無職転生 ~性格改変_エンジニアリング視点での魔術構築~   作:haru-ha

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【設定について】
本作は『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』の二次創作小説です。
pixivに掲載していた小説(完結済)のセルフ転載となります。(所々、追記・修正しています)

以下の独自設定(IF設定)を含みます。
・原作と違って、元々存在していたルーデウスの自我は失われず、そこに「ある男」の記憶だけが継承されたという解釈で執筆しています。
・そのため、原作のルーデウスとは性格や口調、判断基準が異なります。

【注意事項】
・原作のストーリー改変(生存IFなど)が含まれる可能性があります。
・キャラの独自解釈、および設定の捏造が含まれます。
・原作全編のネタバレに配慮しておりません。
なんでも許せる方のみ、お進みください。


第32節 迷宮の構造解析:最短経路作成と師の救出

 

Side: ルーデウス

 

「おぉ……なんだ、本当にセンパイじゃねぇか!?随分とデカくなりやがって!それに、なんだその髪と傷跡は!?だが、なんでこんな最果ての地にまで来てるんだ?」

 

ラパンの冒険者ギルド。その入り口で、見慣れた猿顔の男――ギースが、顎が外れそうなほど口を開けて硬直していた。

 

「母を探しに来た。ギースこそ、なぜここに?」

「センパイもか!?俺たちもだ!……にしても、よく場所が分かったな。偶然にしては出来過ぎてるぜ。パウロもいるぞ。俺らは今、あいつに招集されてここに詰めてるんだ」

「父さんが……。母さんの居場所を、父さんも掴んでいたということか」

 

ゼニスの居場所を魔術具で探す過程で、パウロが世界中あちこちを探し回っていることには気が付いていた。ゼニスの居場所が絞り込め始めた時点でそちらに集中していたが、まさかベガリット大陸に来ていたとは。

広大な世界でどこに転送されたかも分からない一人を、この短期間で特定し、ここまで辿り着いたパウロの執念。……正直、恐れ入るという言葉以外に見つからない。

 

「あら、随分と仲がおよろしいこと。二人は知り合いだったのですか?」

 

後ろから歩み寄ってきたエリナリーゼが、面白そうに首を傾げた。

 

「まあな。一緒に大森林の牢屋に入ってた仲だ」

「懐かしいな」

 

「しかし、まさかギースが母さんの捜索隊にいるとはな。……あの一件の後、大森林を出てからどうしていたんだ?」

「食い詰めた冒険者稼業だ。S級っつう肩書はあるが、知っての通り腕はからっきしでな。……そんな時、旧知のパウロから声がかかった。恩もあるし、何より暇を持て余していたのもある」

「そうか。……世話になった」

「よせよ、そういうんじゃねぇって。俺はあくまで金と義理で動いてるだけだ」

 

そう嘯きながらも、ギースの足取りは迷いなく、慣れた様子で路地を進んでいく。長らくこの地に留まり、土地勘を得ていることが窺えた。

 

「パウロのところに案内するぜ。あいつも、お前に会えば少しは正気に戻るだろ」

 

私たちはギースの先導で、彼らが拠点にしている宿へと向かった。

歩きながら、私は現在の捜索状況をギースに問いかけた。

 

「それで、母さんの捜索はどうなっている?」

「……芳しくねぇ。長期戦になるとは思っていたが、もう一つ致命的な難題ができちまってな。正直……お手上げに近い」

(難題……?)

 

嫌な予感が、背筋を冷たく撫でる。

宿に入ると、酒と埃の匂いが混ざり合った独特の空気に包まれた。

 

「ここが俺たちの宿だ。……いいか、センパイ。パウロは今、相当参ってる。エリナリーゼ、あんたも言いたいことはあるだろうが、今回ばかりはちっとばかし抑えてやってくれよ?」

「……善処しますわ。約束はできかねますけれど」

 

ギースが指差した先。

食堂の隅、テーブルに力なく突っ伏している男の姿があった。

周囲には捜索に協力しているであろうメンバーが数人。その中に――。

 

「――っ!旦那様!起きてください!ルーデウス様たちが……ルーデウス様が来られました!!」

 

リーリャが私に気づき、弾かれたように叫んだ。

 

「……んん?……ルディ……?……ああ、またあの夢か」

 

パウロは夢遊病患者のような足取りで、よたよたとこちらへ歩み寄ってくる。

 

「……よぉ、ルディ。元気そうじゃねぇか……。ノルンとアイシャは……あいつらは、元気にしてるか?」

「二人とも保護しました。今は魔法都市シャリーアで安全に暮らしています。信頼できる有力な友人たちに守りを任せてきたので、心配いりません」

「そっか、そっか……。流石はルディだ。……頼りになるなぁ、お前は……」

 

パウロが、がばっと私を抱きしめてきた。その体からは酒の臭いと、拭いきれない疲労が漂ってくる。

 

「俺は……最低な奴だ。母さんも助けられない。自分で決めたことも守れない。親として、お前にも何一つしてやれない……。情けなくて、死にたくなる……」

 

(――疲労と自責の念が、思考の処理能力そのものを蝕んでいる。人は極度のストレス下に置かれると視野が狭窄し、合理的な判断が難しくなるものだ。……今の父さんに必要なのは叱咤ではなく、休息と、具体的で実行可能な次の一手だろう)

 

「……安心してください、父さん。私が来たからには、もう大丈夫です」

 

私は彼を抱き締め返した。パウロは「ルディ、お前……本当に大きくなったなぁ……」と子供のように呟き、ふと我に返ったように私の顔をぺたぺたと触り始めた。

 

「……っ!?まさか、本物か?幻覚じゃねえのか!?」

「本物のあなたの息子ですよ、父さん」

「……すまん、寝ぼけてた……。って、ルディ!?なぜここにいるんだ!?俺たちの居場所を、どうやって特定した!?」

「……私のほうも、聞きたいことが山ほどあります。まずは腰を落ち着けて、状況を整理しましょう」

 

リーリャが差し出した水を、パウロは一気に飲み干した。ようやく彼の瞳に、かつての鋭さが僅かに戻る。

 

「まずは、私たち側の経緯から説明します」

 


 

私は経緯を要約して伝えた。

ラノア魔法大学への入学前にエリナリーゼと出会い、パーティを組んだこと。大学で平穏に過ごしていたが、ゼニスの失踪を知り、即座に『血縁を探す魔術具』を開発したこと。そしてベガリット大陸に反応を検知し、エリナリーゼと共に最短ルートでここへ向かったこと。

 

「ちょっと待て、ルディ。いろいろと次元が違いすぎて頭が追いつかん。……『血縁を探す魔術具』?そんなものを自作したのか?それに、移動が速すぎやしねぇか?」

「ブエナ村で開発した『魔力を可視化する魔術具』を覚えていますか?あの技術にミグルド族と獣族の技術を足して、血縁特有の魔力波長に反応するように改造したんです。移動に関しては、ナナホシという友人から教わった、秘密の方法を利用しました」

「……普通なら一生かかっても不可能だろうが。センパイなら、やりかねねぇな」

 

ギースが感心したように口を挟む。

 

「……はぁ、やっぱお前はすげぇな。……それで、ノルンとアイシャは大丈夫なのか?」

「シャリーアで守っています。アスラ王国の王女、シーローンの王子、ミリス教皇の孫、獣族の姫君たち……。それに、シルフィも一緒です」

「……またとんでもない面子と繋がったな。まあ、あのシルフィ嬢ちゃんがついてるなら、安心か」

「しかし、センパイの魔術具がここを示してるってことは、ロキシーの情報も正しかったってことだな!」

「……ロキシー先生も、ここに来ているのですか!?」

 

私の問いに、パウロとギースの顔が同時に曇った。

 

「……俺たちの経緯も話さなきゃならんな。ゼニスが消えてすぐ、俺とリーリャは捜索を始めた。ルディを探していた頃の人脈をフル活用してな。お前の時の教訓があったから、魔大陸にも情報が届くように手を打っておいたんだ。すると、里帰りしていたロキシーがそれを見てくれた」

「……シーローンでの任を終え、ご両親の元へ戻っていたのですね。それは良かった」

「ああ。ロキシーは魔大陸側を捜索してくれていたんだが、その道中で偶然、魔界大帝キシリカ・キシリスと出会ったらしい。そこでキシリカの魔眼を使い、ゼニスがラパンの近くにいることが分かったんだ」

「ああ、あの御仁ならやりかねない……」

 

私は無意識に、キシリカから授かった左の予見眼を指先で触れた。

 

「ロキシーはすぐに情報を知らせてくれ、俺たちと合流してベガリット大陸まで来た。そして、ギースが情報収集してゼニスの目撃者を探した……だが、最悪なことに、ゼニスは迷宮の中で目撃されていた。俺たちは、すぐにその迷宮に向かった」

「……そこで、何かが起きたのですね?」

「……そうだ。その迷宮は、この辺りでも最古で最悪の厄災と言われる『転移の迷宮』。俺たちは何度もアタックしたが、構造が複雑すぎて半分も攻略できていねぇ。……そして、一ヶ月前。ロキシーが、探索中に仕掛けられた転移魔法陣を踏んでしまい、行方不明になった」

 

尊敬する師の名。そして『行方不明』という単語。

目の前が暗転しそうになるが、私は無理やり思考をポジティブな方向へ固定した。

 

「……落ち着いてください。ロキシー先生は魔術師として高い能力を持っています。単独であっても、生存している確率は高い。……救出は可能です」

 

私の言葉に、パウロが顔を上げた。

 

「……ルディ!ああ、そうだな!お前が来てくれたんだ、いけるはずだ!」

 

その後、パウロの仲間であるタルハンドとヴェラを紹介された。

パウロはエリナリーゼに深々と土下座して過去の不始末(黒狼の牙時代の諍いだろう)を謝罪し、何とか「一時休戦」の形での仲直りを果たした。

 


 

ゼニスが囚われているのは、難易度S級の『転移の迷宮』。

私は事前にナナホシから借りていた本、『転移の迷宮探索記』を取り出した。

 

「ギース、この資料を見てくれ。転移迷宮における魔方陣のパターンが解析されている」

「……なんだこりゃ!?俺たちが何カ月かけても分からなかった『法則』が全部書いてあるじゃねえか!これが本当なら、六階層まではフリーパスだぜ!」

 

これまでは三階層で足止めを食らっていたらしい。

私たちは明日、早朝から救出作戦を開始することを決定した。まずは一ヶ月前にはぐれたロキシーを捜索し、彼女を回収。その後、態勢を整えて最深部を目指す。

 

その夜、私はパウロたちと同じ宿に泊まった。

リーリャが私の長い髪を解きながら、静かに語りかけてくる。

 

「ルーデウス様とこうして夜を共にするのは、ブエナ村以来ですね。……アイシャは、あの子は、わがままを言っていませんか?」

「いいえ。アイシャは頑張りすぎるほど頑張っていますよ。家事全般はもちろん、母さんの居場所を特定するための座標演算まで、私の片腕として完璧にこなしてくれました」

「座標計算?どんな仕組みなんだ?」

 

パウロが興味深げに覗き込んできた。私は方位磁石型の魔術具を取り出した。揺れる指針は、今はパウロを指している。

 

「魔力には波長があり、血縁者同士はその波形に高い相和性を示します。この魔術具は、起動した人物に近い波動を持つ方向を指し示すんです。……ただし、ノルンや父さんにも反応してしまう。だから複数の地点でデータを採取し、不要な信号を除去するために大量の逆演算が必要でした」

 

「幸いにも、父さんやノルンといった、居場所がある程度分かっている血縁者の反応が、いわば『物差し』の役割を果たしてくれました。既知の位置に対する反応の強さを基準にすることで、未知の母さんの反応が本物かどうかを、確信を持って判別できたんです」

「……ほぅ。それをアイシャが?」

「ええ。彼女は数日で計算式をマスターしましたよ。……アイシャだけではありません。ノルンも学校でアリエル王女や生徒会の人々に気に入られ、自分の居場所を見つけています」

「そうか!アイシャも、ノルンも……。ハハッ、可愛いからな、俺の娘たちは!」

 

パウロの顔に、父親らしい明るい笑みが戻った。リーリャも「……ありがとうございます、ルーデウス様」と涙を拭っていた。

 

私は寝る前に、魔術具の最終調整を行った。

パウロの魔力波長をホワイトリストに登録してノイズをカット。さらに水平方向だけでなく「深度」も検知できるよう構成を変更した。

 

 

 

翌朝。ついに私たちは『転移の迷宮』へと足を踏み入れた。

 

灯のスクロールを起動し、洞窟内を照らす。

パーティの役割分担は完璧だ。

ギースは斥候兼ナビゲーター。資料を元に最短経路を指示する。

エリナリーゼはメインタンク。最前線で敵を引き受けつつヘイト管理。

パウロは近接のメインアタッカー。魔物を瞬時に斬り捨てる。

タルハンドはサブタンク兼、魔術師として後方支援する。

そして私は後方メインアタッカー兼ヒーラーだ。

 

この布陣は、前衛が受けるダメージの総量、後衛が捌ける情報処理の量、それぞれの疲労回復速度――そういった変数を頭の中で概算し、最も破綻しにくい組み合わせとなっている。一点に負荷が集中する布陣は、その一点が崩れた瞬間にパーティ全体が瓦解する。だからこそ、役割にはあえて重複を持たせている。エリナリーゼが倒れても、パウロが即座に前衛を代替できるように。私が倒れても、タルハンドの支援でパーティが即座に瓦解しないように。

 

第一階層。パウロの動きは以前にも増して鋭かった。

 

「ルディ!そこだ!!」

「了解。――『氷槍(アイスランサー)』」

 

地面から突き出た氷の刃が、魔物の急所を的確に射抜く。躱されないように、氷の出現地点を魔物のすぐ近く、それも死角に設定してある。

ほとんど補助の必要すらない。私とパウロの連携は、長年の経験を感じさせるほどに洗練されていた。

 

「……ルーデウスとパウロ、随分と息が合っていますわね」

 

エリナリーゼが感心したように言う。

 

「ミリス神聖国からブエナ村まで、パーティーを組んでたからな!」

 

パウロが誇らしげに応える。

迷宮の随所には、罠である『不正規転移魔法陣』が設置されていた。踏まぬよう、細心の注意を払いながら進む。

広い空間に出ると、そこには蜘蛛型の魔物が天井まで埋め尽くしていた。

 

「……こりゃ儂らの出番だな」

「私がやります」

「わかった、火は使うな。あと、天井への攻撃は避けよ」

 

私は傲慢なる水竜王(アクア・ハーティア)を顕現させた。

 

「『追従雷銃(ホーミング・レイ)』」

 

杖の先から放たれた数十本の雷光。それらは生き物のように空間を蛇行し、蜘蛛たちの頭部だけを精密に撃ち抜いていく。

一瞬の閃光の後、残されたのは無傷の天井と、全滅した魔物の死骸だけだった。

 

「ほう……。これが『雷鳴のルーデウス』の魔術か。ロキシーの弟子、やはり規格外じゃな」

 

タルハンドが呆れたように笑う。

 

「……その二つ名、どこまで広まっているのか怖くなってきました」

 

私たちは、第一階層から第二階層への転移陣を正確に踏み抜き、さらに奥へと進んだ。

 


 

第二階層では、魔物の種類がさらに凶悪化した。

粘着性の糸で移動を阻害する朱凶蜘蛛(タランチュラ・デスロード)。そして、真剣ですら容易には通らない硬質な外骨格を持つアイアンクロウラー。

 

「……背中側は装甲が硬そうですね。――腹側を狙いましょう」

 

私は杖を一振りした。

地面の水分を一気に凍結させ、そこから巨大な氷の槍を林立させる。

魔物たちは、自分たちが踏みしめている地面から生えた刃によって、腹部の柔らかい部分を貫かれ、串刺しのまましばらく蠢いた後、そのまま静止した。

 

「……相変わらずセンパイの魔術はえげつねぇな。アイアンクロウラーを串刺しかよ」

「柔らかい部分を狙うのは基本だろう。全身が硬質な殻で覆われていれば身動きが取れない。あの速度で動けるのであれば、必ずどこかに柔らかい部分があることは分かっていた」

「……こりゃ儂の出番はないな。杖の手入れでもしていようかのう」

 

第三階層へ突入する前、私たちは広場で休憩を挟んだ。

 

「本によれば、この迷宮の罠は『同一階層内での転送』に限定されている。つまり……ロキシーとはぐれたのが第三階層なら、彼女は今もこの階層のどこかにいる可能性が高い」

「一ヶ月か……。水さえあれば何とか……」

 

パウロが祈るように拳を握る。

 

「ロキシー先生なら魔力さえあれば水の問題はありません。食料も魔物を食べれば大丈夫でしょう。……ロキシー先生を見つけ出すための、特別な探索方法を試します。精神を集中させる必要があるため、周囲の警戒をお願いします」

「ああ、任せろ!何か手掛かりはあるのか?」

「……ミグルド族の集落で習得した技術を応用します」

 

第三階層に転移する。幸い、周りに魔物の姿は見えない。

 

私は地面に座り、目を閉じた。

意識の帯域を、極限まで絞り込む。

 

使うのは――『念話(テレパシー)』だ。

ミグルド族の集落で、彼女がこの術を使えない理由を私は考察していた。

念話は極めて微弱な魔力の振動を用いる。ロキシーは魔術師として優秀すぎるがゆえに、生まれ持った魔力出力が「念話の通信規格」に対して過剰すぎるのだ。

受信感度が鈍いのではなく、微弱な信号が自らの魔力にかき消されている。

 

(……信号処理で言うところの、ダイナミックレンジの問題だ。微弱な入力信号を検出する回路に、桁違いに強い自己雑音が常時流れ込んでいれば、信号は雑音の底に埋もれて観測不能になる。……受信側の感度を無理に上げても、自己雑音まで一緒に増幅されるだけで意味がない。ならば、発想を逆転させるべきだ)

 

ならば、送信側である私が、規格外の出力で彼女の精神を叩けばどうなるか?微弱な受信を諦め、圧倒的な送信出力によって、雑音の壁そのものを突き破ればいい。

 

(――ロキシー先生!!聞こえますか!!ルーデウスです!!迎えに来ました!!)

 

私は脳内の回路を全開にし、壁や岩盤を透過する指向性魔力波を射出した。

本来の『念話(テレパシー)』とは全く異なる運用方法に、脳と精神に焼けるような負荷がかかる。だが。

 

(……っ! 捉えた!!)

 

微弱ながらも、確実なレスポンス。

共鳴。迷宮の北東、四百メートル地点。

 

「……見つけました!反応があります、こっちです!!」

「本当か!?ルートを検索しろ、ギース!」

「待ってください!迷路を辿っていては間に合わない。反応が弱まっている……。死線に近い可能性があります」

 

私は立ち上がり、傲慢なる水竜王(アクア・ハーティア)を両手で構えた。

 

「直線距離で結びます。全員、私の後ろについてきてください!」

「センパイ、何を――」

 

私は土魔術で、目の前の厚さ数メートルの岩壁を一瞬で砂に変えた。同時に、崩落を防ぐための魔力支柱を秒速で構築し、無理やりトンネルを生成する。

 

「崩壊しないよう補強しながら進みます! 」

 

私は仲間を置き去りにする勢いで、壁をぶち抜き、一直線に座標を目指した。

三枚、四枚と岩壁を突き破った先。

巨大な広間が視界に飛び込んできた。

 

そこには、百体を優に超える魔物の群れに囲まれ、肩で息をしながら、座り込むロキシーの姿があった。

 

プツン、と。

脳内の何かが、臨界点を超えて断絶した。

 

気づいた時には、広間は白銀の棺へと変わっていた。

ロキシーを除いたすべての空間、すべての魔物が一瞬にして凍りつき、音もなく砕け散った。

私は、崩れ落ちようとするロキシーを、滑り込むようにして抱きとめた。

 

「……よかった。……間に合った……!」

 

腕の中の師の温もりを確認し、私は震える声で彼女の名を呼んだ。




ここまでお読みいただきありがとうございます。
念話(テレパシー)』については本作の独自設定です。元々魔力の素養が高すぎれば、『念話(テレパシー)』が使えない、というよりは他のミグルド族と波長の強度が合わなくなってしまうと設定しています。
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