」

「魔術教育の改革に、新しいインフラ土木、魔石やガスの資源開発……『龍の爪』事務所は、今や世界最大の複合企業組織になっちゃったものね」

 

シルフィが呆れたように、けれどどこか誇らしげに語ります。

妻として、夫の偉業を誇らしく思う反面、少しだけ遠い存在になってしまいそうな寂しさを覚えるのも事実でした。

 

「でもね、ルーデウスの本当に凄いところは……どんなに世界規模の仕事で忙しくしていても、必ずこの家に帰ってきてくれるところよ」

 

エリスが優しい顔で言いました。

 

「帰ってきたら、疲れた顔一つ見せずに子供たち全員を抱っこして、一人ひとりの話を聞いてくれる。そして……あたしたち妻への気配りも、何一つ欠かさないんだから」

「……ええ、本当に。夜のスキンシップや、夫婦水入らずの語らいも……誰一人として寂しい思いをさせないように、誠心誠意尽くしてくれますものね」

 

私が頬を染めながら呟くと、アイシャもシルフィも、恥ずかしそうに目を伏せて微笑みました。

 

夜が更けるにつれ、お酒の力も手伝って、場の空気はいっそう打ち解けたものになっていきました。

特にシルフィは、すっかりお酒が回ってしまったようで、とろんとした目で私の肩に頭を預けてきています。

 

「ふにゃぁ……ルディぃ……」

「あらあら、シルフィ、完全に酔っ払っていますね」

「ねえねえ、みんなぁ……前から気になってたんだけどさぁ……」

 

シルフィが赤い顔を上げ、妻たちを見回して言いました。

 

「……ルディってさ、あたしたち四人の中で、本当は『誰が一番好き』なんだと思う……?」

 

「「「ぶっ……!?」」」

 

私とエリス、そしてアイシャが同時にむせ返りました。

 

「な、何を言い出すのよシルフィ!ルーデウスはあたしたち全員を平等に愛してくれてるに決まってるじゃない!」

「そうだよシルフィ姉!旦那様にそんな順位をつけるような野暮な真似、あるはずがありません!」

「う〜ん……でもぉ、男の人だもん。心の中の特別な一番って、絶対にあると思わない……?」

 

普段は聞き分けの良いシルフィの、お酒が入った時だけの甘えたような絡み酒。

ですが、そう言われてしまうと……私たちも心の奥底で、ほんの少しだけ気になってしまうのが女心というものでした。

 

エリナリーゼさんが面白そうに身を乗り出してきます。

 

「あらあら、面白そうな話題ですわね!まず筆頭候補は……やっぱりエリスさんかしら?」

「えっ!?あ、あたし!?」

 

エリスが飛び上がらんばかりに驚きました。

 

「だってエリスはルーデウスが生まれて初めて結ばれた女性であり、ルーデウスが自分自身の意志で求婚した『憧れの女性』ですもの。ルーデウスのエリスを見る目には、いつだって強い熱と尊敬が宿っていますわ」

「そ、そんなことないわよ……!」

 

エリスは顔を真っ赤にして両手で顔を覆いました。

 

「最近のルーデウスは龍聖闘気まで完璧に纏えるようになって……あたしが戦闘で助けてあげられる機会だって減っちゃったのよ。家事もできないし、難しい魔術の話も分からない……ロキシーやシルフィみたいに、賢く支えてあげられないのがあたしはずっと悔しかったんだから……」

「そんなことありませんよ、エリス」

 

私は首を振って、以前ルディが語ってくれた言葉を伝えました。

 

「ルディはね、エリスの戦闘力だけを見ているのではないのです。どんな逆境でも決して折れず、愛する者のために命を懸けて前へ進み続ける……エリスのその『生き様』と『魂の強さ』に、ルディはずっと救われ、憧れ続けているんですから」

「ルーデウスが……あたしに……?」

 

エリスは驚いたように目を見開き、それから嬉しそうに口元を綻ばせました。

 

「……ロキシーがそう言ってくれるなら、信じるわ」

 

その素直な笑顔は、いつもの勝気なエリスとはまた違う、柔らかな一面を見せてくれました。

 

「じゃあ……次はロキシーかしら?」

 

エリナリーゼさんが私に視線を向けます。

 

「ロキシーはルーデウスにとって生涯の師匠ですもの。一番に決まってますわ」

「……いいえ、そんなことはありません」

 

私は自嘲気味に息を吐き出しました。

 

「私の魔術の腕前なんて、とっくの昔にルディに追い抜かれてしまいました。ルディの生み出す規格外の理論や発想を見るたび、私は師匠としての自分の小ささに、情けない劣等感を覚えてしまうんです。教育の面でも、彼は埋もれた才能を見出すのが本当に上手で……私なんて、ただの頼りない先達に過ぎません」

 

すると、横からシルフィが私の手をぎゅっと握りしめてくれました。

 

「違うよ、ロキシー。ルディがロキシーに頼っているのは、魔術の知識なんかじゃないんだよ」

「え……?」

「ルディにとって、ロキシーは『善悪の物差し』なんだよ。あたしも、エリスも、アイシャちゃんも……ルディのやることなら何でも『ルディが正しい!』って全肯定して信じ切っちゃうでしょ?でもルディはね、自分が世界の異物なんじゃないかって、心の底のどこかでずっと怯えているの。だからこそ、理性的で常識のあるロキシーに『今の私の行いは、人として正しいでしょうか?』って、魂の舵取りを委ねているんだよ」

 

シルフィの言葉に、私は胸を衝かれました。

確かに……ルディは重大な決断を下す前、必ず私のもとへ相談に来てくれます。私の何気ない一言を、誰よりも真剣に受け止めてくれるのです。

 

「次は……シルフィ、あなたね」

 

エリスがシルフィの頭をぽんぽんと撫でました。

 

「シルフィはいつも『自分は中途半端だ』って気にしてるけどさ。あたしたちから見れば、あなたが一番羨ましいわよ」

「えぇ……?ボクが……?」

「そうですよ、シルフィ姉」

 

アイシャも同意するように頷きました。

 

「旦那様が、唯一心の底から気を抜いて、子供みたいに甘えた姿を見せるのはシルフィ姉の前だけです。あの強大無比な雷神が、膝枕で頭を撫でられてフニャフニャに蕩けている姿……私たちには絶対に引き出せませんもの!」

「そ、そうかなぁ……へへへ……」

 

褒められたシルフィは、ふにゃりと嬉しそうに顔を崩しました。

 

「じゃあ……最後はアイシャちゃんね」

 

エリナリーゼさんが悪戯っぽく微笑みます。

 

「アイシャちゃんは、奥様方の中で一番若くて、そして一番ルーデウスの傍でお仕事をしているわ。一番愛されているんじゃないかしら?」

 

その言葉に、アイシャは少しだけ寂しそうに伏し目がちになりました。

 

「……あたしは、元々は従者で、妹で……旦那様の手を煩わせて、半ば無理やり妻の座に押し入ったような身ですから。今でも時々、不安になるんです。旦那様に無理をさせていないか、本当に私を妻として愛してくれているのかって……」

「アイシャちゃん、そんな心配絶対に必要ないよ!」

 

シルフィが即座に断言しました。

 

「なんなら、ルディはアイシャちゃんを一番甘やかして、一番可愛がっているよ!仕事でもプライベートでも、アイシャちゃんの頭を撫でている時のルディの顔、見たことある?もう目尻が下がりっぱなしなんだから!」

「そうですわよアイシャ。旦那様が幼いお姿だった頃なんて、アイシャにべったり抱っこされて、呆れながらも心底幸せそうな顔をしておられましたよ」

「あはは……!あの頃の小さい旦那様、本当に信じられないくらい可愛かったですよねぇ!」

 

アイシャが昔を思い出してパッと顔を輝かせました。

 

「ずるいなぁ、アイシャちゃん!ボクも小さなルディを、もっといっぱい抱っこしておけばよかったよぉ!」

「あたしだって、もっと頭を撫でてやりたかったわよ!」

 

リビングに笑い声が弾けます。

結局、誰が一番かなんて決められるはずもありませんでした。

ルディは私たち四人全員を、それぞれの形で、命を懸けて深く愛してくれているのですから。

 

「ふふ……本当に仲が良くて羨ましいですわね」

 

エリナリーゼさんが満足そうにグラスを揺らしながら、ふと意地悪そうな笑みを浮かべました。

 

「ところで皆様。ルーデウスはあんなに世界中を出張して回っていますけれど……出先で『浮気』をする心配はなさらないのかしら?」

 

その問いに対し——

 

「「「「あり得ません」」」」

 

妻四人の声が、完全に一片の狂いもなく重なりました。

奥のソファーで静かに見守っていたゼニスさんまでもが、コクコクと力強く頷いています。

 

「あら、即答ですのね?」

「だってエリナリーゼさん、うちの夫の身持ちの固さは異常ですよ」

 

私が呆れ混じりに言いました。

 

「アスラ王国のアリエル女王陛下からの熱烈なアプローチも、各国の貴族令嬢たちからの誘惑も、ルディは全部笑顔で綺麗に受け流していますからね」

「それに、事務所のリニアとプルセナが、肌も露わな格好で『ボスぅ〜!』って抱きついてきても、旦那様は眉一つ動かさずに『はいはい、書類に判子押すから離れなさい』って書類で頭をペシペシ叩いて追い払うんですから!」

「あんな絶世の美女たちに迫られてもピクリとも動かない男が、旅先で浮気なんてするわけがないわ!」

 

エリスの力強い断言に、エリナリーゼさんは「降参ですわね」と両手を上げて笑いました。

 

夜がさらに深まり、ランプのオイルが残り少なくなってきた頃。

少し落ち着いた空気の中で、エリスが静かに呟きました。

 

「……ねえ。ルーデウスの『寿命』のことなんだけど」

 

その言葉に、リビングの空気がわずかにシンと静まり返りました。

 

「ルーデウスは、あの小さかった身体から成長して、今では立派な大人の姿になったけれど……それ以来、全く老けている様子がないわよね?」

「……ええ。お肌の艶も、魔力の輝きも、あの頃のままですね」

「あたし……最近思うのよ。あたしは人族だから、あと何十年かしたら、どんどんお婆ちゃんになって皺だらけになっていく。でもルーデウスは変わらない……あたしだけが先に老けていくのが、少しだけ怖いのよ」

 

エリスの切実な吐露に、アイシャも寂しそうに頷きました。

 

「私も……人族ですからね。長寿種であるロキシー姉や、長命のエルフの血を引くシルフィ姉が、少しだけ羨ましくなる時があります……」

 

普段は気丈な二人が見せる、こんな不安げな表情は珍しいものでした。

それだけ、この話題は彼女たちの心の奥底に、長く静かに横たわっていたのでしょう。

 

私は二人の手を、そっと包み込みました。

 

「大丈夫ですよ、二人とも。ルディは決して、外見の若さや美しさだけで人を愛するような浅い人ではありません。私たちがどんな姿になろうと、白髪が増えて腰が曲がろうと……ルディは変わらない愛で私たちを慈しんでくれます」

「うん……それにね」

 

シルフィが、遠い目をして静かに語り始めました。

 

「昔、ルディと寿命の話をしたことがあるの。『もし自分がどれほど長生きできる身体になったとしても、私は君たちを置いて一人で永遠に生きるつもりはないよ』って」

「旦那様が……?」

「うん。『僕の命は、君たちと一緒に使い切るためにあるんだ。だから……僕が死ぬ時は、君たちと一緒だよ。まぁオルステッドは寂しがるかもしれないけどね』って言ってくれたの。だからきっと……ルディは最後に、ボクかロキシーと一緒に旅立つ道を選ぶはずだよ」

 

その言葉を聞いた瞬間、エリスもアイシャも、目元にじわりと温かい涙を浮かべました。

 

長寿種も、人族も関係ない。

私たちは全員、ルーデウス・ボレアス・グレイラットという一人の愛しい男と共に生き、共に人生を分かち合っているのだと。

 

「……ふふ。本当に、どこまでも敵わない旦那様ですね」

 

アイシャが涙を拭って微笑みました。

 

「ええ。私たちの最高の夫ですわ」

 

私はグラスを掲げ、愛する家族たちを見回しました。

 

「さあ、夜明けまでにはまだ時間があります。愛しいルディが帰ってくるまで……もう一本だけ、飲みましょうか!」

 

「「「はい!」」」

 

グラスが打ち合わされ、再び温かな笑い声が部屋いっぱいに広がりました。

 

窓の外では、いつの間にか月がずいぶんと高く昇っていました。

 

遠く離れた事務所で、今頃ルディも笑っているでしょうか。

愛する夫の笑顔を思い浮かべながら、私たちの幸せな夜は、更けていくのでした。




妻たちの飲み会でした。
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