無職転生 ~性格改変_エンジニアリング視点での魔術構築~ 作:haru-ha
本作は『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』の二次創作小説です。
pixivに掲載していた小説(完結済)のセルフ転載となります。(所々、追記・修正しています)
以下の独自設定(IF設定)を含みます。
・原作と違って、元々存在していたルーデウスの自我は失われず、そこに「ある男」の記憶だけが継承されたという解釈で執筆しています。
・そのため、原作のルーデウスとは性格や口調、判断基準が異なります。
【注意事項】
・原作のストーリー改変(生存IFなど)が含まれる可能性があります。
・キャラの独自解釈、および設定の捏造が含まれます。
・原作全編のネタバレに配慮しておりません。
なんでも許せる方のみ、お進みください。
Side: ルーデウス
結局、その日はシーローン王国の王宮に一泊することとなった。
ザノバ王子が、私たちを国賓級の扱いで迎えてくれたのだ。
ルイジェルドとパウロは、与えられた装飾過多な豪奢な部屋に「落ち着かん……」と恐れおののいていたが、エリスだけは「宿代が浮いたわね、ラッキー!」とふかふかのベッドに飛び込んでいた。
私に与えられたのは、特別な一部屋だった。
彫像作りに最適化された広く巨大な作業用机、完璧な採光、そして潤沢な資材。
ザノバ王子の私への期待は、もはや信仰に近いものがあるらしい。
旅路では荷物の制限から手の平サイズの像しか作れなかったが、これほどの環境を与えられたのだ。
私の創作意欲に火がつかないはずがなかった。
「……これは、全力で挑む好機だな」
私は結局、一睡もすることなく、夜通し魔術による精密加工に没頭したのだった。
翌朝。何とか納得のいく作品を完成させた私は、ふらつく体で使用人の案内で朝食の場へと向かった。
配慮していただいたのか、そこには私たちパーティの四人とロキシーのみがいた。
並べられた料理の数々は、ボレアス家での経験を以てしても見たことがないほど豪勢なものだった。
もはやマナーを気にすることすら無粋に思える物量だ。
「なんだルディ。お前、顔色が悪いぞ。もしや徹夜したのか?」
パウロがパンを頬張りながら尋ねてくる。
「ええ。ちょっと、興に乗りすぎてしまったようです」
私の回答に、ルイジェルドとエリスから「またか」と言わんばかりの呆れ顔を向けられた。
ルイジェルドは高級な食材を前に無表情ながらも感動している様子で、パウロとエリスは早朝から全力の食欲を見せていた。
私はロキシーと旅の思い出を話し、押し寄せる睡魔と戦いながら、魔大陸では考えられなかった美味に舌鼓を打った。
食後の茶を楽しんでいると、扉が勢いよく開け放たれた。ザノバ王子だ。
「師匠!朝食はいかがでしたか!?我が王国の総力を挙げて用意させましたぞ!」
「……ありがとうございます。人生で最も贅沢な朝食でした。……ところで、その『師匠』というのは?」
「ああ、勝手にお呼びして申し訳ありません!私は生涯を人形に捧げると決めた男。ルーデウス師匠が作る像に、魂を揺さぶられたのです!是非!私を弟子に、あなたを師匠と呼ばせていただきたい!」
他国の王子に「師匠」と呼ばれるなど外交上のリスクでしかないが、エリスが「いいじゃない、師匠で」と適当に返したことで、なし崩し的に決定してしまった。
「それで師匠!作品の方は……!?」
ザノバ王子の熱意に押され、私たちは昨夜の工房へと移動した。
カーテンが開かれ、朝陽が差し込む部屋。作業台の上には、大きな布がかけられた塊が鎮座していた。
「……それでは、お披露目です」
ザノバ王子の合図で使用人が布を引く。
あらわになったのは、作業台の面積を使い切るほどのサイズで造形された、純白の白亜像だった。
「お、お、お、おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ――ッ!!!」
ザノバ王子の絶叫が、王宮の壁を震わせた。
「……これは、俺……か?」
ルイジェルドが呆然と呟く。私は頷き、その像のコンセプトを語った。
「あえて名付けるなら――『赤竜から冒険者を救うスペルドの戦士』です」
先日の赤竜討伐の光景を再構築したものだ。
逃げ惑う冒険者たちの、恐怖に歪む筋肉の一動。それを迎え撃つ赤竜の、凶悪な牙と皮膚の質感。そして中心には、光り輝く槍を手にし、仲間を背後に庇って立ち向かうルイジェルドの威風堂々たる姿。
一晩という短時間ながら、私は魔力の精密制御を極限まで引き上げ、細胞の一つ一つまで彫り込んだ。結果として、今にも動き出しそうな死線の一瞬がそこに定着されていた。
ザノバ王子は像の周囲を高速で回りながら、独り言のように専門的な賞賛を早口で捲し立てている。
パウロは「こいつぁ……ルディ、お前、すげぇな」と絶句し、エリスは「次はあたしの像も作りなさいよ!」と不満げだ。
ルイジェルドは自分の姿を見て、少し照れくさそうに眼を逸らしていた。
ザノバ王子はひとしきり暴れた後、私に五体投地して震えた。
「素晴らしい……!!この感謝を言葉にするなど、今の私には不可能です!これは我が王国の国宝として、末代まで大切にいたします!言い値で買いましょう!国庫を開けてでも支払いますぞ!!」
「……いえ、あくまで修行の一環です。お金は要りません」
趣味の対価として法外な金を受け取るのは、私の主義に反する。しかし……
「ですが、今後の旅のために――頑丈な馬車をご用意いただければ、それで十分です」
結局、私たちはザノバ王子から、高位貴族用に改造した豪勢な馬車と、並の魔物なら蹴り殺すであろう立派な馬を譲り受けた。
出発の直前、ザノバ王子は私の目を涙目で見ながら言った。
「師匠……。この御恩は生涯忘れません。次にお会いする時までに、私も彫刻の腕を磨いておきます。……その時は、必ずまた、師匠の技を見せてください」
「ええ。殿下も、良い作品を作られることを願っています」
「あと、パックスの奴が何か仕掛けてきたら、いつでも私に一報を。あの馬鹿弟にはガツンと言ってやりますので!」
物騒な発言に苦笑しつつ、私はザノバ王子の意外な兄気質に、少し好感を抱いていた。
見送りの中、私は寝不足による心地よい脱力感を感じながら、シーローン王国を後にした。
結局、ロキシーとゆっくり魔術の研究話をする時間は取れなかったな……。そんな心残りを抱きながら、私たちはアスラ王国を目指した。
ザノバ王子から贈られた最高級の馬車に揺られ、私たちの旅は最終局面に差し掛かっていた。
ついにたどり着いたのは、中央大陸の要衝、赤竜の下顎。
ここを抜ければ、アスラ王国はもう目前だ。
遠くの断崖からは、赤竜の群れの耳を刺すような鳴き声が断続的に響いてくる。
「……無事に通過できそうですね」
そう口にした矢先だった。
前方から、二人の旅人が歩いてくるのが見えた。
一人は、この世界では極めて珍しい、漆黒の長い髪を持つ女性。彼女は不気味なほどの無機質な仮面を顔に付けており、エリスが思わず目を見張るほどの異彩を放っていた。
だが、それ以上に。
隣に立つ男の存在感が、世界の密度を書き換えていた。
目つきの鋭い、白髪の巨漢。男とはまだ十数メートルの距離があったが、肌を刺すような凄絶な威圧感が、大気そのものを凍りつかせていた。
不必要に刺激せぬよう、私たちは街道の端に寄り、会釈程度で通り過ぎようとした。
しかし、その男が不意に足を止めた。
「……そこのお前。もしやスペルド族――いや、その顔、ルイジェルド・スペルディアか?」
髪がないから分からなかったぞ、と男は距離を詰めてくる。
あまりに馴れ馴れしい態度。私はルイジェルドに視線を送った。
「……知り合い、ですか?」
問いかけた瞬間、私は凍りついた。
ルイジェルドの顔が、見たこともない絶望の色に染まっていたのだ。
歴戦の戦士が、蛇に睨まれた蛙のように硬直している。歯の根が合わず、ガチガチと音を立てて震え、全身から滝のような冷や汗が流れている。
横のパウロも同様だった。あの赤竜すら恐れず突撃していく男が、顔面を蒼白にし、剣の柄を握る手だけが小刻みに震えている。額から伝う汗が、次々と地面に染みを作っていた。
エリスも、声すら出せていない。あの気丈な瞳から表情が抜け落ち、ただ喉の奥で「ひっ」という掠れた音だけが漏れている。三人とも、抜刀しようとする意志はあるはずなのに、指先一本さえ動かせずにいた。まるで、本能そのものに「動くな」と命令されているかのような硬直だった。
(……これは、なんだ?なにが起こっている?)
「ははぁ、読めたぞ。子供好きの貴様のことだ、転移で飛ばされたこの二人を送り届けてきた――ということか」
男はルイジェルドたちの恐怖を当然のこととして流し、私に視線を向けた。
私はすぐさま魔眼を両方とも同時起動させる。
予見眼――視界に激しい砂嵐のようなノイズが走り、未来が全く映らない。
目の前の男から放射されている魔力の密度が、計測不能なほどに高すぎるのだ。
「……もう一人は――だれだ?」
私は震える呼吸を制御し、慎重に名を告げた。
「……ルーデウス・グレイラットです」
「ふむ?おかしいな。パウロ・グレイラットに息子はいないはずだ。二人の娘だけが生まれる歴史のはずだが」
……何を言っている?歴史?娘が二人?
頭の中で、思考が空回りする。この男は、まるで「決まりきった台本」を読み上げるかのように、私の存在を否定した。単なる勘違いや情報不足の口ぶりではない。彼の口調には、確信があった。
(……この男は、何かを『知っている』。私が知らない、この世界の何かを。パウロに息子が生まれない『歴史』とは何だ?私はこの世界にとって、本来存在するはずのない――イレギュラーだとでもいうのか)
背筋を這い上がる悪寒は、目の前の威圧感だけが理由ではなくなっていた。
「……貴方の、お名前を伺っても?」
「ふむ。……オルステッド。それが俺の名だ」
ルイジェルドの体が、雷に打たれたように跳ねた。
「ルイジェルドさんたちと、面識があるのですか?」
「いいや、まだ知り合っていない。……ん?」
オルステッドの双眸が、至近距離で私を射抜いた。
「お前……。なぜ、目を逸らさない?」
「……」
私は無言で、彼の瞳を見つめ返した。
「貴様ッ!!それ以上ルーデウスに近づくなぁぁ!!」
ルイジェルドが、死に物狂いの咆哮を上げた。
「ああ、わかっている。……つまりお前は、呪いの恐怖を覚えていないのか」
オルステッドは身を引き、一人で「おかしい。お前と出会った記憶が、どの周回にもない」と不可解な呟きを漏らしている。
そして、彼は蛇のように目を細め、最後通告のような質問を投げかけてきた。
「――もしかしてお前。この単語に聞き覚えがあるのではないか?」
「『
ここまで読んでいただきましてありがとうございます。
原作ルーデウスはデフォルメされたフィギィア作りが得意ですが、このルーデウスは写実的な彫像作りが得意です。
ちなみに、ロキシー像の衣装パージは不可です。
最後に、運命の出会いがありました。
次は、