無職転生 ~性格改変_エンジニアリング視点での魔術構築~ 作:haru-ha
本作は『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』の二次創作小説です。
pixivに掲載していた小説(完結済)のセルフ転載となります。(所々、追記・修正しています)
以下の独自設定(IF設定)を含みます。
・原作と違って、元々存在していたルーデウスの自我は失われず、そこに「ある男」の記憶だけが継承されたという解釈で執筆しています。
・そのため、原作のルーデウスとは性格や口調、判断基準が異なります。
【注意事項】
・原作のストーリー改変(生存IFなど)が含まれる可能性があります。
・キャラの独自解釈、および設定の捏造が含まれます。
・原作全編のネタバレに配慮しておりません。
なんでも許せる方のみ、お進みください。
Side: ルーデウス
「ルディ!やめなさい!!お願いだから!!」
「ルーデウス!!正気ですの!?」
背後から突き刺さるロキシーとエリナリーゼの悲鳴。
私はそれを無視し、残された魔力のすべてを投じて背後に多重の結界を構築した。
物理的にも、そして彼女たちの感情的干渉からも、自分を隔離するために。
「……く、る……ナ……ッ!!」
不自由な喉で叫び、私は目の前の
口内に広がる、焼けるように熱く、鉄錆の臭いが鼻を突く血。
嚥下した瞬間、内臓が煮えくり返るような激痛が走った。
(――治癒魔術、全開。……
自分が自分でなくなっていくような、魂をヤスリで削られるような悍ましい感覚が身体を駆け抜ける。
(――境界が、溶けていく。……自分の輪郭を保つための最後の砦は、記憶だ。妹たちの声、父の笑い方、母の暖かさ、リーリャさんとの会話、エリスと交わした約束。それらを一つずつ、思考の核として握りしめる。手放せば、私は本当にただの「竜」になる)
意識が遠のき、自我が竜の生存本能に飲み込まれそうになるが、私は必死にエリス、家族の顔を思い出し、それを錨にして正気を繋ぎ止めた。
身体が燃えるように熱い。
体内の魔力回路に、これまでの人族の器では許容できなかった高密度のエネルギーが猛烈な勢いで巡り始める。
(……今だ)
私は風魔術で、僅かに残っていた右腕の付け根を、自ら切断した。
新たな鮮血が噴き出すが、躊躇はない。
魔術の出力が、以前とは桁違いだ。
切断面から、肉が泡立つように膨らみ、組織の再構築が始まる。
骨が鳴り、血管が這い回り、神経が火花を散らして繋がっていく。
想像を絶する激痛。私は自分の舌を噛み切らんばかりに食いしばり、獣じみた絶叫を上げた。
「あああああああああああああああああッ!!!」
再生された右腕。
それは、白く滑らかな人族の肌ではなかった。
エメラルドグリーンの硬質な鱗が張り付き、骨格は一回り太く、指の先には岩石をも引き裂くであろう黒い爪が備わっていた。
私は息を切らしながら、休む間もなく次の工程へ移った。
この地獄のような痛みは、一度で終わらせなければ精神が持たない。
(次は……視覚だ)
私は再生したばかりの右手の爪を、役に立たなくなった自らの両目へと深々と突き刺した。
「……っ、がぁぁぁぁぁぁっ!!!」
視神経が焼き切れるような頭痛にうずくまり、のたうち回る。
私は指に絡みついた「肉の破片」を床へ投げ捨て、そこへ
熱が引くと同時に、ゆっくりと瞼を持ち上げる。
数週間ぶりに世界が「色」を取り戻した。
竜の目は、人族のそれよりも遥かに高性能なようだ。
解像度が跳ね上がり、暗闇の中でも鮮明に見通せる。
幸い、絶望的だった右目の視力も回復したようだ。
(紫がかった視界……。可視光線帯域が拡張されているのか)
温度の分布までもが、淡い色の濃淡として知覚できることに気づく。……これはもはや、単なる『視力の代替』ではない。人族の目とは根本的に異なる原理で駆動する、新しい種類の感覚器官だ。
目の前の
私は次のターゲット――私の左腕を飲み込んだままの、
その肉塊を食らい、馴染ませる。
(……あった。……
左腕と共に、私の体内に収納されていたはずの杖『
私は杖を再び自身の魔力回路へと取り込み、身体の奥深くに格納した。
そして。左腕、両足の先端の再生を同時に完遂させる。
人族とは全く異なる異形の骨格。鋭い爪と鱗を纏った身体。
私は血の海の中に横たわり、肩で息をしながら、熱を帯びた己の身体を見つめた。
しばらくして呼吸が落ち着くと、私は結界を解除し、ゆっくりと振り返った。
そこには、恐怖と驚愕に顔を引き攣らせた、ロキシーたちの姿があった。
Side: ロキシー
ルディの取った行動は、もはや倫理の範疇を越えた、狂気そのものでした。
そんな禁忌、思いついたとしても実行できる人間がどこにいるでしょうか。
ルディは私たちが止めることを見越し、強固な結界を張りました。
その内側から響いてくるのは、この世のものとは思えないルディの絶叫。
結界の膜が魔力の乱れによって激しく歪み、膨張するのを見て、私はただ震えることしかできませんでした。
何度、結界を破って飛び込みたい衝動に駆られたことでしょう。
けれど、タルハンドさんが私の肩を強く掴み、首を横に振りました。「今、割り込めば、術の途中で暴走を招くやもしれん」――その言葉が正しいことは分かっていても、あの絶叫を無言で聞き続けることは、拷問に等しい時間でした。
やがて。絶叫が止まり、静寂が戻りました。
結界が霧散し、ルディがゆっくりと立ち上がります。
タルハンドさんとエリナリーゼさんは、咄嗟に武器を構えて身構えました。
ルディの精神が竜の野性に飲み込まれ、化け物へと変貌してしまった可能性を危惧したのでしょう。
私も、彼の姿を見て息を呑みました。
一回り太くなった腕と足。そこには不気味に輝くエメラルドグリーンの鱗が張り付き、指先には黒く鋭い鉤爪が生えています。
そして、その瞳。
以前の優しい色ではなく、獲物を射抜くような竜特有の縦長の瞳孔。
(――もし、あの瞳の奥に、もう「ルディ」がいなかったら)
その一瞬、私の頭の中には、あらゆる最悪の想像がよぎりました。呼びかけへの反応がなかったら。彼が獣のように唸り、襲いかかってきたら。……手にした杖を握る指先が、震えているのが自分でも分かりました。
ルディは不自然な足取りで、一歩ずつ私たちへと近づいてきました。
張り詰めた空気の中、彼は掠れた、けれど確かに知性の宿った声で言いました。
「……ろ、きシー……せ、んせい。えり、な……リーゼさん。た、るはん、どさん……」
その瞳に理性が宿っているのを見て、エリナリーゼさんたちはようやく武器を収めました。
私は、詰めていた息を、全身の力と共に一気に吐き出しました。
「……ルーデウス。お前、実験は成功したのか?まさか、本当に竜と混ざり合うとはな……」
タルハンドさんの声は、驚愕を通り越して戦慄に震えていました。
「……まったく!心臓が止まるかと思いましたわよ!!」
エリナリーゼさんの怒号のような叫びに、ルディは穏やかに、けれど弱々しく笑いました。
「ご……しんぱい、を……おかけ、……しました」
その笑顔を見た瞬間、私はもう耐えられませんでした。
返り血で汚れ、人外の四肢を備えた姿になっていても、彼は私の大切な教え子で、愛する人です。
私は汚れも厭わず、ルディの胸に飛び込みました。
「ルディ!!馬鹿です!!本当に、心配したのですよ……!!」
「……あり、がとう……ございます。先生の、おかげ……です」
ルディは、まだうまく動かない異形の腕で、私の背中を優しく撫でてくれました。
「パウロは腰を抜かすじゃろうな……」
「当然ですわ。……これでは人か魔物か分かりませんもの」
「……かえる、まえに。あるく……れんしゅうを……。いい、ですか?」
ルディは不自由な指先で、ゼニスさんが閉じ込められていた場所を指しました。
そこには、
「なるほど。これを運ぶなら、手は多い方がいいな」
タルハンドさんとエリナリーゼさんは、少しでもルディに気を遣わせまいと、嬉々として財宝の回収を始めました。
「せん、せい……。……は?」
「私は、ルディのリハビリに付き合います!」
私は彼の隣に立ち、その不自然に節くれだった手を握って、歩行の補助をしました。
最初は重心制御がうまくいかず転びかけていたルディでしたが、数時間もすれば、ゆっくりとなら自力で歩けるほどに順応していきました。
骨格の太さも、関節の可動域も、これまでと全く異なるのでしょう。彼は一歩ごとに、まるで新しい身体の「取扱説明書」を自らの手で書き上げていくように、慎重に重心の移動を確かめていました。時折バランスを崩しては、私の腕にしがみつき、それでもすぐに体勢を立て直す。その様子に、私は何度も胸が熱くなりました。
ゼニスさんから奪った『負荷』は人族には大きすぎるもののようでしたが、竜の細胞が魔力回路に馴染んだことで許容できる負荷が増えたのかもしれません。
驚くべきは、魔術の出力でした。
人族の肉体というリミッターが外れたせいか、彼は初級魔術でも部屋全体を震わせるほどの魔力を放出してしまうのです。
「……出力が、上がり……すぎ、です」
ルディは苦笑しながら、何度も初級魔術を繰り返し、新しく得た『竜の肉体』に合わせた魔力制御を繰り返していました。
まるで、慣れない楽器を、少しずつ手に馴染ませていくかのように。何度も加減を誤っては照れくさそうに謝る様子は、あの絶叫を上げていた同一人物とは思えないほど、どこか微笑ましいものでした。
私たちは、巨大な魔力結晶という名の重い財宝を背負い、自分の足で歩くルディと共に、迷宮を後にしました。
帰り道に遭遇した魔物たちを、ルディが練習台と言わんばかりに一瞬で『
Side: パウロ
ゼニスを背負い、砂漠を越え、俺たちはようやく魔法都市シャリーアへと帰り着いた。
エリナリーゼに教わった古代転移陣のおかげで、本来なら年単位でかかる旅路を大幅に短縮できた。
「……ここか。ルディが買ったという家は」
目の前に建つのは、古びているが堅牢で立派な石造りの屋敷だった。
ギースが重厚なドアノッカーを鳴らす。
扉を開けたのは、見違えるほど美しく成長したシルフィ嬢ちゃんだった。
彼女は俺の顔と、背負ったゼニスの姿を見て絶句し、すぐに叫び声を上げた。
「アイシャちゃん!!パウロさんたちが戻ったよ!!」
中からアイシャが弾丸のような速さで駆け寄ってくる。
俺はゼニスをギースに預けると、まずアイシャを力一杯抱きしめた。
「……アイシャ。留守中、よく頑張ったな」
続いて、リーリャが娘を抱きしめる。二人の目には、再会の喜びと安堵の涙が溢れていた。
「……ノルンちゃんを呼んでくる!大学にいるはずだから!」
シルフィはルディの如き身のこなしで、風魔術を使って空へと飛び去っていった。
リビングのソファに、今は眠っているゼニスを横たえる。
アイシャが淹れてくれた茶を啜るが、喉を通らない。
アイシャは、ゼニスの様子がおかしいことに、そして何より――俺と一緒にルディが帰ってこなかったことに、気づいているはずだ。
その瞳が、何度も俺と扉の外を交互に見ていた。まるで、遅れて兄が入ってくるのを待っているかのように。
「……ノルンが来たら、すべて話す」
一時間も経たないうちに、ノルンが駆け込んできた。
シルフィに抱えられて飛んできたのだろう。彼女は俺の姿を見つけるなり縋り付き、声を上げて泣いた。
ゼニスが目を覚まし、起き上がる。ノルンがゼニスを見る。
生気のない、自分たちを認識していない母の姿に、彼女は怯えるように立ち尽くした。
だがその時。ゼニスが、おもむろに手を伸ばした。
「……の……る……ん」
「お母さん……っ!!」
ノルンは泣きながらゼニスの胸に飛び込んだ。俺も、その光景を見て堪えきれずに嗚咽を漏らした。
ギースたち旅の仲間は、ここで別れることになった。
俺は持っていた金のすべてを渡そうとしたが、彼らは「迷宮の宝を山分けにするから十分だ」と笑って受け取らなかった。
「パウロ、あまり気を落とすな。……元気でな」
去りゆくギースの背中に、俺は再会を誓った。
リビングの重苦しい空気の中、俺は震える手でお茶を啜り、向き合うノルンとアイシャの瞳を見つめた。
二人の目は、母の無事への安堵と、それ以上に「兄がいない」ことへの鋭い不安で満ちていた。
「……話さなきゃならんな。ベガリット大陸で、何が起きたのかを」
俺は声を絞り出し、順を追ってすべてをさらけ出した。
「まず、ゼニスの居場所を突き止めることができたのは、ロキシーのおかげだ。ルディの師匠である水王級の魔術師だ。あいつは単身魔大陸を回り、魔界大帝から『ゼニスはベガリットにいる』という情報を掴んできてくれた。だが……あそこは生半可な場所じゃなかった。難易度S級、『転移の迷宮』。俺たちが何度もアタックを仕掛けても、半分すら攻略できず、それどころかロキシーが罠にかかってはぐれちまった。一ヶ月もの間、あいつを迷宮の中に置き去りにしたんだ……」
ノルンが小さく悲鳴を上げ、アイシャが唇を噛む。
「救ってくれたのは、ルディだった。エリナリーゼと一緒にラパンに現れたあいつは、伝説の探索記……迷宮の構造が記された本を持ってきてくれた。あれがなければ、俺たちは今頃あの中で全員野垂れ死んでいただろうな。ルディは……あいつはもう、俺の知る子供じゃなかった。戦力としても、判断力としても、一級を超えた『怪物』だ。迷宮の凶悪な魔物どもを、魔術で次々と一撃で葬り去っていったよ」
俺は、ルディがロキシーを救い出した瞬間の、あの圧倒的な熱量と執念を思い出す。
「ルディがいなければ、ロキシーは確実に死んでいた。あいつが壁をぶち抜き、最短距離で師匠を助け出したんだ。それからロキシーを加えて、俺たちはついに最深部に辿り着いた。……そこに、ゼニスがいたんだ。巨大な魔力結晶の中に閉じ込められた状態でな」
「お母さんが……石の中に?」
ノルンの震える声。
「ああ。そして、それを守っていたのが、迷宮の主――『
俺はそこで言葉を詰まらせた。視界が、あの日ルディが流した鮮血の色で赤く染まる。
「……俺が、油断した。最後のあがきで首が死角から襲ってきた時、ルディは自分を爆発させてまで俺を弾き飛ばし、俺の代わりに……
「「っ……!!」」
「ルディはその状態で、零距離から魔法を放って
「嘘……そんなの、嘘よ!!お兄ちゃんが、そんな……っ!」
アイシャが立ち上がり、絶叫した。ノルンはショックのあまり息ができず、真っ青な顔で胸を押さえている。彼女は何かを言おうとして、けれど声にならず、ただ唇を震わせるだけだった。
「あいつを犠牲にすることで、ゼニスを救い出せた。……だが、ゼニスは目を覚ましても、誰のことも分からなくなっていたんだ。喋ることも、動くこともできねえ。ルディは、そのボロボロの体で母さんを診て、診断を下した。……呪い、いや『神子化』だと言っていた」
俺は、ルディが最後に下した、最も合理的で、最も残酷な決断を話した。
「ルディは……ゼニスを治すために、自分と母さんを繋いだんだ。ラプラスがかつて槍に呪いを移したように、ゼニスの『負荷の一部』を自分自身の肉体に引き受けた。……そのおかげで、ゼニスは少しずつ、人としての意識を取り戻し始めた。だがその代わりに……ルディは、言葉を奪われ、自分の体を動かすことさえ不自由になっちまった」
「なんで……なんで、そんな状態のお兄ちゃんを置いてきたのよ!!」
アイシャが俺の胸ぐらを掴み、涙ながらに吠えた。
「お兄ちゃんは無敵なの!世界で一番すごいの!!なのに、なんで一人で残したのよ!お父さんのバカ!!最低よ!!」
「……ああ、その通りだ。アイシャ、悪かった。……ルディが言ったんだ。『ゼニスの回復に必要、すぐに追いつく』と。……あいつのあの目は、俺に拒絶を許さなかった」
リーリャが、泣き崩れるアイシャを後ろから抱き止める。
「……それが、ルーデウス様の選んだ最適解だったのです、アイシャ。旦那様を責めないで……」
俺はただ、頭を下げることしかできなかった。
その時、それまで虚空を見つめていたゼニスが、ゆっくりと、震える手で俺の頭を撫でてくれた。
「……ぱ……う……ろ……」
たどたどしいが、確かな意思のある声。ルディが自らの四肢と視力、そして自由を削って取り戻した、妻の命の輝きだった。
ノルンは膝を震わせながらも、俺を見つめ返した。
「……お父さん。私、兄さんを信じてる。魔法大学のみんなが言ってたわ。ルーデウス・グレイラットは、常識では測れない『規格外』なんだって。……お父さんが不可能だと思っていても、兄さんなら、きっと私たちが想像もできない方法で戻ってくるわ。……だって、兄さんだもの」
俺よりも、ノルンのほうがずっとルディを信じていた。
それから数週間、俺たちはシャリーアの家で、穴の空いたような日々を過ごした。
ルディの友人たち――ザノバ王子やクリフ、アリエル王女までもが家を訪ねてきたが、ルディの惨状を聞いて、ザノバ王子は「師匠ォォ!!戻ってきてくだされぇ!!」と床を叩いて号泣し、クリフはエリナリーゼの無事を祈るように拳を握りしめていた。
ゼニスは日に日に回復していき、最近ではアイシャと一緒に、ぎこちない手つきで庭の花の手入れをするまでになっていた。
そんな、穏やかで寂しい昼下がりのことだった。
庭先で、ドン!! と空気を震わせるような、激しいドアノッカーの音が響いた。
また誰か見舞いに来たのかと思い、俺は椅子から立ち上がった。
「はいはい、今開ける――」
扉を開け放った、その瞬間。
俺の視界に入ってきたのは、巨大な背負い袋を担いだタルハンド。
相変わらず派手な出立ちのエリナリーゼ。
そして、その隣で微笑むロキシー。
だが、俺の意識はその三人を一瞬で通り過ぎ、その背後に立つ「人物」へと釘付けになった。
両の腕、そして足。
そこには、人族の肌とは似ても似つかない、エメラルドグリーンの硬質な鱗が張り付いていた。
指先には黒く鋭い爪が備わり、その存在感は、かつての息子よりも一回り大きく、禍々しくさえある。
そして、その瞳。
以前の透き通るような色ではなく、怪しく紫に光る、縦長の瞳孔を持つ「竜の眼」。
「……た、だい……ま。……父、さん」
たどたどしい、けれど確かな知性を宿した声。
一歩。
異形の脚で、しっかりと大地を踏み締めて家の中へと入ってきた息子。
俺は、その容姿と、愛する息子が生きて帰れたことに驚いて、言葉も涙も出ないまま、腰から崩れ落ちるようにその場へへたり込んだ。
「……お兄ちゃん……?」
物音を聞きつけたアイシャが、リビングから顔を出す。
その目が、玄関先に立つ異形の兄の姿を捉えた瞬間、彼女の表情がくしゃくしゃに歪んだ。
「お兄ちゃんっ……!!」
駆け出したアイシャが、鱗に覆われた兄の身体に、構わず飛びついた。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
ついに人族を完全に超越したルーデウス。
出力の変化、見た目の変化は今後のストーリーに変化を齎します。