無職転生 ~性格改変_エンジニアリング視点での魔術構築~   作:haru-ha

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【設定について】
本作は『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』の二次創作小説です。
pixivに掲載していた小説(完結済)のセルフ転載となります。(所々、追記・修正しています)

以下の独自設定(IF設定)を含みます。
・原作と違って、元々存在していたルーデウスの自我は失われず、そこに「ある男」の記憶だけが継承されたという解釈で執筆しています。
・そのため、原作のルーデウスとは性格や口調、判断基準が異なります。

【注意事項】
・原作のストーリー改変(生存IFなど)が含まれる可能性があります。
・キャラの独自解釈、および設定の捏造が含まれます。
・原作全編のネタバレに配慮しておりません。
なんでも許せる方のみ、お進みください。


第34節 論理的自己犠牲:多頭竜(ヒュドラ)の攻略と致命的エラー

 

Side: ルーデウス

 

荘厳なる迷宮最深部。その静寂を破り、私たちは一歩を踏み出した。

 

視界の最奥に鎮座するのは、九本の鎌首をもたげ、エメラルドグリーンの魔石鱗を不気味に煌めかせる巨躯――『魔石多頭竜(マナタイト・ヒュドラ)』。

そしてそのさらに奥、部屋の心臓部とも言える巨大な緑の魔力結晶の中には、眠り続ける母ゼニスの姿が見える。

 

「よし、行くぜ!!」

 

パウロが地を蹴った。犬のように低く、弾丸のように速く。

『記憶』にあるどのトップアスリートも到達し得ない、闘気による限界を突破した速度。その後をエリナリーゼとタルハンドが追い、私たちは後方からその背中を支えるように前進を開始した。

 

ギースはさらに後方、脱出用の魔法陣の近くで待機している。戦闘能力を持たない彼はこの場では戦力外だが、もし私たちが全滅した際、この凄惨な結末を外へ伝えるという、最も過酷で重要な「観測者」としての役割を背負っていた。

戦況が悪化し、生存者が一人も戻れなかった場合、次の冒険者に渡すべき情報――弱点、対処法、被害の全容――は誰かが持ち帰らねば永遠に失われる。ギースの存在は、いわば失敗した時のための「連絡係」だった。

 

私はパウロの影に同期するように距離を詰め、傲慢なる水竜王(アクア・ハーティア)を展開した。

即座に、脳内で並列処理を行っていた複数の術式をリンクさせる。

 

「『即席魔法陣(アドリブ・サーキット)』……『多重魔術(スタック・マジック)』『属性書換(タイプキャスト)』――『炎雷蜂(イグニ・ヴェスパ)』」

 

私の周囲に、十匹の青白い雷光を纏った「蜂」が生成される。最近開発した魔術だ。

切り落とされたヒュドラの首を焼くのに必要なのは、火力と精密操作だ。属性書換(タイプキャスト)によって炎の属性を持った蜂、その腹部には、更に超高密度の圧縮火魔術が封入されている。いわば、私の意思で軌道を制御できる、雷と同じ速度で動く精密誘導爆弾だ。

 

「らあぁぁぁ!!」

 

パウロが多頭竜(ヒュドラ)の射程圏内へと突っ込む。

巨大な質量に似合わず、多頭竜(ヒュドラ)の反応は鋭敏だった。複数の首がそれぞれ独立した演算回路を持っているかのように、パウロを多方から迎撃する。

しかし、パウロの剣速がそれを上回った。彼が一瞬「ブレた」と錯覚した瞬間には、すでに一本の首が血飛沫を上げて宙を舞っていた。

 

(今だ――!!)

 

私の思考に呼応し、一匹の『炎雷蜂(イグニ・ヴェスパ)』が雷速で突撃する。

目標、切断面。

着弾と同時に、蜂の内部に封じ込められていた炎が狂ったように踊り出す。

ジュウッ、という肉の焼ける嫌な音。断面は瞬時に炭化し、細胞の復元を物理的に阻害する。

 

(……観測。再生、停止!)

 

「――有効です!!再生を完全に阻害できています!!」

「いいぞ!その調子だ!」

「よっしゃあ!!次行くぜ!!」

 

この一撃で更に確信を得た。この多頭竜(ヒュドラ)の再生能力はやはり不死魔族には及ばない。多少の『焼きムラ』があっても再生は阻害できる。

 

私は風魔術で自身の慣性を制御し、パウロの背中にぴったりと張り付く。

心臓が早鐘を打ち、右目の死角から迫る恐怖が全身を震わせる。だが、左のエリナリーゼ、右のタルハンド、そして背後で支援を司るロキシー――彼らへの信頼が、私の足を前へと進ませた。

 

「ルディ、俺の背中から離れるんじゃねえぞ!!」

 

パウロの鼓舞が飛ぶ。

多頭竜(ヒュドラ)は同時に四つ以上の首を有効に動かせないようだ。首同士の干渉がボトルネックになっていると思われる。仮に十本すべてを自在に、同時に操れるのであれば、こちらの数的優位はとうに崩されているはずだ。……裏を返せば、この「同時稼働数の上限」こそが、この化け物が持つ数少ない弱点だった。

 

エリナリーゼが一本をいなし、タルハンドが一本を受け流す。

その隙間を縫ってパウロが肉薄し、二本目の首を鮮やかに斬り落とした。

 

「いけっ!!」

「了解!!」

 

二匹目の『蜂』を突っ込ませる。

 

――ドガンッ!!

 

激しい火柱が上がり、二本目の首も漆黒の炭へと変わる。

私は即座にバックステップで距離を取りつつ、全方位をスキャンする。再生の兆候はない。この焼損による細胞死は、間違いなく多頭竜(ヒュドラ)の再生能力を攻略していた。

 


 

パウロが歓喜の咆哮を上げ、三本目、四本目と首を落とし続ける。その都度、私の『蜂』が断面を焼き潰した。

 

「……っ!!カバーを!!」

 

私の左眼、予見眼(よけんがん)が三秒後の死を捉えた。

これまで動いていなかった首が二本、低空から蛇行し、私の死角へ潜り込もうとしている。

右目の視力を失っている私にとって、これは回避不可能な挟撃だ。

一本は躱せる。だが、回避した先をもう一本が確実に食い破る。

 

「任せなさい、なっ!!」

 

エリナリーゼが、文字通り肉体を投げ出すように割り込んできた。

盾を鱗に押し当て、ギャリギャリと肉を削られながらも、彼女は私の盾となった。

 

「ロキシー!治癒を!!」

「『ヒーリング』!!」

 

ロキシーの魔術が瞬時にエリナリーゼの傷を塞ぎ、彼女たちは何事もなかったかのように戦列へと戻る。

私はただ、焼くことに全リソースを割いた。蜂を操り、肉を炭へと変える「後処理」に徹する。

 

五本目、六本目。

完璧な連携。このままいけば、勝利は目前だった。

だがその瞬間、多頭竜(ヒュドラ)が私たちの理解を超える「エラー」を引き起こした。

中央の主首が、私が焼いたはずの炭化した断面――それを自ら、骨ごと食いちぎったのだ。

 

「なにぃっ!?自分の身体を食っただと!?」

「再生のトリガーをリセットしたのか……ッ!」

 

炭化層が失われたことで、断面から再び肉が猛烈な勢いで盛り上がり、首が高速で復元されていく。

 

「再生させる暇は与えませんわ!!」

 

エリナリーゼが吠え、再生しかけているぶよぶよの肉肌にグラディウスを突き刺した。

 

「汝の求める所に大いなる氷の加護あらん――『氷撃(アイススマッシュ)』!!」

 

彼女は魔石鱗のない「中身」に対し、魔術をゼロ距離で叩き込んだ。

爆ぜる肉と氷。ロキシーも追随し、高火力の『火炎放射(フレイムスロワー)』で援護する。

 

「よし!!」

 

パウロが追撃をかけようとするが、多頭竜(ヒュドラ)は残る三本の首を天井付近まで高く持ち上げ、私たちを睥睨した。

 

怯えているのではない。

この「溜め」の姿勢。私は以前遭遇した赤竜のブレス予備動作を思い出し、背筋に戦慄が走った。

 

「――ブレスが来ます!!私の近くに寄ってください!!」

 

パウロが強引にバックステップで戻り、エリナリーゼとタルハンドが転がるように私の足元へ。ロキシーが私を抱きしめるように密着する。

私は、全魔力を杖先に集束させ、ブレスをねじ伏せる「障壁」を固定した。

 

ゴォォォォォォォォォォッッ!!!

 

三つの口から放たれた極高温の火炎ブレス。

鋼を蒸発させるほどの熱量が、私の構築した氷と結界の多重防壁に激突する。

 

(上級結界魔術、最大同期――!!無理やり押し返す!!)

 

私は熱波のベクトルを逆転させ、ブレスを多頭竜(ヒュドラ)の口元まで強引に押し戻した。

自らの炎に焼かれた多頭竜(ヒュドラ)がたまらず仰け反る。

 

「父さん!!」

「おうっ!!」

 

その隙を逃さず、パウロが躍りかかる。

八本目。首が落ちるたびに、私は迷いなくその断面を焼き潰した。

 

残り、一本。

 

最後の一際太い首が、狂ったように鎌首を揺らす。

 

 

 

――勝てる。

 

 

 

そう、私は確信した。この距離、この戦力差なら、残る一手を詰ませるのは容易だと。

私が最後の一撃を放とうとした、その瞬間だった。

 

(――な、んだ……?)

 

予見眼が、巨大な影の『移動』を捉えた。

 

だが、あまりに巨大すぎて、それが「何」なのか脳が処理を拒否した。

 

 

 


 

 

 

――右目の死角から、逃れようのない巨大な質量が迫っていた。

 

 

――世界がスローモーションに切り替わる。

 

 

――多頭竜(ヒュドラ)は、頭を失ったはずの八本の「首の根」を、おろし金のような巨大なバラ鞭として、死角から一斉に振り回したのだ。

 

 

(――追えない。防げない。私の回避能力を超えている)

 

 

確実な死を予見したその時。

 

 

私の視野の端で、もう一つの「確定した動き」が見えた。

 

 

――パウロの動きだ。

 

 

不器用で、欠点だらけで、けれど誰よりも家族を愛するパウロ。

 

「――死んでも、母さんを助けろ」

 

その言葉の裏は分かっていた。

 

私のことは、パウロが死んでも守るという誓いだ。

 

 

彼は、私が死に瀕すれば、必ず守りに来る。

これは予想ではない、確信だ……当然のように自らの命を身代わりに差し出すだろう。

 

 

(それでは、約束が守れない……!)

 

 

私は、『父さんと母さんとリーリャさんを揃って家に帰す』と、妹たちに誓ったのだ。

 

 

父が私を庇えば、母は一人になる。ノルン、アイシャ、リーリャにも、合わせる顔が無い。

それだけは、何としても避けなければならない。

 

 

(――時間がない。コンマ数秒での判断だ。父さんが私を庇えば、父さんが死ぬか、深手を負う。……いや、計算をしている場合ではない。答えはとうに出ている)

 

 

私は残っていた一匹の『炎雷蜂(イグニ・ヴェスパ)』の制御コードを書き換えた。

 

 

「――ごめん、父さん」

 

 

私は自分と、こちらへ飛び込もうとするパウロの「間」で、魔術を強制自壊させた。

 

 

「なっ!!?」

 

 

不意を突かれたパウロの体が、爆風に煽られて後方へと激しく吹き飛ばされる。

 

 

致命傷にならない程度の、けれど戦線から物理的に排除するための拒絶。

 

 

その直後だった。

 

 

パウロを弾き飛ばしたことによるコンマ数秒の硬直。

 

 

そこへ、多頭竜(ヒュドラ)の巨大な鞭が叩きつけられた。

メキメキ、という自らの骨が砕ける音が、遠くの出来事のように聞こえた。

私の両足は、重圧によって一瞬で粉砕され、石畳へと縫い付けられた。

痛みのパルスはあまりに強大すぎて、逆に感覚が消失していく。

 

 

 

(……足が、無いのか。……いや、今はまだ『腕』が残っている)

 

 

 

動きを止めた獲物を確実に仕留めるため、多頭竜(ヒュドラ)の最後の一つの頭が、眼前に迫る。

私を食い殺そうと、その巨大な顎を大きく開け放った。

 

 

 

――好機だ。

 

 

 

私は動かない下半身を支えに、残った両腕を、奴の喉奥へと深々と突き立てた。

火傷するような熱い粘膜。酸の臭い。

奴の口が閉じられるよりも早く、私は体内に残る全魔力を、最短経路で開放した。

 

 

 

「『震壊雷(フラゴール)』――ッ!!!」

 

 

 

内部からの全出力放電。

魔石多頭竜(マナタイト・ヒュドラ)は内側から木っ端微塵に爆散し、私はその爆風と衝撃の余波によって、中空へと放り出された。

 

 


Side: ロキシー

 

目まぐるしく入れ替わる攻防。

 

そして、あまりに凄惨な結末。

 

私は、ただ立ち尽くしていました。戦士たちが必死に抗う中、私は後方で、そのあまりの規模と速度に呆然と立ち尽くすことしかできませんでした。

 

「……ルディ!!」

 

魔石多頭竜(マナタイト・ヒュドラ)の死体が爆散し、そこから吹き飛ばされた、小さくなってしまった身体が見えました。

 

タルハンドさんが咄嗟に地面を蹴り、空中でルディをしっかりと受け止めました。

受け止められたルディの身体を見て、私は呼吸の仕方を忘れてしまったように、静止してしまいました。

 

足があった場所から、噴水のように鮮血が溢れ出していて。

瞳からは光が消え、首は力なく垂れ下がっていました。

 

「な……んだ、これは……」

 

タルハンドさんが震える声で呻く。

 

ルディの身体には、両の太ももから下がありませんでした。ボロボロになったズボンの切れ端だけが、虚しく空に揺れて。

 

そして、両腕。

 

肩から先が、先ほどの至近距離での爆発によって、完全に焼失――真っ黒な炭となって、原型を留めていません。

 

――だが、その凄惨な光景の中に、一つだけ、皮肉なほどの救いがあります。

炭化した断面からは、出血がほとんど見られない。高熱による損傷は、本来なら致命的な失血をもたらすはずの太い血管ごと、焼き潰し塞いでいたのです。

……ルディが、多頭竜(ヒュドラ)の傷を止めるために使っていたのと、まったく同じ理屈でした。皮肉にも、彼自身の身体が、その理論を証明していました。

 

けれど、それで安心できるはずもない。焼け爛れた組織の奥では、確実に命の灯が細っていくのが分かります。

 

「エリナリーゼッ!!早く来い!!断面を切れッ!!」

 

タルハンドさんの絶叫が響きます。

このままでは、挫滅した組織から毒素が回り、心臓が止まる。

 

エリナリーゼさんは一瞬、そのあまりに酷い決断に躊躇いを見せましたが、ルディの死に際のような顔を一目見て、剣を抜きました。

 

ザシュッ、ザシュッ、という肉を切る冷たい音。

 

ルディの残った両手、両足の壊死部が、救命のために次々と切り離されていく。

 

「ロキシーッ!!何をしておる、早く治癒を!!止血だッ!!」

 

タルハンドさんの怒鳴り声に、私は弾かれたように正気を取り戻しました。

 

「……っ、はい!!」

 

私は泣きながら、持てるすべての魔力をルディに注ぎ込みました。

失われた四肢を戻すことはできない。けれど、死なせるわけにはいかない。

 

「死なないで……ルディ、死なないで……ッ!!」

 

後方から駆け寄ってきたギースが、震える手でルディの口に強引に気付け薬を流し込みます。その手は、これまでのどんな戦いの時よりも激しく震えていました。

 

 

 

ふと、視界の端に。

 

 

 

ルディの魔術で遠くに飛ばされたパウロさんが、ふらふらと立ち上がるのが見えました。

彼は、四肢を失い、血の海に沈む愛息の姿を捉えた瞬間。

その顔を、この世のすべての光が消え去ったような、絶望の色に染め上げました。

 

「――……ルディ……?」

 

その声は、およそ人が発するものとは思えないほど、小さく掠れていました。




ここまでお読みいただきありがとうございます。

ルーデウスは世界でも有数の強い運命、因果律を持っています。
死に瀕しても、「世界の修正力」や「運命の強制力」が働き、世界そのものが彼を生き残らせる方向へと因果を捻じ曲げてしまいます。そして、歴史の因果が帳尻を合わせるために、「周囲の別の人間が身代わりとして死ぬ」という残酷な現象が発生します。

これに、抜け道を独自設定しています。
すなわち、『強い運命を持つルーデウス自身が、因果による救いの手を自ら本気で拒んだ場合』です。

よだんたいてっ待とっず、をきとのこ……。ねだくやうよ、ぁやい
。ねるれ折が骨、はのす殺を者強たれさ愛に命運、く全
。さたいてえ見にくっと、いらくとこむ拒を『手のい救』が君――もで
。り通算計もれこ、うそ
?なかるいてい付気、ぇね
……どけるいてい嘯てんなだ『事大番一』を間仲や族家は君
。にとこてっだ所急の大最、の身自君がそこれそ、は当本
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