無職転生 ~性格改変_エンジニアリング視点での魔術構築~ 作:haru-ha
本作は『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』の二次創作小説です。
pixivに掲載していた小説(完結済)のセルフ転載となります。(所々、追記・修正しています)
以下の独自設定(IF設定)を含みます。
・原作と違って、元々存在していたルーデウスの自我は失われず、そこに「ある男」の記憶だけが継承されたという解釈で執筆しています。
・そのため、原作のルーデウスとは性格や口調、判断基準が異なります。
【注意事項】
・原作のストーリー改変(生存IFなど)が含まれる可能性があります。
・キャラの独自解釈、および設定の捏造が含まれます。
・原作全編のネタバレに配慮しておりません。
なんでも許せる方のみ、お進みください。
Side: ロキシー
パウロさんが、なりふり構わず駆け寄り、中から転がり出たゼニスさんを助け起こします。
泥のように動かず、呼吸すら止まっているように見えたゼニスさんの姿に、私は最悪の結末を覚悟しました。
けれど、パウロさんが彼女の口元に耳を当てた瞬間。
「……生きているッ!!ゼニスは、生きているぞ!!」
その叫びが、死の静寂に包まれていた宮殿に響き渡りました。
けれど、私たちは手放しで喜ぶことなどできませんでした。
ルディは、まさに「命の灯火」だけを繋ぎ止めた状態でした。
両手、両足を失い、ショック状態で意識を失った小さな身体。ギースさんが、壊れ物を扱うように彼を背負い、私たちは血の跡を辿るようにして迷宮を脱出しました。
迷宮を抜けるまでの道のりは、永遠にも感じられました。
ギースさんがルディを抱き、私は白布代わりの外套でルディの断面を覆いながら、彼の心臓の音が止まないことだけを祈って歩き続けました。タルハンドさんが先導し、エリナリーゼさんが最後尾でパウロさんの手を引く。パウロさんは、ゼニスさんを横抱きにしたまま、まるで魂が抜けたように無言で足を動かしていました。
「……軽いな。あんなに凄まじい魔術を放っていたのに……。こんなに、軽いじゃねえか……」
ギースさんの悔しげな、そして震えるような独白が、重く湿った迷宮の空気に消えていきました。
「センパイの奴、いつもあんなにでかいことばっかりやってたのに……。背負ってみりゃ、こんなにちっぽけなんだな……」
その言葉は、誰に向けたものでもなく、ただ自分自身に言い聞かせるようでした。
ラパンの街に戻り、リーリャさんたちに報告を行いました。
ゼニスさんを救い出せたという奇跡に一瞬の歓喜が走りましたが、直後のルディに関する報告に、その場は葬儀場のような静寂に包まれました。
「……嘘、ですよね……?ルーデウス様が、そんな……」
リーリャさんは、震える手で口元を覆い、それ以上言葉を続けられませんでした。
ヴェラさんが即座に清潔な布と湯を用意し、他の冒険者たちも我先にと道を空けてくれました。この街に来てからパウロさんたちが築いてきた信頼が、こんな形で表れるとは、皮肉としか言いようがありません。
ルディを守れなかった。師でありながら、何もできなかった。その事実に、私は顔を上げることすらできませんでした。
戦闘の間、ずっと彼の後ろで支援に徹していたはずなのに。もっと早く、あの隠れた首の動きに気づいていれば。もっと強く、彼を下がらせていれば。何度も何度も、あり得たかもしれない「もう一つの結末」が頭をよぎり、そのたびに胸が張り裂けそうになりました。
ゼニスさんは、宿に着いた日も、その翌日も、深い眠りから覚めませんでした。
ルディが意識を取り戻したのは、帰還した翌日の夕刻。
状況を整理できていないのか、彼は欠損した四肢を気に留める様子もなく、ただぼんやりと天井を見つめていました。
その目には、いつもの明晰な光がありませんでした。焦点の合わない瞳。まるで、心のどこかが、まだ迷宮の奥に置き去りにされているかのようでした。
パウロさんはずっと、ルディのベッド脇で泣き崩れ、「なぜ俺をかばったんだ、なぜお前がこんな目に遭わなきゃならないんだ」と、狂ったように自らを責め続けていました。
ルディは、その枯れ果てた声で、ただ一言だけ答えたのです。
「……約束、ですから」
その言葉で、私は気づいてしまいました。
ルディが常々口にしていた『父と母とリーリャさんを家に帰す』という誓い。
その中に、初めから――ルディ自身が含まれていなかったことに。
彼はいつも、家族の全員を数えながら、自分だけを勘定の外に置いていた。……そのことに、もっと早く気づくべきでした。
ゼニスさんは、依然として寝台に横たわったままでした。
頬は朱を帯び、呼吸は穏やか。生命の維持という点では健康そのものに見えました。
けれど、彼女が瞼を開いたのは、それからさらに数日を要した、ある日の昼下がりのことでした。
「んぅ……」
微かな呻き声。その場にいた全員が固唾を呑んで見守る中、ゼニスさんがゆっくりと、重そうに目を開けました。
「ゼニス……ッ!」
パウロさんの震える呼びかけ。けれど、ゼニスさんは微かに首を傾げただけでした。
その仕草を見た瞬間、私の胸の奥を冷たいナイフで抉られたような感覚が走り抜けました。
「奥様、わかりますか?旦那様ですよ!リーリャもここにいます!」
リーリャさんの必死の訴えにも、彼女は反応しません。
ゼニスさんの瞳は、確かに目の前の人々を捉えていながら、そこには何の知識も、記憶も、感情の火も宿ってはいませんでした。
「……あぇ……あー……」
形をなさない言葉。
空虚な眼差し。
(……記憶、人格、すべてを失っている……?)
私は、魔術師としての経験から、彼女の状態を必死に分析しようとしました。
外傷はない。魔力の流れも正常。……つまり、これは肉体の損傷ではなく、より根源的な「情報」そのものの欠落だということになります。人格という、経験の積み重ねによって形作られる情報の総体が、まるごと消去されてしまったかのように。
後にエリナリーゼさんが語った事実が、決定打となりました。
彼女自身、長い間魔力結晶に閉じ込められ、救い出されたときにはすべての記憶を失っていた。
「……わたくしの場合は、目覚めた時に周りにいたのは知らない人間ばかり。自分の名前すら、誰かに教えられるまで分からなかったんですのよ」
エリナリーゼさんは、珍しく感情を抑えた声でそう語りました。その口調には、思い出したくない過去に触れる者特有の、乾いた響きがありました。
「ですが、ゼニスの場合は、もっと悪いかもしれませんわ。わたくしは少なくとも、自我の『器』そのものは無事でした。……この状態は、器そのものが壊れているように見えますの」
それを聞いたパウロさんは、もはや怒る気力さえ失っていました。
最愛の妻は廃人と化し、誇りであった息子は四肢を失っている。
パウロさんはそれから、酒を飲むことさえ忘れ、幽霊のように宿の中を徘徊するようになりました。かつて彼が纏っていた豪快さは、跡形もなく消え失せていました。
ルディにゼニスさんの容態を説明するのは、死刑宣告をするよりも辛い作業でした。
私は何度も言葉を選び直し、少しでも希望を残せるような言い回しを探しましたが、結局は事実をそのまま伝えるしかありませんでした。
ルディは、これまでの人生で一度も見せたことのないような、深い絶望と虚脱が混ざり合った表情を浮かべ。
「……そう、ですか」
ただ、それだけを呟きました。
その声の平坦さが、かえって恐ろしく感じられました。まるで、彼の中で何か重要な部品が、静かに、しかし確実に、動作を止めてしまったかのように。
翌日。私は贖罪の気持ちを抱きながら、ルディの寝室を訪ねました。
今のルディは、一人では寝返りを打つことすらできない状態です。ギースさん、エリナリーゼさん、タルハンドさんも交代で介護を手伝ってくれていました。
けれど、扉を開けた瞬間、私は自分の目を疑いました。
「……ルディ!?」
乱れたシーツ。もぬけの殻となったベッド。
床には、何かが這って移動したような、跡が残っていて、それは隣のゼニスさんの部屋へと続いていました。
心臓が凍りつきました。まさか、自室から抜け出して――
最悪の想像が頭をよぎり、私は転げるように廊下を駆けました。
私が駆け込むと、ルディはゼニスさんの寝台のすぐ横に転がっていました。
おそらく魔術で自らの身体を浮かせ、無理やり移動したのでしょう。床には血の混じった痕跡が刻まれています。
そして。
ルディの両目は、夥しい量の鮮血で濡れていました。
「ルディ!!何を……ッ、誰か!!来てください!!」
私の悲鳴に応じ、廃人同然だったパウロさんたちが転がり込んできました。
私たちは慌ててルディの両目を治癒し、新しい包帯を巻きました。
その凄惨な光景に、パウロさんも言葉を失い、その場に崩れ落ちました。
「……何をしようとしたんだ、ルディ……。母さんに、もう一度会いたかっただけなのか……?それとも……」
パウロさんの声が、そこで途切れました。彼もまた、最悪の可能性――ルディが最後にもう一度だけ母の顔を見て、そのまま自殺するつもりだったのではないか、という疑念に行き着いてしまったのでしょう。
その時でした。
それまで虚空を見つめるだけだったゼニスさんが、おもむろに身体を起こし。
隣で泣き崩れるパウロさんを、慈しむような目で見つめて言ったのです。
「……あ……な……た……?」
ゼニスさんの意識が、回復している……?
それは、すべてを失ったパウロさんにとって、唯一残された、奇跡のような希望でした。
パウロさんは嗚咽を漏らしながら、ゼニスさんを壊れ物を扱うように抱きしめました。
昨日までの、完全な「無」の状態とは明らかに違う。周囲の誰もが、その回復に歓喜の声を上げました。
「奥様……!奥様ぁ……!」
リーリャさんが、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔で、ゼニスさんの手を握りしめていました。
タルハンドさんも、声を震わせながら「よかった、よかったのう」と繰り返し呟いていました。
けれど、私は。
私の背筋には、拭いきれない嫌な予感が走っていました。
ルディが。ルディが『何か』を差し出して、母の心を取り戻したのではないか、と。
昨夜の、あの血まみれの光景。彼が這ってまで辿り着こうとしていたもの。……あれは、別れを告げるためではなく、何かを「実行」するためだったのではないか。
ルディが再び目を覚ましたのは、陽が沈み始めた夕刻のことでした。
私たちは彼の枕元に集まり、あの夜、何をしたのかを問い詰めました。
……ルディは、以前のような流暢な喋り方を失っていました。
一言一言を絞り出すような、ひどく途切れとぎれの、不明瞭な声でした。
「……か、……あ…………さ、ん……。き、き……おく……そ……うし……つ……じゃ……な、な……い」
記憶喪失ではない?
その言葉に、最も激しく動揺したのは、自身の経験を持つエリナリーゼさんでした。
「の、……う、の……き、ャ。ぱ……して……、い、ふ……そ……そそ、……く」
「脳の、キャパシティ不足……?」
私はルディの意図を汲み取ろうと必死に耳を傾けます。
記憶はあるが、脳の容量が肉体を動かすための命令系統がリソースを割けない状態?
(――脳という処理装置には、扱える情報量に限りがある。もし、常時バックグラウンドで動き続ける重い処理が、その大半を占有してしまえば、言語の生成や運動野への出力といった、通常なら軽々とこなせるはずの処理にすら、割り当てる余力が残らなくなる。記憶そのものは損なわれていない。ただ、それを言葉に変換し、口や手足を動かすための「キャパシティ」が、根こそぎ奪われているだけなのだとしたら――)
そう考えれば、途切れとぎれの声にも説明がつきます。
ルディは、頭の中では以前と変わらぬ速度で思考しているのに、それを言葉として出力する経路の大半が塞がれている。……まるで、太い川の水を、細い一筋の側溝だけに流し込もうとしているような状態なのでしょう。
パウロさんたちの目に、再び強い希望が宿ります。思い出が失われていないのなら、いつかまた、笑い合える日が来るかもしれません。
「……ルディ。あなたは、なぜそれを知ることができたのですか?」
私の問いに、ルディは包帯越しに自らの「眼」を向けて答えました。
「……眼…………。ま、…りり…りょ……く……かい。……ろを…………み。み。み……た……」
パウロさんの顔色が、一瞬で変わりました。
かつて聞かされていた、呪いを視た代償。
「ルディ……お前の右目は、もうほとんど見えていなかったはずだ。ルイジェルドの旦那は、あの日、お前が自分のために視力を差し出したことを死ぬほど悔やんでいたんだぞ。……どうやって、それ以上のものを視たんだ」
ルディは、震える口元を動かしました。
「……ひ……だだ、り……め……」
「……馬鹿な!左目には、キシリカから賜った予見眼があるはずだろう!?」
「……む……。り、りり……や……り……。かか、……き……か……えたた……」
――ルディは、両目の視力を完全に失っていました。
明暗の判別すらできない、真の闇。
その事実が意味することを理解した瞬間、私は膝から崩れ落ちそうになりました。
彼は、右目に続いて左目まで――自分の持つ最後の「窓」までも、迷わず差し出したのです。
「なぜ……なぜお前ばかりが、そんなものを背負わなきゃならねえんだ!!」
パウロさんの絶叫に、ルディは何も答えませんでした。
その沈黙こそが、彼にとって唯一の「答え」だったのかもしれません。
「……センパイ。他にも、何かしたんじゃないか?」
ギースさんが、その不自然な「ゼニスの回復」を訝しんで尋ねました。
ルディは重い口を開きました。
「…………こ、れ……の……ろい。……じゃ。な……い…………。ざざ、ざ……の……ば。……お、……な。じ…………」
ザノバ殿下と同じ……?私はシーローン王国にいたから、分かりました。
神子。特定の機能に全てを振り切った特性。
私は、ザノバ殿下の怪力と引き換えに失われた「繊細さ」を思い出し、愕然としました。
神子化とは、本来分散して使われるべき身体の機能を、一点にのみ極端に再配分する現象なのだと聞いています。ザノバ殿下の場合は、指先の巧緻性を犠牲にして、怪力という一点に全リソースが注ぎ込まれた。
――では、ルディが担ったものは、一体どんな代償だったのでしょう。両目の視力、そして満足に動かせない四肢と言葉。あまりにも大きすぎる代償に、私は言葉を失いました。
神子化の解除、それは単なる呪いの解呪の範疇を優に超えています。
「……なら、なぜ、ゼニスさんは言葉を発することができたのですか?」
「……まじ、……ん…………。……らぷ…………ら……す。……の…………ま……ね、」
魔神ラプラスの真似?
かつて魔神ラプラスが、自らの呪いを魔槍へと移し、それを介してスペルド族に『なすりつけた』外法。
そんなことが、できるはずは……!生体同士の
いや、波長を合わせる必要は、最初からなかったのです。
血縁という、最も相性の良い魔力波長を利用した、魔力回路の交換。
「……ルディ。お前、母さんの『負荷』を……自分に引き受けたのか」
ルディは、自らの『
その結果、ゼニスさんは「自己」を取り戻し始め。
ルディは、脳の演算処理に奪われ、言葉を失い、四肢を動かす神経信号すらも途絶えかけていたのでした。
考えれば考えるほど、その代償のあまりの重さに眩暈がしました。
負荷の一部を移すだけでも、その工程自体に計り知れない負担がかかるはずです。それを、視力すら失った状態で、しかも命の瀬戸際にありながら実行した。……常人ならば、術式を構築する前に精神が焼き切れていたはずです。
「は、は…………つ……れ、て…………。さ……、……き……。にか…………え……れ」
ルディはパウロさんに告げました。
「そんなこと、できるわけねえだろうが!!」
「……か………… い。ふふ…………く…………に。……ひ、つ…………よ…………う……。あ、あ、あ……と。で……お……い。…………つ、……く」
それが、パウロさんを安心させるための嘘であることは、私には痛いほど分かりました。
彼は、家族に負担をかけまいとして、最後の力を振り絞ってさえ、優しい嘘をつこうとしている。その健気さが、かえって胸を締め付けました。
けれど結局、パウロさんはルディの「息子としての決意」に屈しました。
出立の朝、パウロさんはルディの枕元で長い間頭を垂れ、何度も何度も「すまない」と涙ながらに繰り返していました。リーリャさんは、震える手でルディの頬に触れ、「必ず、迎えに戻ります」とだけ言い残しました。
ゼニスさんを連れ、ギースさんやリーリャさんと共に、最短ルートでシャリーアへと旅立っていきました。
私とエリナリーゼさん、そしてタルハンドさんは、動けないルディと共にラパンの宿に残りました。
パウロさんたちを見送った後、ルディの衰弱は、目を覆うほどの速さで進んでいきました。
食事を拒み、水さえも喉を通さない。
その姿は、自ら生命のスイッチを切ろうとしている、動かない機械のようでした。
「ルディ、何か食べましょう。一口でもいいですから」
私の呼びかけにも、彼は反応しません。
「追いつく」という言葉が嘘であったことを、彼はもはや隠そうともしませんでした。
自分の身体を治す方法を皆で話し合い、ルディにも問いかけましたが、彼はただ静かに首を振るだけです。
「……なな……、に…………も……。………………で……き。………………な…………い…………。…………ほう…………っ…………てて……おい。……て」
あのルディが、聡明で何でも出来るルディが、「解決策がない」と断じる恐怖。
私は、彼の細くなっていく腕を握り、祈ることしかできませんでした。
夜、エリナリーゼさんやタルハンドさんと三人で、代わる代わる彼に話しかけました。冒険の思い出、シャリーアで待つ人々のこと、彼が今まで成し遂げてきたこと。……けれど、どんな言葉も、閉ざされた彼の心には届かないようでした。
ある日の午後。私が一人でルディの看病をしていた時。
不意に、ルディが掠れた声を漏らしました。
「……せ、…… ん。せ………………い。………………お…………ねがが…………い……」
「何でしょうか、ルディ。あなたのためなら、私は何でもします。本当に、何だって……!」
絶望の淵で、一筋の光明を求めるように私は身を乗り出しました。
けれど、ルディが、盲いた瞳で私を見つめ、たどたどしく口にした願いは。
私の魂を、完全に凍りつかせるものでした。
「……こ………………ろ………………し…………て………………。こ、……こっ…………そり…………ば……れ、れれ……な…………い。……よう……に」
その言葉を聞いた瞬間、私は自分の呼吸の仕方すら忘れてしまいました。
かつて彼が私に向けてくれた、あの眩しいほどの信頼と尊敬。それが、今は「誰にも知られず、自分を消してほしい」という、あまりに残酷な願いへと姿を変えていました。
私は、震える手で彼の頬に触れることしかできませんでした。
何か言わなければ、と思うのに、喉の奥から言葉が一つも出てきません。
ただ、涙だけが、止めどなく零れ落ちていきました。
ここまでお読みいただきありがとうございます。辛いシーンかもしれませんが、引き続き読み進めていただけると幸いです。
ルーデウスが行ったのは、呪いの擦り付けというより、臓器の交換に近いです。親子だからこそ、成功しました。
本作を書き始めるにあたって、『転移事件の被害抑制』、『パウロの生存』、『ゼニスの早期回復』という方針は決めていました。
ただし、ご都合主義になりすぎないように注意する必要がありました。
すなわち、これらの展開に納得できるほどの『代償』が必要でした。