無職転生 ~性格改変_エンジニアリング視点での魔術構築~ 作:haru-ha
本作は『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』の二次創作小説です。
pixivに掲載していた小説(完結済)のセルフ転載となります。(所々、追記・修正しています)
以下の独自設定(IF設定)を含みます。
・原作と違って、元々存在していたルーデウスの自我は失われず、そこに「ある男」の記憶だけが継承されたという解釈で執筆しています。
・そのため、原作のルーデウスとは性格や口調、判断基準が異なります。
【注意事項】
・原作のストーリー改変(生存IFなど)が含まれる可能性があります。
・キャラの独自解釈、および設定の捏造が含まれます。
・原作全編のネタバレに配慮しておりません。
なんでも許せる方のみ、お進みください。
Side: ルーデウス
魔大陸のあの日、精神体として出会ったあの不審者がそう名乗っていた。
私の脳裏にその姿がよぎった瞬間、私の思考の動きを、オルステッドは冷徹に読み取った。
「――ッ!!」
オルステッドから爆発的な殺気が立ち上る。
視認不能。私の眼が反応するよりも早く、彼の手刀が私の喉元へ迫る。
それを防いだのは、限界を超えて身体を動かしたルイジェルドだった。
「逃げろッ!!ルーデウス――!!」
「邪魔だ、ルイジェルド・スペルディア」
あの、最強の戦士ルイジェルドが。
紙屑のように殴り飛ばされた。それは物理的な衝撃というよりも、法則の暴力だった。
ルイジェルドは数十メートル後方の岩壁に激突し、ピクリとも動かなくなった。土煙が舞い上がり、砕けた岩の破片がぱらぱらと地面に降り注ぐ。
「悪いな……。こいつはどうやら、俺の敵――『
オルステッドが手の骨を鳴らす。
「殺さねばならん」
恐怖で硬直していたパウロとエリスが、親としての、そして戦士としての本能で無理やり身体を動かした。
指の一本すら動かせなかったはずの体を、精神力だけで無理に叩き起こしたのだろう。エリスの目には涙が浮かび、パウロの歯は恐怖と怒りで軋んでいた。それでも二人は、震える足で地を蹴った。
エリスが袈裟懸けに、パウロが鋭い切り上げで左右から肉薄する。
「奥義――『流』」
二人の渾身の剣閃が、まるで子供の遊びをあしらうように虚空へ受け流された。
二人は揃って壁に叩きつけられ、意識を失う。
そのままの予備動作で、オルステッドの諸手による打撃が私の胸部に叩き込まれた。
バキィッ、という不快な音が体内で反響する。
肺が潰れ、肺胞が破裂したのが感覚として理解できた。呼吸をしようとしても、空気が入ってくる感触がない。喉の奥で、ひゅう、と虚しい音だけが鳴る。溺れているのに、水は一滴もないという奇妙な感覚だった。
「魔術師はまず肺を潰すに限る。……死んで
「『
至近距離で放たれた雷光。
だが、オルステッドは左手を一振りするだけで、魔術を「手で払って」消滅させた。
「……無詠唱、か。今の魔術はなんだ? 驚いたな……。俺の肉体に、僅かだが焼損の傷を付けるとは」
彼が独白している間に、私は体内の魔力をフル稼働させ、潰れた肺と心臓周辺を治癒魔術で強引に繋ぎ直した。
かちり、かちりと、砕けたガラス細工の破片を無理やり組み上げるような感覚。激痛が脳を焼くが、止まっている暇はない。
同時に、身体の周囲に八層の
「
魔力を全開で循環させる。
ルイジェルドたちは手加減で済まされたようだが、私に対してこの男は殺意を隠していない。
ならば、死ぬ気で、死力を尽くして抗うまで。
『記憶』がこれまでにないほど強い警鐘を鳴らしているが、今は無視だ。
私は腕の組織から
最初に行ったのは、距離の確保だ。
風の噴射と火魔術の小規模爆発を組み合わせ、垂直に上空へ跳躍する。意識を失った仲間を巻き込むわけにはいかない。
オルステッドは重力を無視したような跳躍で追いすがってくる。
「『
十六本の氷槍を多重射出するが、彼は空中でそれらをすべて素手で粉砕した。一瞥もくれない。
「『
数多の不可視の刃を射出する。だが、オルステッドはその連撃の隙間をすり抜けるように潜り込み、あるいは手刀で無効化して肉薄してくる。
「それは
私は全力で空中を逃げ回りながら、至近距離での火魔術爆発を連続発生させて、オルステッドを地面に叩き落とすことに成功する。
宙に浮かんだまま、杖を地面に向ける。
辺り一面が泥沼と化し、オルステッドは足を取られる。
そのまま土魔術を操り、泥沼の中に巨大な破砕機を生成する。
『記憶』の中で見た、金属の塊すら砕く産業用重機だ。
しかし、次の瞬間、構築された破砕機が泥沼ごと吹き飛ばされ、石の塊が砂となってまき散らされる。
オルステッドは不快そうな顔で見上げ、こちらに照準を合わせる。
「っ!まだだ!」
泥と一緒に地中の水分も宙を舞っている。
――『
宙に浮く水滴を『可燃性の水』に無理やり書き変える。凄まじい魔力の消費だ。
そして、限界まで圧縮した
ゴォォォッ……ズドォォンッ!!
霧状に散った可燃性の水蒸気に火球が引火し、一拍遅れて爆発が周囲を呑み込んだ。
やったか?
いや、オルステッドの外套は燃えたようだが、本人には傷一つ付いていない。
――あれに耐えられる生物がいるのか!?
オルステッドが飛び上がる。予見眼をもってしても、反応できない。
勘だけで、水神流の理合で、左手でぎりぎり受け流す。
左手が裂け、骨が露出する。即時、治癒魔術で治す。
「『
電気を光子に変え、レーザーを連続して放つ。
オルステッドは跳躍しつつ、片手でそれらを撥ね退けた。
良く見れば、オルステッドの腕には熱傷の痕が見えた。
そういえば、初めに放った『
この、やたら硬い闘気の持ち主に、風も水も土も火も全く通用しなかったにも関わらず、である。
電子や光子を用いた攻撃なら通用する?
だが、一直線に進む『
光子を直接生み出し、制御する?いや、完璧に想像できなくても良い。『記憶』とは違い、ここは魔力がある世界だ。私は『魔力』という、理解に及ばない力を行使出来ている。であれば、理解の及ばない物質を生み出すことも不可能ではないはずだ。操作可能な、『光子のような何か』を想像しろ!
「……『
土壇場で生み出した魔術は、私の想像通りに『曲がる』光線となった。
自律誘導される五本の雷光がオルステッドを襲う。三本は弾かれたが、二本は直撃した。
再度オルステッドが地に叩きつけられ、辺りが砂塵で見えなくなる。
手を緩めるな!!
次は十本の『
視界の端に映る自分の髪が白くなり始めていることに、他人事のように気付いた。
……それらすべてが弾き飛ばされ、周囲へ飛び散ったのが分かった。
――オルステッドはいつのまにか、手に大きな剣を持っていた。
オルステッドの姿がかき消える。
次の瞬間、私の左腕が切り飛ばされた。
「……は?」
唖然とした隙に、重い蹴りを食らう。
風魔術の守りを容易く突破した蹴りは、次は私を地上へと叩き落とした。
あまりの衝撃に、意識が飛びそうになる。
左腕を失った痛みでようやく意識が保てている。焼けるような、それでいて感覚が遠のくような、矛盾した痛みが腕の断面から脳天まで突き抜ける。
地面にぶつかったせいか、全身の骨が砕ける感触もある。内臓が焼けるように熱い。
それでも私は、意識が消える寸前に治癒魔術をねじ込んだ。
あまりの力の差に、敗北の文字が浮かぶ。
……まだだ。まだ、戦える。
エリスとの約束、ルイジェルドとの約束を、守らなければいけない。
なにより、全力で魔力が行使できる初めての戦いに、アドレナリンが全開になったように高揚している。
「ははっ!!強すぎるだろうっ……!!」
全力の戦闘。手加減も、慈悲も、妥協もない真剣勝負。
死に直面しながら、私の心の内側には、今まで研鑽してきた力を存分に振るえる歓喜が溢れ出していた。恐怖と愉悦が渾然一体となり、もはやどちらが自分の本心なのか分からなくなっていた。
「『
彼はそれも手で払いのけたが、直後、その手を僅かに振った。
(……効いている!?少しは痺れたか!?)
「『
私は理性を飛ばし、笑いながら稲妻を連射した。
一撃、二撃、三撃。空が紫に染まる。
ふと、自分の鼻から熱い液体が溢れ出したことに気づいた。身体への魔力負荷が臨界を超えている。
視界の端に映る自分の髪が、完全に白くなっていた。
その一瞬の隙。
オルステッドの剣が、築いていた風の壁を突き破って私の鳩尾へ届いた。
河原を割るような鋭利な衝撃が体の中に入ってくる。周囲に纏っていた風魔術ごと、私は串刺しになった。
「……まだだ。まだ終わらせない……!!」
魔力枯渇だろうが、串刺しにされていようが関係ない。命のすべてを燃やして、絞り出してでも戦いを続けたい。
至近距離から
傷口から、心臓の鼓動に合わせて血が噴き出していた。
距離を取ったオルステッドが、静かに構えを取る。とどめを刺すつもりなのだろう。
だがその前に。私は絞り出した魔力で私の最大威力の魔術構成を完了させていた。
浮遊させていた八層の
放つのは、
先端の二つの魔法陣は照準と速度の最適化を担い、経路上に真空の筒を形成する。手前の三つの魔法陣は収束と圧縮を担う。生み出すのは、先ほど開発した『光子のようなもの』だが、曲がる性質は捨て、ただひたすら強大なエネルギーだけを追求した粒子だ。そして中間の三つの魔法陣が、その加速を担う。
文字通り、命をかけた全身全霊の一撃。
「『
収束された極太の光線が、空間を焼き、一直線にオルステッドを呑み込もうとする。
――これまで一切の攻撃を受け止め、流してきたオルステッドが、初めて身を翻して回避の動作を取った。
光線が彼の頬をかすめ、鮮血が舞う。
「……龍神である俺に、身を躱させるか」
これでは足りない。もっとだ。もっと出力を……!!
剣で心臓を貫かれていようが関係ない。
魔力が尽きていようが関係ない。
戦いの高揚に身を任せ、残る全生命力を、血管が破裂せんばかりに魔術へ注ぎ込む。
――しかし。
ごぽっ、と口から大量の血が溢れ出した。
(……人族の肉体の、耐久限界……?)
視界が急速に狭まる中、オルステッドが私に手を向け、死神のような静かさで告げた。手にしていた剣は、いつの間にかなくなっていた。
「『
回路が、一瞬で断絶した。
展開していた魔法陣が、糸が切れたように霧散していく。
――なんて酷いことをするのだろう。
死に行く私に対して、こんなに魅力的な、興味深い技術を見せつけるなんて。
これから死ぬのに、さきほど使われた『
そんな私の思いも空しく。
完全な無防備となった私の首へ――。
オルステッドの手刀が、音もなく貫いた。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
ついに来ました、
オルステッドと戦う中で、このルーデウスの最大の弱点、『人族としての限界』が明確になりました。