無職転生 ~性格改変_エンジニアリング視点での魔術構築~   作:haru-ha

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【設定について】
本作は『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』の二次創作小説です。
pixivに掲載していた小説のセルフ転載となります。(所々、追記・修正しています)

以下の独自設定(IF設定)を含みます。
・原作と違って、元々存在していたルーデウスの自我は失われず、そこに「ある男」の記憶だけが継承されたという解釈で執筆しています。
・そのため、原作のルーデウスとは性格や口調、判断基準が異なります。

【注意事項】
・原作のストーリー改変(生存IFなど)が含まれる可能性があります。
・キャラの独自解釈、および設定の捏造が含まれます。
・原作全編のネタバレに配慮しておりません。
なんでも許せる方のみ、お進みください。


第11節 非正規空間の解析:ヒトガミの干渉とリソース枯渇による機能不全

Side: ルーデウス

 

「動くなっ! ルーデウス!!」

 

ギレーヌの鋭い叫びと同時に、私の頭上を凄まじい衝撃波が通り過ぎた。

剣神流――『光の太刀』。

 

直前まで私の背後に漂っていた殺気が、その一閃によって弾かれる。だが、気配は消えたわけではなかった。気配の主は視認できないほどの速度で移動し、空ぶった光の太刀は数メートル先の樹木を粉砕した。

 

(……瞬間移動?いや、疑似魔力眼(マナ・サイト)で追える。光の粒子となって移動しているのか。検証したいが……今はそれどころじゃない!)

 

私は両手で杖を支え、五重結界の維持に全神経を集中させていた。空に浮かぶ異変の臨界はもう目の前だ。私の魔力が、地面を通して巨大な術式へと注ぎ込まれ続ける。

 

「我が名はアルマンフィ。とあるお方の命により、この異変の元凶を断ちに参上した」

 

いつの間にか私の視界の端に移動していた男が、静かに告げた。キツネのような面で顔を隠しているが、その立ち姿からは理を超えた実力者の風格が漂っている。

ギレーヌが剣を構え、男の前に立ちはだかった。

 

「女、どけ。その小僧を殺せば、この異変も止まるやもしれん」

「ふざけるな!あたしは剣王ギレーヌ!この子は異変を止めようとしているのだ!」

「剣王?……フン、信じられるか。その小僧からは凄まじいほどの魔力が溢れているぞ」

「我が師『剣神』と、我が故郷ドルディア族の名誉にかけて、ルーデウスの邪魔はさせない!」

 

ギレーヌの咆哮が響く。エリスも腰の剣に手をかけ、いつでも飛び出せるよう殺気を剥き出しにしていた。

 

だが、事態は待ってはくれなかった。

 

 

 

 

 

 

――ミ、リ。

 

 

 

 

 

 

世界が鳴いた。

 

空を支配していた赤い球体が、ついにその形を保てなくなり、内側から崩壊を始めた。

直後、目を焼くほどの純白の光が溢れ出す。

 

「来た……!!」

 

私は歯を食いしばり、結界に魔力を最大出力で流し込んだ。

 

光の奔流を結界の中に閉じ込めようと試みるが、その衝撃は私の想像を遥かに超えていた。

衝突した瞬間、内側の二層の結界が、薄い硝子細工のように呆気なく粉砕される。

 

「なっ……!?」

「なんだ、この光は……!?」

 

アルマンフィとギレーヌの戦いが、その圧倒的な光の暴力によって中断される。

三層目の結界も、悲鳴を上げて砕け散った。このまま抑え込むのは不可能だ。

衝撃を抑えるのではなく、逸らす結界に切り替える!私は瞬時に魔法陣の術式を書き換えた。

 

衝撃を正面から受けるのをやめ、空と地へとエネルギーを逃がす。

ロアの空に向かって巨大な光の柱が立ち昇り、同時に地面が地響きと共に削り取られていく。

 

効果は、あるようだ。光の圧力は、最初の一撃こそ最大だったが、徐々に収束し始めている。四層目の結界が砕け散る中、私は残った最後の五層目にすべての魔力を、そして自身の命を削るような意志を注ぎ込んだ。

 

「……ッ、これで、抑え込む……!」

「お前は一体、何をしているのだ……!?」

 

あまりの光景に放心していたアルマンフィが、私に詰め寄ろうとする。だが、私には対応する余裕など一分も残っていない。視界は点滅し、魔力枯渇による激しい眩暈が脳を揺らしていた。

 

だが、私の窮地を見たエリスが、反応してしまった。

 

「ルーデウスに、近寄るなぁぁぁ!!」

「よせ、エリス!!」

 

ギレーヌの制止は届かなかった。エリスは凄まじい踏み込みでアルマンフィに斬りかかる。アルマンフィは反射的にダガーで応戦し、エリスを容易く弾き飛ばした。

不運にも、吹っ飛ばされたエリスの体が、私の背中に激突する。

術式が乱れ、私はエリスを巻き込むようにして、弱まりつつもまだ激しく渦巻いていた光の中へと、吸い込まれるように転倒した。

 

「エリス!!ルーデウス!!」

 

ギレーヌの手が空を切る。

私とエリスの視界は、抗う術もなく、純白の闇へと塗り潰された。

 

________________________________________

Side: ルーデウス

 

気が付くと、私は一面真っ白な空間に浮いていた。

 

肉体という感覚がない。ただ、ゆらゆらと揺らめく光の意思として、そこに存在していた。

 

(……死んだのか?異変のエネルギーに耐えきれず、消滅したのか?)

 

「――ちがうよ」

 

背後から声がした。身体はないはずなのに、「振り向く」という感覚があった。

 

「やぁ。僕はヒトガミ。君の味方だよ」

 

そこにいたのは、男とも女ともつかない、顔の部分に何もないぼやけた影のような存在だった。良く見えないが、服を着ていないように見える。

 

不気味なほど親しげな、人を食ったような声。

その瞬間、『記憶』が激しく警鐘を鳴らした。これは『記憶』でいうところの、ペテン師の類だ。

 

ヒトガミと名乗る不審者は、私が大規模な魔力災害に巻き込まれて転移したこと、その先は魔大陸と呼ばれる極めて過酷な環境であることを、独り言のように喋り続けた。

 

その口調には、明らかにこちらを誘導しようとする意図が含まれている。

 

(……信用できない。この存在の言葉を鵜呑みにするのは、できるはずがない)

 

私は話を聞く振りをしながら、この空間の法則を解析しようと試みた。

身体はなくとも、私自身の「魔力」だけは存在している。私は魔力を薄い膜のように広げ、この白い空間の応答を確認した。

 

「?なにをしているんだい?」

 

不審者が、話を止め、訝しげにこちらを覗き込む。

魔力の伝播速度、広がり方……ここは現世とは全く異なる法則で構成されている。

 

「……位相が異なる、別の世界……?ここは、魔力体、いや、精神体しか存在できない空間……?」

 

私がその仮説を呟いた瞬間、世界が拒絶するように歪んだ。

ヒトガミの驚いたような気配を最後に、私はその白い世界から急激に放り出された。

 

________________________________________

Side: ルーデウス

 

ガバッ、と上半身を跳ね上げた。

 

冷たく乾いた風が肌を刺す。まずは自分の身体があるかを確認する。手、足、腹……よし、肉体は欠損していない。

 

次に周囲を見渡した。

見渡す限りの荒野。空には、禍々しいほど大きな月が浮かんでいる。あのヒトガミを名乗る不審者によれば、ここは魔大陸か?

 

「……エリス!」

 

すぐ隣で、エリスが意識を失ったまま横たわっているのを見つけ、私は心から安堵した。

だが、安堵は一瞬で霧散した。

 

 

――ガルルル……。

 

 

砂を噛むような、低い唸り声。

私が起き上がった物音に引き寄せられたのだろう。夜の闇の中から、二つの、三つの光る眼がこちらを狙っていた。

 

その影の形は、狼のようでもあり、獅子のようでもある。

影は次々と増えていく。一つ、二つと合流し、あっという間に二十、三十という群れへと膨れ上がった。

 

(……不味い。ブエナ村の魔物とは、発している殺気が違いすぎる)

 

身体が震え始めた。本来の私なら、魔術で一掃できる相手かもしれない。

だが、今の私の魔力残量は、ほぼ「空」だった。あの災害を抑え込むために、すべての魔力を使い果たしてしまっていた。

 

私は眠るエリスの傍に落ちていた彼女の剣を手に取った。

代わりに、私の大切な杖『傲慢なる水竜王(アクア・ハーティア)』を、彼女の手に握らせる。

 

「……エリスは、私が守る」

 

私は剣を構え、闇の軍勢を見据えた。

 

________________________________________

Side: ルーデウス

 

どれだけの時間、剣を振り続けたのだろうか。

 

戦果は、惨憺たるものだった。

 

襲いかかる魔物に、私は慣れない剣を振るう。水神流の型を必死になぞるが、闘気を纏っていない子供の腕力では、厚い毛皮に浅い傷を負わせるのが精一杯だった。

 

魔物たちの知能は驚くほど高かった。彼らは集団で連携し、私の死角から、交互に確実に体力を削りに来る。

 

「……はぁ、はぁ……っ!」

 

私の身体は、すでにボロ雑巾のようだった。

 

左腕は序盤に噛み砕かれ、感覚を失ってだらりと垂れ下がっている。全身の至る所から鮮血が噴き出し、視界は自分の血で赤く染まり、半分以上が白濁していた。

 

(……死ぬのか。こんなところで……)

 

魔物たちは、私がもう限界であることを見抜いているのだろう。無駄な反撃を恐れ、直接のトドメを刺すのではなく、失血死を待つかのように私の周囲を執拗にうろつき、汚い涎を垂らしている。

 

だが、私はエリスの前にだけは一歩も立ち入らせなかった。

 

朦朧とする視界の端に、動く影を見つけた。

また魔物か。そう絶望しかけたが、月の光を跳ね返したそれは、『槍』であると直感した。

私は身体の底に残った、本当の最後の一滴の魔力を振り絞った。

 

「『火球弾(ファイアボール)』……ッ!!」

 

夜空に向かって、小さな、けれど必死の光を打ち上げる。

それを見届けた瞬間、私の意識は糸が切れたように途絶え、地面へと崩れ落ちた。

 

________________________________________

Side: ルーデウス

 

気が付くと、パチパチと爆ぜる焚火の音を聞いていた。

 

薄く目を開けるだけでも、全身に激痛が突き抜ける。

身体のあちこちに、何らかの布が巻き付けられていたが、完全な止血には至っていないようだ。

 

『記憶』にある医学知識が告げている。子供の身体にこの出血量は、致死量を優に超えている。

 

今目を開けているのは、単なる生命の最後の残火に過ぎない。私はこのまま、死ぬのだ。

 

「ルーデウス……?ルーデウス!目を覚ましたのね!!」

 

泣き腫らした顔のエリスが、視界に飛び込んできた。

よかった。……エリスは無事だったのか。

 

「……出血量が多すぎる。残念だが、もう助からない。……今のうちに、別れの言葉を告げておけ」

 

低く、けれど慈悲に満ちた声。

そこにいたのは、エメラルドグリーンの髪と、額に宝石を持つ強面の男だった。

スペルド族。ロキシーが「出会ったら最後、家族ごと皆殺しにされる」と言っていた、伝説の魔族。

 

エリスはその男の姿に、本能的な恐怖で身を竦ませ、ガタガタと震えている。

私は男に、エリスを助けてくれたことへの礼を言おうとした。だが、声が出ない。私の命が尽きる寸前の様子にエリスが気付いた。

 

「いっ……やだ……いやっ!!やだぁぁぁ!!」

 

エリスが絶叫した。私の冷たくなり始めた手を握り、涙腺を崩壊させて叫び続ける。

 

「うっ……かみなる……ヒーリング!ヒーリング!!ヒーリング!!」

 

彼女は必死に治癒魔術を唱え続けた。だが、彼女にはまだ治癒魔術を教えておらず、呪文も理論を完全には理解していない。魔力は形をなさず、ただ無秩序に大気へ霧散していく。

 

だが。

握られた彼女の手から、わずかな、本当にわずかな魔力が、私の体内へと浸透してくるのを感じた。

 

(……混合(コンタミネーション)の類似現象?生体同士では互いの相性が相当良くないと起こるはずがないが……私の魔力量が尽きていることが原因か……?)

 

彼女の必死の想いが、空っぽだった私の器に、数滴の魔力を満たした。

 

(……これなら……いける)

 

私はその極小の魔力を使い、自分自身に超精密な治癒魔術を施した。

全快は当然望めない。だが、出血の根源となっている太い血管を繋ぎ直し、最低限の血圧を確保する。さらに傷口を魔力で焼き固め、かさぶたを強制的に生成した。

 

「なっ……!あの致命傷から、自力で回復しているというのか?」

 

緑髪の男の、驚愕に満ちた声が聞こえた。

私は微かな生命の灯火を繋ぎ止めた安堵の中、深い眠りへと再び落ちていった。




ここまでお読みいただきありがとうございました。

ヒトガミとの接触が最低限となり、原作と違ってルーデウスの覚醒が早かったため、魔物の群れを引き寄せてしまいました。

エリスからの魔力の譲渡は独自設定です。
作中の設定として、『人には指紋のようにそれぞれ独自の魔力波長が存在する』としています。その魔力波長に対して呪いの干渉があれば、見るだけでも害意や善意を抱いてしまう、というものでもあります。さらに、混合(コンタミネーション)で『相性』が必要な理由も、異なる波長の魔力は溶け込みづらい、と設定しています。

引き続きお付き合いいただけますと幸いです。
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