無職転生 ~性格改変_エンジニアリング視点での魔術構築~ 作:haru-ha
【設定について】
本作は『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』の二次創作小説です。
pixivに掲載していた小説(完結済)のセルフ転載となります。(所々、追記・修正しています)
以下の独自設定(IF設定)を含みます。
・原作と違って、元々存在していたルーデウスの自我は失われず、そこに「ある男」の記憶だけが継承されたという解釈で執筆しています。
・そのため、原作のルーデウスとは性格や口調、判断基準が異なります。
【注意事項】
・原作のストーリー改変(生存IFなど)が含まれる可能性があります。
・キャラの独自解釈、および設定の捏造が含まれます。
・原作全編のネタバレに配慮しておりません。
なんでも許せる方のみ、お進みください。
Side: ルーデウス
今日は、あの『人形だった男』を自宅に連れてきている。
ファリアスティアとの結婚を見据えて、もっと強くなりたい。そして、お金も貯めたい。彼は最近、事あるごとにそう漏らすようになっていた。
給金はすでにアイシャを経由して支払っている。それでも、家を買うためには一日でも早く蓄えを増やしたいのだろう。加えて、冒険者になることにも密かな憧れを抱いているようだった。
「なぁ、ルーデウス。俺、思うんだけど……せっかく闘気が使えるようになったんだ。剣術をきちんと習って、冒険者にもなってみたい。一攫千金、狙ってみたいんだよ」
その意気込みに、私は苦笑しつつも頷いた。
「悪くない目標だ。装備の方は私とザノバでもう動いている」
彼の戦闘装備は
面白いのは、装備のラインナップに彼自身の趣味が色濃く反映されていることだった。
「
「銃、か。異世界にある武器だな」
彼の要望通り、私たちは魔力で駆動する拳銃型、ライフル型、そして連射式のマシンガン型まで、複数の魔導具を試作していた。これらを身体に埋め込み、腕や肩口から直接繰り出せるようにすれば、並の魔物では相手にもならないだろう。ザノバなどは「これぞ兵器としての魔導人形の真骨頂ですな」と、目を輝かせながら設計図に向かっていた。
朝の剣術道場には、すでに多くの門下生が集まっていた。
見渡せば、パウロ、ノルン、エリス、そしてアルスの姿もある。今日は稽古に付き合ってくれるらしい。
私は彼らの前に男を連れていき、簡単に紹介した。
「今日から、こいつも稽古に加わることになった」
パウロたちは、私やパウロの面影を色濃く残す男の顔を見て、明らかに驚いた様子だった。エリスは遠慮のない目でまじまじと彼を見つめている。
「……ルーデウス、あんた、兄弟なんていたの?」
「いや、いない」
パウロが代わりに即座に否定する。だが、その表情はどこか腑に落ちない様子でもあった。血の繋がりはないはずなのに、なぜか確かな繋がりを感じる――そんな戸惑いが、パウロの眉間に浮かんでいる。
「まぁ、詳しい話は後でしよう。今は稽古だ」
私がそう切り上げると、パウロも「そうだな」と頷き、渋々ながら得心したように剣を構え直した。
訓練が始まる。
男は毎朝、私の稽古を熱心に眺めていたおかげか、基礎の型はすでに一通り身についているようだった。踏み込み、剣筋、呼吸のタイミング。ぎこちなさこそあるものの、初めて剣を握った者の動きではない。
闘気の運用にも、目立った問題は見当たらなかった。以前のジャンプテストのような暴走もなく、出力を丁寧に絞りながら剣に纏わせている。地道な自主練習の成果だろう。
「筋はいいな」
稽古を見ていたパウロが、感心したように呟いた。
この道場のもう一つの特徴は、剣神流、水神流、北神流――三つの流派すべてを、門下生が自由に体験できる点にある。入門したばかりの者は、まずこの三流派をひと通り試し、自分に合った型を選び取っていくのだ。
男もまた、三流派すべてを一通り試していた。結果として、彼が最もしっくりきたのは北神流だった。
パウロは当初剣神流を勧めていたようだが、実際に動きを見てあっさりと考えを改めたらしい。
「……なるほどな。お前は力任せより技巧派の方が向いてる。北神流でいけ」
男は素直にその助言を受け入れ、以降は北神流の型を中心に稽古を重ねることになった。
訓練が終わる頃には、門下生たちは一様に汗と土埃にまみれていた。
最後に、私が水魔術で全員をまとめて洗い流す。これも、この道場ではすっかり恒例になっている光景だ。
「今日はありがとな、ルーデウス。……こういう場所で剣を振れるの、思ってたより楽しい」
男が晴れやかな顔でそう言った。話を聞けば、これから毎日ここに通うつもりでいるらしい。存外、真面目な性分なのかもしれない。
そこへパウロが声をかけてきた。
「なぁ、ルーデウス。あいつ、一体どういう知り合いなんだ?教えてくれないか」
エリスも隣で腕を組み、興味津々といった様子で私を見ている。
「……分かりました。せっかくだし、昼食の時間にでも話しましょう」
私はそう答え、男もその場に誘うことにした。彼にとってもいずれは向き合わねばならない話だ。
昼食の席には、いつもとは少し違う顔ぶれが揃っていた。
男が姿を現すと、テーブルを囲む面々が一斉に目を丸くする。
「……あら」
真っ先に反応したのは、ゼニスだった。彼女は男とパウロの顔を交互に見比べ、次いで探るような視線をパウロへと向けた。
「パウロ、まさか……よそで作った子だったりしないわよね?」
「ぶっ……! ち、違うぞゼニス! 俺は断じてそんなことは!」
パウロが盛大にむせながら弁明する。その慌てぶりが逆に微笑ましく、私は思わず苦笑した。
「違いますよ、母さん。……こいつは、冥王ビタとの戦いの中で私が拾ってきた魂なんです」
「魂を……?」
「ええ。もともとは、ただ漂っていた魂だったんですが、それを自分の細胞をベースにした魔導人形に移した。だから、私やパウロに似た顔になっているんです」
ゼニスは「まぁ……」と目を丸くしたまま、疑ってしまったことをパウロに詫びていた。パウロの方はまるで気にした様子もなく、それどころか身を乗り出して興味津々に聞いてくる。
「へえ、魂を移すって、そんなことができるのか。……つまり、お前の兄弟みたいなものか?」
「まぁ、間違いではないですね。……どちらかというと、私の子どもと言った方が近いかもしれませんが」
そこまで言って、私は少し考え込んだ。
「……ザノバと私の子、というと、それはそれで少し気持ち悪いですね」
「よせよせ、想像したくねぇ」
パウロが顔をしかめ、周囲からどっと笑いが起きた。
その一方で、「子ども」という単語に敏感に反応した者たちがいた。
アルスとルーシーだ。二人は男に向かって、明らかな対抗心を滲ませた視線を送っている。
「……俺がいちばん、長男だもん」
「ルーシーだって、まけないんだから」
微笑ましいながらも、真剣な顔つきの兄妹に、大人たちは揃って頬を緩めた。もっとも、隣に座るララだけは、我関せずといった様子で料理に夢中になっている。
そんな中、ゼニスが男に向き直り優しく尋ねた。
「あなた、お名前は?」
男は少し言い淀んでから、静かに首を横に振った。
「……ないんです、名前」
「え、名前をつけていないの?」
ゼニスが驚いた顔で私を見る。
「……そういえば、つけていなかったな」
私が素直にそう答えると、テーブル中から一斉に呆れたため息が漏れた。
「前の名前を、そのまま使えばいいんじゃないか?」
私が男に尋ねると、彼はゆるゆると首を振った。
「いや……生まれ変わったんだから、新しい名前が欲しい。……できれば、ルーデウスにつけてほしい」
「私が?」
その瞬間、ノルンとアイシャが、まるで示し合わせたかのように同時に声を上げた。
「兄さんに名付けさせるのだけは、やめておいた方がいいですよ」
「そうそう。子どもの名前ならまだしも……旦那様の適当な名づけは、本当に適当なんだから」
「レオなんて、しばらく『犬』って呼ばれてたよね」
そう言われては、私にも返す言葉がなかった。あの時は、分かりやすくて実に良い名だと思ったのだが。レオも心なしかジト目でこちらを見ている。
沈黙が流れる中、ふいにパウロが手を挙げた。
「よし、じゃあ俺が名付けてやろう!」
どうやら、この短い時間ですっかり男のことを気に入ったらしい。パウロはしばらく腕を組んで唸っていたが、やがてにやりと笑った。
「……『ルード』ってのはどうだ?」
その場に、小さな静寂が落ちる。
「ルード……」
男は――いや、ルードは、その響きを何度も口の中で転がすように繰り返した。そして、こみ上げるものを堪えきれないといった様子で、深々と何度も頭を下げた。
「ありがとう、ございます……!その名前、大事にします」
こうして、かつて『人形だった男』は、パウロから贈られた名――『ルード』を得ることとなった。
感想にいただいた内容を参考に、男に名付けしてみました。
短めですが、エピローグには短めの話も今後載せていきたいと思います。