無職転生 ~性格改変_エンジニアリング視点での魔術構築~ 作:haru-ha
本作は『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』の二次創作小説です。
pixivに掲載していた小説のセルフ転載となります。(所々、追記・修正しています)
以下の独自設定(IF設定)を含みます。
・原作と違って、元々存在していたルーデウスの自我は失われず、そこに「ある男」の記憶だけが継承されたという解釈で執筆しています。
・そのため、原作のルーデウスとは性格や口調、判断基準が異なります。
【注意事項】
・原作のストーリー改変(生存IFなど)が含まれる可能性があります。
・キャラの独自解釈、および設定の捏造が含まれます。
・原作全編のネタバレに配慮しておりません。
なんでも許せる方のみ、お進みください。
Side: ルーデウス
「動くなっ! ルーデウス!!」
ギレーヌの鋭い叫びと同時に、私の頭上を凄まじい衝撃波が通り過ぎた。
剣神流――『光の太刀』。
直前まで私の背後に漂っていた殺気が、その一閃によって弾かれる。だが、気配は消えたわけではなかった。気配の主は視認できないほどの速度で移動し、空ぶった光の太刀は数メートル先の樹木を粉砕した。
(……瞬間移動?いや、
私は両手で杖を支え、五重結界の維持に全神経を集中させていた。空に浮かぶ異変の臨界はもう目の前だ。私の魔力が、地面を通して巨大な術式へと注ぎ込まれ続ける。
「我が名はアルマンフィ。とあるお方の命により、この異変の元凶を断ちに参上した」
いつの間にか私の視界の端に移動していた男が、静かに告げた。キツネのような面で顔を隠しているが、その立ち姿からは理を超えた実力者の風格が漂っている。
ギレーヌが剣を構え、男の前に立ちはだかった。
「女、どけ。その小僧を殺せば、この異変も止まるやもしれん」
「ふざけるな!あたしは剣王ギレーヌ!この子は異変を止めようとしているのだ!」
「剣王?……フン、信じられるか。その小僧からは凄まじいほどの魔力が溢れているぞ」
「我が師『剣神』と、我が故郷ドルディア族の名誉にかけて、ルーデウスの邪魔はさせない!」
ギレーヌの咆哮が響く。エリスも腰の剣に手をかけ、いつでも飛び出せるよう殺気を剥き出しにしていた。
だが、事態は待ってはくれなかった。
――ミ、リ。
世界が鳴いた。
空を支配していた赤い球体が、ついにその形を保てなくなり、内側から崩壊を始めた。
直後、目を焼くほどの純白の光が溢れ出す。
「来た……!!」
私は歯を食いしばり、結界に魔力を最大出力で流し込んだ。
光の奔流を結界の中に閉じ込めようと試みるが、その衝撃は私の想像を遥かに超えていた。
衝突した瞬間、内側の二層の結界が、薄い硝子細工のように呆気なく粉砕される。
「なっ……!?」
「なんだ、この光は……!?」
アルマンフィとギレーヌの戦いが、その圧倒的な光の暴力によって中断される。
三層目の結界も、悲鳴を上げて砕け散った。このまま抑え込むのは不可能だ。
衝撃を抑えるのではなく、逸らす結界に切り替える!私は瞬時に魔法陣の術式を書き換えた。
衝撃を正面から受けるのをやめ、空と地へとエネルギーを逃がす。
ロアの空に向かって巨大な光の柱が立ち昇り、同時に地面が地響きと共に削り取られていく。
効果は、あるようだ。光の圧力は、最初の一撃こそ最大だったが、徐々に収束し始めている。四層目の結界が砕け散る中、私は残った最後の五層目にすべての魔力を、そして自身の命を削るような意志を注ぎ込んだ。
「……ッ、これで、抑え込む……!」
「お前は一体、何をしているのだ……!?」
あまりの光景に放心していたアルマンフィが、私に詰め寄ろうとする。だが、私には対応する余裕など一分も残っていない。視界は点滅し、魔力枯渇による激しい眩暈が脳を揺らしていた。
だが、私の窮地を見たエリスが、反応してしまった。
「ルーデウスに、近寄るなぁぁぁ!!」
「よせ、エリス!!」
ギレーヌの制止は届かなかった。エリスは凄まじい踏み込みでアルマンフィに斬りかかる。アルマンフィは反射的にダガーで応戦し、エリスを容易く弾き飛ばした。
不運にも、吹っ飛ばされたエリスの体が、私の背中に激突する。
術式が乱れ、私はエリスを巻き込むようにして、弱まりつつもまだ激しく渦巻いていた光の中へと、吸い込まれるように転倒した。
「エリス!!ルーデウス!!」
ギレーヌの手が空を切る。
私とエリスの視界は、抗う術もなく、純白の闇へと塗り潰された。
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Side: ルーデウス
気が付くと、私は一面真っ白な空間に浮いていた。
肉体という感覚がない。ただ、ゆらゆらと揺らめく光の意思として、そこに存在していた。
(……死んだのか?異変のエネルギーに耐えきれず、消滅したのか?)
「――ちがうよ」
背後から声がした。身体はないはずなのに、「振り向く」という感覚があった。
「やぁ。僕はヒトガミ。君の味方だよ」
そこにいたのは、男とも女ともつかない、顔の部分に何もないぼやけた影のような存在だった。良く見えないが、服を着ていないように見える。
不気味なほど親しげな、人を食ったような声。
その瞬間、『記憶』が激しく警鐘を鳴らした。これは『記憶』でいうところの、ペテン師の類だ。
ヒトガミと名乗る不審者は、私が大規模な魔力災害に巻き込まれて転移したこと、その先は魔大陸と呼ばれる極めて過酷な環境であることを、独り言のように喋り続けた。
その口調には、明らかにこちらを誘導しようとする意図が含まれている。
(……信用できない。この存在の言葉を鵜呑みにするのは、できるはずがない)
私は話を聞く振りをしながら、この空間の法則を解析しようと試みた。
身体はなくとも、私自身の「魔力」だけは存在している。私は魔力を薄い膜のように広げ、この白い空間の応答を確認した。
「?なにをしているんだい?」
不審者が、話を止め、訝しげにこちらを覗き込む。
魔力の伝播速度、広がり方……ここは現世とは全く異なる法則で構成されている。
「……位相が異なる、別の世界……?ここは、魔力体、いや、精神体しか存在できない空間……?」
私がその仮説を呟いた瞬間、世界が拒絶するように歪んだ。
ヒトガミの驚いたような気配を最後に、私はその白い世界から急激に放り出された。
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Side: ルーデウス
ガバッ、と上半身を跳ね上げた。
冷たく乾いた風が肌を刺す。まずは自分の身体があるかを確認する。手、足、腹……よし、肉体は欠損していない。
次に周囲を見渡した。
見渡す限りの荒野。空には、禍々しいほど大きな月が浮かんでいる。あのヒトガミを名乗る不審者によれば、ここは魔大陸か?
「……エリス!」
すぐ隣で、エリスが意識を失ったまま横たわっているのを見つけ、私は心から安堵した。
だが、安堵は一瞬で霧散した。
――ガルルル……。
砂を噛むような、低い唸り声。
私が起き上がった物音に引き寄せられたのだろう。夜の闇の中から、二つの、三つの光る眼がこちらを狙っていた。
その影の形は、狼のようでもあり、獅子のようでもある。
影は次々と増えていく。一つ、二つと合流し、あっという間に二十、三十という群れへと膨れ上がった。
(……不味い。ブエナ村の魔物とは、発している殺気が違いすぎる)
身体が震え始めた。本来の私なら、魔術で一掃できる相手かもしれない。
だが、今の私の魔力残量は、ほぼ「空」だった。あの災害を抑え込むために、すべての魔力を使い果たしてしまっていた。
私は眠るエリスの傍に落ちていた彼女の剣を手に取った。
代わりに、私の大切な杖『
「……エリスは、私が守る」
私は剣を構え、闇の軍勢を見据えた。
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Side: ルーデウス
どれだけの時間、剣を振り続けたのだろうか。
戦果は、惨憺たるものだった。
襲いかかる魔物に、私は慣れない剣を振るう。水神流の型を必死になぞるが、闘気を纏っていない子供の腕力では、厚い毛皮に浅い傷を負わせるのが精一杯だった。
魔物たちの知能は驚くほど高かった。彼らは集団で連携し、私の死角から、交互に確実に体力を削りに来る。
「……はぁ、はぁ……っ!」
私の身体は、すでにボロ雑巾のようだった。
左腕は序盤に噛み砕かれ、感覚を失ってだらりと垂れ下がっている。全身の至る所から鮮血が噴き出し、視界は自分の血で赤く染まり、半分以上が白濁していた。
(……死ぬのか。こんなところで……)
魔物たちは、私がもう限界であることを見抜いているのだろう。無駄な反撃を恐れ、直接のトドメを刺すのではなく、失血死を待つかのように私の周囲を執拗にうろつき、汚い涎を垂らしている。
だが、私はエリスの前にだけは一歩も立ち入らせなかった。
朦朧とする視界の端に、動く影を見つけた。
また魔物か。そう絶望しかけたが、月の光を跳ね返したそれは、『槍』であると直感した。
私は身体の底に残った、本当の最後の一滴の魔力を振り絞った。
「『
夜空に向かって、小さな、けれど必死の光を打ち上げる。
それを見届けた瞬間、私の意識は糸が切れたように途絶え、地面へと崩れ落ちた。
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Side: ルーデウス
気が付くと、パチパチと爆ぜる焚火の音を聞いていた。
薄く目を開けるだけでも、全身に激痛が突き抜ける。
身体のあちこちに、何らかの布が巻き付けられていたが、完全な止血には至っていないようだ。
『記憶』にある医学知識が告げている。子供の身体にこの出血量は、致死量を優に超えている。
今目を開けているのは、単なる生命の最後の残火に過ぎない。私はこのまま、死ぬのだ。
「ルーデウス……?ルーデウス!目を覚ましたのね!!」
泣き腫らした顔のエリスが、視界に飛び込んできた。
よかった。……エリスは無事だったのか。
「……出血量が多すぎる。残念だが、もう助からない。……今のうちに、別れの言葉を告げておけ」
低く、けれど慈悲に満ちた声。
そこにいたのは、エメラルドグリーンの髪と、額に宝石を持つ強面の男だった。
スペルド族。ロキシーが「出会ったら最後、家族ごと皆殺しにされる」と言っていた、伝説の魔族。
エリスはその男の姿に、本能的な恐怖で身を竦ませ、ガタガタと震えている。
私は男に、エリスを助けてくれたことへの礼を言おうとした。だが、声が出ない。私の命が尽きる寸前の様子にエリスが気付いた。
「いっ……やだ……いやっ!!やだぁぁぁ!!」
エリスが絶叫した。私の冷たくなり始めた手を握り、涙腺を崩壊させて叫び続ける。
「うっ……かみなる……ヒーリング!ヒーリング!!ヒーリング!!」
彼女は必死に治癒魔術を唱え続けた。だが、彼女にはまだ治癒魔術を教えておらず、呪文も理論を完全には理解していない。魔力は形をなさず、ただ無秩序に大気へ霧散していく。
だが。
握られた彼女の手から、わずかな、本当にわずかな魔力が、私の体内へと浸透してくるのを感じた。
(……
彼女の必死の想いが、空っぽだった私の器に、数滴の魔力を満たした。
(……これなら……いける)
私はその極小の魔力を使い、自分自身に超精密な治癒魔術を施した。
全快は当然望めない。だが、出血の根源となっている太い血管を繋ぎ直し、最低限の血圧を確保する。さらに傷口を魔力で焼き固め、かさぶたを強制的に生成した。
「なっ……!あの致命傷から、自力で回復しているというのか?」
緑髪の男の、驚愕に満ちた声が聞こえた。
私は微かな生命の灯火を繋ぎ止めた安堵の中、深い眠りへと再び落ちていった。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ヒトガミとの接触が最低限となり、原作と違ってルーデウスの覚醒が早かったため、魔物の群れを引き寄せてしまいました。
エリスからの魔力の譲渡は独自設定です。
作中の設定として、『人には指紋のようにそれぞれ独自の魔力波長が存在する』としています。その魔力波長に対して呪いの干渉があれば、見るだけでも害意や善意を抱いてしまう、というものでもあります。さらに、
引き続きお付き合いいただけますと幸いです。