無職転生 ~性格改変_エンジニアリング視点での魔術構築~   作:haru-ha

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【設定について】
本作は『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』の二次創作小説です。
pixivに掲載していた小説(完結済)のセルフ転載となります。(所々、追記・修正しています)

以下の独自設定(IF設定)を含みます。
・原作と違って、元々存在していたルーデウスの自我は失われず、そこに「ある男」の記憶だけが継承されたという解釈で執筆しています。
・そのため、原作のルーデウスとは性格や口調、判断基準が異なります。

【注意事項】
・原作のストーリー改変(生存IFなど)が含まれる可能性があります。
・キャラの独自解釈、および設定の捏造が含まれます。
・原作全編のネタバレに配慮しておりません。
なんでも許せる方のみ、お進みください。


第73節 再起動:『人形』の導きと、『甲龍王』の救い

 

Side: ロキシー

 

絶望の底でルディの杖にすがっていた私たちの元へ、一人の少女が駆け寄ってきました。アイシャでした。

 

彼女は休む間も惜しんでここまで駆けてきたのでしょう、息を切らしながら私たちの元へと辿り着きました。

 

「お兄ちゃんっ……!!」

 

彼女もまた、張り詰めていた糸が切れたように泣き叫び、私たちと一緒に主を失った二本の杖を抱きしめました。

 

けれど、アイシャはただ泣くためにここに来たわけではありませんでした。彼女の後ろから、夜の闇を圧するような、途方もない威圧感が近づいてきたのです。

 

白亜の甲冑を纏った、傲岸不遜なまでの風格。夜の闇の中でもなお白く輝くその姿は、まるでこの世の理から逸脱した存在であるかのようでした。直接お見掛けしたことはありませんでしたが、ルディが召喚魔術を教わったと語っていた伝説の人物。

 

甲龍王ペルギウス・ドーラ。

 

その手には、首だけになった魔導人形が握られていました。先ほどの、あの不釣り合いなほど元気な制止の声は、この人形の口から発せられていたようです。

 

オルステッド様の眼が、驚愕に見開かれました。

 

「ペルギウス……。この戦いは見学に留めると言っていたはずではなかったか」

「……不本意だ。こやつがあまりにも煩く喚き散らすのでな」

 

ペルギウス様は、不機嫌そうに魔導人形の頭部を突き出しました。

 

アイシャは里の転移魔法陣と通信石板が沈黙した瞬間、敵の狙いが情報網の遮断にあると即座に判断。自力で七大列強の石碑まで走り、そこからペルギウス様を呼び出したのだそうです。そして空中城塞を経由してシャリーアの事務所の惨状を確認し、そこで大破していたこの『人形』を見つけ、強引に空中城塞ケィオス・ブレイカーへと持ち込んだ……。

 

アイシャはこの決戦の結末を、ペルギウス様と共に空中城塞から見ていたのです。

 

「まだだ!まだ諦めるなッ!!ルーデウスはいなくなっちゃいない!!」

 

魔導人形の頭部が、必死に言葉を紡ぎました。

 

「あいつのことは俺が一番わかってる!あいつが生まれたときから、ずっと一緒だったんだ!あいつはベガリットで一人で突っ走って!死にかけて!そのことをめちゃくちゃ反省してたんだ!今のあいつが何の策もなく自殺するはずがねぇ!!」

 

その言葉に、絶望に沈んでいた四人の表情が、一斉に揺れました。

エリスが濡れた瞳を大きく見開き、縋るような光へと変わっていきます。

シルフィは震える両手で口元を覆い、こぼれそうになる嗚咽を必死に堪えていました。

アイシャは、まだ状況を飲み込みきれていないながらも、力強く頷いています。

そして私も――凍りついていた心臓に、確かな熱が戻ってくるのを感じていました。

 

「その杖だ!二本の杖の中に、ルーデウスの……あいつの情報が、魂がまだ残ってる!!一度あいつの内側で魂を混ぜ合わされていた俺が言うんだ!!あいつなら間違いなく、元に戻るための『バックアップ』を用意してる!!」

 

絶望に沈んでいた私の心に、眩しすぎるほどの希望が差し込みました。

涙で霞む視界で、ルディが大切にしていた二本の杖を見つめます。

 

「……混合(コンタミネーション)の逆理、逆混合(リバース・コンタミネーション)……!!オルステッド様!ペルギウス様!貴方たちなら『秘宝』の複写で見ているはずだ!!あいつなら、レポートにその原理を残しておかないはずもない!!お願いします、あいつを……ルーデウスを救ってください!!」

 

ペルギウス様は煩そうに手の中の人形を一瞥しました。

 

「……逆混合(リバース・コンタミネーション)か……もちろん原理は把握しているが、言うほど容易いことではないぞ。一度霧散した魔力の構成を、触媒に残った不確かな情報から再構築するなど……」

 

私はペルギウス様に、縋るような視線を向けました。

魔族である私に、彼は嫌悪を感じるかもしれません。けれど、ルディを復活させるためなら、私は自分の寿命も魔力も、魂のすべてを差し出す覚悟がありました。

エリスも、シルフィも、アイシャも、皆が言葉にならない願いを瞳に宿して、甲龍王を見つめています。

 

「ペルギウス。……俺からも、頼む」

 

驚いたことに、あのオルステッド様が。

誰に対しても不遜であった龍神が、深く頭を下げて、ペルギウス様に乞うたのです。

 

「……ルーデウスを、我が右腕を戻してくれ。俺も出来うる限り手を貸す」

 

その言葉に続くように、ザノバ様が、クリフさんが、エリナリーゼさんが、ドーガさんが、ジンジャーさんが、ジュリさんが、ノルンが、ペルギウス様の前に跪き、頭を垂れました。

ペルギウス様は大きく溜息を吐くと、呆れたように、けれどどこか満足げに鼻を鳴らしました。

 

「……ふん。致し方あるまい。我も、まだこの男に『我が像』を作らせるという約束を果たしてもらっておらんからな。……だが、期待はするなよ。逆混合(リバース・コンタミネーション)はこの男が開発した技術の中でも特に難易度が高い。それに、我を凌ぐ魔力量を持つ者を、我が魔力量だけで現世に引き戻せるとは思えん」

「魔力は、俺が提供しよう」

「……オルステッド。良いのか?貴様の魔力は……」

「ああ。俺の右腕のためだ。それに、奴が戻れば、また魔力回復装置を改良させれば済むだけの話だ」

 

オルステッド様の言葉を皮切りに、次々と魔力や闘気を提供するとの声が上がりました。先ほどまで死闘を繰り広げていたバーディガーディ様までもが、「我輩も手を貸そう。このまま消えられては寝覚めが悪いからな!」と手を挙げたのです。

 

ルディが残した二本の杖を囲むように、巨大な魔方陣が描かれた石板が配置されました。

私たちはその石板に手を触れ、己のすべてを捧げる覚悟で意識を集中させます。

 

「……始めるぞ」

 

ペルギウス様の厳かな宣言。

 

瞬間、魔方陣は夜の荒野を昼間のように照らし出す、神々しいまでの光を放ちました。

熱い風が私たちの頬を撫で、大気が痺れるような密度の魔力で満たされていきます。

膨大なエネルギーが、二本の杖を核として収束し、空気中の魔力を編み上げ、肉体という名の形を紡いでいきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光がゆっくりと、収束し、消えていきました。

石板の中心。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには、一人の裸の少年が横たわっていました。

透き通るような白い髪。手足に張り付いたエメラルドグリーンの鱗。そして、鋭く黒い光を放つ爪。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年が、ふらりと上半身を起こしました。

 

「……ここは、一体……?闘神バーディガーディとの決着は……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルディが、復活しました。

 

以前より一回りも二回りも小さな、少年の姿。けれど、その眼差しも、その声も、紛れもなく私たちの愛するルディでした。

 

涙で前が見えない中、私たちは誰が先ともなく駆け出していました。

 

そして、その小さな、けれど温かな身体を、壊れ物を扱うように、けれど力いっぱい、抱きしめました。

 


Side: ルーデウス

 

……温かい。

意識の深淵から引き戻された瞬間、最初に感じたのは物理的な「重み」と、何重にも重なり合う体温の心地よさだった。

魂だけの希薄な存在だったあの場所から、再び血の通った肉体へと、私の存在が再接続されたのだと、感覚が教えてくれた。

 

「…………ッ!」

 

肺が冷たい空気を吸い込み、心臓が力強く脈動を開始した。

目を開けると、そこには涙で顔を濡らした愛しい女性たちの顔があった。

 

「ルーデウス……、ルーデウスッ!!」

 

真っ先に私を抱きしめたのは、エリスだった。

けれど、その喜びのあまりの出力の高さに、私の身体は悲鳴を上げた。

 

 

 

 

――バキッ、ボキボキッ。

 

 

 

 

「……ぐ、ぅあ……ッ!?」

 

再生したばかりの身体の肋骨が数本、彼女の強すぎる抱擁によって容易く粉砕された。

 

「エ、エリス……嬉しいが、流石に……加減を……」

 

掠れた声で訴える間もなく、なぜか隣にいたバーディガーディまでが「うむ!実にめでたい!」と豪快に笑いながら私を掴み上げ、空高くへと放り投げた。

重力から解き放たれ、夜空を舞う私の身体。

 

(……死ぬかと思った矢先に、今度は転落死か。非合理的すぎる……)

 

絶望しかけた私の身体をがっしりと受け止めてくれたのは、ザノバだった。

 

「師匠!ご無事で何よりです!このザノバ、我が身が砕けるよりも恐ろしゅうございました!」

「……ありがとう、ザノバ。助かったよ」

 

地上に降り立つと、クリフが顔を真っ赤にして、涙をボロボロと零しながら駆け寄ってきた。

 

「この馬鹿野郎……!どんだけ心配させたと思っているんだ!動くな、今すぐ治してやるから!」

 

温かな治癒魔術の光が私を包み、エリスに折られた骨が修復されていく。

 

 

ようやく一息ついて気付いた。……今の私は、一糸まとわぬ全裸の状態であることに。

 

周囲には妻たちだけでなく、仲間たち、いつの間にかいたペルギウスやその配下、里の戦士たちまで大勢揃っている。流石にこの状況で露出を続けるのは、私の理性が許さない。

 

「あ、ルディ、これを使ってください!」

 

ロキシーが、以前私が彼女に贈った『簡易魔神鎧』を脱いで、私の肩にふわりと掛けてくれた。心なしか、その頬はほんのり赤らんでいるように見える。

 

「……助かるよ、ロキシー。少し、いや、かなりサイズが合わないけれど……背に腹は代えられないね」

 

外套の下が裸であるという事実は落ち着かないが、剥き出しのままでいるよりは遥かにマシだ。

 

「おい、ルーデウス!俺のおかげだろ!?感謝しろよな!お礼は、もっとこう、ピチピチしたイケメンの新しい体で頼む!」

 

ペルギウスの足元で、魔導人形の頭部が騒がしく声を上げました。

 

「……分かっているよ。……新しいボディについては、後でザノバと作ろう」

 

私は小さな身体を震わせながら、傍らに立つペルギウスへと向き直った。

命の恩人だ。彼がいなければ、私は今頃二本の杖に宿る残滓として、永遠に消え去っていたことだろう。

 

戦いの前にルイジェルドに叱責され、元に戻るために逆混合(リバース・コンタミネーション)の基礎となるバックアップは準備していた。だが、闘神鎧による浸食があまりに激しく、戻る魔力が残っていなかったのだ。

 

私はこの縮んだ身体で、精一杯の敬意を込めて深く頭を下げた。

 

「ペルギウス様。……未熟な私の不始末を、このような形で救っていただき……。言葉では言い尽くせぬほど感謝しております」

 

ペルギウスは不遜に鼻を鳴らしましたが、その眼差しはどこか穏やかだった。

彼は隣に立つオルステッドへと視線を向けた。

 

「……しかし、どういう原理だ。復活させたは良いが、身体が以前より随分と縮んでおるではないか」

「……恐らく、ルーデウスの保有する魔力量が、人族の規格を大きく逸脱していたのが原因だろう」

 

オルステッドが私の身体をスキャンするように見つめながら答えた。

 

「一度霧散した魔力を、短い時間で再構築する過程で、過剰な密度が身体を圧縮させてしまった……といったところか。生命活動に支障はないだろうがな」

 

どうやら、私が十歳前後まで若返ってしまったのは、魔力量が多すぎたからのようだ。

 

「……オルステッド。私のために、それほど多くの魔力を……。良かったのですか?」

 

龍神の魔力は、貴重なものだ。それをセーブするための戦いでもあったのに……。

 

「……ああ。多くの者たちが魔力や闘気を提供してくれたからな。俺一人の消費は許容範囲内だ。……それに、お前にはこれから魔力回復装置のさらなる改良を頼むつもりだからな。元は取らせてもらう」

「……はは、頑張りますよ。最高効率の物を完成させてみせます」

 

私が苦笑しながら答えると、周囲に柔らかな笑いが広がった。

死の淵から生還し、最強の敵を退け、ようやく訪れた安らぎの瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが。

 

その安らかな静寂を、砂を踏む不吉な足音が踏みにじった。

談笑していた周囲が、水を打ったように静まり返る。

こちらへ向かって、ゆっくりと、けれど確かな殺気を帯びて歩み寄ってくる一つの人影。

その正体を認識した瞬間、私の背筋に冷たい氷のような戦慄が走った。

 

そこにいたのは。

このビヘイリル王国の盤面において、既に排除したはずの「敵」の姿だった。

 


 

「『雷神』ルーデウス!!」

 

静寂を切り裂くような叫びと共に歩み寄ってきたのは、北神三世、アレクサンダー・カールマン・ライバックだった。

衣服は新しいものに着替えたようだ。その肌は不死魔族の血によるものか、既に元の滑らかな質感を取り戻している。

そして何より、その背には私が没収したはずの『王竜剣カジャクト』が再び背負われていた。

 

「……ルーデウス・ボレアス・グレイラット!貴様に再戦を申し込む!!」

 

アレクサンダーは、まるで周囲にいる龍神オルステッドや甲龍王ペルギウスといった伝説の存在が目に入っていないかのように、真っ直ぐに私だけを指差した。

どうやら彼は、今の私が十歳前後の子供の姿に縮んでいることさえ、闘志の昂ぶりゆえに認識できていないようだ。

 

「……アレクサンダー。貴殿の狙いは龍神オルステッドではなかったか?」

「構わない!今の僕は、まず貴様に勝ちたいんだ!貴様を越えなければ、僕は次へは進めない!!」

 

あまりにも純粋で、それゆえに厄介な執着。私は溜息を堪えながら問いかけました。

 

「……その剣は、一体どこで手に入れたのか。シャンドル、お前の父に預けていたはずだが」

「ギースが持ってきてくれた。僕の身体を治してくれたのも奴だ。……父さんたちが負けた後、奴がうまく回収したらしい」

 

なるほど。シャンドルたちが闘神に敗れ、撤退を余儀なくされたあの混乱の最中、ギースが戦場を漁って略奪していたのだろう。そして、再起不能に近い重傷を負っていたアレクサンダーを治療し、再び私の前に立たせた。

 

(……これは、非常にまずいな)

 

私は冷静に自身の内部状況を確認した。

魔力の残量は全体の一割を切っている。身体は小さく縮み、以前の体格に基づいた戦闘技術が全く噛み合わない。さらに、私の『魔神鎧』も失われている。

重力を自在に操る王竜剣を持つ北神三世に対し、今の私が挑むのは、死にに行くのと同義だ。

 

どう切り抜けるべきか、最善の逃走経路を演算しようとした、その時。

私の隣で、巨大な影が動いた。

 

「……今の俺の右腕は、貴様のような小物と踊るための余力を持ち合わせていない」

 

オルステッドが、静かな、けれど圧倒的な重みを持つ一歩を踏み出しました。

 

「代わりに、この俺が相手をしてやろう」

「……っ、龍神、オルステッド!!」

 

アレクサンダーの顔に、驚愕と、それを上回るほどの歓喜が広がった。

 

「……オルステッド、良いのですか?貴方の魔力は……」

 

私が懸念を口にすると、オルステッドは振り返らずに答えた。

 

「問題ない。あのような若造、『神剣』を抜くまでもあるまい。……少し、遊びが過ぎたようだからな。ここらで一度、教育を施してやる必要がある」

 

オルステッドの手には武器はない。ただ、いつものように虚空を掴むような構え。

それだけだというのに、その広い背中からは、世界の頂点に君臨する絶対者としての圧が、津波のように溢れ出していた。

 

「行くぞ、北神よ。その剣が持ち主を選び間違えていないか、俺が確かめてやる」

「……望むところだッ!!」

 

アレクサンダーが王竜剣を抜き放ち、再び重力場を歪ませた。

世界最強の龍神と、不屈の北神。

今の私が手を出せる領域を超えた対決が始まろうとしていた。




少し短いですが、切りが良いところで投稿します。
ルーデウスは生きては帰れましたが、ショタ化しました。

竜人+白髪+傷跡状態は継続です。
戦いに挑む直前のルーデウスの情報がバックアップされています。
10歳くらいです。
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